私たちは社会と関わって生活をしています。そのため、一人ひとりが守るべき行為の基準というものがあり、それを道徳と呼びます。
また、人として守り行なうべきもので善悪の判断となる基準は倫理です。

この道徳または倫理の英語はどのようなものになるのでしょうか?

記事では、道徳や倫理について英語表現を紹介します。後半では「イギリス人のコモンセンス」にも触れましょう。

道徳と倫理の英語

道徳と倫理の英語

そもそも、道徳(どうとく)と倫理(りんり)の大きな違いとは何でしょう。改めて、そこから明確にしていきます。

道徳と倫理の定義

道徳と倫理は、ほとんど同じような意味合いで使われることが多いのですが、以下の違いがあります。

道徳: 個人または家族などの小さなグループに用いられる日常生活の行動基準のこと。人が善悪をわきまえて正しい行動をするために守らなければならないもの。

倫理: 個々人にとどまらず、社会に至るまでより広い範囲に用いられる普遍的な基準のこと。社会のなか、人が生きていく上での守りごと。

道徳が”人”としての行動であるのに対し、倫理には”社会”のなかでの行動というところに違いがあります。

例えば、家族であっても嘘をつかない、人に挨拶をするといった人として生きていくための常識が道徳です。
一方、人間の権利を尊重することで人間の尊重を奨励することになり社会にとって倫理的な行動になる、こういったことが倫理です。

道徳と倫理の英語

さっそく、道徳と倫理の英語を紹介しましょう。
道徳は英語で”moral”、倫理は”ethic”が基本表現です。以下、それぞれを詳しくみていきます。

道徳の英語moral

moralはイギリス英語でモラル、アメリカ英語ではマラルのように発音します。

moralの意味は以下になります。
・(個人の)良心の・分別の
・道徳上の・善悪の判断に関する
・道徳的な・教訓的な
・教訓・格言
moralsにすると、品行・道徳の意味になります。この場合、特に性的な行動に対しての規範を指すことが多くなります。

Aさん
She is a moral person, because she is fair and has humility.
訳)彼女は公平で謙虚さを持っているので道徳的な人です。

倫理の英語ethic

ethicは倫理を表す単語で、その発音はエシクまたはエスィクです。名詞で倫理を表すとともに道徳の意味も持ちます。道徳と倫理はほぼ同じような意味合いで使われることから、英語でも倫理と道徳の両方に当たる単語なんですね。

ethicの関連用語ethical(エシカル)にすると、倫理にかなった、道徳的な、道徳上の、そして倫理学のという形容詞になります。このような意味から、環境などを考慮する倫理的な企業ethical company、エシカルなビジネスethical businessなどが増加しています。

Aさん
Ethics is the discipline of what is morally good and bad and morally right and wrong.
訳)倫理とは、道徳的に何が良いことか悪いことか、道徳的に正しいことか間違っているかに関する規律です。

morally=道徳的に・道義的に
このように、やはり倫理と道徳は深く関係する言葉なんですね。

道徳的の英語

道徳によって物事を判断しようとすることを道徳的と言います。道徳的にゴミのポイ捨ては間違っている、不道徳的に夜遅くまでどんちゃん騒ぎをしている、などのように使われます。

道徳的はmorally

ethicで紹介した上の例文でmorally good and badのように”morally”というmoralの関連用語が使われています。このmorally(モーラリィ)こそが「道徳的」の英語になります。morallyは副詞であり、道徳的に・道義的に・精神的にといった意味を持ちます。

Aさん
Any wars are morally indefensible.
訳)いかなる戦争も道徳的に援護できない。

indefensible=(意見・行動などが)援護できない
副詞は修飾する形容詞や動詞のすぐ前におくと間違いありません。この例文では副詞morallyを形容詞indefensibleの前に置いています。

Aさん
Is it morally okay to bully your friend?
訳)友達をいじめることは道徳的に大丈夫なんですか?

