英語学習を効率的にすすめるには数多くの英単語の修得が欠かせません。特にスポーツや時事の話題で使える英単語を知っていると、英語学習が楽しくなります。今回はオリンピック競技の「近代五種競技」に関わる英単語を紹介します。「近代五種競技」は別名 “King of sports” とも呼ばれているハードな競技ですが、詳しい人はあまり多くないかと思います。この記事を読めば、「近代五種競技」がなぜ “King of sports”と呼ばれるのか、きっと理解していただけると思います。英単語や競技の説明を通して、近代五種競技とはどのような競技なのかみていきましょう。
近代五種競技とは
近代五種競技とは、1人で5種類の競技をこなし総合点数で順位を決める複合競技です。英語では “modern pentathlon”と呼びます。この英単語は5種類を意味する”penta”と競技を表すathlonを結びつけたものです。”pentathlon”だけでは単に「5種競技」を表すため、近代を意味する”modern”を頭に付けています。”pentathlon”でなく”5-event competition”といっても意味は通じるでしょう。ですが、クロスワードパズルのヒントを説明しているようなニュアンスがあるので使う際には注意しましょう。
“modern pentathlon”では、「射撃・フェンシング・水泳・馬術・ランニング」の5種目を、1日でこなします。ただし、2021年のTokyo Olympics(東京オリンピック)では、近代五種競技の競技日数が2日間になりました。5種目と呼ばれていますが、「射撃」と「ランニング」は一つになって、 「レーザーラン」という種目になっています。
Olympicという単語はもともとOlympiaの形容詞と同類のものです。本来ならば “Olympic stadium” “Olympic games”のように、形容詞的に使う言葉です。では、なぜOlympicに-sを付けるだけで名詞のように使えるのでしょうか。これは形容詞を名詞化したわけではなく”Olympic games”を略式化したものであるといわれています。そのため、一見正しくみえる”Tokyo Olympic”という表記は、正確な英語表記といえません。また、Olympicsは単数・複数の両方に使える言葉であることも覚えておきましょう。
訳)近代五種競技では、身体的、精神的スキルの混合が要求されます。
訳)それはまた選手たちが4つも5つもオリンピックに出場できることを意味してます。
訳)ランニングや水泳のタイムは年齢とともに低下することが予想されますが、技術的な種目における経験やスキルは多くの場合向上します。
訳)他の3種目は技術的なものだから、それらにおける経験やスキルは年齢とともに向上すると言いたいのだね。
パリ2024オリンピックにおける近代五種競技
パリ2024の近代五種は2024年8月8日〜11日に予定されており、男子36人、女子36人の計72人が近代五種に出場します。初日の8月8日にパリ北アリーナでフェンシングのランキングラウンド(ボーナスラウンドにおける選手のスタート順を決める)が行われます。
その後、会場をヴェルサイユ宮殿へと移し、男子準決勝が8月9日(金)、女子準決勝が8月10日(土)、男子決勝が8月10日(土)の午後から夕方にかけて行われ、女子決勝が8月11日(日)に予定されています。ヴェルサイユ宮殿で行われる「乗馬」などは、競技と共に美しい情景も楽しむことができて、とても楽しみですね。
準決勝を通じて選手の数は半数に絞られ、18人で決勝を競います。その時間は90分間。競技の順番や時間は以下の通りです。
- 35分:馬術
- 5分:休憩
- 20分:フェンシング(エペ)ボーナスラウンド
- 10分:休憩
- 15分:競泳200m自由形
- 15分:休憩
- 20分:レーザーラン(射撃、ランニング)
休憩時間は合計30分入っていますが、さまざまな種目を短い休憩の後に行わなくてはならなくて、身体的、精神的に非常に高いスキルと持久力が必要とされる競技です。
選手は各種目の成績に応じてポイントが加算され、そのポイントによって最後の種目であるレーザーランのスタート順が決まります。得点を時間に換算し、上位選手から時間差(1ポイント=1秒)でレーザーランを開始し、その着順が最終順位となります。
訳)パリオリンピックでは、近代五種競技を見るのを楽しみにしています。
訳)僕もだよ。五種競技はキング・オブ・スポーツだね。
訳)パリオリンピックの一番の目玉だと言っても過言じゃないよ。
Fencing(フェンシング)で使う単語はフランス語が多いので注意
Fencing(フェンシング)はヨーロッパで発展した剣術がもととなっている、片手剣を持った競技者が対面に立って互いの体を突く競技です。相手より先に体を突いた競技者にポイントが与えられ、規定のポイントに達した方が勝利者となります。Fencing(フェンシング)は剣の形によってfleuret(フルーレ)・epee(エペ)・Saber(サーブル)という3種類のルールがあります。ところで、剣をあらわす単語は複数存在しますが、それぞれどのような違いがあるのでしょうか。一般的にswordは刀剣そのものを表し、bladeはもっぱら刀身を意味するときに使います。そしてfleuret(フルーレ)、epee(エペ)、Saber(サーブル)は刀剣の種類を表す単語です。
