長期の留学や海外駐在をしていないと、意外と外国の祝日について知る機会はないもののようです。
日本で生まれ育って当たり前と思っていたお正月の過ごし方なども、外国と比べてみると大きく違っていたり・・・と、今回は、そんな海外の祝日について、英語留学や旅行でも多くの日本人が訪問する「アメリカ合衆国」の祝日についてご紹介します。
楽しみながら文化や考え方の違いを学びましょう!
はじめに
私はアリゾナ州で語学学校に通いながらビジネスを勉強していました。
アメリカでの生活は1年以上になり、一通りアメリカの1年間の流れを体験したことになります。生活の中心は学業ではありますが、アメリカで生活していると日本では感じることがないアメリカの雰囲気を味わえます。
アメリカの雰囲気を味わうことに代表されるのが「祝日」です。私が通っている語学学校には様々な国から留学生がやってきますが、必ずと言っていいほど、それぞれの国の「祝日」が話題にあがります。
日本にいるときにはあまり意識することがなかった国民の休日ですが、アメリカにいるとそれぞれの祝日の背景や、楽しみ方というものが明確に定義されている印象を受けました。
今回はそんなアメリカの祝日について、私なりの解釈や経験をもとに紹介したいと思います。今後、アメリカで生活する予定がある方は、アメリカの文化を知るうえでも必ず役に立つことなので、参考知識程度に知っておくといいでしょう。
祝日が少ないアメリカ
2017年時点で、アメリカの祝日の数は年間10日。それに対して日本の国民の祝日は年間15日。加えて日本ではゴールデンウィークやシルバーウィーク、お盆休み、年末年始休暇などがあるため、一年間のうちに大型連休の機会が複数存在します。
しかし、アメリカではゴールデンウィークなどの長期休暇は存在しません。それどころか、1月2日から仕事が始まり、大学なども学校によっては1月2日から授業が始まります。
実際に医学を勉強している私の友人は、1月2日から授業が始まり、年末年始に休めたのはクリスマスイヴの午後とクリスマス当日のみ。その友人曰く、アメリカでは特に珍しいことではないとのことでした。祝日が多い国の日本人の私からすれば、驚くばかりでした。
アメリカの祝日は大きくわけてふたつの制度があります。ひとつは連邦政府が定める「Federal Holidays」もうひとつは州政府が定める「State Holidays」です。Federal Holidaysがアメリカ全土がお休みになる国民の休日に該当し、State Holidaysはその州が定める祝日で、州によって異なります。
さらに、不思議なことに国民の休日であるはずのFederal Holidaysでありながら、企業や学校のすべてがお休みになるとは限りません。例えば、10月の「Columbus Day」はFederal Holidaysのひとつで国民の休日に該当しますが、私が通っている学校は通常授業です。レストランなどのお店も通常営業のため、祝日の雰囲気がまったくありません。
このようにアメリカでは祝日に対する概念が日本とは少し異なります。
働き過ぎのアメリカ人?
国民の休日の数ですべてを判断することはできませんが、個人的には日本人は日頃からあまりにも働きすぎのため、年に複数回の大型連休があっても良いのではないかと思います。
対して、アメリカでは夕方の5時がきたら一斉に仕事を切り上げるので、日頃から家族との時間や自由な時間は確保しやすいのです。そのため、大型連休がなくとも、なんとかなっているのかもしれません。
しかし、インターネットの発達により、常に世界中と繋がるようになってからは、アメリカの労働環境も日本同様に変わりつつあるようです。特に、都市部の金融機関やECサイト系の小売店などは深夜まで残業しているのはザラだとか。
私が通っているビジネスのクラスの先生は、医療薬を開発する会社に勤めていて、ある薬品を独占的に取り扱うほどの成功者。その先生はインターネットが発達したいま、常に注文や商材のやりくりの手間が発生してしまい、12時間労働が普通になったとのこと。
さらにアメリカ国内での時差もあるため、その影響も受けてしまいます。アリゾナの早朝時間に、すでにニューヨーク市場が動きだしているため、平日は特に大変だそう。そんな毎日を過ごしていると、滅多にない祝日で一息つけるのが本当に嬉しいのだとか。
私が日本の祝日の日数や大型連休の話をしたところ、びっくりした顔をしながら日本の祝日制度をうらやましがっていたのが印象的でした。私の個人的な感覚ですが、人生リラックスして生きているように見えるアメリカ人も、日本人同様に猛烈に仕事をしている人はかなりの数確かに存在しています。
そういう意味においては、日本は祝日が多く、国全体が一斉に休む連休も多いため、まだマシなのかもしれませんね。
代表的な祝日とその過ごし方
このような社会的背景を受けてなのか、アメリカの祝日はそもそもが貴重な休みの機会なので、それぞれで「祝日の過ごし方」というものが存在します。ここでは、代表的な祝日の一部を紹介します。日本には存在しない祝日があるため、アメリカの文化を知るためにもぜひ参考にしてください。
New Year’s Day
アメリカには日本のようなお正月という概念がありません。日本では「さあ、気持ち新たに!」となる元旦ですが、アメリカでは祝日ではあるものの、ごく普通の祝日で、人によってはクリスマスツリーの片付けをしたりして過ごす程度です。
ニューヨークなどの大都市では、12月31日の夜からカウントダウンイベントなどが開催され盛り上がりますが、私が住んでいるアリゾナ州では特に何事も起こることなく静かに過ぎて行く祝日です。
