ふと外国人に英語で話しかけられた時、相手の言っていることがわからない場合に「私は英語が苦手です。」や「私は英語が話せません。」ととっさに言えるでしょうか?

特に「私は英語が話せません。」は、直訳表現の “I can’t speak English.”を使うと、特に英語のネイティスピーカーには不自然に聞こえてしまいます。

「私は英語が話せません。」は “I don’t speak English.”を使うからです。

不思議に思うかもしれませんが、これにはちゃんとした理由があります。

この記事では、そんな「私は英語が話せません」と「私は英語が苦手です」を適切に使うための知識を、例文付きでお伝えします。

「私は英語が話せません」は英語で? ※can’tは使えません

「私は英語が話せません」は英語で? ※Can'tは使えません

「私は英語が話せません」を英語で言うと、”I don’t speak English.”となります。

“I don’t speak English.”と聞いて、以下のような違和感を持たれた方も多いでしょう。

Aさん
“I don’t speak English.”だと、「私は英語を話しません。」になるじゃん!
Aさん
「話せません。」は”I can’t speak English.”じゃないの?

確かに、”I don’t speak English.”は「私は英語を話しません。」の意味ですし、”I can’t speak English.”の方が「私は英語を話せません。」の意味になります。

しかし、英語を話す外国人にとっては “I don’t speak English.”の方が自然で適切なんです。

なぜなら、“can’t” は「物理的な能力」を指して使われるからです。

例えば、”I can’t speak English.”と似た事例として “I can’t have(eat) 〇〇.”(〇〇が食べられません。)」という表現が挙げられます。

日本人は日本語で苦手な食べ物を「〇〇が食べられません。」と表現しますが、英語を話す外国人は「食べられない」という表現に違和感を持つのです。

なぜなら、「いくら味や食感、匂いが苦手でも、口に含んで噛み砕いて飲み込むことはできるじゃないか。」と考えるからです。

この「口に含んで噛み砕いて飲み込む」というのが、英語の “can” のニュアンスであり、先述した「物理的な能力」に当たるわけですね。

これを「英語を話す」に置き換えると、英語を話す外国人は「キミは英語を知らないかもしれないけど、声を出して口の形を変えて英語の発音をすること自体はできるでしょ?」という発想になるわけです。

ですから、”I can’t speak English.”ではなく、”I don’t speak English.”を使って「英語を話せません。」が表現されるというわけです。

日本人で、英語がある程度話せるのに、あまり自信を持てなくて、I don’t speak English.を使って答えている人がいますが、その返答をもらった英米人は、「こちらの言ってることが分かってるし、そう言いながら、英語を話してるじゃないか」と思うかもしれません。

謙遜して「英語を話せません」と答えている人は、I don’t speak English very well.「あまり英語を上手く話せません」と答えることをおすすめします。

「私は英語を理解できません」は英語で? ※can’tは使えません

「私は英語が話せません」と英語で言いたいときに、can’t は使えないことはお分かりいただけたと思いますが、「私は理解できません」と英語で言いたい場合はどうでしょうか?

結論から先に言うと、「私は理解できません」は、”I don’t understand English.”となります。

この場合は「できるかどうか」だから、can’t を使って、”I can’t understand English.”なのでは?と思われるかもしれませんが、「物理的な能力」が関わってしまうので、”I don’t understand English.”とすべきです。

もし、”I can’t understand English.”と言ってしまうと、「私にはそれを理解する能力がない」という意味になってしまい、そう言われた相手は、あなたに対してそれ以上説明することをあきらめてしまうかもしれません。

Aさん
We have decided not to use the AI system for our operations.
訳)当社は、業務にAIシステムを使用しないことを決定しました。
Bさん
I don’t understand that decision.
訳)私はその決定を理解できません。

“I don’t understand”の言い換え

ネイティブは 「私は理解できない」と言いたいときに、”I don’t understand”よりもよく使う表現があるので、紹介します。

I don’t get it

聞こえてるけど、「君の言っていることがよく分からないよ、理解できないよ」という時に、この表現は使えます。例文を見てみましょう。

Aさん
Could you work a part-time shift for me tomorrow?
訳)明日、私の代わりにアルバイトのシフトで働いてくれませんか?
Bさん
I don’t get it. Can you explain the situation in more detail?
訳)言ってることが分からないよ。もっと詳しく状況を説明してもらえない?

It/That doesn’t make sense

何を言ってるかは分かるけど、相手の言ってることが理に適っていなかったり、筋が通っていなかったりする時に、ネイティブはこの表現をよく使います。

Aさん
My sister is returning from England tomorrow, so I’m wondering if you could pick her up at Narita?
訳)明日、妹がイギリスから帰国するので、成田に迎えに行ってもらえませんか?
Bさん
That doesn’t make sense. I have to work tomorrow.
訳)言ってることが意味不明なんだけど。僕は明日働かなきゃならないんだ。

「苦手」を英語でなんて言うの?

