「英語で何て言う?」コーナー、今回は「船」についてです。

2020年の東京五輪大会まで、あと2年あまりになりました。国内外から集まってくる大会関係者や観客は1,000万人と予測され、首都圏では宿泊所の確保が課題となっています。そんななか、東京・神奈川・千葉の5つの埠頭で、クルーズ船をホテルとして使う「ホテルシップ(hotelship)」の検討がすすめられています。

実は、この「ホテルシップ」は1964年の東京オリンピックでも採用されたり、近年ではバンクーバー、ロンドン、ソチ、リオデジャネイロの各大会でも活躍したということです。

ところで、このような大型クルーズ船は、英語でなんと言えばいいのでしょう。

考えてみれば、日本語でも「ふね」を表す漢字は「舟」・「船」・「舶」などいろいろあります。

英語ではどういう違いがあるのでしょうか。

早速、考えてみましょう!

大きさや運行する場所で変わる「船」

英語で「船」というと、「ship」という単語がすぐに浮かんできます。「boat」が浮かぶ方もいらっしゃるでしょう。この2つの言葉の違いは何でしょうか。

「ship」は最も一般的な言葉ですが、ふつう大型の汽船・帆船で、海や湖、大きな川を航行できるものをさします。3〜4本マストのシップ型帆船が語源と言われています。

オール、小型のエンジンで動く小さめの船、特殊な用途の小型汽船をさすのが「boat」。とはいっても、口語では「ship」と同じように使われることも多いといわれています。日本語の「ボート」は、英語では「rowboat」がふつうの言い方のようです。

では、さまざまな船についてチェックしていきましょう。

遊覧船                      「a pleasure boat

客船                          「a passenger ship

貨物船                      「a cargo ship

クルーズ船              「a cruise ship

フェリー                  「a ferry

定期船                      「a liner

タンカー                  「a tanker

ヨット                      「a sailboat

レース用の小型ヨットyacht(a schooner)

ホバークラフト   「a hovercraft

モーターボート   「a motorboat

トロール漁船    「a trawler

日本語の「ふね」を表す漢字で一般的に使われているのは、「船」・「舶」・「舟」・「艇」・「艦」といったところです。「船」は、大型・小型の船に使われますが、「舶」は大型の船だけに使われています。また、「舟」はごく小さな船に使われ、「艇」は「〜艇」のように他の言葉をつけて使われることが多いです。「艦」は潜水艦のように、軍関係の船に使われています。

船の歴史は古く、用途に合わせて形もさまざまで、材質や動力も進化してきました。英語でも日本語でも船の言葉は多くあり、その奥深さに驚かされます。

船のはじまりと、航海が世界にもたらしたもの

船の歴史は有史以前から始まり、川や海を渡るときや釣りをするために使っていたとみられる先史時代の丸木舟(dugout canoe、巨木をくりぬいた舟)が、日本やスコットランドで見つかっています。

紀元前には、エジプトをはじめ世界の各地で川で使われたと思われる帆走船(sailing boat)がみられ、日本では縄文時代に外洋での航海が可能な大型の丸木舟が見つかっています。やがて、骨組みが丈夫な船が作られ始めると、世界中で交易が広がっていきました。

16世紀になって大航海時代(Age of Discovery)に入ると、交易はますます発展します。新大陸を発見し、トウモロコシやトウガラシ、ジャガイモ、トマト、カボチャなどアメリカ原産の食材が広まっていきます。また、小麦やニンジン、キャベツなどが新大陸にもたらされました。

ちなみに、カレーやキムチはトウガラシで様変わりした伝統料理といわれています。それまでは、インドでは胡椒、朝鮮半島では山椒が使われていたようです。

その後、船にはさまざまな改良が加えられました。動力はかい(oar/paddle)から帆(sail)、蒸気機関(steam engine)が使われ、材料も木(wood)から鉄(iron)、鋼鉄(steel)と変化をとげ、現在に至っています。

英語圏で「船」を「she」と呼ぶのはなぜ?

ドイツ語やフランス語を勉強した経験のある方は、男性名詞・女性名詞などに悩まされたのではないでしょうか。英語には、ドイツ語やフランス語のようなはっきりした文法上の違いはありませんが、英語の「ship」に関しては女性名詞のような扱いをされることが多いです。

You see a large ship at anchor, her name is “the Princess Mary”.

「大きな船が停まっていますが、名前はプリンセス・メアリーと言います」

なぜ船が「she」で表されるのかということについては諸説あり、今のところ文法上の習慣と思っておくほかないのですが、「she」ではなく、「it」を使っても問題はないようです。むしろ、「it」を使うほうが時代に合っているかもしれませんね。

いずれにしても、頻繁に主語を省略する日本語とは違い、主語をつける英語ならではの表現です。映画好きの方は、「タイタニック(Titanic)」や「パイレーツ・オブ・カリビアン(Pirates of Caribbean)」などのセリフを注意して聞いてみると面白いかもしれません。

※ちなみに、ここでいう男性名詞・女性名詞というのは、単なる用法の違いを表すもので、その言葉が「男性(女性)らしい」といった区別ではありません。

船に関する使える英語

最後に、船についての英語表現をいくつかご紹介します。

「get on (board) a ship」船に乗る

「get off a ship」船を降りる

船をはじめバス・電車・飛行機などの大型の乗り物や自転車・バイク・馬など、またがる乗り物には「get on」、「get off」を使います。

タクシーや車、軽飛行機など小型の乗り物については、乗るときは「get in(into)」、降りる時は「get out (get out of)」を使うようです。

「get seasick」船に酔う

He easily gets seasick.

「彼は船に弱い」

その他

We were on the ship for one and a half days.

「1日半、船に乗っていました」

I went to the island by ship.

「船で島に行きました」

まとめ

いかがでしたか?

2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、ボート(rowing)やカヌー(canoe)、セーリング(sailing)といった競技が開催されます。(※セーリングはオリンピックのみ)

スポーツの船は競技用に進化したものなので、一般の船とはまた違った面白さを味わえそうですね。

では最後に問題です。日本語の「乗りかかった船だ」は、英語で何と言えば良いでしょうか?

正解例は…

In for a penny, in for a pound.

「ペニーを手に入れる仕事を始めたからには、ポンドも手に入れよ」という意味から、「やるとなったら、最後までやりなさい」という時に使われます。おもに、イギリスで使われることわざです。

思わず、「ship」や「boat」を使おうとしませんでしたか?

では、次回をお楽しみに!

参照:アンカー 大人のための英語学習辞典 2016年12年20日初版第1刷発行 (株式会社学研プラス)