アメリカでは、1月1日は日本と異なり、さほど盛り上がらないということを知っておくといいでしょう。ただし、アメリカのどの都市にも必ずある「日本人会」のようなコミュニティでは、お餅つきやおせち料理を作って集まるなど、日本式の過ごし方がされていますので、日本式の年明けを迎えたいという人は日本人コミュニティを探すのもいいかもしれませんね。
ちなみに私は、年始をハワイで過ごした経験があるのですが、オアフ島の出雲大社では、元旦から多くの日系の家族が「初詣」に訪れていて、やはり日本式のお正月気分は気持ちを切り替える良い機会だと感じたことがあります。
Martin Luther King Jr.’S Birthday
1月16日は「マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師」の誕生日のため祝日です。おそらく日本人でも聞いたことがあるであろう、かの有名な台詞「I have a dream…」から始まる演説を行った人です。1964年にはノーベル平和賞を受賞した、アメリカを代表する人物と言えるでしょう。
いまよりも遥かに黒人差別が激しかった時代に、自身も数々の差別を受けてきたキング牧師が、人種差別撲滅や各人種の協和を主張した演説は、多くのアメリカ人の心を打ちました。
そんなキング牧師の誕生日を祝う休日は、国民の休日であるFederal Holidaysに該当しますが、ほとんどの企業や学校は平日同様です。
Memorial Day
毎年5月の最終月曜日が国民の祝日となります。日本語にすると「戦没者追悼記念日」ですが、そもそもはアメリカ南北戦争で亡くなった兵士を讃えるための祝日でしたが、いまではアメリカが関与した戦争で戦士した人すべての人を讃えるものとして考えられています。
月曜日が祝日となるため、3連休が取りやすく多くの人が休暇をとりやすい貴重な週末です。レストランやお店なども変則的な営業スタイルになるため、うっかりいつもの感覚でレストランに行くと閉まっているなんてことも。
Independence Day
7月4日はアメリカの独立記念日です。珍しくアメリカ全体で盛り上がる祝日のひとつで、夜にはいたるところで花火が打ち上げられます。海沿いのカリフォルニア州のサンディエゴなどでは大きな花火大会が開催されるため、駐車場は見つからず、身動きがとれないほどに混雑します。
アメリカでは「Independence Day」と表現せずに「4th of July(フォースオブジュライ)」という言葉が使われるのが一般的。休日開けの学校や会社では、いたるところで「What did you do 4th of July?」という会話が聞こえてきます。
本格的な夏の訪れを意味し、アメリカ全土で盛り上がるため、個人的には1年の上半期で一番盛り上がる祝日だと思っています。
Labor Day
9月第一月曜日は日本語で言うところの「労働者の日」ですが、休みの企業もあれば通常営業の企業もあるなどバラバラな印象です。人によっては休みと言った感じですが、3連休が取りやすくなるため道路や空港は混雑傾向。
ちなみに私が通っている学校はお休みになりましたが、別の学校は通常授業だったようで、教育機関でもばらつきがあるようです。
Columbus Day
ほぼ平日として考えてよい国民の祝日です。元々はクリストファー・コロンブスがアメリカ大陸を発見したことことを祝う日ですが、企業や学校、レストランなどほとんどが通常モード。事実、Columbus Dayを休日にしている企業はアメリカ全体のほんの10パーセント程度。
祝日でありながら、祝日でない不思議な一日です。
Veterans Day
毎年11月11日は日本にはない休日のひとつ「退役軍人の日」です。アメリカのために戦ってくれた人たちを讃えるための特別な日で、いたるところでミリタリーの人たちを讃えるイベントが開催されます。
学校では、街でベテランの人たち(退役軍人)を見かけた際にはお礼を言うようにと言われます。日本では少し考えられないことですが、アメリカでは軍人はヒーローなのでこのような文化があるのです。
Thanksgiving Day
毎年11月23日は感謝祭のため、アメリカ全土が休日モード。道路や空港は大混雑。日本でも有名な「ブラックフライデー」や「サイバーマンデー」などがある週です。どこの家庭でも家族全員が集まってターキーなどの伝統料理をお昼過ぎから楽しむのが一般的です。
個人的にはThanksgiving Dayをきっかけにアメリカは年末モードになる印象があります。日本で例えるならばクリスマスが終わると、仕事納めや、忘年会シーズンになりますが、それに似ている感じです。Thanksgiving Dayがきたら「今年も終わりだなあ」と感じます。
Christmas Day
クリスマスはアメリカで最も盛り上がる祝日でしょう。レストランやショッピングモールすらもお休みになることが多く、Thanksgiving Day同様に家族とパーティーを過ごすのが一般的です。
Thanksgiving Dayが終わったと同時にすべてがクリスマスモードに変わり、ツリーやギフト、カードなどが店頭に並び、お店のBGMも一斉にクリスマスソングに切り替わります。どこに行ってもクリスマスモード全開なので、日本人からすると、少し疲弊してしまうほどに盛り上がります。
12月26日には、それまで売られていたクリスマスギフトなどすべてが一斉に半額セールになることから、意外にお買い物もしやすいシーズンでもあります。
まとめ
ご紹介したようにアメリカの祝日は数こそ10日間あるものの、実際には祝日にはならないものも含まれているので、実際には賞味5日間程度しか祝日はありません。そう考えると日本の方が祝日や大型連休は恵まれています。
アメリカの祝日はとても貴重なため、祝日の過ごし方がほぼ決まっていて、いずれも家族と過ごすことが一般的です。
アメリカの祝日はアメリカの文化を写しているとも言えるので、ぜひ気にとめてみてください。