日本語の「削る」という言葉は、一見シンプルに見えて実は幅広い意味を持っています。
鉛筆を削る、壁の表面を削る、虫歯を削る、石段が削れるなど、同じ「削る」でも英語では状況ごとに使う動詞が変わるため、ひとつの単語に頼ることはできません。
正しく表現するには「対象・方法・目的」に応じた単語を選ぶ必要があります。
そこで今回は、「削る」に関連する代表的な英語表現を5つの場面に分けて解説し、さらに文法の使い方やニュアンスの違い、誤用しやすいポイントまで紹介します。
「やすり」は英語で “file”

「やすり」を表す英語は file です。名詞で「やすり」という道具そのものを指し、動詞では「やすりで削る」という行為を表します。
ポイント
- 名詞と動詞の両方で使える:a file(やすり)、to file(やすりで削る)
- down と組み合わせやすい:file down で「削って小さくする・形を整える」
- 進行形で多用:I’m filing the edge. のように、作業中の動作を表す場面が多い
File は細かく調整するイメージがあります。大きく削り取るのではなく、仕上げや整えるときに多く使われます。そのため DIY や工芸だけでなく、美容の場面でもよく登場します。
初心者が cut を使って「やすりで削る」と表現することがありますが、cut は「切る」や「刃物で切断する」ニュアンスで、やすりの動きとは異なります。
木の粗い縁をやすりで削った。
彼女は爪を丁寧にやすりで削った。
「爪やすり」は nail file。動詞で「爪を削る」は file your nails といいます。日常会話でもよく登場する表現です。
「英ナビ」
「表面を削る」は英語で “scrape / grind / sand”
表面を削る行為は状況によって英語が変わります。scrape / grind / sand は代表的な動詞で、それぞれ微妙にニュアンスが違います。
ポイント
- scrape:よく scrape off の形で使い、「こすり取る」意味になる。対象を削ぎ落とす場合に便利。
- grind:機械的に削るときによく使われ、進行形(is grinding)で表す場面が多い。名詞 grinder は「削る機械」
- sand:必ず他動詞で「~を sand する」と対象を取る。サンドペーパーと一緒に登場することが多い。
scrape は「削り落とす」「削ぎ取る」に近く、不要なものを取り除く場面で使われます。grind は摩擦や回転運動で「削り減らす」ときに「粉にする」意味も含みます。sand は表面を滑らかにするために細かく削る、仕上げ作業に近いニュアンスです。
壁からペンキを削ぎ落とした。
その機械は金属の表面を削っている。
You need to sand the door before painting.
塗装する前にドアをやすりがけする必要がある。
scratch と混同しがちですが、scratch は「傷をつける・引っかく」で、物を剥がすニュアンスはありません。
「表面を削る」を直訳して cut the surface とするのも不自然です。cut は切断のニュアンスで、「少し削る」には使えません。
「英ナビ」
「歯を削る」は英語で “drill a tooth / grind a tooth”
歯医者の場面で「歯を削る」というときは drill と grind がよく使われます。どちらも歯科の専門用語として定着しています。
ポイント
- drill a tooth:虫歯の治療でドリルを使って削る。能動態・受動態どちらも自然に使える。
- grind a tooth:歯を削って整える。クラウン装着や矯正準備でよく登場する。grind down a tooth という言い方も多い。
drill は「器具を使ってガリガリ削る」イメージです。日本語でも「歯医者のドリル」とよく言われますね。
grind は「表面を削ってなめらかにする」イメージで細かい調整向きです。医療の文脈では「誰が削るか」より「歯がどう処置されるか」を表すため、受動態で出てくることが多いです。
虫歯を取るために歯を削った。
クラウンに合うように歯を少し削られた。
cut my tooth のように cut を使ってしまう人がいますが、歯を切るわけではないので不自然になってしまいます。
「英ナビ」
「削れる」は英語で “wear down / erode / be shaved off”

「長年使って削れていく」「自然の力で削られる」といった受け身のニュアンスでは、wear down, erode, be shaved off が適切です。
ポイント
- wear down:摩耗による消耗。進行形や受動態でよく使う。
- erode:自然現象に使うことが多く、be eroded by〜 の形が定番。
- be shaved off:表面が削り取られるイメージ。
wear down は「日常の使用で徐々に削れる」という意味合いで、靴底や階段など人為的な摩耗に合う表現です。erode は「自然の力で削られる」という意味で、波や風による侵食を指します。
be shaved off は「薄い層が削り落とされる」感覚で、技術的・工業的な文脈でも出てきます。
古い石段は年月とともに削られた。
海岸線は波で浸食されている。
工程中に金属の薄い層が削られた。
erode を「鉛筆が削れる」など人工的な対象に使うのは不自然です。自然作用に限定して使いましょう。
「英ナビ」
「鉛筆を削る」は英語で “sharpen”
鉛筆を削る動作は sharpen で表現します。とても頻出でシンプルな単語ですが、文法面では注意が必要です。
ポイント
- 他動詞が基本:sharpen a pencil が標準的な形。対象を必ず取る。
- 受動態:The pencil was sharpened with a knife. のように「削られる」を表現可能。
- 名詞はsharpener:鉛筆削りは pencil sharpener。米英どちらでも通じる一般的な表現。
sharpen は鉛筆に限らず、包丁や刃物、さらには「感覚やスキルを磨く」比喩的な意味でも使えます。「削る」というより「尖らせる・鋭くする」ことに重点があるのが特徴です。
make sharp と言ってしまう学習者が多いですが、自然な英語では sharpen を使います。
試験の前に鉛筆を削った。
このナイフは研ぐ必要がある。
彼女は練習を通して英語力を磨いた。
「英ナビ」
まとめ
「削る」は日本語では一言で表現できますが、英語では対象や方法ごとに適切な動詞を選ぶ必要があります。誤用しやすい「cut」「scratch」などとの違いも押さえておくと、より正確に表現できます。
例文を覚えるだけでなく、「どんな文法パターンでよく使われるか」「どんな場面で自然か」を意識することで、実際の会話やライティングで生きた英語を使えるようになるでしょう。


