デンマークの首都コペンハーゲンから電車で約30分。
静かな町ロスキレに立つ荘厳なゴシック建築、ロスキレ大聖堂(Roskilde Cathedral)は、1995年にユネスコ世界遺産に登録された北欧最古のレンガ造りの大聖堂です。
王族の眠る場所としても知られ、デンマークの歴史と建築の両方を語る上で欠かせない存在です。
世界遺産 ロスキレ大聖堂の歴史と文化的背景

デンマーク・シェラン島に位置するロスキレ大聖堂(Roskilde Cathedral)は、北ヨーロッパにおけるキリスト教と王権の関係、そして中世から現代にいたるまでの宗教・建築・政治の変遷を体現する特別な場所です。
1995年にユネスコの世界遺産に登録されましたが、それには深い歴史と文化的価値が存在します。
1. 歴史的背景
キリスト教の伝来とロスキレの成立
ロスキレの町は、10世紀頃、ヴァイキングの王ハーラル青歯王(Harald Bluetooth)によってデンマークにキリスト教が導入された頃に発展しました。ロスキレは当時、デンマーク王国の政治・宗教の中心地とされ、初期の司教座が置かれたことでも知られています。
大聖堂の建設
現在のロスキレ大聖堂は、12世紀後半から13世紀初頭にかけて建てられました。それまで木造や石造だった教会建築とは異なり、レンガ(brick)を使用した北欧初のゴシック建築として、後の教会建築に大きな影響を与えました。建築には約100年かかり、その後も各時代の王や女王によってチャペルや墓所が増築されていきます。
2. 文化的背景と宗教的意義
王族の霊廟としての役割
ロスキレ大聖堂は、デンマーク王室の公式な墓所として知られています。15世紀以降、約40名におよぶデンマークの王族たちがこの大聖堂に埋葬されてきました。この伝統は現在も続いており、現女王マルグレーテ2世の墓所もこの大聖堂内に準備されています。
このような埋葬の慣習は、王権とキリスト教の深い結びつきを象徴しています。また、歴代の王たちが独自の霊廟(chapel)を建てたことで、建築様式も中世ゴシックからルネサンス、バロック様式まで多彩に展開しています。
宗教改革との関係
16世紀の宗教改革により、デンマークはカトリックからルター派(Lutheranism)に改宗しますが、ロスキレ大聖堂はその後も王室の重要な宗教施設として使用され続けました。この継続性が、大聖堂の文化的・歴史的価値をさらに高めています。
3. 建築的価値
ロスキレ大聖堂は、レンガ建築が主流となる先駆けとなった建物です。特に以下の点が評価されています。
- 初期ゴシック建築(Early Gothic architecture)の代表例
- レンガ造りの技術の発展と拡散の起点
- 多様な建築様式が共存する「生きた建築史」
大聖堂には複数の増築部があり、それぞれの王の時代の芸術様式が取り込まれています。これは、living monument(生きた記念碑)とも呼ばれ、建築・装飾・宗教観の変遷を目で見ることができる点でも重要です。
4. 世界遺産としての意義
ユネスコはロスキレ大聖堂を「北ヨーロッパのキリスト教建築と王権の象徴的存在」と評価しました。特に以下の点が重視されています。
- 王族の歴史と文化を伝える重要な場であること
- 北欧全体の建築様式に与えた影響
- 政治・宗教・芸術の交差点としての役割
観光の見どころ

- ステンドグラス(Stained glass windows): 色とりどりの窓が陽光を受けて輝く様子は圧巻です。
- オルガン(Organ): 歴史あるオルガンの音色は、荘厳な雰囲気をさらに引き立てます。
- 博物館スペース(Museum exhibits): 大聖堂の一部には歴史を紹介する展示もあり、英語解説も充実しています。
英語で案内されるオーディオガイドやツアーもあるため、リスニング練習にもなります。
英語で使える観光フレーズ
旅行中に使える英語フレーズも覚えておくと便利です。
- “Where can I find the royal tombs?”
(王族の墓所はどこですか?) - “Is there an English tour available?”
(英語のツアーはありますか?) - “I’m interested in Gothic architecture.”
(ゴシック建築に興味があります)
大聖堂にまつわる王室のエピソード
マルグレーテ1世(Margrete I)
在位:1375年〜1412年(名目上)
功績と背景:
マルグレーテ1世は、北欧3国(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)を一つにまとめた「カルマル同盟(Kalmar Union)」を実現させた歴史的な女性です。実際の統治者として非常に優れた政治手腕を発揮しましたが、女性であったため正式な「女王」ではなく、「王の母」として君臨していたことが特徴です。
ロスキレ大聖堂との関係:
彼女はロスキレ大聖堂に葬られていますが、彼女の墓所は特に注目を集めています。なぜなら、デンマーク王国の「政治的統一」を象徴する人物であるため、墓所の装飾や碑文にもその偉業が強調されているからです。
クリスチャン4世(Christian IV)
在位:1588年〜1648年
功績と背景:
デンマークで最も有名な王の一人。戦争にも多く関与しましたが、文化・芸術の保護者でもあり、建築にも大きな貢献をしたことで知られています。コペンハーゲンの多くの名建築(ローゼンボー宮殿やボルスグレーンなど)は彼の時代に建てられました。
ロスキレ大聖堂との関係:
彼の霊廟はバロック様式の豪華なチャペルで、装飾が非常に精巧です。これは彼の文化的功績を象徴しています。見学者が最も立ち止まる場所のひとつです。
フレゼリク9世(Frederik IX)
在位:1947年〜1972年
功績と背景:
近代デンマークにおける象徴的な国王であり、現在の女王マルグレーテ2世の父です。国民に親しまれる「開かれた王室」を目指し、一般市民との距離を縮める努力をした王でもあります。
ロスキレ大聖堂との関係:
彼の意志により、海を望む場所に埋葬されることを希望しました。現在の大聖堂の敷地内、だが屋外に近い場所に立てられた白い花崗岩の墓所が特徴的で、近代的で簡素なデザインが彼の人柄を表しています。
マルグレーテ2世(Margrethe II)
在位:1972年〜2024年(※2024年に退位)
功績と背景:
デンマーク初の女性君主(近代において)であり、50年以上にわたって在位しました。国際的にも芸術的感性に優れた女王として知られ、文学、翻訳、イラストレーションなどにも活動の場を広げています。
ロスキレ大聖堂との関係:
彼女自身の墓所もすでに準備されており、サールテン(Jørn Larsen)という著名なデンマーク人アーティストによってデザインされた現代的な白いガラスと大理石の墓石が設置済みです。退位後も国民からの支持は厚く、観光客の間でも注目のスポットとなっています。
ロスキレ大聖堂に眠るデンマーク王族たちの物語は、単なる「歴史」ではなく、国民の記憶と誇りを象徴するものです。
それぞれの王や女王が時代に応じた形でこの大聖堂に関わりをもち、建築にもその足跡を残しています。
まとめ
筆者は二度デンマークを訪れましたが、一般の家屋や学校などの公共の施設に至るまで
レンガ作りが非常に多く、街全体がアートのような美しい国でした。
デンマークの人々は海外の企業や有名店舗などの導入をを極力避けて、国独自の文化や伝統をとても大切にしています。
ロスキレ大聖堂は、ただの観光地ではなく、北欧の歴史と文化の交差点でもあることが
デンマーク人の誇りとなっているのでしょう。
参考文献:ロスキレ大聖堂 – Wikipedia

