国連英検(正式名称 / 国際連合公用語英語検定試験)は1981年にスタートし、英語力だけでなく国際社会・国際情勢への深い理解をアピールできる英語資格です。
私たちがよく知る”英検”と比べると一般的な認知度は劣りますが、英検以上に高いレベルの英語を学ぶことができたり、国際機関へのアプローチにマッチしていたりと魅力ある英語資格でもあります。
この記事では、国連英検について通常の英検や他の英語試験と比較しながら、その難易度や取得するメリット、試験対策についてお伝えします。
国連英検とは?普通の英検とどう違うの?
冒頭でお伝えしたとおり、国連英検とは英語力だけでなく国際社会や国際情勢への深い理解をアピールできる英語資格です。
国連”英検”と名前がついているので、私たちがよく知る英検との違いについて気になる人が多いでしょう。
本項では国連英検について、私たちに馴染み深い英検と比較しながらお伝えしていきます。
英検との違い
日本の英語資格の中で最も有名な試験のひとつである「英検」が、日本の教育を司る「文部科学省」が後援する日本英語検定協会が主催しているのに対して、国連英検は日本の外交を司る「外務省」が後援する日本国際連合協会が主催しています。
そのため文部科学省と結びつきの強い通常の英検は、高校受験や大学受験などで活用されることが多く、英語科目のみなし得点や推薦入試の考慮事項として導入している学校も多いです。(※)
※ただし高校卒業程度認定試験(旧大検)の英語資格として文部科学省が国連英検C級を認定しているなど、国連英検も文部科学省と提携している事例もあり
対して国連英検は、各級に「何年生程度」の指標はあるものの、実際のコミュニケーションや英語運用能力、国際社会への理解に重きを置いた試験となっているため「実務」に焦点が当たった試験となっています。
特に、A級や特A級になると国際情勢に絡んだトピックの英作文とネイティブスピーカーとの時事問題討論が課せられ、「語学」としての英語を超えた「国際人としてのスペシャリスト」が目標になっていることがわかります。
まさに国連英検が公式ホームページで掲げている「真の国際人へのパスポート」にふさわしい試験であることがわかります。
英検との共通点
国連英検と英検には共通点もあります。
1点目は「幅広い受験者層」です。
英検は小学校5年生レベルの5級から、大学上級レベルの1級まで幅広い受験者層を対象にしています。
同じように国連英検も、中学卒業レベルのE級から、国際会議で通訳なしで英語の契約交渉ができるレベルの特A級まで幅広いレベルの受験者を対象にしています。
2点目は「コミュニケーション重視」の英語試験である点です。
国連英検の公式サイトでは以下のように記載されています。
国連英検はコミュニケーション能力を重視した試験です。B級~E級で出題されるリスニング問題のウエイトは40%と高く、またB級以上は国際時事問題をテーマとした作文問題(ウェイト20%)が設けられています。
↑では「下位〜中位級のリスニング問題のウェイトが40%」を根拠にして「コミュニケーション能力を重視した試験」としています。
同じく英検の問題を見てみると5級から2級までの一次試験では、リスニング問題のウェイトは40%〜50%を占めていることが確認できます。
以上のことから、英検と国連英検は「コミュニケーションを重視した英語力検定試験」という点で共通しているといえます。
国連英検の特徴は?
次に、国連英検ならではの特徴についてみていきましょう。特に、コミュニケーション重視であること、国際問題や時事問題がテーマとなっていることが挙げられます。
コミュニケーションを重視
英検との共通点としても紹介しましたが、国連英検は実用的なコミュニケーション能力が重視されます。A級以上になると面接試験があり、国際問題や世界情勢に関してネイティブの面接官とディスカッションを行います。内容としては、国際情勢や時事問題に関する知識が求められます。
さらに、特A級の面接にはネイティブの面接官に加えて、元外務省の大使など外交実務経験者や国際関係を専門に研究する大学教授なども参加します。
対策としては、知識を身につけることはもちろん、相手に伝わるように話せる英語スキルをつけることも求められます。
国際問題・時事問題がテーマ
国連は、地球人として広く活躍できる人材の育成を目指しています。そのため、国連英検では、国際問題や世界の時事問題に関する問題が多く出題されます。
たとえば、世界平和、世界経済、人権問題、自然環境、SDGsなどがテーマとなります。国連英検に合格するためには、英語能力だけでなく広い視野で国際問題と世界情勢を分析する能力が求められます。
また、国連に関する知識も問われます。指定のテキストを使って対策をしておきましょう。
UN Eiken is called the United Nations Associations Test of English(UNATE) in English.
