「ドラフト作成」や「ドラフト会議」など、「ドラフト」を使った表現を聞いたことがある人は多いでしょう。
ビジネスシーンでも多用されている「ドラフト」は、英語”draft”をカタカナ表記した和製英語です。
カタカナ言葉は、しばしば英語本来の意味と違って使われていることがありますが、「ドラフト」は、正しく理解されているのでしょうか?

今回は、身近で聞き慣れたカタカナ言葉「ドラフト」について、英語”draft”の意味と使い方、類義語を紹介していきます。

「ドラフト」の意味

「ドラフト」の意味

「ドラフト」は、英語”draft”をそのままカタカナ表記して日本語に適用された和製英語です。
”draft”は、「下書き」や「原稿」の意味の他にも、「すきま風」や「選抜」など複数の意味を持っています。

日本語で「ドラフト」と聞くと、野球の「ドラフト会議」やビジネス用語としての「ドラフト契約書」を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。
さまざまな意味を持つ”draft”は、和製英語「ドラフト」としてすっかり日本語になじんでしまいました。

「ドラフト」は、ビジネスシーンでとてもよく聞かれる言葉でもあります。
ビジネス用語としての「ドラフト」の意味をまとめてみました。

「ドラフトする」 下書きをする、書類や資料の草案を作成すること
チーム編成において人を選抜する意味でも使われる
「ドラフトメール」 作成途中のメールを下書き保存すること
「レポートドラフト」 確認や承認を得ていない下書きレポートのこと
「ドラフトレポート」:プロ野球ドラフト会議前に交わされる指名有力選手に関する資料
「契約書のドラフト版」 重要事項が空白となっているような、未完成の契約書原案のこと
反対語は、「清書版」や「完成版」など

「ドラフト」は、書類や文書、メールなどの大枠・構成を記した下書きのことを指します。
完成した原本は「オリジナル」、また反対語として「清書版」や「完成版」などと表現される場合もあります。
未完成な下書きや原稿である「ドラフト」に、相互確認と修正を随時加えながら仕上げていくのが一般的です。

ビジネスでの「ドラフト」使用例
・契約書のドラフトを作成したので、校正をお願いいたします。
・大事なメールのドラフトを誤って削除してしまいました。
・企画書のドラフトを、明日までに確認してもらう必要があります。
野球の「ドラフト」使用例
・今年のドラフト会議では、有力な新人選手が次々と入団していきました。
・ドラフト制度は、逆指名制度のせいで後退したという人もいます。
・来年のドラフト会議は、〇〇大学の選手が指名確実といわれています。
その他の「ドラフト」使用例
・良い製品ができるかどうかは、ドラフトの段階で明確でしょう。
・有害物質を吸引しないように、ドラフトチャンバーを設置しました。
冬の室内ではコールドドラフトという現象が起きることがあります。

文脈によって異なる意味を表す「ドラフト」。
和製英語とはいえ、日本語になじんでいる表現で使用頻度も多いので、正しく理解して適切に使っていきたいものですね。

”draft”の意味

”draft”は、複数の意味を持つ英語で、おもに名詞と動詞2つの用法があります。
名詞の場合は、「原稿」や「下書き」、「スケッチ」などの他、「通風装置」や「すきま風」といった意味を表します。
動詞の場合は、「原稿を書く」、「下書きする」、「設計図を描く」と訳されることが多いです。

辞書では以下のように定義されています。

  • a piece of text, a formal suggestion, or a drawing in its original state, often containing the main ideas and intentions but not the developed form
    原文のまま、形式的な提案のまま、あるいは図面のまま
  • to write the first version of a document such as a letter, essay, or law, which may have details added, changed, or corrected later
    手紙、エッセイ、法律などの文書の最初のバージョンを書くこと、後で詳細が追加、変更、または修正される可能性がある

参考:Cambridge Dictionary

”draft”が示すおもな意味を簡単に説明していきましょう。

  • 「下書き」「草案」
    あらゆる文書の原稿のことで、小説の下書きや論文の草案などを指して使われます。
    ビジネスプランやデザインにおいて、初期段階の未完成な原案も”draft”で表現されます。
  • 「すきま風」「通風」
    建物の中の空気の流れや通り抜ける風のことも、英語では”draft”で表現します。
    たとえば、窓のすき間から入ってくる冷たい風や、火を燃やすための送風などですね。
    「原稿」や「下書き」とは全く違う意味ですが、英語ではわりと頻繁に登場する意味ですので覚えておきましょう。
  • 「銀行の手形」「小切手」
    銀行が顧客の代わりに支払いを約束する「手形」も”draft”と言います。
    少し専門的で難易度の高い解釈ですが、覚えておくといざというときに役立つでしょう。
    銀行の手形であることを強調したい場合は”bank draft”と表現することもありますよ。

