2024年に開催されるパリオリンピック。
華やかな演出でたびたび話題になる開会式は、英語で”Opening Ceremony”と言います。
”ceremony”は、日本語でも「○○セレモニー」と呼ぶとても馴染みのある英語なので、なんの疑いもなくいろいろな場面で使われがちです。
ところが、「儀式」の内容によっては、ふさわしい英語を正しく使い分けないと意味が通じない場合もあります。
今回は、意外と知られていない「儀式」の英語について、”ceremony”と”ritual”と”rite”3つの違いと正しい使い方を紹介します。
「儀式」を意味する3つの英語
「儀式」を意味する英語は”ceremony””ritual””rite”と3つあり、英和辞書にはそれぞれ下記のように記載されています。
ceremony
〔名〕
(宗教的・伝統的な)式、儀式、祭式、式典
儀礼、礼儀作法、形式張ること、堅苦しくすること、仰々しさ
ritual
〔名〕
(ある宗教の)儀式、典礼、典礼書、式次第
決まったやり方、儀式のように決まって行う日常の行為〔形〕
儀式の、祭礼の、儀礼の
rite
〔名〕
(宗教上の)儀式、典礼
(伝統的な)慣例、慣行
(キリスト教の)礼拝、典礼式
”ceremony”は「儀式」全般を意味するだけでなく、礼儀作法や形式張る様子も表します。
一方で”ritual”と”rite”は、”ceremony”に比べるとより宗教感が強くなり、特定の宗教や団体、グループなどに言及したいときに使われる表現といえるでしょう。
では、3つの英語をより詳しく解説していきます。
ceremony
”ceremony”は、「儀式」を意味する最も一般的な英語です。
厳粛な場において、格式あるやり方で行われる活動や礼儀正しい振る舞いを意味しており、ほとんどの儀式に問題なく使える万能な英語といえます。
an important social or religious event, when a traditional set of actions is performed in a formal way
(伝統的な一連の動作が正式な方法で実行される重要な社会的または宗教的な行事のこと)参考:ceremony | ロングマン現代英英辞典でのceremonyの意味 | LDOCE (ldoceonline.com)
英英辞書にも” important social or religious event”とあるように、必ずしも宗教的な行事に限った言葉ではありません。
日本語訳で「○○式」や「○○式典」というような「儀式」に幅広く使用できる便利な英語です。
例文で使い方を確認しましょう。
Ken and Mia’s wedding ceremony will be held in September.
訳)ケンとミアは9月に結婚式を行う予定だよ。
I heard that the coming-of-age ceremony went off without a hitch.
訳)成人式は滞りなく行われたってね。
My son recently attended the funeral ceremony for the first time.
訳)先日、息子は初めて葬儀に参列したのよ。
”ceremony”を形容詞として使った”stand on ceremony”(形式張る)という表現もあります。
Let’s not stand on ceremony today only.
訳)今日だけは無礼講でいこうよ。
Don’t stand on ceremony.
訳)楽にしてね、どうぞ座って。
ritual
”ritual”には、「宗教的儀式」と「日常的な慣習」の2つの意味があります。
- a ceremony that is always performed in the same way, in order to mark an important religious or social occasion
(重要な宗教的または社会的な機会を記念していつも同じ方法で行われる儀式のこと)- something that you do regularly and in the same way each time
(定期的に、毎回同じように行うこと)参考:ritual | ロングマン現代英英辞典でのritualの意味 | LDOCE (ldoceonline.com)
英英辞書でも、”ritual”が宗教的もしくは日常的な場面において、同じ方法で行われる儀式であることがわかりますね。
”ritual”は宗教的な意味が強く、魔法やオカルトなどファンタジーを連想させる英語といえます。
同じく宗教的な儀式を表す英語”rite”よりも一般的で、使用場面が幅広く、日常会話でもよく使われているのが特徴です。
また、普段考えもせずにしている慣習的な行いという意味もあり、ある目的のために特定の順序で行われる一連の動作を指して使われることもあります。
例文を参考に使い方を練習してみましょう。
~宗教的な儀式を話題にする場合~
I’ve participated in Japanese traditional New Year’s rituals at a shrine.
訳)日本のお正月に神社で行う伝統的な儀式に参加したことがあるわ。
All religions have their own specific rituals.
訳)すべての宗教には、それぞれ独自の儀式があるものだよ。
Tony said he initiated 4 new members into a traditional ritual.
訳)トニーから、4人の新しいメンバーを伝統的な儀式に参加させたと聞いたよ。
~日常的な慣習を話題にする場合~
Natalie and her mother always perform a morning ritual of yoga and meditation.
訳)ナタリーは、母と一緒に毎朝ヨガと瞑想を行っているのよ。
The selection of a suitable tie and socks are like a morning ritual with him.
訳)ネクタイと靴下を選ぶことが、彼にとっては毎朝の儀式のようなものなの。
rite
”rite”も、”ritual”と同様の意味を持つ「宗教的な儀式」を表す英語です。
a ceremony that is always performed in the same way, usually for religious purposes
(宗教的な目的でいつも決まったやり方で行われる儀式のこと)
”ritual”よりも”rite”のほうが、フォーマルな印象が強く、重要な公式イベントや宗教的または文化的なかしこまった儀式を表すときに適しています。
例文で使い方をチェックしてみましょう。
In their religion, they say this is part of their rite of passage into adulthood.
訳)彼らの宗教では、これは大人になるための通過儀礼の一部だそうよ。
The initiation rite of that religion involved a series of tests and challenges.
訳)その宗教の入信儀式には、一連のテストと課題があるんだって。
Ellie comes out against offering rites handed down for generations.
訳)エリーは代々受け継がれてきた儀式に反対している。
まとめ
「儀式」の英語について、”ceremony”と”ritual”と”rite”3つの意味の違いと正しい使い分け方を紹介しました。
「儀式」を意味する3つの英語のうち、”ceremony”は、あらゆる「儀式」や「式典」など広く使える最も一般的な単語です。
宗教のイメージが強い”ritual”と”rite”に関しては、「日課」や「いつものやり方」といった意味もある”ritual”のほうが、日常会話での登場頻度は高いといえます。
日本語ではどんな儀式もまとめて「セレモニー」と言ってしまいがちです。
それぞれの意味の違いを知り、正しく使い分けられるようになりましょう。
「式」や「式典」の英語は以下の記事でも解説しているので、もっと知りたいと思った人は合わせて読んでみてください。