数年前から、北欧のシンプルでおしゃれな文化や暮らしぶりとともに、そのユニークな教育法が注目され、色々な教育団体が研究をはじめ、今の日本に足りないものを北欧スタイルを取り入れて活性化させよう!という動きが盛んに行われるようになりました。
筆者もその一人で、特に優れていると言われるデンマークの教育研修に参加し、とても刺激を受け帰国しました。
「幸福度ナンバーワン」と言われる小さな国デンマークの、何がそんなに魅力的なのか?その人々の暮らしぶりや歴史に触れながらご紹介をしたいと思います!!
英語を第二外国語として学習する国々の教育法 ~デンマーク~
国名
Denmarkは「デーン人の国」という意味です。語源は、古ノルマン語の「danir ( 谷間の意味)mark (地方、辺境地の意味)」から来ています。国面積はだいたい九州と同じくらいで、人口は600万人弱ほどです。首都はコペンハーゲンです。
言語
デンマークの公用語はデンマーク語です。第二言語として学ぶ英語は86%の人が話すことができ、第3言語として47%のデンマーク人はドイツ語を話すことが出来ます。
日本とのつながり
デンマークと日本の歴史は、1867年の江戸幕府時代にさかのぼり、両国で修好通商航海条約締結が結ばれてから始まりました。1886年(明治19年)に当時の皇室、伏見宮貞愛親王殿下がデンマークを訪問して以来、何度もデンマークの王室と日本の皇室の交流があり、親密な関係を維持されてきました。また政治的な交流も頻繁で、2017年には外交関係樹立150年を迎えました。
私たちが知っているデンマーク
デンマークと聞くと、まず最初に「アンデルセン」を思い出しませんか?私たちが子供のころから親しんできた童話「アンデルセン物語」の作者「ハンス・クリスチャン・アンデルセン」の作品で有名な「人魚姫」の銅像がコペンハーゲン市内にあります。しかし、実際見てみると驚くほど小さく、ちょっとがっかりする人もいるとか?
また、高級な陶磁器で有名なロイヤル・コぺンハーゲンや銀器のジョージ・ジェンセンなどは聞いたことがあると思います。
コペンハーゲン国立美術館などには、ビンテージのロイヤル・コパンハーゲンが所狭しと陳列されていて、アンティーク好きはたまらないと思いますよ!
意外と知られていない?のが、子どもの教育にとても効果がある「レゴ」が作られているところです。そういえば、街並みが何となく「レゴ」のように見えるような気がしますね。
デンマークの気候
デンマークを訪れるのに大切な知識として、気候が大きく関係します。
デンマークのベストシーズンは何といっても夏(6~8月)です。大体、平均気温が19~20度くらいで、なんと日照時間が5:00~22:00くらいとほぼ一日中明るいんです!この時期は、北欧最大の「ロスキレ・フェスティバル」が行われ、街のあらゆるところで、世界中のミュージシャンが集まり演奏をしています。他にもたくさんのイベントが行われ、短い夏を思いきりエンジョイしているようです。
その反対に、長い冬(11~3月)は日照時間が短く、8:30~15:30くらいです。人々は暗い中仕事に出かけ、帰宅する前にはとっぷりと暗くなってしまいます。平均最高気温が4~7度で、平均最低気温はー1~3度くらいですが、建物の中は窓も二重窓になっていて、とても暖かです。
デンマークの教育
デンマークは6,7歳から16歳までの9年間が義務教育になります。
そして驚くことに、大学も含めて教育費が無料なのです。
実際、8割程度の生徒が航路つの小・中学校に通っていますが、私立に通うにあたっても国から80%ほどの補助が出ます。
デンマークは、人を育てることが国の資産という考えで、「教育はいつでも、どこでも、誰にでも開かれている」という言葉の通り、教育を受ける権利が保障されているのが大きな特徴です。
デンマークの教育の特徴
1.入学試験がない
デンマークでは入試がなくて、卒業試験が行われます。義務教育が終了する9年生で実施され、筆記試験と口頭試験で構成されています。
2.少人数制教育
生徒の数は一クラス28人以下であると決まっています。そして基本的に、担任やクラス替えがなく、一貫して子供の成長を見守る方針です。
3.グループワーク教育
デンマークは「ディスカッションし、協力して一緒に学ぶ」ことに重点を置いた教育がなされています。また、自分の考えをしっかりと相手に伝え、プレゼンテーションする訓練が行われています。その他にも、制服がない、給食がない、部活動がない、行事が日本と比べて少ない、などの特徴があります。
素晴らしい幼児教育