誰に対してもいじめは許されるものではなく、道徳に反する行為です。

道徳の英語 教科の場合

さて、日本の学校では教科として道徳の時間があります。
道徳の時間では人生をより良く生きるために、その基盤となる道徳性を育成する目的があります。

教科としての道徳はmoral education

英語で道徳の教科を言うのであれば”moral education”になります。海外では違う科目になる場合がありますので、日本の道徳教育としてJapanese moral educationとすると分かりやすくなります。

Aさん
Japanese moral education started for primary students in 1958.
訳)日本の道徳教育は1958年、小学生を対象に始まりました。
Aさん
The 3rd session today is moral education.
訳)今日の3時間目は道徳の授業です。

ちなみに、筆者の住むイギリスでは道徳という教科はありません。代わりにPSHE (Personal, Social and Health Education)という科目が存在します。PSHEは人格的社会的健康教育と訳され、道徳の時間のように、子どもたちが生きていく上で個人、または社会の一員として成長するために大切な資質を育てることが目的です。

道徳心の英語

道徳心の英語

さて、次の英語は道徳心を表す英語を紹介しましょう。

moral fibre

fibre(ファイバァ)には、人やモノの本質的な「力強さ」、モノの「本質」という意味があり、moral fibreとすることで道徳心を表現します。

Aさん
Moral fibre is the quality of being determined to do what you think is right.
訳)道徳心とは、自分が何が正しいか思うことを実行しようと決意する資質のことだ。

sense of morality

moralityには「高潔な行動や行為・道徳の教訓」といった意味があります。sense of moralityは道徳観念や倫理観になり、これらは道徳心を持つことに共通しています。

Aさん
I want to have a sense of morality any time and to able judge things right.
訳)いつでも道徳心を持ち、物事を正しく判断できるようにしたい。

moral compass

moral compassはモラルコンパス(倫理基準)です。compassは日本語でも羅針盤やコンパスとして方向を定めるときに使われますが、moral compassにすることで、正しい判断や行動をする際の基準となるんですね。

Aさん
My friend has a strongest moral compass, so I always seek her opinion.
訳)友達はもっとも強いモラルコンパスを持っているので、私はいつも彼女の意見を求めるんだ。

「倫理的に」の英語

倫理的に考える、倫理的によくないんじゃないかなど、倫理的に◯◯という言い方をすることがあります。

「倫理的に」はmoralistically/ethically

moralistically(モラリスティクリィ)やethically(エシクリィ)で「倫理的に」になります。両単語とも副詞です。
やはり、ここでもmoralとethicの関連用語によって同じ意味が表現されることが分かります。

Aさん
I try to think moralistically, not emotionally.
訳)私は感情的にではなく、倫理的に物事を考えるようにしている。

これがなかなか難しかったりしますが、客観的かつ倫理的に考えるクセをつけられると判断に後悔しないのではないでしょうか?

イギリス人のコモンセンス

コモンセンスとは英語で”common sense”であり、その意味は常識や良識、また共通感覚です。社会人として分別のある行動や判断ができる能力を指しますが、これは国によってだいぶ違ってくるのではないでしょうか?

イギリス人のcommon sense

一般常識とされるcommon senseは、道徳や法律に反しないことであり、倫理は普遍性を持ち、道徳はその時々の規範、そして常識は今の時代を生きている人々の約束事のような捉え方ができます。いずれも人々の間で持たれる共通の感覚という共通点があるでしょう。

さて、イギリス人のコモンセンス(常識)は日本人とだいぶ違うところがあります。厳格なルールに縛られるのではなく最低限のルールを守れば良いという自由さがあったりします。例えば、横断歩道、日本人は車が来なくても赤信号であれば青になるまで待つのが常識、イギリスでは車が来なければ赤でも渡るのが当たり前です。ですから、赤で歩道を渡る人のことを非難する人もいないのです。

英語学習をしている人はこの辺の常識の違いにも目を向けることをおすすめします。

まとめ

道徳は”moral”、倫理は”ethic”が基本表現です。これらの関連用語を使って他の道徳・倫理にまつわる言葉も表現できることが分かりました。

道徳について普段やり取りをすることは多くないかもしれませんが、社会生活で大切なこととしてやはり英語表現にも慣れておくことをお勧めします。日本の常識が海外では常識でないこともある、ここも理解すべきでしょう。