「小さいうちから英語を始めたほうが良い」と聞いたことがある方も多いでしょう。
しかし、2〜4歳という幼児期は、日本語の土台を築く大切な時期でもあります。
そのため、英語を取り入れる際には専門家の視点と保育現場のリアルな声を参考にすることが大切です。
今回は、幼児期に英語にふれる際の注意点や効果的なポイントをご紹介します。
なぜ2〜4歳が英語とのふれあいに適しているのか?

音に敏感で「聞き分け力」が高い
2〜4歳の子どもはまだ言語の音に柔軟で、母語だけでなく他の言語の発音やリズムも自然に聞き分けられます。たとえば、大人にとって難しい「r」と「l」の違いも、この時期は耳でキャッチしやすく、無理なく発音につなげることができます。
模倣力が最も旺盛な時期
この年齢の子どもは、大人の声や動きをそのまま真似することが得意です。英語の歌やリズム遊びをすると、意味を理解していなくても楽しみながら繰り返し口にするため、自然に語感やイントネーションが身につきます。
「恥ずかしい」がまだ芽生えていない
小学校以降になると「間違えたら笑われる」という気持ちが出てきますが、2〜4歳ではまだその意識がありません。間違いを恐れずに声を出すことができるのは、この時期ならではの大きな強みです。
日本語の基礎が形になり始める時期
2歳頃から語彙が一気に増え、3〜4歳になると簡単な文で会話ができるようになります。母語が伸びていくこのタイミングで、英語にも「遊びながらふれる」体験をすることで、両方の言語に柔軟に対応できる準備が整います。
遊びの延長で学ぶことが自然にできる
この年齢の子どもは机に座って学ぶよりも、体を使った遊びや歌の方が圧倒的に集中できます。そのため「英語の時間」ではなく「楽しい遊びの一部」として取り入れることで、抵抗なく長く続けることができます。
このように、2〜4歳は 耳の柔軟さ・模倣力・心理的ハードルの低さ が揃った、まさに「自然に英語を吸収できるゴールデンタイム」だと言えます。
日本語の土台を大切にする
言語発達の専門家は「母語の力をしっかり育てることが、第二言語習得にもつながる」と指摘しています。例えば、英語だけを詰め込むと、日本語での表現力や語彙の伸びが遅れる場合も。保育現場でも「日本語で安心して表現できる子ほど、英語への適応もスムーズ」という声が多く聞かれます。
幼児期の英語導入と日本語発達の関係
「日本語が遅れる」という不安は本当?
言語発達の研究によると、母語(日本語)がしっかり育っている子は、第二言語(英語)を学んでも遅れは出にくいとされています。
逆に「日本語の基盤が弱いまま」英語に偏ってしまうと、言語全体の発達に影響が出ることがあります。そのため、英語を取り入れるときは 日本語での会話や表現力を十分に支えることが大前提 です。
保育現場のリアルな声
実際に英語活動を取り入れている保育園や幼稚園からは、こんな声が聞かれます。
- 「日本語で豊かに話せる子は、英語でも楽しんで表現できている」
- 「逆に日本語がまだ不安定な子には、英語は『遊びの刺激』程度にとどめ、日本語を中心に支えている」
- 「日本語が遅れるというより、両方を並行して伸ばす工夫が必要だと感じる」
専門家のアドバイス
言語発達の専門家は以下のように指摘しています。
- 母語は「考える力」「感情を伝える力」を育てる基盤。ここが十分でないと、英語の理解も深まらない。
- 両親や保育士が日本語でしっかり関わることが大切。家庭での会話や絵本読み聞かせは、日本語力を支える柱になる。
- 英語は「遊びやリズムで触れる程度」で十分。無理に語彙を増やそうとする必要はない。
現状のまとめ
- 日本語の発達が順調な子どもは、英語を取り入れても大きな遅れは報告されていない。
- ただし、日本語の語彙や表現がまだ不安定な段階で、英語を「勉強のように」詰め込むと負担になる可能性がある。
- 保育現場でも「日本語の発達を最優先に考えながら、英語は楽しく触れる程度に」という方針が主流。
つまり、保護者が安心してよいポイントは 日本語の会話や表現の時間をしっかり持ち続ければ、英語が日本語の発達を妨げることはほとんどない ということです。むしろ「日本語+英語」の二重の刺激が、子どもの言葉や表現力を豊かにする可能性もあります。
海外における幼児期からのバイリンガル・トリリンガル教育の例

