この「ことわざ」、「英語」で何と言う?シリーズ、今回は、「酒・盃」のつく「ことわざ」を英語に翻訳してみました。
アルコールの一種であるエタノールが含まれる飲料のことを「酒」といいます。酒は古くから向精神薬として存在し、その歴史は古く有史以前から作られていたと言われています。
酒にはストレス解消や疲労回復などの効果があるといわれている反面、アルコール依存症や生活習慣病など病気への影響もあるとされているため、法律で規制している国がほとんどです。なかにはイスラム教のように宗教上、飲酒を禁止しているところもあります。
そんな「酒・盃」のつく「ことわざ」を今回は5つ選んで英語に訳しました。
1. 酒が酒を飲む
「酒が酒を飲む」は、お酒は飲んで酔えば酔うほどさらに飲んでしまうという意味の「ことわざ」です。酒の飲み始めは自制心がありますが、飲み続けるほどに自制心をなくし、ガブガブと飲んでしまうことも……。お酒の飲み過ぎには気をつけたいものですね。
英語では
“Alcohol makes people drink alcohol.”
と翻訳することができます。
”A make B ~”で、「AがBに~させる」という使役の形になります。ここでは直訳で「酒が私に酒を飲ませる」という意味です。
上記のことわざは、元々「人酒を飲む 酒酒を飲む 酒人を飲む」の一部で、その真ん中の部分です。
そのことわざの意味は、「人が酒を飲むとき、始めのうちは自制心をもって飲んでいるが、やがて酔いが回ってくると酒が酒を飲むように人に酒を飲ませ、ついには酒が人を飲んでしまう」という意味です。
長いことわざをフルで英語に訳すと、次のようになります。
“People drink alcohol, and alcohol makes people drink alcohol, and eventually, alcohol makes people drunk.”
こういった状況を避けるために、「酒に飲まれるな」という注意表現もありますね。
訳)酒に飲まれるな。
”booze”は「酒」という意味です。
2. 酒は百毒の長
「酒は百毒の長」は、酒は飲みすぎると健康に害を及ぼし、あらゆる病気の元になるという意味の「ことわざ」です。
英語では
“Alcohol is the most harmful poison.”
と翻訳することができます。
”harmful”は形容詞で “有害な、害になるという意味です。
また、英語には酒に関連した「ことわざ」として
“Good wine engenders (makes) good blood.”
というものがあります。
この「ことわざ」は直訳すると「いいワインはいい血を作る」という意味で、”engender”は、生み出す、醸し出すといった意味です。
また、「酒は百毒の長」と反対の意味を持つ「酒は百薬の長」という「ことわざ」があります。
英語では
“Alcohol is the most effective medicine.”
と翻訳することができます。
この「ことわざ」は、適量の酒は良薬よりも効果があるという意味があります。適量ならば良薬になり、過ぎれば毒になる。なんにせよお酒の飲み過ぎには注意が必要ですね!
“But if you drink it too much, it will affect your health.”
(しかし、飲み過ぎると、健康に害を及ぼすだろう。)
訳)アルコールは百毒の長だと思いますか?
訳)いや、全くそうは思わないよ。飲みすぎなければ、良い薬にもなり得ると思うよ。
3. 即時一杯の酒
これは、「後でたくさんの酒を飲ませてもらうより、今一杯の酒が欲しい」という意味です。
類似のことわざに、「死んで千杯より生きて一杯」というものがあります。
中国、晋の時代、張翰は気ままな生活をしていたときに、人から「後世に名を残したくないのか」と言われて、「死後の名誉より一杯の酒が大事だ」と答えたという逸話に基づくことわざです。
このことわざを英語になると、こうなります。
“An immediate cup of sake is better than a lot of sake later.”
酒好きの人には、共感できることわざだと考えられますが、酒の部分を現金に置き換えても同じことが言えるかもしれません。
訳)私は日本酒よりハイボールの方が好きです。
訳)仕事の後に、即時一杯のハイボールを飲むのが好きです。
4. 盃に推参なし(さかずきにすいさんなし)
「盃に推参なし」は、酒の席で酒を進めるのに身分の上下は関係ないという意味の「ことわざ」です。お酒の席では身分も関係なく、無礼講で楽しもうという意味ですね。
英語では
“There is no difference of status in a drinking party.”
