スペインと聞いて思い浮かべるのは、「情熱のフラメンコ」や「カトリックの国」というイメージかもしれません。しかし、スペインの南部・アンダルシア地方には、かつて8世紀にわたるイスラム支配の時代がありました。その影響を色濃く残しているのが、グラナダ(Granada)という都市です。
特に、アルハンブラ宮殿(Alhambra Palace)、ヘネラリーフェ(Generalife)、アルバイシン地区(Albaicín)は、ユネスコ世界遺産にも登録されており、イスラムとキリスト教の文化が交差した歴史の証ともいえる場所です。
この記事では、そんなグラナダの魅力と歴史をたどりながら、英語表現も一緒に学んでいきましょう。
グラナダはどんな都市?

まずは、グラナダの歴史を紐解いてみましょう。
グラナダの歴史──イスラム最後の砦
イスラム勢力がアンダルシア地方を支配して約300年が過ぎた13世紀、カトリックの勢力は「レコンキスタ(Reconquista=国土再征服運動)」を進めていました。多くの都市がキリスト教徒に奪還されていく中、グラナダは13世紀からおよそ250年間にわたり、ナスル朝のもとイスラム文化の最後の拠点として繁栄しました。
やがてカスティーリャ王国とアラゴン王国の統一により強大なカトリック連合軍が生まれます。そして1492年、フェルナンド王とイザベル女王率いる軍隊によって、ついにアルハンブラ宮殿が無血開城。これが、スペインにおけるイスラム支配の終焉となりました。
アクセス情報
グラナダへは、マドリードのアトーチャ駅からスペイン国鉄の特急列車で約4時間半。飛行機を使えば約1時間です。セビージャやコルドバからはバスが便利で、所要時間は約3時間。アクセスも良好なので、日程に余裕があればぜひ訪れてみたい都市です。
アルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン地区の歴史
グラナダの黄金期は、ナスル朝の成立とともに始まります。1232年、ムハンマド1世(Muhammad I)がグラナダに王国を建てたことで、ナスル朝が誕生しました。彼は1246年、カスティーリャ王フェルナンド3世と和平条約を結び、貢納を条件にグラナダの支配を許されました。
ナスル朝グラナダ王国は、イベリア半島最後のイスラム王朝として約250年間続きます。この時期、経済と文化は大いに発展し、アルハンブラ宮殿はイスラム建築の最高傑作として完成したのです。
また、ナスル朝時代のグラナダは他宗教にも寛大で、多くのユダヤ人がこの地で暮らしていました。しかし1492年のグラナダ陥落以降、スペイン異端審問(Spanish Inquisition)が始まり、ユダヤ人やイスラム教徒に対する迫害が強まります。多くのユダヤ人はオスマン帝国へ逃れ、新たな地で経済的に大きな役割を果たすようになりました。
覚えておきたい英語フレーズ

グラナダの旅で使える英語表現をいくつかご紹介します。
訳)アルハンブラ宮殿はイスラム建築の傑作です。
訳)グラナダはスペイン最後のイスラム勢力の拠点でした。
訳)グラナダでは、自然と建築の調和を感じられます。
旅先でこんなフレーズが口にできたら、きっと旅がもっと楽しくなるでしょう。
世界遺産としての価値とは?
グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン地区は、世界遺産に登録されています。
正式名は、次のようになります。
Alhambra, Generalife and Albayzín, Granada
登録年は?
訳)グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン地区は、1984年にユネスコの世界遺産に登録され、1994年に登録範囲が拡大されました。
登録内容は?
次の3箇所が登録されています。
- アルハンブラ宮殿(Alhambra)
- ヘネラリーフェ(Generalife)
- アルバイシン地区(Albaicín)
登録理由は?
登録理由は以下の点にあります。
- アルハンブラ宮殿とヘネラリーフェは、ヒスパノ・ムスリム文化の建築と装飾技術が集結した傑作であり、アルバイシン地区は、イスラム時代の町並みをよく残し、後のキリスト教やスペイン・バロック文化とも調和した独自の景観を形成している。
- アルハンブラでは、漆喰・木材・陶器を使った精緻な装飾に加え、アラビア語の詩や宗教的文章が建物に刻まれており、「語りかける建築」とも呼ばれ、アルバイシンは、イスラム時代の生活様式や文化が色濃く残る地区で、多方面でヨーロッパ文化に影響を与えた。
- アルハンブラ宮殿とヘネラリーフェは、13~15世紀のイスラム王朝ナスル朝の宮殿建築として、時代を超えてほぼ原形を保っている。アルバイシンも、のちにキリスト教文化が加わった後も基本的な構造や素材、色彩が継承されている。
UNESCO World Heritage Convention:Alhambra, Generalife and Albayzín, Granada
グラナダの世界遺産をめぐる旅

世界遺産に登録されている3箇所の魅力・見どころを紹介します。
アルハンブラ宮殿(Alhambra)
スペイン語で「赤い城」を意味するアルハンブラは、13世紀から15世紀にかけて建築されました。細密な装飾、アラベスク模様、幾何学模様が施された空間は、まさに「芸術の極み」。特に「ライオンの中庭(Court of the Lions)」は人気のスポットで、シンメトリーな美しさに目を奪われます。
ヘネラリーフェ(Generalife)
アルハンブラ宮殿の離宮として建てられたこの場所は、王族の夏の避暑地でした。美しい庭園と水路が魅力で、現在でも当時の雰囲気を色濃く残しています。「平和のオアシス(An oasis of peace)」と形容されるほど、訪れる人の心を癒してくれます。
アルバイシン地区(Albaicín)
グラナダの旧市街にあたるアルバイシン地区は、かつてのイスラム都市の面影を今に伝えるエリアで、アラブの影響を色濃く残した街並みが魅力です。白い壁の家々が丘の斜面に連なる風景は、「アンダルシアらしい風景」としても知られ、ここからは対岸の丘に立つアルハンブラ宮殿を見上げる絶景が楽しめます。
この地区には、イスラム時代の公衆浴場(ハンマーム)や、モスクの跡地に建てられたサン・サルバドール教会、グラナダ考古学博物館などが点在しています。
まとめ:英語で広がる世界遺産の旅
グラナダに広がるアルハンブラ宮殿、ヘネラリーフェ、アルバイシン地区は、スペインの歴史、そしてイスラム文化の栄華を今に伝える貴重な存在です。こうした世界遺産を訪れることで、観光を超えた深い学びが得られます。
また、旅先で英語を使ってみることで、自分の世界もさらに広がるでしょう。
