近年、日本を訪れる外国人観光客が急増しています。これまで以上に多様な国からの観光客が訪れ、ホテル、飲食店、観光施設、交通機関など、あらゆる現場で英語による接客対応が求められています。しかし、「英語で接客できるスタッフが足りない」「英語で質問されると緊張してしまう」といった現場の声も多く聞かれます。
実は観光業で必要とされる英語力は、難しいビジネス英語ではなく、「現場で通じる実用的な英語」です。本記事では、観光業スタッフが今すぐ現場で活かせる英会話スキルを、よくある課題と解決策、そして使える英会話例を交えながら解説していきます。

参考記事:【英語】地域観光資源の多言語解説整備支援事業

インバウンド需要と英語|インバウンド需要拡大で現場が直面する英語課題と解決策

インバウンド需要の急拡大は現場に多くのチャンスをもたらす一方で、現場スタッフの英語力不足が課題となっています。ここでは、実際の現場でよく直面する5つの問題点と、その具体的な解決策を紹介します。

問題1:細かい文化説明が英語でできない

多くの観光客は日本の文化に興味を持っていますが、神社やお寺、食文化などを詳しく英語で説明するのは難しく感じる人も多いでしょう。

解決策:
難しい単語は使わず、簡単な単語を短文でつなげる説明力を養いましょう。さらに、写真・パンフレット・ジェスチャーなど視覚的な補助を使うと理解が深まります。

問題2:観光英語を学ぶ機会が少ない

日々の業務に追われ、英語を学ぶ時間が取れない現場も多いです。

解決策:
日常業務でよく使う定型フレーズをあらかじめ整理して暗記する方法が有効です。また、職場でロールプレイ形式の英会話練習を取り入れると即戦力になります。

問題3:相手のアクセントが聞き取れない

さまざまな国から訪れる観光客の英語はアクセントもスピードも違います。

解決策:
普段から色々な英語のアクセントを聞く耳慣らしを行いましょう。さらに「もう一度ゆっくり言ってください」と聞き返せるフレーズを準備しておくと安心です。
例:”Sorry, could you say that again more slowly?”

問題4:英語以外の言語で話しかけられる

中国語や韓国語で突然話しかけられて困るケースも増えています。

解決策:
翻訳アプリを上手に活用しつつ、「英語なら対応できます」と伝える準備が必要です。
例:”I’m sorry, but I can help you in English.”

問題5:緊急対応時に英語が出てこない

迷子、体調不良、事故などの緊急時こそ冷静な英語対応が必要になります。

解決策:
事前に「緊急対応用英語スクリプト」を職場で共有し、定期的に練習しておくことが重要です。

英会話例(インバウンド英語の基本)

Bさん
Excuse me. I don’t speak Japanese. Do you speak English?
(すみません。日本語が話せません。英語は話せますか?)

Aさん
Yes, I can help you in English. How may I assist you?
(はい、英語でお手伝いできます。どのようなご用件ですか?)

外国人観光客が喜ぶ!文化説明を英語で行うコツ

外国人観光客が喜ぶ!文化説明を英語で行うコツ

日本に訪れる外国人観光客の多くは、日本独自の文化体験を楽しみにしています。神社仏閣、温泉、食文化、礼儀作法など。こうした文化を英語でわかりやすく説明できれば、お客様の満足度は大きく上がります。しかし、専門用語や歴史的背景を英語で詳しく説明するのはハードルが高く感じがちです。
ポイントは、「難しい説明はしなくていい」 ということです。文化説明に必要なのは完璧な文法や高度な語彙ではなく、簡単で伝わる表現です。短い文でゆっくり説明し、必要に応じてジェスチャーや写真を併用すると理解度が高まります。
たとえば神社を案内する場合、以下のようなシンプルな表現が役立ちます。

使える文化説明フレーズ

  • This is a Shinto shrine.
    (ここは神道の神社です。)
  • People wash their hands here before praying to purify themselves.
    (お参りの前に手を洗って心身を清めます。)
  • You can ring the bell before praying.
    (お祈りの前に鈴を鳴らします。)
  • Please don’t enter the main hall with shoes on.
    (本殿には靴を脱いで入ってください。)
  • Taking photos is allowed, but please turn off the flash.
    (写真撮影は可能ですが、フラッシュはお控えください。)

英会話例(文化説明)

Bさん
What is this place?
(ここは何ですか?)

Aさん
This is a Shinto shrine. People wash their hands here before praying to purify themselves.
(ここは神道の神社です。お参りの前に手を清めます。)

Bさん
Can I take pictures inside?
(中で写真は撮れますか?)

Aさん
Yes, but please don’t use flash inside the main hall.
(はい、本殿の中ではフラッシュを使わないでください。)

文化説明は「知識勝負」ではなく「伝え方勝負」です。覚えたフレーズをそのまま使って、笑顔と身振りを交えれば十分に伝わります。文化紹介は観光スタッフにとって最大のチャンスの一つ。ぜひ積極的に挑戦してみましょう!