と翻訳することができます。
酒席にあたる“drinking party”は、いわゆる「飲み会」という意味です。
訳)会社の飲み会に行くのは好きですか?
訳)いや。会社からの飲み会の誘いは断るよ。
訳)なぜ、断るの?
訳)同僚が上司にお世辞を言ってるのを見たくないから。
”flatter”は「お世辞を言う」という意味ですが、酒の席て無礼講が通用する職場は、ごくわずかだと考えられます。
5. 酒入れば舌出づ
これは中国のことわざで、「お酒を飲むと、人はおしゃべりになり失言する」という意味です。
このことわざを英語にすると、次のようになります。
“Alcohol makes people talkative and misspeak.”
ふだん無口な人がお酒が入ると、急に饒舌になるということはありますね。”talkative”は「おしゃべりな、饒舌な」という意味です。無口であまり話さない人がお酒が入ると、おしゃべりになり失言するというのはありがちです。
訳)あなたはお酒を飲むとどうなるの?
訳)アルコールは僕を陽気にして、おしゃべりにするよ。
訳)あなたはふだん寡黙だからね、それを聞いて嬉しいわ。飲みに行きましょう。
6. ワインの中に真実あり
これは元々イタリア語のことわざで、イタリア語では、”In vino veritas”で、”vino”は「ワイン」、”veritas”が「真実」の意味です。
意味が通じるように、英語にすると、”There is truth in wine.”となります。
ワインの中に真実があるって、どういうこと?と思われるかもしれませんが、「お酒の席での会話こそが本音である」という意味になります。ワイン好きのイタリア人らしいことわざですね。日本人の場合、”wine”を”sake”に変えて、”There is truth in sake.”「酒の中に真実あり」とするのもありですね。
先ほど紹介した「お酒を飲むと、人はおしゃべりになる」に通じるものがあるようにも感じられます。
7. 海中より盃中に溺死する者多し
これは英語由来のことわざで、「海で溺れて死ぬ人より、お酒の飲みすぎで死ぬ人の方が多い」という意味です。夏になると、海難事故のニュースを耳にすることが多いです。コロナ禍で海水浴に行けなかった人達が、新型コロナの感染が落ち着いてきて、海水浴に行く人が増え、海難事故で亡くなる人の数は、コロナ禍の時より増えています。
海難事故が増えているとは言え、お酒の飲みすぎで病気になり、亡くなっている人の方が断然多いと考えられます。
このことわざの由来となっている英語のことわざは、次のようになります。
“Bacchus has drowned more men than Neptune.”
(海中より盃中に溺死する者多し。)
これを直訳すると、「バッカス(酒の神)はネプチューン(海の神)より多くの人を溺死させてきた」ですが、
機会があれば、英語のネイティブに対して、この英語ことわざを使ってみましょう。おそらく「雑学に精通している人だな」と思われるでしょう。いきなりこの表現を使うのは、唐突過ぎるので、こんな感じで使ってみては、いかがでしょうか。
訳)お酒の飲み過ぎは健康によくないよ。
訳)「海中より盃中に溺死する者多し」だと心に留めておいて。
“Keep in mind …”で「…を心に留めて」はその後にthat 節をもってきて、使い回しが効く表現です。
まとめ
いかがでしたか? 今回は、「酒・盃」のつく言葉にまつわる「ことわざ」をまとめてみました。日本、中国、イタリア、英語圏の「酒・盃」に関連することわざを紹介しましたが、印象深いものや使ってみたいものはありましたでしょうか?
ビールやワイン、日本酒、焼酎、泡盛……美味しいお酒はこの世にたくさんあります。ですが、お酒の飲み過ぎには気をつけようという教訓が込められた「ことわざ」に習い、良薬になる範囲で楽しみたいものですね!
今後も様々な「ことわざ」や「名言」を翻訳していきますので、お楽しみに!