共働きが当り前であるデンマークは、子どもが生まれて6か月目から保育園に預けることが出来ます。
保育園、幼稚園といった区別がなく、色々な特徴がある園があります。
待機児童の問題はゼロで、子どもが4か月ごろに保育園の入園申し込みをしたら、園側がその子供の席を確保することが義務付けられているのです。
デンマークは「森の幼稚園」の発祥地であり、毎日のように森の中で遊ぶ様子が見られます。
交通機関を使うなどして森に出かけ、リュックにはサンドイッチやリンゴなどの軽食、飲み物などを入れ、真冬でも防寒着に身を包み、森の中を走り回ります。
木に登る子、葉っぱを集める子、木切れを組み立てて小さな基地を作る子・・・先生はほとんど支持をせず、一人一人がどんな様子で遊びに取り組んでいるかを観察しています。
その様子はビデオや写真に記録され、保護者に園独自のメールなどで配信するので、日本のように連絡帳を書くなどの作業に時間を取られることもありません。
子ども達は幼いころから、持ち物は自分で管理する、けんかなどが始まったらみんなで解決をする、食事のテーブルセッティングなどをするなど、「一人の人間として自立すること」を目標としています。
デンマークの英語教育
デンマークは、「EF英語能力指数」という、非ネイティブの国を対象にした国別英語ランキングで3位という高い位置にいます。
デンマーク人のほとんどが、小学生からお年寄りまで日常会話レベルの英語を話すことができ、人によってはネイティブ並みに流暢に話す人もいるようです。
また、ネイティブのようにスラングを使わないので、比較的きれいで聞き取りやすい英語だと言えるようです。
デンマーク人が英語を話せる理由
英語教育は1年生(7~8歳)から始まります。
その内容は、「コミュニケーションが取れる」ことが大きな目的であって、決してテストで高得点を取るためではありません。
ゲームをしたり、自分のことを絵にかいて友達の前で発表する、テーマについて英語でディスカッションする、など柔軟性のある生き生きとしたカリキュラムが実践されています。
幼いころから英語を使って遊ぶ、表現する、など受け身ではなく自分から授業に取り組む姿勢が、デンマーク人が英語を堪能に話す理由になっているのでしょう。
デンマーク人同士はほとんどデンマーク語で話しますが、こちらが理解できなくて「ごめんなさい、英語で話していただけますか?」というと、快く英語で話し出すスキルの高さは、実に羨ましく思います!
人々の暮らし ”なぜ幸福度ナンバーワンなの?”
デンマークは税金が高く、所得税は収入の55%、消費税は25%、自動車税は280%(!!)にもなるというのにはとても驚きましたが、それでもデンマーク人は「幸せである」と言っているのでしょうか?
デンマーク人の暮らしは、実に質素です。高価なものを買ったり、人の上に立ち贅沢な暮らしをする、ということに価値を求めません。何人も平等であれ、という精神から、仕事で人を蹴落とし高い報酬を得るということがモチベーションには繋がりません。
仕事に縛られず、家族が父親も母親も家事や育児を手伝い、家で過ごす時間を充実させる。カフェのように照明を柔らかくしたり、キャンドルを灯したりなどして、お金をかけずとも心地よい空間を作る。自然を感じ、暮らしに取り込む。自分で作れるものはDIYで作る。
「子供は国の財産」電車にはベビーカー専用車両があるなど、みんなで子供を育てていく。
そう言った暮らしをデンマーク語で「ヒュッゲ(HYGGE)」といい、「居心地がよく満たされた時間」と言いますが、そういった何気ない「ヒュッゲ」な暮らしで人生を楽しみ、高い税金は出産費、教育学費、医療費、介護費が無料になるために払っているという安心感が、デンマーク国民の「幸せ度」を高くする理由なのでしょう。
まとめ
筆者がデンマークに教育研修に行ったときには、保育園の設備、教材の充実、ITを使った合理的な仕事ぶりなど何もかもに圧倒されたのを覚えています。また、小さな発見や問題が起きた時は、子供たち全員を集めて「これは何だと思う?」「どうしたらいいと思う?」など、先生が答えを言ってしまうのではなく、子ども自身に考えさせる教育をしていることが子どもが自分の生きる道を見つける一歩に繋がっていることを思い、ただがむしゃらに勉強していい学校に入っても、自分が何をしたいか決められない子供が多い日本で、この方法が少しでも取り入れられないか?と考えずにはいられませんでした。
本当の幸せは身近なところにある。私たちが学ぶべきものが、ここデンマークにたくさんあるのだと思っています。