訳)国連英検は、the United Nations Associations Test of Englishといいます。
国連英検を受験するメリットとは?
国連英検を受験するメリットには主に以下のことが挙げられます。
世界情勢・国際時事を英語で考えられるようになる
国連英検の最大の特徴が「世界情勢・国際時事に焦点があたった英語を学べる」点だと言えます。
たとえば日本で最も有名な英語資格のひとつであるTOEICは、日常英語に加えて企業間のやりとりや契約などビジネス英語が問われます。
その結果、一般企業から「ビジネス英語力の指標」として広く用いられています。
対して国連英検は、「世界情勢・国際時事」に焦点が当たった試験です。
試験出題トピックも国連の活動に沿って、世界平和、地球環境、世界政治、世界経済、人権、食品、医療等の世界情勢・国際時事問題を広く取り扱っているので、今まさに地球上で問われている問題を認識し、自分の考えや解決策を論理的に伝達する表現力が求められます。単なる語学力の判定にとどまらず、総合的な国際コミュニケーションスキルが問われる検定試験です
↑のような世界情勢・国際時事問題について「英語で」考えることで、国際社会の問題や自分の意見について英語で発信できるようになります。
国際機関へのアプローチに有利
国連英検を受験することで、国際機関へのアプローチが有利になります。
たとえば、独立行政法人である「国際協力機構」では、国連英検のC級以上を語学力の評価基準として採用されています。↓
国際協力機構(JICA)ではC級以上の合格者を派遣職種により語学力の評価基準として採用されています。
また、国際機関で働きたい人が登録する「外務省ロスター登録制度」に登録する語学の要件として「国連英検A級」が認定されています。(参照:国際機関職員募集情報 18ページ)
以上のように、国連英検が国際機関へのアプローチに有利に働くことがわかります。
In the future, I would like to work for an international organization.
訳)国際機関で働きたいと思っているの。
In that case, it is necessary for you to take the United Nations Associations Test of English A grade.
訳)それなら、国連英検A級を取っておくことが必要だね。
就職活動でアピールできる
国連英検は、国際機関への就職のみならず就職活動の際にアピールすることができます。
警視庁の警官採用試験では、国連英検C級以上を持っていると採用試験の成績の一部として評価されます。国内外での就職活動や転職活動、留学申請など、さまざまな状況で国連英検の成績は英語力証明の一つとなるでしょう。
国連英検の級が生きてくる仕事は?
では、国連英検の級を取得していると有利になる職種について具体的にみていきましょう。
国際機関や官公庁
国際連合や外務省などの国際機関や官公庁では、国連英検の成績が評価されることがあります。特にA級や特A級の成績は有利に働くことがあり、最低でもB級程度が求められます。
外交官や国連で働くことを目指している人はA級以上を取得しておきたいところです。
民間企業
グローバル社会において、多くの企業が国際的なビジネス展開をしており、英語力が求められています。
外資系企業では、海外の人とビジネスをする上で対等に会話ができることが大事で、英語力のある人材は活躍できます。また、日本企業においてもグローバルな展開をしている企業では英語力のある人材が求められています。
このような企業への就職では、国内企業で最低でも国連英検B級、海外拠点がある企業ではA級以上が評価されるでしょう。
英検やTOEICに比べると日本国内ではまだ認知度が低い試験ではありますが、TOEICの高スコアを取得した上で国連英検も取得していることは、英語力を証明する一つの材料となるでしょう。
大学・研究機関
大学や研究機関では、国際的な研究プロジェクトや学術交流が行われているところが多く、英語力は必須です。国連英検の級取得は、国際的な学術交流に参加する場合に生きてきます。
国連英検はどれくらいの難易度?