英語で「嫌い」と言う時は?

「私は英語が話せません。」と相手に伝えた際に、「なぜなら私は英語が苦手だからです。」と理由を添えて言いたい場合もあるでしょう。

「苦手」を英語で表現するには主に次のような表現があります。

  • be not good at ~
  • be bad at ~
  • be poor at ~
  • be weak in ~
  • It’s hard for 人 to ~

「苦手」を表す英語表現を順番に見ていきましょう。

be not good at ~

“be not good at ~”の表現は、「〜が苦手」を表現する英語として最も無難で使いやすい表現です。

もともとは “be good at ~”というで「〜が得意」を意味する英語フレーズなのですが、そこに”not”が加わることで「〜が得意でない=〜が苦手」の意味になります。

Aさん
I’m sorry, I don’t speak English because I’m not good at speaking the language.
訳)ごめんなさい、英語話せないんです。英語で話すのが苦手なので…
Aさん
He’s not good at English, so he doesn’t want to go to overseas branches.
訳)彼は英語が得意じゃないので、海外支店に行きたがらない。

be bad at ~

上述した “be not good at ~” に似た表現で “be bad at ~” も「〜が苦手」を英語で表現できます。

“be not good at ~”が「得意じゃない」というニュアンスなのに対して、”be bad at ~” は「〜が苦手」という直接的な表現になります。

“be bad at ~” を使う時は本当に苦手なニュアンスが伝わりますが、”be not good at ~” の方がオブラートに包んだ優しい表現なので、状況に応じて適切に使い分けられると格好良いですよ。

Aさん
One of the reasons I chose the science course was that I was really bad at English.
訳)私が理系コースを選択したのは、英語が本当に苦手だったのが一因です。
Aさん
I’m really bad at English, so I need to make double efforts to speak English.
訳)英語が本当に苦手なので、英会話には倍の努力が必要です。

be poor at ~

“be poor at ~” も「〜が苦手」を英語で表現できますが、「~が下手」というニュアンスになります。好きなんだけど、下手だから、苦手だと感じてしまうことってありますよね。例文を見てみましょう。

Aさん
I like English, but I’m poor at speaking English.
訳)私は英語が好きだけど、英語を話すのが下手です。
Bさん
If you like English and keep trying, you’ll learn to speak it fluently.
訳)なるほど。君が英語が好きで、やり続けたら、流ちょうに話せるようになるよ。

be weak in ~

直接的な「〜が苦手だ」というニュアンスを持ちつつ、”be not good at ~”のように強い言い方を避けた表現として “be weak in ~” を使うことができます。

”weak”は「弱い」という意味で使われるため、例えば英語が苦手なことを「私、英語が弱いんだよね〜」という言い方をする人がいますが、その感覚で「〜に弱い=〜が苦手」というイメージで連想できればOKです。

Aさん
She is sociable and talented, but unfortunately she is weak in English.
訳)彼女は社交的で優秀だけど、惜しいことに英語が苦手です。
Aさん
It was not only because he was weak in English that he failed the selection process.
訳)彼が選考に落ちたのは、英語が苦手だったからだけではありません。

It’s hard for 人 to ー

「人がーするのは難しい」という意味で、「苦手だ」と近い意味になります。

Aさん
It’s hard for me to speak English.
訳)私にとって英語を話すのは難しい。
Bさん
Me, too. It’s hard for me to make myself understood in English.
訳)僕もだよ。英語で自分のことを理解してもらうのは難しいよ。

“make oneself understood in English”は、直訳すると、「英語で自分自身を理解させる」という意味ですが、「自分の英語が通じる」という意味になります。

「嫌い」は英語で使わない方が無難

「私は英語が話せません。」を英語で言う時に「I can’t speak English.は使わない」とお伝えしましたが、それと同じで「英語が苦手だから」といった「話せない理由付け」を英語で話す時に「英語が”嫌い”だから」とは言わないようにする必要があります。

なぜなら、「嫌い」というのはとても強い「嫌悪」を表すので、その言葉を話している人に対して攻撃的な印象を与えてしまうからです。

逆に外国人から「僕は日本語が嫌いだから、日本語は話さないよ」と言われたら、良い気持ちにはならないでしょう。それと同じ理由です。

英語で「嫌い」と言う時は?

英語で「嫌い」と言う時は?

