インドネシア・ジャワ島中部に位置する「ボロブドゥール寺院遺跡群(Borobudur Temple Compounds)」は、世界最大級の仏教遺跡です。インドネシアというとイスラム教の国というイメージが強いですが、この遺跡は約1200年前に仏教王朝のもとで築かれました。
山間の丘の上にそびえるこの石の遺跡は、一見するとピラミッドのようでもあり、曼荼羅のようでもあります。建てられた理由、どのように使われていたのか、そしてなぜ密林の中に埋もれ、長年忘れられていたのか…多くの謎が残されています。
今回は「ボロブドゥール寺院遺跡群」の歴史や見どころを英語を交えながら紹介します。
ボロブドゥール寺院遺跡群とは?

ボロブドゥール寺院は、1814年にイギリス人トーマス・ラッフルズによって発見されるまで、約1,000年もの間、密林の中に埋もれていました。
遺跡の構造:石の曼荼羅が語る宇宙観
寺院は平原の中央の小高い丘に土を盛って造られ、総面積は約15,000㎡。内部空間を持たない巨大な石の建造物で、仏教の宇宙観を表す立体的な曼荼羅のような構造になっています。
- 基壇(Kamadhatu):欲界、人間の欲望の世界
- 方形壇(Rupadhatu):色界、神と人間が交わる精神世界
- 円壇(Arupadhatu):無色界、物質を超えた悟りの世界
このように、仏教の「三界(三つの世界)」を階層で表現しているのが特徴です。
方形壇の回廊には、2,672面のレリーフがびっしりと刻まれており、その内容はブッダの生涯や仏教神話など多岐にわたります。彫られている人物の数は、なんと約1万人とされています。
さらに、外壁や円壇には等身大の仏像が504体配置されており、その姿や表情のバリエーションにも注目です。仏像たちは穏やかに訪れる人々を見守っており、その神聖な雰囲気に圧倒されることでしょう。
この遺跡は、全体が一つの「立体曼荼羅」とも言われています。
世界最大級のストゥーパ(仏塔)
ボロブドゥールの頂上部には、大きな中央ストゥーパがそびえています。そしてその周囲には、釣鐘形のストゥーパが全部で72基。ストゥーパの格子状の隙間からは、中に祀られた仏像の姿が覗けます。
この造りには「仏様が格子から顔を出して見守っている」という意味があるそうです。
特に、円壇から見る日の出は圧巻。朝もやの中、霧が晴れていくとともに、仏塔が神秘的に浮かび上がります。世界中の観光客に人気のスポットです。
アクセス方法
ボロブドゥール遺跡は、インドネシア・ジャワ島の古都ジョグジャカルタ(Yogyakarta)から北西約40kmの距離にあります。アクセス方法としては以下の通りです。
ジョグジャカルタ市内から車で約1時間半。現地のオプショナルツアーやタクシーを使うのが一般的。
ボロブドゥール寺院遺跡群の歴史
この壮麗な遺跡は、8〜9世紀頃、仏教を信仰していたシャイレーンドラ朝の時代に建設されました。特に、ダルマトゥンガ王の治世下で780年頃に建設が始まったとされ、792年にはひとまず完成したと考えられています。その後、サマラトゥンガ王の時代に増築が行われました。
しかし時代が下ると、この地域では仏教よりもヒンドゥー教が広まり、王朝も衰退していきます。ボロブドゥールは人々の記憶から忘れられ、いつしか密林の中に埋もれてしまいました。
19世紀初頭、ラッフルズによって「再発見」されたものの、荒廃は著しく、完全な修復には長い年月がかかりました。
1973年から10年間にわたり、ユネスコとインドネシア政府によって大規模な修復が実施され、現在の姿を取り戻しました。
しかし現在もムラピ山の噴火や地震による被害を受けており、保存と修復は続いています。
世界遺産としての価値

