オンライン英会話講師をしていて、時制の中でも現在完了を主とした完了形に苦手意識を持っている人が多いように感じられます。確かに現在完了を使わなくても、基本的な意思疎通はできますが、よりナチュラルな日常会話には現在完了の表現が欠かせません。
しかし、どういったときに現在完了の表現を用いるのかイメージがわきにくい方も多いと思います。そこで今回は、そもそも現在完了とは何か、現在完了の3つの用法についておさらいをした上で、どういった場面/時に現在完了を使うのかイメージをつかんでもらうため、日常会話によく出てくる現在完了のフレーズを、使うシチュエーション別にご紹介します。
現在完了形とは?
現在完了形は、日本語にはない表現であり、英語を勉強する中高生も、現在完了形がわからず挫折してしまう人が多いと思います。
そもそも、現在完了形とは何かを整理してみましょう。
文法的には、形式は「have/has + 動詞の過去分詞」と習いますね。
現在完了のイメージ
英語の「現在完了形」のイメージは、「過去」の出来事が「今」につながっている感覚です。日本語では「現在完了形」と「現在」という言葉が入っているため、なかなかイメージがわきにくいのですが、「過去」の時点のことではなく、「現在」につながっているという感覚を持つことができれば、現在形を理解しやすくなるでしょう。
過去形との違い
次に、現在完了形と過去形のちがいについて説明します。
過去形は、あくまで過去のある時点の状態や動作を説明します。現在も、その状態であるかどうかについては触れていません。一方、現在完了形は過去から現在までつながっているため、時間に幅がある状態や動作を説明しています。
過去形は「時間的な点」を表し、現在完了形は「時間的な面」を表しているというイメージとなります。
たとえば、下記の英文から違いを確認してみてください。
I lost my wallet yesterday.「私は、昨日財布をなくしました」
I have lost my wallet.「私は、財布をなくしてしまいました」
上の文章は、過去形で、「昨日財布をなくした」ということを言っていますが、その後財布が見つかったのか、今も見つかっていないのかについては特に触れていません。
一方、下の文章は現在完了形で、財布をなくしてしまって、今現在も見つかっていない(なくしているままの状態である)ことを表現しています。
現在完了形では、「yesterday」や「last year」など、過去のある時点を示す副詞とともに表現することは基本的にはありません。
過去形は「点」で捉えて、「現在完了形」は「面」で捉えるといいんだね。
現在完了形の3つの用法
現在完了形には主に3つの用法があります。継続用法、経験用法、完了用法です。一つずつ見ていきたいと思います。
継続「ずっと~である」
継続用法は、過去から現在まで状態や動作が続いていることを説明するときに使います。
私は昨日からずっと忙しいです
忙しい状態が、昨日から今まで続いているということです。
継続用法では、for (〜の間)、since (〜から)など、期間を表す副詞がよく一緒に使われます。
経験「~したことがある」
経験用法は、過去に経験した動作や状態を表現する場合に使います。
私はニューヨークに3回行ったことがあります
最初に、現在完了形のイメージは、「過去」の出来事が「今」につながっている感覚だと話しましたが、ニューヨークに3回行ったのは過去の話であって、なぜこれが「今」につながっているのかと疑問に思う方もいるでしょう。それについて、説明したいと思います。
ニューヨークに3回行ったのは、たしかに過去の話ですが、この人にとって「3回ニューヨークに行った」という「経験」や「思い出」は、今も持っていると考えられます。
「経験」や「思い出」は、過去の一時点ではなく、過去から今につながる「面」として捉えることができます。そう考えると、現在完了形のイメージがわきやすくなるのではないでしょうか。
経験用法には、once、twice、three timesなど、回数を表す単語がよく一緒に使われます。
完了「~したところ」
3つ目の用法である完了用法は、過去にしていた動作や状態が今ちょうど終わったことを表現するときに使います。
彼女は宿題を終えたところです
宿題をするという動作を、今ちょうど終えたところ(完了した)だということです。すなわち、宿題を終えた状態が今も続いていると捉えることができます。
完了用法では、just (ちょうど)、yet (もう) 、already (すでに)など、状態や動作が終わっていることを強調する副詞が一緒に使われることが多いです。
シチュエーション別日常会話の現在完了形フレーズ
では、実際に日常会話で現在完了形を使うシーンをシチュエーション別に紹介していきます。
新しい出来事・情報を伝えるとき
