スペイン中北部、カスティーリャ・イ・レオン州にあるアビラは、標高1127メートルというスペインで最も高い場所にある県都。岩山の上にそびえるかのようなこの都市は、「聖なるまち」として知られ、堅牢な城壁と数多くの教会が中世の面影を残しています。
その歴史の深さ、美しい建築群、カトリックの聖女・テレサの地として、アビラは1985年にユネスコ世界遺産「アビラ旧市街と市壁外の教会群(Old Town of Ávila with its Extra-Muros Churches)」に登録されました。
今回は、アビラの歴史や見どころを、英語表現を交えながらご紹介します。
アビラ旧市街と市壁外の教会群とは?

アビラの旧市街は、ロマネスクやゴシックなど多様な様式の建築が残る、石畳の美しい街並み。その周囲をぐるりと取り囲む巨大な城壁は、ヨーロッパで最も保存状態が良いものの一つとされます。
さらに、城壁の外側にも、荘厳な教会や修道院が点在しており、アビラ全体が宗教的・歴史的な価値に満ちた都市として世界遺産に認定されています。
アビラの歴史とは?
アビラには、ギリシャ神話の英雄・ヘラクレスが築いたという伝承がありますが、実際には紀元前6〜5世紀ごろ、ケルト系のベトン族が住んでいたことが知られています。
その後ローマ帝国に支配され、「アベラ」としてローマ植民都市となりました。キリスト教の伝来も早く、使徒ペトロの弟子たちによって布教が行われたともいわれます。
714年にはイスラム勢力に支配されましたが、1085年にカスティーリャ王アルフォンソ6世が奪還。その娘婿ラモン・デ・ボルゴーニャの命で現在のような堅牢な城壁が建設されました。
16世紀には聖女テレサによる修道院改革運動が起こり、アビラは「聖人たちのまち」として新たな宗教的中心地となったのです。
アビラの聖テレサ
アビラで1515年に生まれた聖テレサ(Teresa de Jesús)は、カトリック教会・聖公会・ルーテル教会で聖人とされる女性修道者であり、神秘思想家としても知られます。
彼女はカルメル会修道院の改革に取り組み、禁欲的で祈りに満ちた生活を実践することで、多くの修道院を設立しました。
そんな聖テレサの名前を冠した銘菓「イェマス・デ・サンタ・テレサ(Yemas de Santa Teresa)」も名物で、卵黄と砂糖を使ったまろやかで甘い一口サイズのお菓子です。
アクセス方法
アビラへは、スペインの首都マドリードから日帰り旅行も可能です。
鉄道の場合、チャマルティン駅またはアトーチャ駅から約1時間30分。1日に20本以上運行しています。バスの場合は、南バスターミナルから約1時間30分。1時間半に1本程度の間隔で運行しています。アビラ駅から旧市街までは徒歩10分前後とアクセスも良好です。
世界遺産としての価値

1985年、アビラ旧市街と市壁外の教会群は、Old Town of Ávila with its Extra-Muros Churchesの名称でユネスコ世界遺産に登録されました。
登録理由は?
ユネスコの登録基準のうち、主に以下が評価されています。
- 中世の都市防衛建築の傑作:城壁がほぼ完全な形で現存。城壁の内外に、宗教建築・世俗建築が高密度に残されており、中世都市の姿がよく保たれている。
- レコンキスタ後の再建政策を示す都市モデル:防衛都市の代表例であり、レコンキスタ後の都市発展の歴史的証拠として重要な位置づけである。
- 宗教的・精神的価値と建築の融合:聖テレサ(アビラのテレサ)ゆかりの地であり、城壁外に点在する教会や修道院群が、宗教的都市景観を形成している。
UNESCO World Heritage Convention:Old Town of Ávila with its Extra-Muros Churches
覚えておきたい英会話フレーズ
アビラの歴史や美しい城壁、聖テレサのゆかりの地について、旅先での会話に使える英語表現を紹介します。感動を英語で伝えてみましょう!
訳)聖テレサがこのアビラで生まれたって知ってた?
訳)へえ、それで教会や修道院がたくさんあるんだね!
訳)大聖堂が城壁とつながってるって、すごくない?
訳)うん、建築と防衛の融合だね。
訳)あとで「サンタ・テレサの黄身」食べてみようよ!
訳)甘くて神聖なスイーツだね!
おすすめの見どころ

中世の面影を色濃く残すアビラには、美しい城壁や大聖堂、聖テレサゆかりの修道院など、見逃せないスポットがたくさんあります。
アビラの城壁
全長2.5km、高さ約12mの城壁は87の塔と9つの門を持ち、11世紀末に建設が始まりました。茶色い花崗岩で築かれ、光の加減でピンクや黄色にも見える美しい石造建築です。
そのうち1700メートルは実際に歩くことができ、昼も夜も異なる表情を見せてくれます。特にライトアップされた夜の城壁は幻想的です。
訳)アビラの城壁には、1700メートル歩けるところがあります。
アビラ大聖堂
スペイン最古のゴシック大聖堂のひとつで、12世紀初頭から14世紀にかけて建設。ゴシックとロマネスクの融合が見られる点も興味深いです。
特徴的なのは、後陣の「シモロ」と呼ばれる大きな円塔が城壁と一体化している点。防衛と信仰の両立を体現しています。
サン・ビセンテ聖堂
4世紀に殉教した聖ビセンテを祀るこの聖堂は、ロマネスク建築の傑作。
サンタ・テレサ修道院
聖テレサの生家跡に建てられたバロック様式の修道院。彼女が生まれた部屋は今も保存され、巡礼者にとっては欠かせない聖地です。
訳)サンタ・テレサ修道院は、聖テレサの生家跡に建てられた修道院です。
エンカルナシオン修道院とサン・ホセ修道院
聖テレサが修道女として長年過ごしたエンカルナシオン修道院では、聖テレサが神秘的な体験をしたとされる場所が残ります。
また、サン・ホセ修道院は彼女の改革活動の出発点。質素で静かな雰囲気の中に、深い信仰の香りが感じられます。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
アビラは、美しい城壁、信仰の歴史、聖女テレサの物語が折り重なる場所。中世の香りと静けさに包まれたこの都市を歩けば、英語で世界を語るきっかけも自然と生まれるでしょう。
次の旅では、英語と一緒に世界遺産をもっと楽しんでみませんか?
