「ウクライナ」と聞いてどんな風景を思い浮かべますか?広大な平原、ひまわり畑、少し遠い国の名前。実はウクライナには、壮麗な歴史と建築美を誇る世界遺産があります。
その代表が、「キーウ:聖ソフィア大聖堂と関連する修道院群及びキエフ-ペチェールシク大修道院」です。1990年にウクライナで初めて世界遺産に登録され、東スラブ世界の精神的・文化的中心として知られてきました。
この遺産は、かつてキリスト教をロシアへと広める契機となった、宗教と文化の拠点だったのです。
この記事では、このウクライナの世界遺産の魅力とその背景にある歴史をひもときながら、旅先で使える英語フレーズも紹介します。
キエフの世界遺産とは?

ウクライナの首都キーウ(キエフ)にある「聖ソフィア大聖堂」と「ペチェールシク大修道院」は、かつてのキエフ大公国(キーウ・ルーシ)の栄華を伝える貴重な歴史遺産です。
聖ソフィア大聖堂は、11世紀に建てられた壮大な教会建築で、当時のキエフ大公国がビザンツ帝国のアヤソフィア聖堂に匹敵する規模で築いたことがその特徴。
一方、ペチェールシク大修道院は、洞窟に広がる地下墓地(ラヴラ)で有名。ここでは聖人たちの遺体が安置され、巡礼地としても多くの人々が訪れます。
この2つの建築群は、ウクライナの歴史と信仰、建築美術の結晶と言えるでしょう。
キエフ大公国の栄光
9世紀末、現在のウクライナを中心に成立したキエフ大公国(キーウ・ルーシ)は、スラブ民族による最初の国家の一つでした。その中心都市がキエフであり、当時は東欧の政治・宗教・文化の中心地でもありました。
実は「ルーシ」という言葉が、現在のロシア語の語源とも言われています。このことからも、ウクライナとロシアとの歴史的つながりがうかがえます。
11世紀に入ると、ビザンツ帝国との関係を深める中で、キリスト教の信仰が広まり、教会や修道院の建設が盛んになります。聖ソフィア大聖堂も、この時代の文化を象徴する建築でした。
しかし、12世紀以降は地方の自立が進み、モンゴル軍の襲来(1240年)によってキエフは大きな打撃を受け、キエフ大公国としての繁栄は終焉を迎えることになります。
他国の建築に与えた影響
聖ソフィア大聖堂の建築様式は、その後の東スラブ圏における聖堂建築に大きな影響を与えました。特に、現在のロシアにあるウラジミール大聖堂やノヴゴロドの聖堂群は、その影響を色濃く受けています。
金色のドーム(黄金の屋根)は、ビザンツ様式とスラブ文化の融合の象徴であり、正教会建築の重要なスタイルとして、今なお多くの教会で見ることができます。
アクセス方法
キーウ(キエフ)へは日本からの直行便はありませんが、ドイツやポーランド経由で到着できます。
市内の移動には、地下鉄(Metro)やタクシーが便利。聖ソフィア大聖堂とペチェールシク大修道院は、キーウ市内中心部から近く、1日で巡ることも可能です。
世界遺産としての価値
この建築群は、1990年にユネスコ世界遺産に登録されました。登録名は、「キーウ:聖ソフィア大聖堂と関連する修道院群及びキエフ-ペチェールシク大修道院(Kyiv: Saint-Sophia Cathedral and Related Monastic Buildings, Kyiv-Pechersk Lavra)」です。
その登録理由には、以下の点が挙げられます。
- 文化的価値:ビザンツ建築様式を基礎にしながらも、東スラブ地域の美的感覚や宗教的伝統を反映し、独自の建築スタイルを築いた点
- 歴史的重要性:キエフは東スラブ圏におけるキリスト教伝播の中心地であり、正教会の精神的な核として発展してきた点
- 芸術的価値:11〜12世紀に制作されたフレスコ画やモザイク画が、今もなお当時の姿をよく残しており、中世東欧キリスト教美術の傑作である点
しかし、2023年には危機遺産リスト(List of World Heritage in Danger)に登録されました。これは、近年のウクライナ情勢によって文化財の保存が脅かされているためです。
覚えておきたい英会話フレーズ
以下は、聖ソフィア大聖堂やペチェールシク大修道院を訪れた際に、感動や説明を共有するための英会話フレーズです。
訳)ここにこの大聖堂が千年近くも建っていたなんて、信じられる?
訳)良い時代も悪い時代も、この場所はずっと見てきたんだね
訳)なんでこんなにたくさんの人が祈りに来るの?
訳)ウクライナ正教の中でも特に神聖な場所の一つだからだよ。
訳)これが世界遺産に登録された理由がわかる気がする。
訳)美しいだけじゃなくて、深い意味があるんだね。
訳)生きた歴史の本みたい。
見どころガイド

キエフの世界遺産には、見逃せない名所がいくつもあります。美しい聖堂や歴史ある修道院など、見どころをひとつずつ紹介していきます。
聖ソフィア大聖堂
聖ソフィア大聖堂は、キエフに現存する最古の教会であり、ウクライナの建築史においても特に重要な存在です。
11世紀初頭に建設され、当時のキエフ大公国の繁栄とキリスト教の影響力を象徴しています。内部には、千年前に描かれたフレスコ画やモザイクが数多く残されており、特に聖母マリアのモザイクは圧巻です。
キエフ-ペチェールシク大修道院
ペチェールシク大修道院は1051年に創設され、洞窟を利用した独特の構造が特徴です。地下には聖人たちの遺体が安置され、蝋人形のような姿で保存されているミイラもあり、神秘的な空気に満ちています。
地上部分には数々の教会や鐘楼が立ち並び、長い歴史を感じながら信仰の力を肌で感じられる場所となっています。巡礼地としても今も多くの人々が祈りに訪れています。
ベレストヴォの救世主聖堂
聖ソフィア大聖堂のすぐ東に位置する小さな教会ですが、その歴史的・建築的価値は見逃せません。12世紀に建てられたこの聖堂は、キエフ大公の居住地の近くにあり、王族にゆかりのある重要な宗教施設でした。
ベレストヴォの救世主聖堂は、聖ソフィア大聖堂と関連する施設として、世界遺産の一部となっています。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
ウクライナの世界遺産には、壮大な歴史と芸術が詰まっています。そしてそれを英語で語ることで、海外の人とその感動を分かち合うこともできます。
近年のウクライナ情勢により、訪問が難しい時期ではありますが、こうした文化遺産を知ることは、平和と理解への第一歩にもつながるのではないでしょうか。