日常生活の中で何か新しい出来事や情報について、一番初めに触れる際に現在完了を用いることが多いです。特に新しい情報の宝庫であるニュースでは、ヘッドラインを見ていただくと現在完了が多用されていることに気が付くと思います。ここでは日常会話で使いそうなフレーズに焦点を当ててご紹介します。
足首を痛めてしまいました
新しい都市へ引っ越しました
試験に受かりました
Point
上の例文の出来事は、過去形で表すこともできますが、伝えたい内容の焦点が少し変わってきます。たとえば一番初めの例文を過去形で表す場合「I hurt my ankle yesterday. (昨日足首を痛めてしまいました) 」となります。この様に過去形で表す時は、通常「いつ」それが起きたのかと共に表現します。一方、現在完了形では、その出来事の「結果」に注目しており、「いつ」について述べなくても、新しい情報として「こういう事がありました」と表現することができます。こういった新しい出来事・情報を伝える現在完了は、最近の出来事に用いることが多いですが、受け手にとって新しい情報の場合、その出来事が少し前の過去でも現在完了で表すことができます。
Just, already and yetを用いるとき
次に、「just, already, yet」といった表現は通常現在完了と共に使われることが多いです。日常会話でもよく使うフレーズが多いので、フレーズと共にjust/already/yetの意味合いを確認していきましょう。
Just:「今ちょうど/ほんの少し前に~しました」
今ちょうど空港に着きました
ちょうど夕食を食べました
ちょうど仕事を終えました
Already: 「予想していたよりも早く=もう既に~しました」
その映画は既に見ました
彼女はもう出かけました
もう既にやりました
Yet: *今(この瞬間)までに、「質問文:もう~しましたか?」「否定文:まだ~していません」
もう食べましたか?
まだお昼を食べていません
もう雨は止みましたか?
Point
just/already/yetを用いた現在完了では、出来事の結果と共にそれぞれの持つ「ちょうど/既に/もう・まだ」といったニュアンスを表現したい場合に用います。上のフレーズは多くが、1の「新しい出来事・情報を伝える現在完了」と同様、「何時」と共に過去形で表すことができます(過去形でも「何時」がなく現在完了形と同じ意味合いで使われることもあります)。また、just/alreadyはhaveやhasの後に来ることが多く、yetは文の終わりに来るので位置に注意しましょう。
過去から現在までの期間にまたがる出来事について語るとき
過去から現在までの期間にまたがる出来事について語る際も現在完了形を用います。たとえば現在パリに住んでいる場合は、現在形で「I live in Paris」と言うことができます。そして去年パリへ行きましたと言う場合は、過去形で「I went to Paris last year」となります。では、パリに何度か行ったことがあると言いたい場合はどうでしょうか。過去のある時点(初めてパリに行った時)から現在までに何度か行ったことがあるという内容を語るには、現在完了を使って「I have been to Paris a few times」とする必要があります。(*been (to)=visited )では、この他の例文フレーズも見ていきましょう。
この映画を見たことはありますか?
私はニューヨークへ行ったことがありません。あなたは行ったことがありますか?
この店のパンケーキを試したこと(食べたこと)はありますか?とても美味しいですよ
過去から現在までの期間にまたがる出来事について語る際の現在完了では、〈recently / since when / today /this week / this year 〉などの期間を表す言葉を加えることで、過去から現在にまたがる期間を限定することができます。たとえば、今日はコーヒーを飲んでいないと言いたい場合は、「I haven’t had a (cup of ) coffee today」となります。「today」があることにより、今までコーヒーを飲んだことがないと言っているのではなく、今日が始まって(過去)から現在までの期間に限定して飲んでいないという意味になります。このように、現在完了は「今までに」以外にも、「最近は~」「今週は~」「去年から~」といった期間を限定した過去から現在にまたがる出来事についても語ることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。現在完了形のイメージ、現在完了形と過去形との違い、現在完了の3つの用法、そして日常会話によく出てくる完了形フレーズをシチュエーション別にご紹介しました。現在完了形は伝えたい物事が「いつ」起きたのかよりも、「起きた物事自体」または「結果」に焦点を当てて伝えたい場合に多く用いられます。今回ご紹介したフレーズの中で、自分もよくこの表現をするなといったものがあれば、ぜひ例文を自作して、実際に使ってみてください。
Happy Learning English!