「月餅」は中国を代表する伝統的な焼き菓子です。
日本でも菓子店や中華料理店などいろいろなお店でよく見かけますよね。
一見すると、和菓子のように見える「月餅」ですが、生まれは中国、唐の時代にまでさかのぼります。
かつてお供え物でもあった「月餅」がどのような歴史を経て、今のような存在になったのでしょうか。
今回は、中国の伝統菓子「月餅」について、その歴史と長く続いてきた風習のほか、地域によって異なる月餅の種類、英語表現を紹介します。
「月餅」とは
「月餅」は、「春節」「清明節」「端午節」と並ぶ中国の四大伝統行事の一つ、「中秋節」のお供え物として知られる焼き菓子です。
中国語では「ユエピン」、日本語では音読みして「げっぺい」と読みます。
月に見立てた丸く平らな形をしており、小麦粉の皮の中に、小豆やナッツ類を原料とした餡が詰められています。
独特の風味に加えて、ずっしりとした食べ応えが、中華圏だけではなく世界各地の人々から親しまれてきました。
「月餅」の歴史
旧暦8月15日の「中秋節」の時期に食べられている「月餅」は、唐の時代に起源があります。
当時の皇帝・李淵が凱旋した際に、軍隊の勝利を祝うお菓子として贈呈された大きな丸餅を切り分けて、群臣に食べさせたのが始まりといわれています。
宋と元の時代を経た明の時代の書物「西湖遊覧志会」には、「中秋節」で月見をすることや「月餅」を食べることが描かれていました。
清の時代に入ると、8月15日は「中秋」と呼ばれるようになり、「家族の輪」や「家庭円満」の象徴でもある満月を愛でながら月餅を食べ、一族の繁栄と幸福を祈っていました。
「月餅」の風習
「月餅」は、「中秋節」のお供え物として知られる中国の伝統的な焼き菓子です。
唐の時代に始まったとされる「月餅」は、年月とともに中身も見た目もバリエーション豊かに、より精巧な作りになっていきました。
「中秋節」は、別名「団円節(だんえんせつ)」とも呼ばれ、非常におめでたいことを意味します。
中国では、欠けのないまんまるの満月に強い思い入れがあり、1年で最も月が美しいとされる「中秋節」に、月見をしながら月餅を食べることを大切にしているのです。
なお、地域によっては、スイカやカキ、ブドウ、スモモなど、丸い形をした果物や、月餅に似せた焼きパンを用意するところもあります。
日本でも、「中秋の名月」には、お団子を用意して「お月見」するのが伝統ですよね。
「月餅」は、この「お月見」のルーツでもあり、国や慣習は違えど、美しい月を慈しむ気持ちは共通していることがわかりますね。
月餅の種類
日本では、和菓子風の甘い「月餅」がおなじみですが、本場の「月餅」は、味や具材のバリエーションがとても豊富です。
小麦粉や卵、ラード、砂糖を混ぜて作った皮に、小豆やハスの実、ナッツ類などを使った餡を包んだものから、アヒルの卵黄の塩漬けを入れたものまで、多種多様な「月餅」があります。
形も、月を模して作られる丸型、円柱型、ドーム型を基本に、四角形や六角形、花形などさまざまです。
地方別にみた「月餅」
広い中国では、地方によっていろいろな「月餅」があります。
数ある「月餅」の中でも、特に日本で親しまれているのは広州式の月餅です。
- 広州式
広州式は、月餅界のリーダー的存在に君臨する、最も有名な月餅。
ラードの風味が効いた、薄くてしなやかな生地。
小豆餡やハスの実餡などをたっぷり包んだ、なめらかでいて繊細な口当たり。
広東、江西、上海などの地方で生産され、世界中で広く食べられている。
- 北京式
北京と天津、その周辺地域を起源とする、北部でよく食べられている月餅。
皮と餡のバランスがちょうどよく、くどくないさっぱりとした甘み。
口どけの良いほろほろとした生地と風味豊かな餡が絶妙な味わい。
- 蘇州式
蘇州一帯を起源とする月餅。
皮はサクサクしていて柔らかく、軽い食感。
