ドイツの首都ベルリンには、6つの「モダニズム集合住宅(ジードルング)」があります。これらの建物群は、なんと世界遺産に登録されています。
「えっ?団地が世界遺産!?」と思うかもしれませんが、これらは20世紀初頭に建てられた、当時としては革新的なデザインと社会的理念を持った住宅群なのです。機能性と美しさ、そして何よりも「すべての人が快適に暮らせる家を」という理想が詰まっています。
今回の記事では、この世界遺産の背景や特徴、そして現地を訪れたときに使える英会話フレーズも紹介します。
ベルリンのモダニズム集合住宅群とは?

1920〜30年代のドイツは、社会や都市のあり方を見つめ直す大きな転換期でした。産業化に伴い都市に人口が集中するなか、貧しい人々の住宅問題が深刻化していました。そんな中で誕生したのが「モダニズム集合住宅」です。
システムキッチン、採光性の高いバスルーム、緑に囲まれた公園、そしてバルコニー付きの部屋。これらを低家賃で実現し、誰でも尊厳のある生活を送れるように設計されたのです。
当時を代表する建築家たち――ブルーノ・タウト、ヴァルター・グロピウス、ハンス・シャロウンなど――が手掛けたこの集合住宅群は、今なお人気が高く、空室が出ればすぐに埋まるほどです。2008年にはユネスコの文化遺産として世界遺産登録されました。
世界遺産登録された6つのジードルング
以下の6つの住宅群が世界遺産登録の対象です。
- ガルテンシュタット・ファルケンベルク(Gartenstadt Falkenberg)
- ジードルング・シラーパルク(Siedlung Schillerpark)
- グロースジードルング・ブリッツ(Großsiedlung Britz)
- ヴォーンシュタット・カール・レギーン(Wohnstadt Carl Legien)
- ヴァイセ・シュタット(Weiße Stadt)
- グロースジードルング・ジーメンスシュタット(Großsiedlung Siemensstadt)
これらはどれも、合理的な設計と芸術的な美しさを兼ね備えた建築物です。
アクセス方法
これらの集合住宅はベルリン市内に点在しており、地下鉄やバスなどの公共交通機関で訪れることができます。観光ルートから外れていることもあるため、訪れる前にマップアプリなどで確認するのがおすすめです。
歴史背景:住宅は人権?
第一次世界大戦後のドイツ、特に1919年から始まる「ワイマール共和国」時代は、社会改革の時期でした。この時代に、住宅問題は重大な社会課題とされ、「誰もが健康的で快適な住宅に住む権利がある」と考えられるようになります。
そこで登場したのが、「住宅は芸術である」という思想。建築家たちは、芸術的でありながら機能的な住宅を作ろうとしました。
これらのジードルングはその象徴ともいえる存在であり、町づくり、建築、庭園設計などが総合的にデザインされた、都市の「未来のモデル」だったのです。
なぜ世界遺産に?:その価値と影響
ベルリンのモダニズム集合住宅群(Berlin Modernism Housing Estates)は、2008年にユネスコ世界遺産に登録されています。
登録理由は?
ユネスコは次のような理由で世界遺産として登録しました。
- 住宅政策における社会的・文化的革新の象徴である
- 機能性と芸術性を融合した優れた都市計画の例である
- その後の世界の集合住宅デザインに多大な影響を与えた
まさに、「人間らしく生きる空間」を追求した建築遺産といえるでしょう。
UNESCO World Heritage Convention:Berlin Modernism Housing Estates
覚えておきたい英会話フレーズ
ここでは、現地を訪れたときや誰かに紹介したくなるような英会話フレーズをご紹介します。
訳)ここ、すごい!これが公共住宅なんて信じられない!
訳)本当だよね!もう100年近く前に建てられたのに、すごく現代的に見えるよ。
訳)見て、この色づかい!町が明るくなるね。
訳)あれはガルテンシュタット・ファルケンベルクっていうんだよ。「絵具箱の住宅」って呼ばれてるんだ。
訳)バウハウスの建築家が設計したものもあるって知ってた?
訳)そうそう!グロピウスとかタウトとか。住まいの概念を変えた人たちだよね。
訳)私の国にもこんな住宅があったらいいのに。
訳)ほんとだよね。美しさと機能性と社会性が融合してる。
構成資産を詳しく紹介!

6つの「モダニズム集合住宅(ジードルング)」の特徴をそれぞれ紹介します。
ガルテンシュタット・ファルケンベルク
ブルーノ・タウトが1913〜1916年にかけて建設。赤・黄・青・白などのカラフルな壁が特徴で、「絵具箱の住宅」と呼ばれています。明るくて人々に元気を与えるデザインで、人気の高い住宅地です。
ヴァイセ・シュタット
直訳すると「白い街」。名前の通り、白を基調としたモダンな外観で統一されています。敷地内には医療施設や商店もあり、当時としては画期的な「生活インフラ付き団地」でした。1,200戸以上ある大規模住宅です。
ヴォーンシュタット・カール・レギーン
1928~1930年に建設。ブルーノ・タウトによる設計で、清潔感のある整然とした構造と美しい緑の配置が特徴です。パンコウ区に位置し、静かな環境で今も多くの住民が暮らしています。
ジードルング・シラーパルク
こちらもタウトの作品で、1924年~1930年ごろの建築。カラフルなドアが特徴。小規模ながら温かみのあるデザインで人気の住宅群です。
グロースジードルング・ブリッツ
通称「馬蹄住宅(Horseshoe Estate)」。中央に大きな池を囲むようにU字型に建てられており、視覚的にも印象的。ブルーノ・タウト設計、1925~1930年に建設。
グロースジードルング・ジーメンスシュタット
1929~1934年にかけて、ハンス・シャロウンとマルティン・ヴァーグナーが設計。ジーメンス社の社員向けに作られた住宅群で、近代的な工業都市の理想を体現しています。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
ベルリンのモダニズム集合住宅群は、「家とは何か?」という問いに答えようとした人々の努力の結晶です。機能性、美しさ、そして社会的理想――その全てを兼ね備えた住まいは、100年経った今も私たちに多くのことを教えてくれます。
英語でその魅力を伝えられたら、旅の幅はもっと広がるはず。ぜひ、「世界遺産を英語で案内する楽しさ」を体験してみてくださいね!