シンガポール:公用語が4つ
シンガポールでは英語、中国語(主にマンダリン)、マレー語、タミル語の4つが公用語です。
- 教育は基本的に英語で行われますが、家庭では中国語やマレー語を使う子どもが多く、2〜4歳から自然に複数言語に触れる環境があります。
- 「家庭で母語+園や学校で英語」という形で、日常的にバイリンガル・トリリンガル教育が進んでいます。
カナダ:英語+フランス語の二言語教育
カナダでは英語とフランス語が公用語で、幼稚園から イマージョン教育(教科を丸ごと第二言語で学ぶ教育法)が導入されています。
- 2〜4歳の子どもも、フランス語の環境に入ることで自然に吸収。
- 「英語を母語とする家庭でも、幼児期からフランス語保育園に通わせる」といった選択が一般的に行われています。
スイス:地域によって使う言語が異なる
スイスにはドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つの公用語があります。
- たとえばチューリッヒではドイツ語が中心ですが、フランス語や英語も早期から教育に取り入れられます。
- 国際都市でもあるため、移民家庭の子どもは「家庭で母語+園で地域の公用語+英語」と、3言語以上に自然に触れるケースも珍しくありません。
ヨーロッパの国際保育園
ドイツやオランダなどでは、国際保育園やプリスクールで 英語と現地語の二言語保育 が一般的に行われています。
- 2歳から英語とドイツ語での保育を並行する園もあり、子どもは遊びや生活の中で両方を習得していきます。
- 親の転勤などで入園する子も多く、多文化・多言語が自然に共存しているのが特徴です。
専門家が見る効果
研究によると、幼児期から複数言語に触れた子どもは
- 言語スイッチ(状況に応じて使う言語を切り替える力)が発達する
- 認知的柔軟性(考えを切り替える力)が強くなる
- 他文化理解が自然に育つ
といった利点があるとされています。
日本との違い
海外では「言語は環境によって自然に身につくもの」という考え方が主流で、2〜4歳の段階からバイリンガル・トリリンガル環境に子どもを置くことが一般的です。一方、日本では「日本語が遅れるのでは?」という不安が根強く、英語導入に慎重な家庭が多いのも現状です。
家庭との連携がカギ

保育園や幼稚園だけでなく、家庭でも英語に触れる機会をつくると効果が高まります。例えば、英語の歌を一緒に聞く、絵本を繰り返し読む、簡単なフレーズを親子でやりとりすることがおすすめです。ある園では「保護者が家庭で取り入れやすい英語絵本や音楽を紹介する」取り組みをしており、好評を得ているところがあります。
「教える」より「ふれる」感覚で
2〜4歳にとっては机に向かう勉強ではなく、遊びの中で自然に英語が入る形が理想です。歌、ダンス、絵本の読み聞かせ、簡単なやりとり(”Hello” “Thank you” など)が有効。保育士の話から「英語を学ばせるというより、生活の中で自然に出会わせることで、子どもが楽しんでいる」というのも聞かれます。
「間違いを正す」より「楽しさを優先」
発音や文法を正すことに力を入れすぎると、子どもが「英語は難しい」「間違えるのが恥ずかしい」と感じてしまいます。保育現場でも「まずは一緒に声を出して楽しむ」ことが最優先。正しさは後から自然についてきます。
まとめ
2〜4歳での英語とのふれあいは、言語の基礎を育てる貴重な時間でもあります。
大切なのは「楽しみながら自然に触れること」「日本語の力をしっかり支えること」。
保育現場の声に耳を傾けつつ、無理なく生活に英語を取り入れていくことが、子どもの未来の言語力を大きく伸ばしていきます。