近代五種競技では、epee(エペ)が採用されています。epee(エペ)は曲がりにくく長いblade(刀身)を持つsword(刀剣)の一種です。競技では剣の先に付けた電極によって、突きの有効無効を判定します。epee(エペ)はfencing(フェンシング)の中でも攻撃が有効となる面が広いので、繊細な心理戦が期待できる競技です。
競技は次のような流れで開始します。まず、piste(試合場)に選手が入ると主審が ”Rassemblez Saluez(気をつけ、礼)” “En garde(構え)” と声をかけます。次に “Êtes-vous prêts(用意ができたか)”との主審の声に選手が “Oui(はい)”と返事をしたら “Allez(開始)”の掛け声で試合が開始します。試合の決着がつくと “Rassemblez Saluez” を合図に敬礼と握手をし、選手は退場して試合終了です。
この競技の得点は”ranking round”と”bonus round”の合計で争われます。”ranking round”は1分間1本勝負の総当たり戦です。勝率70%で250点となるように勝ち数が得点に換算されます。一方、”bonus round”は総当り戦の30秒1本勝負です。”ranking round”で最下位の選手から順番に勝ち残り戦をします。1勝をあげるごとに1ポイント加算されます。
”fencing”(フェンシング)で使う用語はフランス語が元になっている場合が多いです。英語の会話ではフランス語が由来となった英単語がよく使われます。そのため、英語のネイティブスピーカーは、特にフランス語を習わずとも15,000語ほどの仏単語を知っているそうです。英会話におけるフランス語由来の言葉は、一般的にフォーマルなイメージがあります。fencing(フェンシング)用語のように、フランス語が元になっている単語は英会話の中で使われることが少なくありません。上述した単語はどれも英会話の中で使われています。
また、フランス語での言い回しも、そのままの形で英語に使われます。”Rassemblez Saluez(気をつけ、礼)” ”Êtes-vous prêts(用意はできたか)” などは例文として覚えておけば、英語で使える言葉の引き出しが増えるでしょう。
Swimming(競泳)で使われる英単語
近代五種競技のSwimming(競泳)はFencing(フェンシング)の”ranking round”と”bonus round”の間で行われます。200メートルのfreestyle(自由形)で、2分30秒を250点として計算し、0.5秒ごとに1点の増減があります。例えば2分40秒なら10.0秒遅れで20点の減点となり、得点は230点です。freestyle(自由形)200メートルでは、2分30秒が基準点になっています。
Swimming(競泳)に類似する言葉でAquatics(水泳)というものがあります。これは水泳競技全般を指しており、Swimming(競泳)のみならずDiving(飛び込み)や Water polo(水球) なども含みます。ところでSwimming(競泳)のつづりではmを重ねるのに、なぜdiving(飛び込み)ではvを重ねないのでしょうか。Swimming(競泳)のように子音が重なって表記されるのは、語尾が短母音と子音の単音節単語、もしくは、語尾にアクセントのついた短母音が子音の前にある副音節単語に限られます。
Diveは複音節でかつアクセントが前半部にあるのでvが重ねられることはありません。それに対してSwimは語尾が短母音と子音の単音節単語なので、ingの前にmが重ねられます。このように動詞にingを付けて名詞化させる用法は動名詞と呼ばれています。英単語では頻繁に用いられる手法です。
Riding(乗馬)で使われる単語
フェンシングの”bonus round”が済むと”Riding(乗馬)に移ります。Riding(乗馬)は “Horse Riding” と書くべきではないかと思う人もいるかもしれません。ですが、”Riding(乗馬)”という単語には「馬に乗る」という意味が含まれているので、どちらでも正しい意味として通じます。なお、Riding on a horsebackとしてしまうと、動作的な意味合いになり、競技名とは捉えがたいニュアンスになるので注意しましょう。競技名としての「乗馬」は “[Horse] Riding”になります。
乗馬競技は一般的にJumping(障害飛越)、Eventing(総合馬術)、Dressage(馬場馬術)の3種類があります。近代五種競技で行われる種目は Jumping(障害飛越)です。
近代五種競技の Jumping(障害飛越)は12障害15飛越で、Obstacles(障害物)の最大高は120cmです。持ち点300点からの減点方式で、スコアを争います。最もよくみられるペナルティは、Refusals(拒否)とKnockdowns(落下)です。また、この種目の馬は貸与馬を抽選によって選びます。相性がどうしても合わないときには、馬が嫌がってDisobediences(不従順)を起こすことも珍しくありません。20分の試乗時間でどれだけ馬との信頼関係を結べるかがこの種目のカギといえるでしょう。
Even the best horse stumbles.
