知人と話していてある人物のことになり、「そのひとはどんなひとですか?」と尋ねたところ、

Aさん
Sorry, I hardly know him.

と言われたことがあります。

さて、知人の返事はどういう意味でしょうか?

「ほとんど…ない」を意味するhardly

「ほとんど…ない」を意味するhardly

hardlyには一語で軽い打消しの意味があり、「ほとんど…でない」とか、「少しも…ない」「とても…ない」という意味で使われます。

冒頭の “Sorry, I hardly know him.”は

「ごめんね、彼のことはほとんど知らないんだ。」という意味です。

副詞のhardlyは「ほとんど…でない」という意味で、類似の表現で言い換えることもできます。

hardly:

Sorry, I hardly know him.

not~at all:

I don’t know him well at all.

さらに強い意味の「ほとんど知らない」というI hardly even know

前項の「何かをほとんど知らない」には別の言い方もあります。

Bさん
Mary? I hardly even know her.

(メアリー? まったくと言っていいほど知らないなあ。)

even(副詞) ~でさえも、まったく

この場合のevenには、hardly know(ほとんど知らない)を強める働きがあります。

hardly workingとworking hardの意味の違いは?

久しぶりに会った学校時代の友人から、共通の友人の近況を聞く―そういう場面を思い浮かべてください。

あなたは「同じクラスにいたあの子、どうしているかなあ?」と尋ねました。

Bさん
Bob is hardly working these days.

という友人の答えを聞いて、「ああ、ボブは最近忙しく働いているんだなあ」と早とちりしてはいけません。

正しくは「ボブは最近ほとんど働いていない」で、ほぼ反対の意味になります。

Bob is hardly working these days.

〇 ボブは最近ほとんど働いていない。

× ボブは最近忙しく働いている。

間違いやすいhardlyとhard

hardlyをhardとまちがえないようにしましょう。途中までつづりが同じなので、うっかり取り違えやすい単語です。

・hard (形容詞)堅い、固い、硬い (副詞)熱心に、一所懸命に

上の文例で、もし「ボブは一所懸命に働いている」と言いたければ、hardを使って表現することができます。

Aさん
Bob is working hard these days.

(ボブは最近熱心に働いている)

Bob is hardly working these days. (ボブは最近ほとんど働いていない。)

Bob is working hard these days. (ボブは最近熱心に働いている。)

聞き取るときには、hardly workingと、working hard の単語の位置に注意を向けると、早とちりをしないで済みます。

hardly anyで「ほとんど…ない」という意味

hardlyにanyがついたhardly anyは、「ほとんど…ない」という意味です。

anyが加わることで、「ほとんど…ない」が強まる印象があります。

たとえば久しぶりに入ったレストランで、メニューが新しくなっていたとします。

あなたは今まで食べたことがない料理が増えたのかな、と期待したのですが、そうではありませんでした。

「メニューのデザインが変わっただけで、料理は変わり映えしなかった」ということを友人に話すとしたら、こんなふうにhardly anyが使えます。

Bさん
There are hardly any change in the new menu.

(新しいメニューには、ほとんど変わったものがなかったんだ)

「めったに…しない」という意味のhardly ever

「めったに…しない」という意味のhardly ever

hardlyにeverがついたhardly everは「めったに…しない」という意味の英語表現です。

たとえば、あなたの親戚は遠くに住んでいるので、なかなか会う機会がないことをひとに話すときには、hardly everを使って次のように言うことができます。

Aさん
I hardly ever see my cousins in the United States.

(アメリカにいるいとこたちには、めったに会わないんです。)

なるほど日本とアメリカは遠いからねと、相手も納得できそうです。

これを別の言い方にするなら、almost never を使って言い換えることもできます。

hardly ever:

I hardly ever see my cousins in the United States.

almost never:

I almost never see my cousins in the United States.

hardly と seldom /rarely の違い

hardlyと似た意味で使われる単語にseldomとrarelyがあります。

・seldom(副詞)めったに…しない

・rarely(副詞)まれに、めったに…しない

同じく副詞のhardlyと、seldomまたはrarelyは、どのようにニュアンスが違うのでしょうか。

イギリスの『ケンブリッジ英語辞典』(Cambridge Dictionary)は次のように説明しています。

Rarely, scarcely and seldom are more common in writing than in speaking:

(Rarely, scarcely, seldomは、話しことばよりも書きことばでよく使う)

Hardly and scarcely can mean ‘ almost not at all’ or ‘only just’.

Hardly is much more common than scarcely, and scarcely is more formal:

(Hardlyとscarcelyは「ほとんどない」か「ほんの少し」を意味する

Hardlyはscarcelyよりも一般的で、scarcelyのほうが形式ばっている)

と用法の説明も加えています。

【参考】Hardly ever, rarely, scarcely, seldom – Cambridge Grammar

can hardlyは「とても…できない」という意味

canは「…することができる」という意味をもつ助動詞です。

hardlyと一緒にcan hardlyの形で使うときには「とても…できない」という意味合いになります。

たとえば、自分が大好きなアイドルが結婚するという報道を聞いて

Bさん
I can hardly believe the news!

(そんなニュース、とても信じられないよ!)

というファンの気持ちを表現したいときにもcan hardlyが使えます。

「クリスマスが待ち遠しい」というときに

クリスマスに親しまれている歌のひとつに、Christmas Don’t Be Late(遅れないでクリスマス)があります。

1950年代の発表で、アメリカの歌手ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)もカバーしているこの歌には、次のような一節があります。

We can hardly stand the wait

Please, Christmas, don’t be late

(わたしたちはとても待ちきれない。お願い、クリスマスよ遅れないで。)

これもクリスマスが楽しみで仕方がない、「とても待ちきれない」心情が伝わってきます。

まとめ

この記事では、話しことばでもよく出てくるhardlyを軸に、「ほとんど…でない」「少しも…ない」にもいろいろな表現があることを説明しました。

ことばは、話す場面や内容によって変わることがあります。新しい単語を知ったときには、同じ意味の単語・表現を知っておくと、語彙や表現の幅が広がります。

紹介した例文を、ぜひ会話やチャットにも使って自分のものにしてくださいね。

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