「百日咳」の感染者数が国内で急増しています。国立健康危機管理研究機構の発表によると、今年(2025年)の百日ぜき感染者数はすでに4100人を超え、昨年1年間の累計を上回っています。
ただ、「百日咳」のような感染症の症状の英語説明は、なかなか難しいものです。
この記事では、医療現場で実際に使える「百日咳」に関する英語表現を紹介します。外国人患者とのコミュニケーションをスムーズにするための知識を、ぜひチェックしてみてくださいね。
百日咳の英語表現と基本知識
「百日咳」は英語で「whooping cough(フーピング・コフ)」または「pertussis(パータシス)」と呼ばれています。
医学用語としては「pertussis」が一般的ですが、患者さんとの会話では「whooping cough」の方が理解されやすいでしょう。
例えば、外国人患者さんへの説明では、
Your child may have whooping cough, which is a bacterial infection that causes severe coughing fits.
(お子さんは百日咳かもしれません。これは激しい咳の発作を引き起こす細菌感染症です)
といった表現ができます。
百日咳の症状と経過を英語で説明する
百日咳の経過は3つの段階に分けられます。
Catarrhal stage(カタル期)
“The first stage begins like a common cold with runny nose and mild cough.”
(最初の段階は、鼻水や軽い咳など、普通の風邪のような症状で始まります)
Paroxysmal stage(痙咳期)
“The second stage has severe coughing fits that may end with a ‘whooping’ sound. This stage typically lasts 2-3 weeks.”
(第二段階では、「ヒューッ」という音で終わる激しい咳の発作が特徴です。通常2〜3週間続きます)
Convalescent stage(回復期)
“In the final stage, the coughing gradually decreases over 2-3 weeks.”
(最終段階では、咳が2〜3週間かけて徐々に減少します)
乳幼児の症状説明では下記の表現も覚えておきましょう。
In infants, symptoms may not include the typical ‘whoop’ but can involve apnea, or temporary breathing stops.
(乳児では、典型的な「ヒューッ」という音がなく、一時的な呼吸停止を伴うことがあります)
感染経路や予防法を英語で伝える
例文)感染経路
Whooping cough spreads through respiratory droplets when an infected person coughs or sneezes.
(百日咳は感染者の咳やくしゃみの飛沫で広がります)
例文)予防法
Vaccination is the most effective prevention method.
(予防接種が最も効果的な予防法です。)
外国人患者さんに日本の予防接種スケジュールを説明する際は、
“In Japan, we use a 5-in-1 combination vaccine that includes protection against pertussis. The standard schedule is three initial doses at 2, 3, and 4 months of age, followed by one booster dose 6-18 months after completing the initial series.”
(日本では百日咳を含む5種混合ワクチンを使用しています。標準的なスケジュールは生後2、3、4ヶ月に初回3回接種し、その後6〜18ヶ月後に1回追加接種を行います)
と具体的に伝えると理解しやすいでしょう。
治療法と注意点を英語で説明するポイント
例文)治療法
Antibiotics such as azithromycin are used to treat whooping cough. They work best when started early.
(アジスロマイシンなどの抗生物質が治療に用いられます。早期に開始すると最も効果的です)
例文)注意点
Complete the full course of antibiotics, even if symptoms improve.
(症状が改善しても、抗生物質を最後まで服用することが重要です)
Infants under 1 year may need hospitalization, as they’re at higher risk for complications.
(1歳未満の乳児は合併症のリスクが高いため、入院が必要な場合があります)
抗生物質の服用説明では、文化的な違いに注意しましょう。
例えば、
In some countries, patients stop taking medicine when they feel better, but with pertussis, completing the full course is crucial to prevent relapse and reduce transmission to others.
(国によっては症状が改善したら薬の服用を中止する習慣がありますが、百日咳の場合は再発防止と他者への感染予防のために全ての薬を服用し切ることが非常に重要です)
と説明すると、より良い服薬管理ができます。
百日咳に関連する医療用語
医療現場でよく使われる主な専門用語です。
- Bordetella pertussis: 百日咳菌の学名
- DTaP: ジフテリア・破傷風・百日咳の小児ワクチン
- Tdap: 成人用三種混合ワクチン
- PCR test: 百日咳のPCR検査
- Paroxysmal cough: 発作性咳嗽
- Post-tussive vomiting: 咳の後の嘔吐
- Cyanosis: チアノーゼ
(体内の酸素不足による皮膚の青紫色化。唇や爪、舌、指先などが青みがかった紫色になること)
医療用語を外国人患者に伝える際は、専門用語と日常語を併用すると理解が深まります。
例として、
Cyanosis means a bluish discoloration of the skin or lips due to low oxygen. If you notice your baby’s lips turning blue during coughing, it’s an emergency and you should call an ambulance immediately.
(チアノーゼは酸素不足による皮膚や唇の青紫色化を意味します。赤ちゃんの唇が咳の間に青くなるのに気づいたら、緊急事態なのですぐに救急車を呼んでください)
のように、医学用語の後に症状の特徴や対処法を伝えることがポイントです。
まとめ
百日咳に関する英語表現を身につけることは、国際化が進む医療現場で非常に重要です。基本用語から症状や治療法の説明まで、より伝わりやすい英語表現を使うことで、外国人患者さんに安心感を与え、質の高い医療サービスを提供できます。
日本での感染者増加を踏まえると、ぜひ日常業務で外国人患者対応をイメージしながら練習をしてみてください。
参考文献:
日経メディカル「百日咳が拡大、日本小児科学会が耐性菌増加に注意喚起」
厚生労働省「百日咳」
国立健康危機管理研究機構「百日咳」
CDC “Clinical Features of Pertussis_Pertussis (Whooping Cough) “