英語を軸に多言語対応できるスタッフになる方法

観光業の現場では、英語だけでなく中国語、韓国語、スペイン語、フランス語など、さまざまな言語で話しかけられる場面が増えています。すべての言語を習得するのは現実的ではありませんが、「まず英語で対応できる力」があると、多言語対応の基盤となります。
ポイントは、英語を「中継言語」として活用する柔軟さです。英語が使えるだけで、他言語話者とも基本的なコミュニケーションを取ることが可能になります。そして、どうしても英語が通じない場合は、翻訳アプリや指差しツールを積極的に活用しましょう。
「英語で対応できます」と最初に伝えられるフレーズを準備しておくとスムーズです。

使える多言語対応フレーズ

  • I’m sorry, I don’t speak Chinese. But I can help you in English.
    (申し訳ありません、中国語は話せませんが、英語なら対応できます。)
  • Please speak slowly. I will do my best to understand.
    (ゆっくり話してください。一生懸命理解します。)
  • Let’s use a translation app to help.
    (翻訳アプリを使いましょう。)
  • Could you type your request here?
    (ここにご要望を入力していただけますか?)

英会話例(多言語対応)

Bさん
(中国語で話しかけられる)

Aさん
I’m sorry, I don’t speak Chinese. But I can help you in English.
(申し訳ありません、中国語は話せませんが、英語なら対応できます。)

Bさん
OK, I can try English. Where is the nearest station?
(わかりました。英語で頑張ります。最寄りの駅はどこですか?)

Aさん
The nearest station is just 5 minutes straight ahead.
(このまま5分まっすぐ行ったところにあります。)

多言語対応は「英語ができる人材」がますます重宝される時代です。英語を土台に置きながら、ツール活用や柔軟な対応力を身につけておくと、現場で非常に頼りにされます。

団体対応を英語で!|ツアー客をスムーズに案内するコツ

団体対応を英語で!|ツアー客をスムーズに案内するコツ

観光業の現場では、個人旅行客だけでなく、団体ツアーや学校旅行、社員旅行など、グループで訪れるお客様も数多く対応します。団体客対応では、一人ひとりの細かい要望に応じるよりも、「全体を安全にスムーズに誘導する英語力」が重要になります。
ここで大切なのは、短くはっきりとした指示英語を使うことです。長い説明は聞き取ってもらえないことが多いため、簡潔に行動を促す表現を覚えておきましょう。また、集合時間、移動先、注意事項を繰り返し丁寧に伝えることもポイントです。

使える団体案内フレーズ

  • Good morning everyone! Please follow me.
    (皆さん、おはようございます!こちらにお進みください。)
  • Please stay together and watch your step.
    (はぐれないように、足元に注意してください。)
  • We will meet back here at 3 PM.
    (午後3時にここに集合しましょう。)
  • Please listen carefully.
    (注意して聞いてください。)
  • If you have any questions, feel free to ask.
    (質問があれば遠慮なく聞いてください。)

英会話例(団体対応)

Aさん
:Good morning everyone! Please follow me.
(皆さん、おはようございます!こちらにお進みください。)

Aさん
Please stay together and watch your step. We will meet back here at 2 PM.
(はぐれないように、足元に注意してください。午後2時にここに戻ってきてください。)

Bさん
Thank you. We’ll follow your lead.
(ありがとうございます。案内をお願いします。)

団体対応は一見難しそうですが、実はパターンを覚えておけば安定して使える英語が多いのが特徴です。毎回同じフレーズを何度も使うので、練習すれば誰でも自然に口から出てくるようになります。声の大きさと笑顔も大切な接客スキルです。

接客スキルと英語|現場で毎日使える万能英会話フレーズ

接客スキルと英語|現場で毎日使える万能英会話フレーズ

観光業の英語接客では、毎日繰り返し使う「定番フレーズ」がいくつもあります。これらの「万能フレーズ」をしっかり身につけておくだけでも、接客への自信が大きく変わります。ポイントは、短く・はっきり・笑顔で。難しい英語よりも、相手に安心感を与える優しい声かけが大切です。
どのシーンでも使える汎用性の高い表現を、状況別にまとめます。

使える接客フレーズ

  • May I help you?
    (いらっしゃいませ。何かお手伝いできますか?)
  • Please wait a moment.
    (少々お待ちください。)
  • Here is your room key / ticket / receipt.
    (こちらがルームキー/チケット/レシートです。)
  • Enjoy your stay / trip / meal!
    (ご滞在/ご旅行/お食事をお楽しみください!)
  • Have a nice day!
    (良い一日を!)

英会話例(チェックイン時)

Bさん
Hello, I have a reservation.
(こんにちは、予約しています。)

Aさん
Welcome! May I have your name, please?
(ようこそ!お名前を頂戴できますか?)

Bさん
Smith.
(スミスです。)

Aさん
Thank you, Mr. Smith. Here is your room key. Enjoy your stay!
(ありがとうございます、スミス様。こちらがルームキーです。ご滞在をお楽しみください!)

日常の観光接客では、このような短い会話の積み重ねが基本です。最初はゆっくりでも大丈夫。何度もロールプレイ練習を繰り返すうちに自然と体に染み込みます。
こうした定番フレーズの「型」を覚えておけば、様々な場面に応用が効き、外国人観光客とのやりとりもスムーズになります。通じる英語こそが観光業の接客現場で最も大切なスキルです。

まとめ

インバウンド需要の拡大により、観光業の英語力は以前にも増して「現場力」が求められています。今回ご紹介したように、難しい表現よりも「通じる・安心させる・すぐ使える英語」を身につけることが、現場スタッフにとって最強の武器になります。
完璧である必要はありません。日々の短い練習と少しの自信が、確実に現場対応力を高めてくれます。ぜひ、毎日の接客の中で、今日からこのフレーズ集を活用してみてください!

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