フランスとスペインの国境にまたがってそびえるピレネー山脈。その中でも特に美しく、荘厳な自然と文化の価値が認められ、1997年にユネスコ世界遺産に登録された「ピレネー山脈のモン・ペルデュ(Pyrénées – Mont Perdu)」は、自然と人の暮らしが共鳴して生まれたと言えるでしょう。

世界でも珍しい複合世界遺産(Mixed World Heritage Site)であるこの地には、壮大な渓谷、氷河が刻んだ山々、段々畑や石造りの教会といった見どころが満載。

本記事では、「ピレネー山脈のモン・ペルデュ」を、英語フレーズとともにご紹介します。

世界遺産「ピレネー山脈のモン・ペルデュ」とは?

世界遺産「ピレネー山脈のモン・ペルデュ」とは?

ピレネー山脈の中央部に位置するモン・ペルデュ地域は、スペインとフランスの両国にまたがる貴重な世界遺産です。スペイン側では「オルデサ・イ・モンテ・ペルディード国立公園」フランス側では「ピレネー国立公園」にあたる地域が含まれています。

この地域には、ヨーロッパ最深ともいわれるオルデサ渓谷や、氷河が削った巨大な圏谷季節に応じて放牧地を変える移牧の伝統など、他に類を見ない自然・文化景観が存在しています。

ペルデュ山とは?

モン・ペルデュ(Mont Perdu)は、標高3,352mを誇るピレネー山脈の中で3番目に高い山。石灰岩の山としては、ヨーロッパで最も高いと言われています。氷河によって削られたその姿は、荒々しくも神秘的です。

名前の意味は「失われた山(Lost Mountain)」。その由来は、フランス北側からは深い渓谷に遮られて見えないため「まるで山が失われたかのよう」に見えるからだと言われています。

アクセス情報

スペイン側から行く場合、まずはバルセロナへ飛行機でアクセス。そこから車またはバスで約4時間半でモン・ペルデュに到着します。

フランス側から訪れる場合は、パリから空路でタルブ・オスン・ルール空港へ行き、そこから車でガヴァルニー村へ向かうルートが一般的です。

ピレネー山脈のモン・ペルデュの歴史

ピレネー山脈は、実はアルプスよりも古く、約1億5,000万年前のプレートの衝突によって生まれました。その地形が生んだ谷や山の間には、人々の暮らしの痕跡が今も息づいています。

紀元前4万年頃には、洞窟に人々が住み始め、渓谷沿いには水を利用した段々畑が築かれました。中世になると、夏には家畜を高地に連れて行く移牧が行われるようになり、その伝統は今も続いています。

さらに注目すべきは、国境を越えた文化交流です。スペイン側の農家がフランスの放牧地を利用できる慣習があるなど、山が人々を隔てるのではなく、つないできたという点が特徴的です。

世界遺産としての価値

この遺産は、「自然の美」と「人間の営み」の2つの要素が見事に融合した複合世界遺産として評価されました。自然遺産でも文化遺産でもあります。

1997年に世界遺産登録され、1999年に追加拡張されました。

Aさん
Pyrénées – Mont Perdu was designated as a UNESCO World Heritage Site in 1997. It was then modified in 1999.
訳)ピレネー山脈のモン・ペルデュは、1997年にユネスコの世界遺産に登録されました。その後、1999年に追加変更されました。

登録された理由とは?

以下のような理由で複合世界遺産に登録されました。

  • ヨーロッパでも珍しい「移牧」の伝統を今に伝える(文化の価値)
  • 中世から続く放牧文化や段々畑などの農業景観(文化の価値)
  • モン・ペルデュ一帯にある村々、畑、牧草地といった「人の暮らしの場」そのものが、移牧の伝統を支える重要な基盤である(文化の価値)
  • 草原・湖・洞窟・山・森といった多様な自然環境が広がる「美しい景観」として特別な価値を持っている。動植物や地形の多様性が極めて豊かなことから、ヨーロッパでも有数の自然保護エリアとして認められている(自然の価値)
  • 氷河やカルストによって形成された地形(自然の価値)

また、国境を越えた移牧や信仰の道としての歴史的意義も認められています。

この地には、他の世界遺産とも関連があり、例えばスペイン側には「イベリア半島の地中海沿岸のロックアート」の一部が、フランス側には「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」の構成資産も含まれています。

UNESCO World Heritage Convention:Pyrénées – Mont Perdu

覚えておきたい英会話フレーズ

旅先で役立つ英語フレーズをいくつか覚えておきましょう!

Aさん
Mont Perdu is a mixed World Heritage site, recognized for both its natural and cultural value.
訳)モン・ペルデュは自然的・文化的価値の両方が評価された複合世界遺産です。
Aさん
It’s hard to believe such beauty still exists in the world.
訳)こんな美しさが、まだこの世界に残っているなんて信じられない。
Aさん
I feel so small in front of this majestic landscape.
訳)この雄大な景色の前では、自分がとても小さく感じる。
Aさん
It’s amazing how nature and human tradition coexist so harmoniously here.
訳)ここでは自然と人間の営みが、こんなにも美しく調和していて感動する。

ピレネー山脈・モン・ペルデュのおすすめスポット

ピレネー山脈・モン・ペルデュのおすすめスポット

ピレネー山脈のモン・ペルデュ周辺には、自然の雄大さと文化の奥深さを感じられる場所がいくつもあります。ここでは特におすすめのスポットを、スペイン側とフランス側からそれぞれご紹介します。

オルデサ渓谷(Ordesa Valley)(スペイン)

スペイン側にある「オルデサ・イ・モンテ・ペルディード国立公園」の中でも、最も有名なのがこのオルデサ渓谷
春から秋にかけては、色とりどりの高山植物が咲き誇り、夏には羊や牛の放牧風景も見られます。渓谷には初心者向けから本格的な登山コースまでそろっています。

ピネタ渓谷(Valle de Pineta)(スペイン)

オルデサ渓谷よりも観光客が少なく、より静かな自然を楽しみたい人にぴったりなのがピネタ渓谷。深い森と氷河湖が織りなす風景は、心が洗われるような美しさです。

ピレネー国立公園(Parc national des Pyrénées)(フランス)

フランス側に広がるこの国立公園は、ピレネー山脈ならではの多様な動植物が生息する自然の宝庫。フクロウ、キツネ、カモシカなど、野生動物と出会えるチャンスもあります。特に、モン・ペルデュ周辺では、絶滅の危機にあるヒゲワシも観察されており、バードウォッチングの名所としても知られています。

ガヴァルニー圏谷(Cirque de Gavarnie)(フランス)

自然の円形劇場(natural amphitheatre)」と称されるこの場所は、ピレネーを代表する風景のひとつ。断崖絶壁に囲まれた巨大な圏谷は、幅6km、高さ1,500m超え
トレイルを馬に乗って進むツアーも人気で、子ども連れの家族にもおすすめです。小さな村ガヴァルニーには可愛い山小屋やカフェがあり、フランスらしい田舎の魅力も満喫できます。

Wikipedia

まとめ:英語で世界遺産を旅する楽しさ

「ピレネー山脈のモン・ペルデュ」には人と自然が共に歩んできた歴史と知恵、そして国境を越えた協力の歴史があります。英語でこの場所を語りながら旅をすれば、人々の暮らしや文化の深さにも触れることができます。

世界遺産を英語で楽しむことは、他の文化や考え方への理解を深める大きな一歩にもなるでしょう。