エルサレムから南へ約10km。中東パレスチナの丘陵地にある都市、ベツレヘム。この地は、キリスト教における最も大切な場所のひとつとされています。というのも、ここはイエス・キリストが誕生した場所とされているからです。
その生誕地を囲むように建てられた「聖誕教会」と、そこに至る巡礼路、さらには周辺の修道院や宗教施設群は、2012年にユネスコの世界遺産に登録されました。しかし同時に、政治的・宗教的な対立や保存状態の問題から、「危機にさらされている世界遺産(危機遺産)」にも指定された歴史があります。
本記事では、信仰の地として、そして歴史遺産としての価値を持つ「イエス生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路」について、その成り立ちや見どころを詳しくご紹介します。
イエス生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路とは?

ベツレヘムはエルサレムの南約10km、パレスチナ自治区西岸地区に位置しています。2世紀ごろから、この地にある洞窟が「イエス・キリストの生誕地」として信仰を集めるようになりました。4世紀初頭、ローマ皇帝コンスタンティヌス1世の母・聖ヘレナが巡礼し、洞窟の上に教会を建てさせたのが「聖誕教会」の始まりとされています。
しかし、この最初の教会は6世紀のサマリア人反乱の際に損傷。東ローマ帝国(ビザンティン帝国)の皇帝ユスティニアヌス1世によって再建され、現在の姿の基礎が築かれました。内部には当時のモザイク床も部分的に残っています。
ナザレのイエス(史的イエス)とは?
「イエス・キリスト」は新約聖書に記される宗教的存在でありながら、同時に実在した人物として歴史的研究も進んでいます。彼は紀元前4年頃にベツレヘムで生まれたとされる一方で、生誕地については聖典の中でも一致していません。父ヨセフと母マリアはナザレ出身とされ、誕生地が「ナザレ」だったという説もあります。
約30歳で洗礼者ヨハネから洗礼を受けたイエスは、ガリラヤ地方を中心に神の国の教えを説き、多くの人々を惹きつけました。しかし、その影響力を警戒したユダヤ教指導者やローマ帝国の統治者たちは、イエスを危険視。最終的にエルサレムで十字架にかけられて処刑されました。
彼の布教活動は短期間だったにもかかわらず、後世に多大な影響を与えることになったのです。
アクセス方法
パレスチナ自治区には国際空港がないため、イスラエルのテルアビブにある「ベン・グリオン国際空港」が最寄りの玄関口です。空港からエルサレムまでは電車で約1時間。エルサレムからベツレヘムへは、アラブ系バス(234番など)で約30~60分です。パスポートを持って検問所を通過する必要があります。
世界遺産としての価値
「Birthplace of Jesus: Church of the Nativity and the Pilgrimage Route, Bethlehem(イエス生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路)」は、2012年の第36回世界遺産委員会で登録されました。
同時に保存状態の悪化が深刻だったため、「危機遺産リスト」にも加えられました。教会の屋根の損傷や水漏れ、モザイク画の剥落などが指摘されていました。
その後、国際的な支援のもと修復が進み、2019年には無事に危機遺産リストから除外。建築的・宗教的な価値が認められたことに加え、「巡礼」という行為の象徴としての文化的重要性が評価されました。
登録理由とは?
ユネスコが挙げた主な登録理由は以下の通りです。
- イエス・キリストという世界宗教の起源に直接関わる場所であること(宗教的・精神的意義)
- 初期キリスト教建築の貴重な例であること(6世紀のモザイクや柱が現存)
- 何世紀にもわたり巡礼者が訪れてきた歴史を示すこと(巡礼文化の象徴)
覚えておきたい英会話フレーズ
世界遺産を訪れるとき、現地で感動を伝えたり歴史について語ったりできると、旅の楽しみが広がります。ベツレヘムの聖誕教会を訪れた際の英会話の例を紹介します。
訳)イエス・キリストの生誕地に立ってるなんて信じられないね。
訳)ほんとに感動するね。歴史と信仰に満ちてる場所だよ。
訳)祭壇の下の星を見て。あそこがイエスが生まれた場所なんだね。
訳)6世紀に再建されたって読んだけど、今も残ってるのはすごいよ。
訳)この教会、いろんなキリスト教の宗派が共同で管理してるの気づいた?
訳)うん、宗派の違いがあっても、こんなに神聖な場所を共有してるのってすごいね。
訳)入り口が小さいのは、訪れる人が自然と頭を下げるように設計されたんだって。
訳)謙虚さと敬意の表れだね。
イエス生誕の地:ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路の見どころ

聖誕教会を中心に、歴史的建造物や巡礼路、修道院などが広がるベツレヘムの聖地。信仰と文化が息づく見どころをご紹介します。
ベツレヘムの聖誕教会
聖誕教会は、ゴルゴダの丘(イエスが処刑された場所)から約10kmの距離に位置しています。洞窟の上に建てられた教会には、祭壇の下に「ベツレヘムの星」と呼ばれる銀製の星があり、そこがイエスの誕生地とされています。
入り口は非常に低く設計されており、訪れる人が自然と頭を下げて入るようになっています。これは謙虚さを示す意図があるとされています。
聖カテリーナ教会
聖誕教会に隣接する聖カテリーナ教会は、フランシスコ会が建てたローマ・カトリック教会です。1882年に設立され、現在はモダンな様式に改築されています。毎年12月25日のクリスマスには、ここで行われるミサが世界中にテレビ中継されます。
その他の見どころ
以下の施設も世界遺産に含まれています。
巡礼路(エルサレムから続く道)、鐘楼と段状の庭園(テラス)、ラテン・ギリシャ正教・フランシスコ会・アルメニア教会による修道院や聖堂。
それぞれの宗派によって管理が分かれており、独自の祈りと信仰の文化が息づいています。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路は、人々が長い年月をかけて守ってきた信仰と平和への願いが込められています。
英語を学びながら、こうした歴史的な世界遺産に触れることで、言語とともに文化への理解も深まります。次の旅先では、ぜひ英語を使って、自分の感じたことや学んだことを誰かとシェアしてみてください。
