イタリア南部、バジリカータ州の小さな町マテーラには、石の迷宮 (A Labyrinth of Stone)のような風景が広がっています。そこには、凝灰岩の崖をくり抜いてつくられた洞窟住居(サッシ)や岩窟教会が、街の斜面にびっしりと張りつくように存在しています。
この地には、なんと旧石器時代から人間が住み続けてきたとされ、その歴史は数千年。サッシと呼ばれる洞窟住居は1000棟以上も残っており、今でも店舗や工房として使われているものもあります。その保存状態のよさと、人類の暮らしの歴史を語る価値の高さから、マテーラの「洞窟住居と岩窟教会公園」は1993年にユネスコ世界遺産に登録されました。
本記事では、マテーラの魅力を日本語でわかりやすく紹介しながら、英語での表現や会話フレーズも学べる内容になっています。
マテーラの洞窟住居と岩窟教会公園とは?

マテーラは、イタリア南部バジリカータ州に位置する歴史ある町です。町の中心には、「サッシ(Sassi)」と呼ばれる洞窟住居が斜面に沿って密集しています。自然の岩をそのままくり抜いて住まいとしたこの住居群は、人類の住居史における大きな転換点を示すものとされています。
「サッシ」とは、イタリア語で「石」を意味する“サッソ(sasso)”の複数形。マテーラでは、この岩場に掘られた住居群がふたつの大きな地区に分かれています。北側のサッソ・バリサーノと、南側のサッソ・カヴェオーソです。
中世になると、この地に修道士たちが移住し、岩窟教会(ルペストリアン・チャーチ)を築きはじめました。現在もその数は130以上を数えます。洞窟住居や岩窟教会が織りなす独特の風景は、まるで映画の世界に迷い込んだようです。
映画のロケ地として
実際に、映画『パッション』(2004年)や『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)など、多くの作品がマテーラで撮影されています。映画ファンにもたまらない世界遺産です。
アクセス方法
マテーラへは、イタリア南部の主要都市ナポリからのアクセスが便利です。
ナポリ中央駅からバスで約4時間。バーリ(Bari)駅から電車とバスを組み合わせれば2時間ほどで到着します。観光地化が進んでいるとはいえ、まだ大都市の喧騒からは離れた、落ち着いた雰囲気が味わえる穴場的スポットです。
資産の歴史

マテーラの土地は、「ムルジェ」と呼ばれる石灰岩台地に広がっています。この土地は、雨や地下水、川によって長年にわたり侵食され、自然にできた洞窟が多く残されました。
旧石器時代から人間がこの洞窟に住み始め、青銅器・鉄器時代には洞窟をさらに掘り広げて居住空間を整え、周囲には石造の壁や塔を築きました。トゥファ(凝灰岩)と呼ばれる柔らかい石材を利用し、地下に貯水槽までつくったといいます。
8世紀以降、この地にはキリスト教修道士が移り住み、祈りの場として多くの岩窟教会を建設。さらに11世紀以降は、農民が定住し、洞窟の前に石造の家屋が建てられるようになりました。
しかし、20世紀になると極度の貧困が広がり、衛生状態も悪化。政府は1952年に住民約15,000人を郊外に移住させました。1993年の世界遺産登録以降、再評価が進み、再び人が戻り始めています。
世界遺産としての価値
The Sassi and the Park of the Rupestrian Churches of Matera(マテーラのサッシと岩窟教会公園)は、1993年に世界遺産に登録されました。
UNESCO World Heritage Convention:The Sassi and the Park of the Rupestrian Churches of Matera
登録理由とは?
世界遺産に登録された理由は、主に以下の点でユネスコの評価を受けたことです。
- 人類の居住史における継続性の象徴
- 自然と人間の共生が見られる独特の景観
- キリスト教信仰の歴史を物語る岩窟教会群
- 中世から近代にかけての農村社会のあり方を反映
また、人工と自然、信仰と生活が見事に融合した都市計画のあり方としても、極めてユニークな価値を持っています。
覚えておきたい英会話フレーズ
マテーラの街並みや歴史に感動したとき、英語でその気持ちを伝えられたら素敵ですね。旅先で使える会話フレーズを紹介します。
訳)ここって、石器時代から人が住んでたんだって!
訳)信じられないね。この洞窟には歴史がぎっしりつまっているね。
訳)岩をくりぬいたあの教会、見て!
訳)こんなものを昔の道具で作ったなんてすごいよね。
訳)いまでもこの洞窟で暮らしてる人やお店があるんだって。
訳)歴史と現代が融合してる感じだね。
おすすめポイント

マテーラには見逃せない見どころがたくさんあります。洞窟住居や岩窟教会、大聖堂など、歴史と美しさが調和した魅力を紹介します。
洞窟住居群(サッシ)
サッシには、天然の洞窟を利用したものと、人の手で掘られた人工の洞窟が混在しています。現在確認されているサッシは3000棟以上! 中には、洞窟同士が迷路のように連なり、上に住居、下に家畜のスペースという構造になっているものもあります。
岩窟教会群
130以上もある岩窟教会の中でも、特に有名なのがサンタ・マリア・デ・イドリス教会。岩山にそびえ立つ十字架と、内部に描かれたフレスコ画は見応え十分です。
そのほかにも次のような個性的な教会が点在しています。
- サンタ・ルチア・アッレ・マルヴェ教会
- マドンナ・デッレ・ヴィルトゥ教会
- サン・ニコラ・デイ・グレーチ教会
ドゥオーモ(カテドラーレ)
チヴィタ地区の丘の上に建つロマネスク様式のドゥオーモ(大聖堂)は13世紀の完成。内部には、マテーラの守護聖人である「聖母ブルーナ」を描いたフレスコ画があります。白と金色で飾られた荘厳な空間は、一見の価値ありです。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
マテーラのサッシと岩窟教会は、人々の暮らしと信仰、自然との共生の歴史を肌で感じられる貴重な場所です。
ぜひ、次の海外旅行では英語で感動を語り合える旅をしてみませんか?
旅行先で学んだ英語は、記憶にも心にも深く残るもの。世界遺産をめぐる旅は、語学力だけでなく、自分の視野や価値観も広げてくれます。新しい文化や人々との交流が、あなたの英語をもっと豊かにしてくれることでしょう。
Let’s explore the world with English — one heritage site at a time!
