近年、ビジネスシーンでよく横文字を耳にするようになりました。アサイン、アジェンダ、エビデンス、スキーム…数えればきりがないほど多くのビジネス用語が使われていますよね。今回はその中でも「オーソライズ」というビジネス用語についてみていきます。
ビジネスシーンで使う「オーソライズ」は実際の英語と同じ意味で使われているのでしょうか?
“authorize”の意味・使い方
「オーソライズ」は英語で”authorize”と表記し、実際の会話ではビジネスシーンに限らずさまざまな場面で使われる単語です。早速言葉の意味と使い方を確認してみましょう。
権限を与える、許可する
もっとも一般的な意味は「権限を与える、許可する」です。ケンブリッジ英英辞典では次のように説明されています。
to give official permission for something to happen, or to give someone official permission to do something
ある事柄が起こることを正式に許可する、または相手にある行動に対して正式な許可を与える
ここで注目してほしいのが、”official permission(正式な許可)”であるという点です。ただ単に許可するのではなく、上の立場の者から下の者に対して正式に(場合によっては手続きに則って)与えられる権限のことを言います。
He is authorized to access the customer database.
訳)彼は顧客データベースにアクセスする権限を持っています。
根拠を与える、正当性を認める
あまり一般的ではありませんが、「根拠を与える、正当性を認める」と言った意味もあります。ビジネスシーンであれば、「正当性を認められた」という意味で「オーソライズされた商品」という使い方ができるかもしれません。
実際、医学の分野では、「オーソライズド・ジェネリック(認可されたジェネリック医薬品)」といった言葉も使われ始めています。
Aさん
The government authorized the medicine for the new infection.
訳)政府は新たな感染症に対してその薬の正当性を認めました。
「オーソライズ」は”authorize”と同じ意味で使われているのか?
結論から言うと「オーソライズ」は実際の英語とほぼ同じ意味で使われているようです。しかし、その使い方は全く異なります。”authorize”は動詞ですが、ビジネスシーンで「オーソライズ」を使う時は、まるで名詞かのように扱われているようです。
例えば「部長のオーソライズを得てください。」という使い方がありますが、ここでは「オーソライズ=承認」となっていますね。日本語のビジネス用語はこのように本来の品詞とは違う形で使われることも多いため、混同しないように注意しましょう。
日常で見かける”authorize”
ビジネスマンであれば仕事で「オーソライズ」を見かけるかもしれませんが、ビジネスマンでなくても日常生活で”authorize”を見かける場面があります。もしかすると、あなたもこれまでに一度は遭遇したことがあるかもしれません。
“authorize app”
よくTwitterなどのSNSで見かける”authorize”です。最近はどのアプリでも自分のSNSと連動できるようになりました。SNSと連動することで、わざわざ新しくアカウントを作る必要がなくなりユーザーとしては非常に楽ですよね。
このアプリと連動する際に”authorize app”という表記が出てくることがあります。アプリの製造元が海外であれば、ほぼ確実に目にするでしょう。「アプリを認証します。」という意味で、このボタン1つでアプリにSNSと連動する権限を与えることができます。
“Not authorized”、”Unauthorized”
こちらはウェブページで見かける”authorize”です。ウェブページを開こうとすると数字が出てきてページが開けなかったという経験はないでしょうか?
”Not authorized”は「エラーページ401」に表示される言葉で、そのページの閲覧権限がないことを意味しています。ウェブサイトの管理者が閲覧者に制限をかけている場合や、ログイン情報が正しくない場合などが原因です。
“authorize”と同じ語源をもつ単語
最後に”authorize”から派生して他の単語も覚えておきましょう。今回は同じ語源をもつ単語をまとめてみました。はじめに”authorize”の語源を確認しておきます。”authorize”のコアとなる語根は”auth”です。英語を含めたインド・ヨーロッパ諸言語の祖先である印欧祖語で「生み出す、増やす」という意味を持ちます。
そこに「人・もの」を表す”-or”と動詞の性質を付与する”-ize”がついて「生み出す人に変える」つまり「権限を与える」となりました。
“author”
語根は同じく”auth”で「人・もの」を表す”-or”がついて「生み出す人」から「筆者、作家」という意味をもちます。”authorize”する人と考えてしまうと「承認者」など誤った覚え方をしてしまうので、コアのイメージで覚えるようにしましょう。ちなみに「承認者」は”authorizer”という単語で表します。
“authority”
既出の”author”に状態、性質を表す”-ity”が付いていることから、「著者であること」を意味します。著者であるということは有識者であるということ、そこから「権力者」という意味をもつようになりました。また、他にも「警察、当局」「専門家」「(自分が持つ)権限」など様々な意味をもっています。
“authorization”
“authorization”は簡単に説明すると”authorize”に名詞の性質をもたせた単語です。「権限を与えること、(与えられた)権限」を意味します。”authority”と同様に名詞ですが、”authorization”は「与えられた権限」、”authority”は「その人が始めから持っている権限」という正反対の意味をもつためしっかり使い分けなければ誤解・混乱の原因となりかねません。
“authoritarian”
権力者を意味する”authority”に支持者を意味する”-arian”が結びついた単語で、「権威主義者、独裁主義者」という意味をもちます。また単語の見た目からは想像できませんが、「権力を振りかざす、独裁主義の」という形容詞としての使い方もあるので注意しましょう。
まとめ
今回解説した”authorize”は和製ビジネス英語としても使われています。日本国内だけで使うのであれば問題ないのですが、和製英語の多くは海外では通じないことがほとんどです。
今回の”authorize”は意味こそ正しかったものの、使い方はまるで名詞のようでした。もしこのまま英語でも”authorize”を名詞として使ってしまうと、恥ずかしい思いをしてしまうかもしれません。和製ビジネス英語を日本人相手に使う分には問題ありませんが、普通の英語ではないことを理解して、和製ビジネス英語に惑わされない英語力を身につけましょう!