イラン南西部の平原に忽然と現れる巨大なレンガ造りの建造物―それが「チョガ・ザンビール(Chogha Zanbil)」です。
この遺跡は紀元前13世紀のエラム王国によって建てられた宗教都市の中心であり、現在でも保存状態の良いジッグラト(Ziggurat)として世界的に注目されています。
1979年にイラン初の世界遺産として登録されたこの場所は、中東古代文明の価値を後世に伝える重要な史跡です。
チョガ・ザンビールとは?
- 英語名: Chogha Zanbil
- 所在地: イラン・フーゼスターン州(Khuzestan Province)
- 世界遺産登録年: 1979年(文化遺産)
- 築造年代: 紀元前13世紀頃
- 建造者: エラム王ウンタシュ・ナピリシャ(Untash-Napirisha)
チョガ・ザンビールは、メソポタミア文明の影響を受けつつも独自の宗教と建築を持っていたエラム文明の象徴とされています。
建築的特徴:ジッグラト(Ziggurat)とは?

ジッグラトとは、段々状に積み上げられた神殿型の建物で、シュメールやバビロニアでも見られる様式です。チョガ・ザンビールのジッグラトは、5層からなり、高さは当時で約52メートルに達したとされています(現在は約25メートルが現存)。
- 建物は主に日干しレンガ(mud brick/sun-dried brick)でできており、耐久性を高めるために外壁には焼きレンガ(fired brick)が使われています。神々に近づくための階段状の構造が特徴。
- 最上部は神殿(shrine)として使われていたとされます。
- 煉瓦には楔形文字(cuneiform inscriptions)が刻まれており、王の名や祈りの文が記録されています。
宗教と文化的背景
チョガ・ザンビールは、エラム人の主神ナピリシャ(Napirisha)を祀るための宗教都市でした。王ウンタシュ・ナピリシャは、この都市を「聖なる空間」として設計し、都市全体を三重の城壁(triple wall)で囲み、外部からの侵入を防ぐとともに、神聖性を高めていました。
この神殿都市の構想は、王の権威と神の結びつきを象徴し、後のペルシャ文明にも影響を与えたと考えられています。
英語学習者に役立つ語彙と表現
| 英単語 | 意味 | 英文例 |
|---|---|---|
| ziggurat | 階段状神殿 | The ziggurat is mainly made of mud bricks (sun-dried bricks), with baked bricks used for the outer walls, and stands as a tribute to ancient gods.ジッグラトは主に日干しレンガ(泥レンガ)で作られ、外壁には焼きレンガが使われており、古代の神々へのオマージュとして建てられています。 |
| ancient civilization | 古代文明 | Chogha Zanbil represents the advanced engineering of an ancient civilization.チョガ・ザンビルは古代文明の高度なエンジニアリングを象徴している。 |
| inscription | 刻印、銘文 | Cuneiform inscriptions on the bricks tell the story of the king.レンガに刻まれた楔形文字が王の物語を物語っている。 |
| sacred | 神聖な | The city was built as a sacred space for religious worship.街は宗教的な礼拝のための神聖な空間として建設された。 |
| archaeological site | 考古学的遺跡 | The site is one of the most important archaeological sites in Iran.この遺跡はイランで最も重要な考古学的遺跡のひとつである。 |
世界遺産「チョガ・ザンビール(Chogha Zanbil)」をテーマにした作品
ドキュメンタリー番組
Lost Cities with Albert Lin(ナショナルジオグラフィック)
最新の3Dスキャン技術を使い、古代遺跡の謎に迫るシリーズ。チョガ・ザンビール単体では扱われていないものの、メソポタミア文明やジッグラト文化に関する内容が登場。
英語学習ポイント:
- ゆっくりとした英語と字幕の併用でリスニング強化
- 専門用語(ziggurat, excavation, sacred siteなど)の習得に最適
書籍(Books)
The Art and Architecture of the Ancient Orient by Henri Frankfort
古代オリエント(メソポタミア、エラム、アッシリアなど)の芸術と建築を扱った学術的名著。チョガ・ザンビールにも章を割いて紹介。
英語学習ポイント:
- 高度な読解に挑戦できる中~上級者向け
- 英語で歴史や考古学に触れたい学習者におすすめ
映画・映像作品
Civilizations(BBC/PBS、2018年)
人類の文明と芸術の進化を扱う大型シリーズ。直接的なチョガ・ザンビールの描写はないが、中東古代文明全体の文脈で関連性がある。
英語学習ポイント:
- ナレーション付きでリスニング力アップ
- 芸術や歴史に関する表現(monument, legacy, ritualなど)が豊富
オンライン教材・MOOC
The Ancient World: Rome and the Middle East(Coursera – University of Pennsylvania)
内容:紀元前のローマと中東文化を扱うオンライン講座。チョガ・ザンビールのようなエラム・メソポタミア文明も背景知識として学べる。
英語学習ポイント:
- 英語字幕あり、スクリプト付き
- 学術英語・歴史英語の訓練に最適
チョガ・ザンビールに触れた動画(YouTube)
“Chogha Zanbil – The Elamite Ziggurat of Iran”
ジッグラト構造や宗教的役割、楔形文字などについて紹介しています。
作成者は、歴史系YouTuberや考古学団体。
英語学習ポイント:
- わかりやすいナレーション
- 専門用語と日常表現のバランスが学べる
チョガ・ザンビール近郊のおすすめ観光地
スーサ(Susa / Shush)遺跡群
- 距離:約40km(車で約1時間)
- 概要:かつてのエラム王国の首都であり、アケメネス朝時代にも重要都市だった古代都市遺跡。
- 主な見どころ:
- アルタクセルクセス宮殿跡(Achaemenid palace)
- ダニエルの墓(Tomb of Daniel)
- スーサ考古学博物館(Susa Museum)
ハフト・タッペ(Haft Tappeh)
- 距離:約15km
- 概要:「七つの丘」という意味を持つ広大な遺跡。紀元前15世紀ごろのエラム時代の都市遺構で、チョガ・ザンビールと同時代。
- 特徴:未発掘の部分も多く、考古学的価値が高い。野外博物館のような雰囲気。
アフヴァーズ(Ahvaz)
- 距離:約120km(車で約2.5時間)
- 概要:フーゼスターン州の州都で、カールーン川沿いに発展した大都市。イラン南西部の交通・文化の中心地。
- 見どころ:
- 白い橋(White Bridge)
- カールーン川の夕日
- バザールと地元料理(イラク風影響のあるイラン料理)
シューシュタル歴史的水利施設(Shushtar Historical Hydraulic System)
- 距離:約80km(車で約1.5時間)
- 世界遺産(2009年登録)
- 概要:サーサーン朝時代に建造された水路、ダム、水車などの複合システムで、イラン古代の土木技術を体現する。
- 観光の魅力:石造の橋、水路、階段状の滝が美しく、写真スポットとしても人気。
チョガ・ミシャ(Chogha Mish)
- 距離:約50km
- 概要:メソポタミアより古いとされる紀元前6000年ごろの新石器時代の集落跡。考古学者にとって重要な調査地。
- 特徴:まだ一般観光地として整備されていないが、歴史マニアには魅力的。
まとめ
チョガ・ザンビールは、ただの古代遺跡ではありません。
それは、エラム文明という一時は影を潜めた古代王国の文化・信仰・技術を語りかけてくる「石の歴史書」です。
近辺の観光地も含め、壮大な古代へのロマンが広がる世界遺産なのです。