”draft”の発音記号と読み方はアメリカ英語とイギリス英語で異なります。

アメリカ英語 /dræft/「デュラァフトゥ」
イギリス英語 /drɑːft/ 「デュロァフツ」

どちらも、わたしたちが普段話している「ドラフト」の発音とは違うため、英会話では特に注意が必要です。

”draft”は、古英語の”dræft”(引くこと、引く力)が語源といわれています。
さらに古いゲルマン語”drahtą”に由来しており、徐々に「書くこと」や「空気の流れ」などの意味が派生していきました。
後に、軍事や商業をはじめ、多くの技術的な文脈で確立されるようになり、アメリカ英語として定着しました。

”draft”を使った例文

”draft”を使った例文

文脈によっていろいろな解釈ができる”draft”の例文を紹介します。
動詞と名詞2つの用法に分けてみていきましょう。

動詞として使われる”draft”

Aさん
They hired an architect to draft the plans for their new home.
訳)彼らは、新しい家の設計図を作成するために建築家を雇いました。
Aさん
She is in the middle of drafting a letter to her lawyer.
訳)彼女は、弁護士に宛てた手紙を下書きしているところです。

「原稿」「下書き」を意味する名詞の”draft”

Aさん
The author sent the draft copy of her essay to the publisher.
訳)著者は、出版社にエッセイの原稿を送りました。
Aさん
I need to make some changes to the draft of my speech before submitting it.
訳)提出前、スピーチ原稿にいくつか修正を加えなければなりません。

「すきま風」を意味する名詞の”draft”

Aさん
The room was cold because of the draft coming from the window.
訳)窓からすきま風が入ってきて、部屋が寒かったです。
Aさん
We felt a draft coming in through the window.
訳)わたしたちは窓から風が吹き込んでくるのを感じました。

「銀行手形」「小切手」を意味する名詞の”draft”

Aさん
The company issued a bank draft to pay for the goods.
訳)会社は商品の支払いのために銀行小切手を発行しました。
Aさん
I used a bank draft to make payment to an overseas vendor.
訳)海外の取引先に支払うために銀行手形を利用しました。

”draft”の類義語

”draft”は、「下書き」や「草稿」を表す他の英語に言い換えが可能です。
”draft”と似たような意味を持つ類語を例文とともに紹介します。

outline

”outline”は、「外形」「概要」「要点」を意味する英語です。
日本語でもカタカナで「アウトライン」と言いますよね。
大まかな構成を示したり、内容を短くまとめたりしたものを指し、”draft”と同様、報告書やレポートの草稿を表現するときに使われます。

Aさん
I created an outline to clarify my goals.
訳)自分の目標を明確にするため、アウトラインを作成しました。

sketch

”sketch”は、絵やデザインの「下書き」や「原画」を意味する英語です。
”draft”よりも抽象的で、初期の草案や大まかな描写、物事の概略を表現するときに使われます。

Aさん
The artist sketched the landscape before painting it.
訳)画家はその風景を描く前にスケッチしました。

rough

”rough”は、「粗い」や「乱暴な」を表す形容詞としてで使われることが多いですが、
可算名詞として、「下書き」「概要」「未完成品」という意味も持っています。

Aさん
We received an estimate with some roughs of the proposed housing development.
訳)私たちは提案された住宅開発の概要を含む概算を受け取りました。

blueprint

”blueprint”は、「設計図」「計画書」を意味する英語です。
建築や製造業界、情報技術の分野でよく用いられる言葉で、日本語では「青写真」とも言われています。

Aさん
The engineers created a detailed blueprint for the new building.
訳)エンジニアたちは、新しいビルの詳細な設計図を作成しました。

まとめ

ビジネスシーンだけでなく、日常のいろいろな場面で耳にすることの多いカタカナ言葉「ドラフト」について、英語”draft”の意味と使い方、類義語を紹介しました。

「ドラフト」は、英語”draft”をカタカナ表記した言葉で、日本語として浸透した和製英語です。
”draft”は、おもに動詞と名詞2つの用法があり、文脈によってさまざまな意味を持つ単語です。
カタカナ言葉を英語にするときは、本来の意味を再確認し、誤った解釈のまま使ってしまわないように注意しましょう。

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