英語で「嫌い」という表現を使う時は、例えば以下のような「明確に嫌悪感を表現する時」です。

dislikeを使った表現

dislikeは、好きを意味する “like” の反対の言葉として、「嫌い」を意味する表現です。

I don’t like ~(私は〜が好きじゃない)のようにオブラートに包まずに、直接的に「嫌いだ」を表す時に使われる表現です。”dislike”には、嫌悪感を表す強いニュアンスがあるので、「ちょっと嫌いだな」と感じる程度なら、”dislike”ではなく、”don’t like”を使うのが無難ですね。

Aさん
I dislike his antagonizing behavior.
訳)私は彼の、敵を作るような振る舞いが嫌いだ。

dislikeを使うときの注意点

dislikeを使う場合、いつもその後に名詞が来るとは限りません。「~することが嫌い」と “dislike”を使って表現する場合に注意すべきことがあります。

dislikeはその後に「動名詞」のみを取る動詞です。不定詞を持ってこないように注意しましょう。

Aさん
I dislike talking to someone on the phone at work, so I tend to send e-mails.
訳)私は仕事で電話で誰かに話しかけるのが嫌いなので、電子メールを送る傾向がある。

hateを使った表現

hateは、dslike以上に嫌悪感を強く表現する時に使われます

どれくらい強い表現かと言えば、アメリカの有名なSF映画であるスター・ウォーズで、”I hate you!” が「あんたが憎い!」と訳されていました。

それくらい強い嫌悪感を表す時に使われる表現です。

Aさん
I hate arguing because it’s not constructive at all.
訳)言い争いは全く建設的じゃないから大嫌いだ。

例文を見れば”dislike”も”hate”も、「英語が苦手だ。」を表現する時に適切じゃないことがわかりますね。

hateは不定詞も動名詞も取れるが 少しニュアンスが違う

”dislike”は「動名詞」しか取りません。一方、”hate”は「不定詞」と「動名詞」の両方を取ることができますが、どちらを取るかで、少しニュアンスが違ってきます。詳しく見ていきましょう。

hate to ー

”hate to ー”は、「未来の行動や特定の瞬間に対する強い嫌悪」を示します。具体的な例を挙げます。

Aさん
We hate to disappoint you, but the event has been canceled.
訳)あなたをがっかりさせるのは残念ですが、イベントは中止となりました。

hate ーing

“hate ーing”は、「継続的、または一般的な活動に対する嫌悪」を示します。例を見てみましょう。

Aさん
I hate visiting very crowded tourist destinations.
訳)私はとても混んでいる観光地を訪れるのが大嫌いです。
Aさん
I hate waiting in long lines.
訳)私は長蛇の列で待つのが大嫌いです。
Aさん
I hate getting up early on weekends.
訳)私は週末に早起きするのが大嫌いです。

hate は、to 不定詞と動名詞の両方を取ることができて、意味合いによってどちらを取るか考えなくてはなりません。remember や forget もto 不定詞と動名詞の両方を取ることができますが、to 不定詞の場合は、(未来に)~することを…という意味になり、動名詞の場合は、(過去に)~したことを… という意味になるので、hate も似ていますね。

can’t が使われる例

can't が使われる例

“can’t” は「物理的な能力」を指して使われると解説しましたが、最後に、”can’t”を使った意外な表現について紹介します。

I can’t wait to ー

「―するのが待ちきれない」という意味でよく使われる表現です。物理的にできないというより、「待ち遠しくて、待ちきれない」というニュアンスです。

Aさん
I can’t wait to see my favorite singer in his concert,
訳)自分の大好きな歌手にコンサートで会えるのを待ちきれないわ。

I can’t help -ing

「ーせずにはいられない」という意味でよく使われる表現です。例文を見てみましょう。

Aさん
I can’t help worrying about the future.
訳)私は未来のことを心配せずにはいられない。
Bさん
Me, neither. I can’t help worrying about the future of the planet.
訳)僕もだよ。地球の未来のことを心配せずにいられないよ。

肯定文に同意するときは、”Me, too”を使いますが、否定文に同意するときは、”Me, neither”を使います。このフレーズを書く場合、Meの後には、必ず , (カンマ)を入れるようにしましょう。

I can’t help but ~

「~せずにいられない」は “I can’t help but ~”を使っても表現できます。but の後には、動詞の原形が来ます。例文を見てみましょう。

Aさん
I can’t help but feel excited about the upcoming holidays.
訳)もうすぐやってくるホリデーについてワクワクせずにいられません。
Aさん
I can’t help but worry that global warming will become more and more serious.
訳)私は、地球温暖化がますます深刻になるのではないかと心配せずにはいられません。
Bさん
Me, neither. Because summer temperatures have been rising year after year.
訳)僕もだよ。年々夏の気温は上昇してきてるから。

まとめ

この記事では、「私は英語が話せません」と「私は英語が苦手です」を適切に使うための知識を、例文付きでお伝えしました。「私は理解できません」の英語とその言い換え表現も紹介しました。

ここまでお読みのあなたは、相手の英語がわからない時にとっさに”I’m sorry, I don’t speak English.”と適切に返すことができ、また、なぜ “can’t”を使わないのかを英語の感覚的に理解しているでしょう。日本語で「~できません」と言う場合でも、物理的にできないこと以外のことについて、can’t は使えません。

この記事でお伝えした内容が、あなたの英語表現をより豊かにできれば幸いです。