中身は小豆餡や五仁餡が多く、他の月餅より甘味が強い。
- 雲南式
雲南省や貴州省などの雲南地方を起源とする月餅。
餡には雲南産のハムや花を使用し、程よい甘さとしょっぱさを併せ持つ。
- 潮汕式
広東省潮汕地域で伝統的に食べられている月餅。
皮が毛糸玉のように渦を巻いている。
緑豆餡、紫芋餡、卵の黄身や海鮮などで作った餡は脂っこくなく、甘さ控えめ。
しっとりとした柔らかい生地にぎゅっと詰まった餡が味わい深く、食べ応えも抜群なのでとても人気がありますよ。
「月餅」のいろいろな餡
「月餅」の餡は、和菓子に使われる甘い餡から、肉まんや餃子の中身のようなおかずタイプの餡まで、いろいろな餡があります。
- 小豆
小豆を煮詰めて濾し、シロップ(砂糖)を加えた「こしあん」のこと。
やさしい甘みと素朴な味わいで、特に日本人に人気の餡。
- 五仁(うにん)
中華圏で最も伝統的で人気を誇る餡の元祖。
クルミ、松の実、あんずの種、ひまわりの種、落花生、麻の実、ゴマなどを細かく刻み、砂糖を入れて作ったフィリング。
カリカリした食感と香ばしさが魅力。
- 鹹蛋(シェンタン)
茹でたアヒルの卵の黄身を塩漬けしたもの。
鶏卵よりも脂肪分が多く、ねっとりと濃厚な味わい。
ほかにも、ハスの実をつぶしてラードや砂糖と混ぜて作ったハスの実餡や、ナツメ餡、サンザシ餡、紫芋餡、ゴマ餡など、多種多様な餡があります。
お菓子の餡といえば、小豆や芋、栗などと砂糖を煮詰めた甘いペーストと思いがちですが、「月餅」には、肉や野菜で作った甘くない餡で作られたものもとても多いのです。
焼き菓子というよりは、どちらかというと野沢菜や辛味なす、きのこ類が入った「おやき」のイメージに近いかもしれません。
甘いものからしょっぱいものまで、さまざまな餡が詰められた「月餅」は、食事でもおやつでも美味しく食べられるのが魅力ですね。
「月餅」は英語で”moon cake”
「月餅」は、英語で”moon cake”といいます。
「月」の”moon”と、「餅」の”cake”を組み合わせた単語なので、英語が苦手な方でも比較的覚えやすい単語ではないでしょうか。
”moon cake”は辞書で以下のように定義されています。
a round Chinese cake, usually consisting of pastry with a thick, sweet centre, traditionally eaten during the Chinese Mid-Autumn Festival
通常、厚くて中身が甘いペストリーでできた、丸い中国のケーキ、伝統的に中国の中秋節に食べられる
”moon cake”を使った例文
”moon cake”の例文も一緒に確認しておきましょう。
訳)中秋節の間、外観は月餅の広告で飾られました。
訳)白いハスの餡を使った、新しい月餅を売り出しました。
訳)伝統的な月餅は油っぽかったので、油脂の使用量を減らして脂肪分の少ない月餅を作りました。
訳)顧客や親戚がプレゼントとして月餅を贈る習慣により、高級月餅スタイルの需要が高まっています。
まとめ
中国の伝統菓子「月餅」について、歴史や風習、種類とともに英語表現を紹介しました。
「月餅」は、英語で”moon cake”です。
小さくて丸い「月餅」をより美味しくいただくには、ケーキのように切り分けることをおすすめします。
”moon cake”ですので、まさにホールケーキを切り分けるようにカットし、きれいな断面が見えるようにするのがポイントです。
今年の秋は、烏龍茶や中国茶だけでなく、日本茶やブラックコーヒーなど、お好みの飲み物と一緒に、どっしり美味しい「月餅」を堪能してみてはいかがでしょうか。
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