スコットランド・サウス・ラナークシャーにある小さな村、ニュー・ラナーク(New Lanark)
かつては産業の中心地でしたが、今もおよそ200人の人々が暮らしています。修復された住宅に生活が息づき、同時に世界中から観光客が訪れる世界遺産でもあります。石造りの古い建物が立ち並ぶ風景は、物語の世界のようです。
本記事では、ニュー・ラナークの歴史や魅力を英語を交えながら紹介します。

ニュー・ラナークとは?

ニュー・ラナークとは?

ニュー・ラナークは18世紀後半に築かれた産業集落で、当時は綿紡績工場を中心に発展しました。
特に有名なのは、社会改革者ロバート・オウエン(Robert Owen)の存在です。当時のイギリスでは、工場労働は過酷で労働者の健康や安全は後回しにされがちでした。そんな中でオウエンは、経済的な成功だけでなく労働者が暮らしやすい環境をつくろうとしたのです。この取り組みが世界的に注目され、ニュー・ラナークは「社会改革の象徴」となりました。

ニュー・ラナークの歴史

始まりは1786年。実業家デヴィッド・デイル(David Dale)が、この地に綿紡績工場を建設しました。動力源は川の水流です。クライド川の水力を利用することで、効率的に糸を紡ぐことができたのです。

デイルは労働者向けの住宅を建て、村としての基盤を整えました。やがて娘婿のロバート・オウエンが経営に参加し、村はさらに発展します。
オウエンは工場の効率化を進めながらも、労働者の教育や福祉を重視しました。1816年にはイギリス初となる幼児学校(infant school)を設立し、子どもたちの教育を大切にしました。
その姿勢から、ニュー・ラナークは「ユートピア的な社会主義の実験場」と呼ばれるようになりました。

Wikipedia-ニュー・ラナーク

ユートピアの理想

ニュー・ラナークの住宅は「ロウ(Row)」と呼ばれる集合住宅で、当時としては質の高いものでした。さらに学校や保育園、教会、商店、訓練施設なども整えられ、村全体がひとつのコミュニティとして機能していました。

オウエンは「健全な成長には生活環境が重要である」との考えのもと、教育の機会を提供し社会の幸福を追求しました。オウエンの考え方は、のちの社会改革や教育思想にも大きな影響を与えます。
19世紀のある時期、村にはおよそ2500人が暮らしていました。その多くは救貧院(プアハウス)の出身者で、オウエンは彼らの生活改善に力を注ぎ、犯罪・貧困・苦悩のない「ユートピア社会主義」の実現を目指す場として整備しました。

やがてオウエンは共同経営者との意見の違いから1824年に村を離れますが、ニュー・ラナークはその後も長く産業活動を続けました。工場は1968年まで稼働を続け、20世紀後半になると保存活動が始まり、2001年にユネスコ世界遺産に登録されました。

世界遺産としての価値

ニュー・ラナーク(New Lanark)は2001年にユネスコの世界文化遺産に登録されました。

登録の理由は?

評価されたポイントは主に次のような点です。

  • 産業革命期の労働環境や生活環境を示す貴重な遺構であること
  • 社会改革者ロバート・オウエンの理念を実際の形として残していること
  • 産業と人間の福祉を両立させた先駆的な事例であること

UNESCO World Heritage Convention:New Lanark

覚えておきたい英語

この記事に登場した英単語から、旅行や学習に役立つものをピックアップします。

mill (工場)
The cotton mill was built in the 18th century.
その綿工場は18世紀に建てられました。

welfare (福祉)
Owen improved the workers’ welfare.
オーウェンは労働者の福祉を改善しました。

utopia ( 理想郷、ユートピア)
New Lanark was seen as a kind of utopia.
ニュー・ラナークは一種のユートピアと見なされました。

community (共同体、地域社会)
The village formed a unique community.
その村は独自の共同体を形成していました。

heritage (遺産)
New Lanark is a UNESCO World Heritage Site.
ニュー・ラナークはユネスコ世界遺産です。

旅先で使える英会話フレーズ

ニュー・ラナークを訪れた際に使える英会話を紹介します。ぜひ使ってみてください。

Aさん
I read that Robert Owen built the first infant school here.
訳)ロバート・オウエンが、ここに初めて幼児学校をつくったんだって読んだよ。
Bさん
That’s right. He cared about education and welfare, not only business.
訳)その通り。彼はビジネスだけじゃなく、教育や福祉を大事にしたんだね。
Aさん
The school is my favorite spot. It shows how important education was.
訳)この学校が一番気に入ったわ。教育がどれほど大切にされていたかがわかるね。
Bさん
I agree. It must have been a new idea at that time.
訳)そうだね。当時としてはすごく新しい考え方だったんだろうね。
Aさん
I’m glad we visited. It’s more meaningful than I expected.
訳)ここに来てよかったわ。思っていた以上に意味のある場所だね。
Bさん
Me too. This trip is not only sightseeing—it’s learning history.
訳)僕も同じ気持ち。観光だけではなく、歴史を学ぶ旅だね。

おすすめ見どころ

おすすめ見どころ

ニュー・ラナークでは、当時の生活を感じられる建物が数多く残っています。おすすめスポットを紹介します。

ブラックスフィールド・ロウ(Braxfield Row)

1790年頃に建てられた集合住宅。今も当時の生活空間を思い起こさせます。

ロング・ロウ(Long Row)

14軒が並ぶ3階建てのブロック住宅。持ち家と借家が混在していました。

ダブル・ロウ(Double Row)

背中合わせのアパートメントが並ぶユニークな建物。川沿いに面しています。

人格形成学院(Institute for the Formation of Character)

1816年に建てられた学校。今は観光や商業施設として利用されています。

エンジン・ハウス(Engine House)

蒸気機関が復元されており、産業革命の力を体感できます。

学校(School)

1817年に建てられた建物。現在は博物館となっており、当時の教育の様子を知ることができます。

ニュー・ラナーク教会(New Lanark church

ゴシック・リバイバル様式のシンプルな教会。現在はホールとして使用されています。

工場(第一~第四)(Mill)

紡績工場。第3工場は数多くのジェニー紡績機を擁していたことから「ジェニーズ・ハウス」と呼ばれています。

おわりに:英語で世界遺産を旅しよう!

ニュー・ラナークは、産業革命の歴史を学べるだけでなく、人間の暮らしをよりよくしようとした人たちの理想が感じられる場所です。

旅行先で世界遺産を訪れるとき、英語で「感動を共有する表現」ができると楽しみ方も広がります。次の旅では、ぜひ学んだ英単語やフレーズを口にしてみてください。