音楽をやったことがある方であれば、「ビート」という言葉をよく使うでしょう。ビートを刻む、ビートに合わせる、のように使いますよね。今回はこの「ビート」を表す英単語”beat”について解説していきます。
英語は単語1つで多くの意味を持つことがある、というのはご存知かと思いますが、今回解説する”beat”も多くの意味を持つ単語です。それでは早速みていきましょう!
“beat”の意味
英単語の多くが動詞、名詞、形容詞でそれぞれ異なる形となりますが、”beat”はこの単語1つで動詞、名詞、形容詞のすべての意味を含みます。文脈や、文章内の英単語の位置から品詞を判断する必要がある難しい単語の1つと言えるでしょう。
動詞の意味
動詞だけでも非常にたくさんの意味があります。
- (続けざまに〜を)打つ、叩く
- (相手を)打ち負かす、やっつける
- (ゲームなどを)クリアする
- (料金を)逃れる
他にもありますがよく使われるのは上記の意味です。動詞だけでもこれだけの意味があり、続く目的語によって意味を使い分ける必要がありますが、「相手に勝つ」というイメージを持っておくと意味を理解しやすくなります。
目的語を伴わない自動詞の場合は以下の2つの意味です。
- (続けざまに)打つ、叩く
- (心臓などが)鼓動する
名詞の意味
名詞も動詞と同様多くの意味があります。
- 叩くこと
- (警察などの)持ち場
- 脈拍
- 拍
- 縄張り
名詞もすべてを覚えることは難しいかと思います。叩くことや脈拍は動詞からも想像できますが、持ち場、縄張りは推測が難しいですよね。多少強引ですが、「勝負で勝ち取った場所」とイメージすれば覚えやすくなります。
形容詞の意味
動詞や名詞と違い形容詞の意味は限定的です。
- へとへとの、疲れ切った
- ビート族の
関連はないように思えますが、鼓動が早くなる状態=疲れ切った状態とすれば覚えやすそうですね。またここで登場しているビート族とは、第二次世界大戦後にアメリカに登場した文学運動の参加者のことを指し、この運動はアメリカ文化と政治に大きな影響をもたらしたとされています。
“beat”を使った表現
これだけ多くの意味を持つ”beat”ですが、日常生活で使える慣用句にも多く使われています。今回は特に実用性がありそうな表現をいくつかピックアップしているので、さっそくみていきましょう!
You can’t beat it:これ以上のものはない
“beat”には〜を打ち負かす、という意味があります。You can’t beat it.を直訳すると「それを打ち負かすことはできない」つまり、これ以上のものはない、素晴らしいものである、という意味です。同様に”Nothing can beat〜”と表現することもできます。
You can’t beat hot milk in winter.
訳)冬は温かいミルクが一番ですね。
beat down the price:買い叩く
海外の観光地では、値引き交渉に応じてくれるお店があるところもあります。”beat down the price”は「値引きする」の意味です。これは買い手側が使う表現で、「買い叩く」といったネガティブなニュアンスを含むことがあります。同じ「値引き」を表す表現に”discount”や”bargain”があり、これらにはネガティブなニュアンスはありません。
My car was beaten down the price.
訳)私の車はとても安く買い叩かれました。
ちなみに”down”がなければ「賭けに勝つ」という意味に変わってしまいます。
beat(人)up:ボコボコにする
beat+人で、「(相手を)叩く、殴る」という意味になります。ここにさらに”up”が加わると「ボコボコにする、完膚なきまでに打ち負かす」という意味になります。日常生活で会話の中で使うことはないかと思いますが、スポーツ関連の記事で目にすることがある表現です。
The team beat the opponent up.
訳)そのチームは相手に快勝しました。
“beat”は不規則動詞で現在形と過去形は同じ”beat”、過去分詞は”beaten”です。
beat it:失せろ、去れ
マイケル・ジャクソンの名曲の”Beat it!”をご存知でしょうか?この”beat it”の意味は「出ていく、去る」ですが命令文で「失せろ」という意味になります。最後に”Beat it!”についておまけとして解説するので、興味がある方はそちらもぜひ読んでみてください。
beat around the bush:遠回しに言う
この表現はビジネスの場面でも耳にすることがある需要なイディオムで「遠回しに言う」という意味で使われます。日本人は結論を最後にだけ述べる癖がある人が多いと言われているのをご存知でしょうか。文章を書く際は「起承転結」を基にする、と教わったことでプレゼンなどでも同じ構成にしている人が多いそうです。
結論を最初と最後に述べるのがプレゼンの基本とされているため、最後にだけ結論を言ってしまうと遠回しに言っていると思われ、”Don’t beat around the bush!”と注意されてしまうかもしれませんね。
マイケル・ジャクソンの名曲”Beat it!”について
上述の通り、マイケル・ジャクソンの名曲に”Beat it!”があります。最後にこの曲について解説しますので、興味がある方は読んでみてください。解説を読んだ後にこの曲を聞くと印象が変わるかもしれません。
直訳すると「失せろ!」だが…
「失せろ!」と聞くとケンカ相手に挑発の意味で使っているように聞こえますよね。実際、この言葉は当時威嚇や挑発の意味で使われることも多かったようです。しかし、この曲では、”beat it!”は相手ではなく、自分の味方に対してのアドバイスとされています。発言の対象が味方であれば、「失せろ!」ではなく、「逃げろ!」と考える方が自然です。歌詞内では”You better run(逃げたほうがいい)”という表現もあるので、歌詞内の”beat it”は味方に対する発言と解釈してもよさそうですね。
これまでにない価値観を歌っている
当時のアメリカはギャングも多く血気盛んな時期で、喧嘩は売られたら買う、という人も多い時代でした。その環境下でマイケル・ジャクソンはあえて逃げることを勧める、むしろその方がかっこいい、と当時では考えられない価値観を歌っていることになります。全員が全員喧嘩に賛成していたとは考えられないので、この価値観は多くの人に勇気を与えたのは間違いないでしょう。
まとめ
今回解説した”beat”には非常に多くの意味がありましたね。今回紹介できなかった意味もあるため、すべてを覚えようとすると非常に効率が悪くなってしまいます。英単語で学習を進める際、いくつも意味がある単語はナンバリングして意味が掲載されていますが、この順番は基本的に重要度順となっています。どうしてもすべて覚えるのが難しければとりあえず1つ目だけ覚えてみましょう。また、ほとんどの場合何かしらの関連性や共通のイメージを持っています。”beat”で言えば、「勝負に勝つ」というイメージです。日本語訳を覚えられない場合は、イメージで覚えてみましょう。
”beat”を「叩く」とだけ覚えているとなかなか使う機会がないように感じますが、”I’m beat.”を”I’m tired.”の代わりに使えるとかっこいいですね。簡単な単語にもこのように意外な意味が含まれていることもあるので、英語学習に余裕が出てきたら重要度が低い意味にも着目してみると面白い発見があるかもしれませんよ!