国連英検の難易度は、「私たちがよく聞く”英検”よりも少し難しく、”英検”と同じくらい幅が広い」といえます。
国連英検は、難易度ごとにE級から特A級までのレベルに分かれています。
国連英検の最も初級であるE級レベルが「中学修了程度」とされていて、対して英検は3級で「中学修了程度」となります。
国連英検E級
英語のスキルとしては、自己紹介を含む日常会話が可能なレベルです。試験時間は80分で、質問形式はリーディングが50問、リスニングが30問で、作文や面接の試験は行われません。
E級
中学修了程度の文法・文型に基づく英語の理解力が要求されます。簡単な趣味や自己紹介が出来るコミュニケーションレベルです。
国連英検D級
国連英検D級は高校2年生程度の単語力・文法に基づく理解力が求められます。英語で道案内ができたり、買い物の簡単なお願いができたりするコミュニケーションレベルです。
試験時間は100分で、リスニング・リーディング問題から出題。E級よりも出題数が多いため時間配分に注意が必要です。高校レベルの基本的な文法や文型・語彙などを中心に学習するとよいでしょう。
国連英検C級
国連英検C級に合格するには高校卒業レベルの英語力が必要です。「高校卒業程度認定試験」では、C級以上が英語資格として認定されます。簡単な電話の取り次ぎができる、旅先や食事の席で英語の会話を楽しめるなどのコミュニケーション力があると判断されます。
高校修了程度の文法・文型に基づく英語の理解力が要求されます。高校卒業程度認定試験(旧大検)において、文部科学省はC級以上を英語資格として認定しています。
旅先やフランクな食事の場で会話を楽しんだり、簡単な電話の取り次ぎの出来るコミュニケーションレベルです。
試験時間は100分で、リスニング・リーディングから出題。英検では準2級程度に相当します。
国連英検B級
国連英検B級は、英語を使って仕事をしたい人がまず目指すレベルといえます。英字新聞や雑誌の比較的やさしい記事、読みやすい随筆や短編小説などを理解できる英語力、日常生活の場面での会話文の読解力が必要です。
また、英語を使ってインターネットの情報を活用したり、電話での対応ができたり、自分の意見をしっかりと伝えられるコニュニケーション力が求められます。
試験時間は120分、リスニング・リーディング・作文で構成されています。B級以上では作文が出題されるので、日頃から自分の意見を英語で伝えられるようにしておきましょう。
国連英検A級
国連英検A級では、外国人と日常の身近なテーマや時事問題などについて討論するレベルが求められます。試験には面接試験があり、英検とは違い「英語で討論する」力を見られます。
A級以上では、国際会議等で意思を自由に伝えることができる、グローバルな話題に対応でき、通訳なしで英語の契約交渉ができるコミュニケーションレベルを目標としています。
試験時間は120分間、リーディングと作文で構成されています。A級以上ではリスニング試験が行われません。2次試験の面接は10分間です。
国連英検特A級
国連英検の特A級に合格するには、世界で活躍できる国際人レベルの英語力が必要となります。
英語力はもちろん、国際情勢や時事問題などについても国際的に通用する知識が求められ、難易度が非常に高いといえます。
英語力はもちろんですが国際的に通用する知識・情報なども要求される点に特徴があります。文化、経済等、多くの分野の問題を自由に討論する能力が要求されます。
試験時間は120分で、リーディングと作文で構成されています。リスニングはありません。また、1次試験の合格者を対象に15分間の面接が行われます。
特A級は英検1級以上のレベルといわれ、TOEICに関しては満点レベルの英語力といえるでしょう。
I heard that the United Nations Associations Test Special A level is at the perfect TOEIC level.
訳)国連英検特A級は、TOEIC満点レベルだそうね。
It’s a tough challenge, but I want to take on the challenge.