訳)名馬もつまずく
どれだけ優れた競技者でも、Riding(乗馬)で逆転されることは珍しくありません。このような理由から、近代五種競技のファンにとってRiding(乗馬)は最大の見どころとされています。近代五種競技を観戦する機会があれば、ぜひ Riding(乗馬)でどんでん返しがないかに注意しながら、見てみましょう。
射撃とランニングを合わせたLaser Run(レーザーラン)
”Laser Run”(レーザーラン)は “laser pistol”(レーザーピストル)を使った “shooting”(射撃)と “Running”(ランニング)を合わせた種目です。この種目は、競技時間の短縮を目的に、2008年のBeijing Olympics(北京オリンピック)から始まりました。距離10m直径6cmの “targets”(的)に5回命中するまで射つshooting(射撃)と、800mのrunning(ランニング)を交互に4回繰り返します。この競技は、これまでの種目で得た得点が上位の選手からスタートします。この種目の着順が、「近代五種競技」の最終順位です。
この種目で使うlaser pistol(レーザーピストル)は、その名前の通り光線を的に照射する仕組みになっています。実はこのLaser(レーザー)という英単語は “Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光増幅放射)”の頭文字を結んだ頭字語です。このような言葉は英語に多くあります。例文を上げるなら “radio detecting and ranging(電波探知測距)”がもとになった “radar(レーダー)”、”ante meridiem(午前)”では “AM(午前)”、”post meridiem(午後)”の “PM(午後)”などです。頭字語を含め略語は、英単語に見えるものの、英語圏では通じない言葉もあるので、使う際には気をつける必要があります。
shooting(射撃)と running(ランニング)が1つになって Laser Run(レーザーラン)になったことで複雑な要素が加わり、この種目ではコーチや監督の選任に苦慮しています。2021年のTokyo Olympics(東京オリンピック)では “biathlon(バイアスロン)”の経験者がコーチに就任していました。”biathlon(バイアスロン)”は冬季競技で、ライフル射撃とクロスカントリースキーの複合種目です。
なお、coach(監督)もフランス語がそのまま英語で使われるようになった言葉です。日本語でのコーチは主にスポーツトレーナーや技術指導者を指しますが、英語では監督を意味します。副監督なら”assistant coach”、選手指導監督なら”head coach”です。類語として、スポーツチーム全体を管理する立場なら”manager”、チーム内のキャプテンや監督なら”skipper”とも呼びます。対してスポーツトレーナーや技術指導者は”trainer”や”advisor”と呼ぶことが多いようです。
いろいろなスポーツを見ながら英単語の幅を広げよう
近代五種競技について詳しく解説してきましたが、いかがでしょうか? 近代五種競技について興味を持っていただけましたでしょうか。
この記事で英単語を通して内容を解説したことで、その競技に興味を持ってもらえたなら、実際に近代五種競技を見てみることをおすすめします。どんな競技なのかという知識を入れてから、近代五種競技を見ることが、この五種競技がより楽しめること請け合いです。近代五種競技はまさしく “King of sports” の名に恥じない素晴らしいものだと感じてもらえるはずです。
また、スポーツに関する言葉の学習は、実際の競技を見ながら行うのが最も効果的です。オリンピックのようなスポーツイベントがあるとき、たくさんのスポーツに触れて、英語学習を進めるとよいでしょう。