ボロブドゥール寺院遺跡群(Borobudur Temple Compounds)は、1991年にユネスコ世界遺産に登録されました。
登録理由は?
その価値は、以下のような点にあります。
- 古代仏教建築の最高峰とされる石造建築
- レリーフに描かれた仏教神話や文化的表現の豊かさ
- マンダラ(曼荼羅)の構造を表す独自の宇宙観
- 文化的融合:インドのグプタ様式とジャワ島独自の文化が融合
世界遺産登録名は「Borobudur Temple Compounds」であり、ボロブドゥールだけでなく、後述のムンドゥット寺院・パウォン寺院も含まれています。
覚えておきたい英会話フレーズ
ボロブドゥール寺院を訪れたときに使える会話を通して、旅行英語や感動を表現するフレーズを学んでみましょう。
訳)わあ、この寺院、本当に美しくて神秘的ね!
訳)ほんと、何世紀もジャングルの中に埋もれてたなんて信じられないよ。
訳)このレリーフを見て。いろんな物語が刻まれてるわ。
訳)まるで石でできた絵本を読んでるみたいだね。
訳)次は朝日を見に来たいな。
訳)絶対そうだね。きっと魔法みたいな景色だよ。
ボロブドゥール寺院遺跡群の主な構成資産を紹介

ボロブドゥール寺院遺跡群は、以下の3つの主要な寺院から構成されています。
ボロブドゥール寺院
主となる仏教遺跡。全長123m×123m、高さ35m。三界を表す9層構造の巨大仏教建築。
特筆すべきは、回廊に施された2,672面のレリーフと504体の仏像。レリーフには釈迦の生涯、ジャータカ(前世物語)、仏教教義などが美しく描かれ、まるで石の教科書のようです。
パウォン寺院
ボロブドゥールとムンドゥットのほぼ中間地点にある小規模な寺院です。外観は非常にコンパクトながら、そのデザインと装飾は見ごたえがあります。
「Pawon」という名はジャワ語で「台所」を意味するとも言われていますが、実際には浄化の儀式や供物の準備の場所として機能していた可能性があると考えられています。
特に注目すべきは、寺院全体に施された緻密なレリーフ装飾。伝説の鳥「ガルーダ」や神々の彫刻などがあり、グプタ様式やジャワ様式が融合した芸術的な美しさを感じることができます。
内部には現在仏像は残されていませんが、かつては祈りの場として重要な役割を果たしていたと考えられています。
また、パウォン寺院の建材には軽石を多く含む火山岩が使われており、周囲の火山との自然的つながりも感じさせます。
ムンドゥット寺院
ボロブドゥールから東へ約3km。内部に大きな座像仏が祀られており、今も儀式に使われることがあります。
ボロブドゥールの東約3kmに位置し、ボロブドゥールよりも少し早い780年頃に建設されたとされています。つまり、三寺院の中で最も古い寺院です。
この寺院の最大の見どころは、内部に安置された3体の大仏像です。中央に大きく鎮座する釈迦如来坐像(約3m)を中心に、左に観音菩薩、右に文殊菩薩という配置になっています。これらの像は今も地元の仏教徒にとって信仰の対象であり、祭事や儀式も行われています。
特に釈迦如来の表情は慈悲深く、穏やかな微笑を浮かべており、訪れた人々に静かな感動を与えます。また、ムンドゥットの外壁にはさまざまな仏教説話が描かれており、教育的な役割も果たしていたことがうかがえます。
ムンドゥットでは現在でも、仏教の祝日(ワイサック祭など)に儀式や行進が行われるなど、文化的・宗教的な実践の場として活用されています。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
ボロブドゥール寺院遺跡群は、仏教の教え、建築技術、そして悠久の歴史が融合した神聖な場所です。この記事で紹介した英語フレーズを使いながら、ぜひ自分の言葉で感動を伝えてみてください。
訳)旅は、景色を見るだけでなく、世界を理解することでもあるのです。
ぜひ、世界遺産の感動を英語で話してみませんか?