訳)難関だけど、チャレンジしたいな。
英検3級
級:3級
推奨目安:中学卒業程度
また「国連英検:試験概要 各級合格者 他英語資格」によると、国連英検の最も高い級である特A級合格者は、90%以上が英検1級を既に所有していると回答しています。
このことから特A級が英検1級を凌(しの)ぐ難関の試験だとわかります。
以上の国連英検E級と英検3級、国連英検特A級と英検1級を比較すると、国連英検の難易度は、「私たちがよく聞く”英検”よりも少し難しく、”英検”と同じくらい幅が広い試験」だとわかります。
英検3級のレベルや面接対策については、次の記事をお読みください。
他の英語試験と比較
国連英検を他の英語試験と比較してみると、どのような違いがあるのでしょうか。
TOEICと比較
TOEICはビジネスに関するテーマが多くなっています。国連英検のように合否判定されるのではなく、TOEICはスコア判定をされます。よく知られているTOEIC L&Rはリスニングとリーディングスキルを問う内容で、解答はマークシート形式です。就職活動や海外異動を希望する際の指標となることが多いといえます。
TOEFLと比較
TOEFLはアカデミックなテーマが多くなっています。TOEFLもスコアによる判定となり、リーディング・リスニング・ライティング・スピーキングの4つのセクションで構成されています。TOEFLは英語を母語としない人向けの試験で、アメリカなど英語圏の大学の入学基準として採用されています。
IELTSと比較
TOEFLと同様、英語を第二言語として学ぶ人向けの試験です。国連英検と比較すると、IELTSはリーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの4つのスキルを評価し、国際的な大学への入学や移民ビザ申請に利用されることが多くなっています。
ケンブリッジ検定と比較
ケンブリッジ検定はビジネスに関するテーマが多くなっています。ヨーロッパではもっとも認知度の高い英語試験です。ケンブリッジ検定はリスニング・リーディング・ライティング・スピーキングと文法のスキルを測定することができます。スコアは5段階で評価されます。英語の知識だけでなく、スキルを使いこなす能力も求められる試験です。
国連英検ジュニア
英検に「英検ジュニア」があるように、国連英検にもジュニア向けの「国連英検ジュニア」があります。
国連英検ジュニアもしっかりと外務省の後援を受けていることから、しっかりと権威を持った機関から任された児童向け英語試験だと言えますね。
国連英検ジュニアもE級からA級まで6つの級に分かれていて、お子さんの習熟度ごとに幅広く難易度を調節して受験できます。
PreA級やA級になると中学生レベルの英語になるので、「国連英検E級にはまだ早いかな」と考えている中学生にとって、将来国連英検を受ける基礎づくりとしても役立ちます。
国連英検の試験対策は?
これから国連英検を受けてみようと思っている方に、試験対策について紹介します。
国連情報対策
国連英検は、国連そのものの活動に関する内容が問われます。国連についての知識を得るために、国連英検指定のテキスト『新わかりやすい国連の活動と世界』で対策することをおすすめします。
国連の基本情報をはじめ、活動内容や関連機関についての情報を日本語と英語で併記したガイドブックです。国連とNGOの関係や持続可能な開発(SDGS)などを含む、現代の動向を踏まえた改訂版です。
時事英語対策
国連英検では時事英語のスキルが求められます。時事問題にも対応できる単語集を活用して単語力を身につけることも大事です。
英字新聞を読むなど時事ニュースを英語で理解する工夫をしましょう。また、国連の公式サイトに掲載してある英文もコラムとして紹介されていますので、読んでおくことをおすすめします。
公式ガイドブック
日本国連協会認定の『国連英検公式ガイドブック 』は、国連英検指導検討委員会のメンバーによって執筆されたガイドブックです。
試験の形式に沿った問題に慣れ、時間配分を設定することも必要です。総合的なコミュニケーション能力を問う国連英検の特徴がわかります。
受験英語と同じで英語学習は復習が大切なので、何度も繰り返し学習して定着させることが大事です。過去問題集で過去問を解いて、慣れておくことも大事ですね。
特A級・A級を受験する方は、2次試験対策用テキスト「国連英検 特A級・A級 面接対策」も活用するとよいでしょう。
リスニング・スピーキング対策
リスニングに関しては、国連英検用の参考書は少ないため、英検やTOEICなどの参考書もを活用して対策をたてることもよいでしょう。
たとえば、国連英検B級のリスニングは英検準1級レベルなので、英検準1級リスニング用の問題集を活用してみてください。
リスニング対策は、短期間で急に力がつくものではありません。耳が慣れないうちは、シャドーイングやディクテーションをしながら活用してみるのも一つの方法です。また、移動の電車の中など細切れの時間を使って耳を慣らすなど、継続することが必要です。
kiminiのオンライン英会話レッスンで、講師と一緒にリスニングやスピーキング対策をすれば、実践的な学びをすることもできるでしょう。ぜひ活用してみてください。
まとめ
この記事では、国連英検がどんな試験であるかを、私たちがよく知る英検やその他の英語試験と比較しながらその特徴、難易度、受験するメリットについてお伝えしました。
ここまでお読みのあなたは、国連英検の魅力やどんな人が受験するのかを理解していることでしょう。
この記事でお伝えしたことが、あなたの英語学習をより充実したものにできれば幸いです。