お正月に関する文化や風習は日本独自のものも多く、外国人の方に説明する時には戸惑ってしまう事も。

今回は、日本の代表的なお正月文化であるお年玉とお正月飾りについて、そのルーツと実は外国でも行われている似たような風習についてご紹介します!

お年玉の由来を見てみよう

お年玉とは、一般的にお正月に目上の人から目下の人へお金を贈る風習を指します。現在は大人が子供へ、先輩が後輩へ、上司が部下へ、など色々なシーンでお年玉が贈られ、金銭だけでなく物品である場合もあります。

お年玉の由来は、元々お正月に舞い降りるとされる歳神様にお供えした物を、人間がお下がりとして頂戴したのが始まりとされています。歳神様にお供えした物は魂や神力が宿り、とてもありがたいものとしてお下がりを受けますが、ありがたい物をもらった、という意味の「賜物」(とだま)が「としだま」になり、「お年玉」になった説、もしくは魂が宿った、という意味で「魂」が「玉」に変化し、その年の魂を頂戴するという意味で「お年玉」になった説があります。

元々は、供物をお下がりとして受け取っていたので、古来では刀や扇などの供物を町民が受け取っていたのがお年玉のルーツであり、現在はポチ袋の中に金銭を入れて目上の人から目下の人に渡す風習として残りました。なお、お年玉の金額は渡す人の年齢や身分によって左右されますが、これといった相場が決まっているわけでもなく、各家庭や企業間で決められていることが多いです。また、金銭だけでなく一般的な年賀状である「お年玉つき年賀はがき」のように、物品や抽選などで使用される事も多くなりました。

海外でもお年玉はあるの?

日本のお年玉の風習は、主に近隣のアジア圏で似た風習があります。例えば、お隣の中国では大人が子供にお金を贈ることで、その年に子供を襲う災いを避けられる「圧歳銭」の風習がありますが、これは中国語の災いを表す「祟」と新しい年の「歳」の発音が同じことから来ています。

また、中国には大人から大人に紅包と呼ばれる赤い小さな袋に入れたお金を贈る「利是」の風習もあります。利是と似た風習に、赤い文字で印刷されている紙幣を赤い袋に入れて贈るベトナムの「ムントゥオイ」や、台湾の「紅包」があります。これらは中国の「赤い色が一番おめでたい色」という文化から影響を受けて広がった風習です。なお、台湾の紅包は子供が成長して独立すると、今度は子供から大人へお金を贈るようになり、立場が逆転します。

ちょっと変わったお年玉の風習が、韓国の「歳拝金」です。目上の人から目下の人へお金を贈る、という点では日本のお年玉と共通していますが、歳拝金ではなんと目上の人へ服従を誓ったり、土下座をしたりしなければお金がもらえません。

最後に、インドではヒンドゥー教の暦に従い、10月から11月にインドのお正月にあたる「ディワリ」を紹介します。ディワリの風習の中に、ヒンドゥー教の神話にラーマ王がドゥルガー女神を信仰していた、という話にちなんで近所の女の子たちを招いてお菓子やごちそうをふるまい、更にお小遣いもあげるお年玉に似た「カンジャク」があります。

ちなみに、外国の方に日本のお年玉を説明する時には、日本独自の風習ですので“Otoshidama”でOK。近年では日本文化の人気が高まったことを受けて、海外でも日本の5円玉や10円玉を包んで子供にプレゼントするのがひそかなブームだそうです。

お正月飾りの由来を見てみよう

飾るのは12月28日か30日から

日本には、お正月に飾る門松、しめ飾り、鏡餅に代表するお正月飾りがあり、現在の日本では、一般企業から官庁まで仕事納めを迎える12月28日もしくは30日から飾りますが、29日は「二重苦」などを連想させるので縁起が悪く避けられています。また、喪中の場合には、年内に不幸があったので新年の準備やご挨拶は省く「喪中欠礼」のルールにのっとり、お正月飾りも飾りません。

それでは、門松、しめ飾り、鏡餅のルーツを見てみましょう。

門松

門松とは、玄関の門や扉の前に飾る、左右一組の松・竹・梅で作られたお正月飾りです。松は一年を通じて枯れず、緑色を保つことから日本では神様の宿る木として、竹は成長力が高い植物なので生命の象徴として、梅は新春に咲くので新しい年の初めを知らせ、かつ紅白の花を咲かせるためおめでたい植物として、日本では「松竹梅」とめでたさの象徴として知られています。このおめでたい植物を使った門松は、歳神様がいらっしゃる時の目印として家の前に飾られます。

松竹梅の松や竹はヨーロッパのクリスマスツリーに使用するもみの木の由来ととても似ていますね。

しめ飾り

しめ飾りとは、「注連飾り」と書き、玄関の扉の上側に飾るお正月飾りです。農耕民族であった日本人がその年の五穀豊穣を願って編んだわらで作られたしめ縄、葉の裏が白いので「後ろ暗いことがない」ことを表す植物のうらじろ、新芽が出てから古い葉を落とすので子孫繁栄の象徴とされている植物のゆずりは、「家が代々栄えるように」との願いがこもった植物のだいだい、「喜ぶ」にかけた昆布、神様の力が宿るといわれる御幣という紙など、縁起の良いもので作られています。

元来日本では、神聖な場所であることを指す結界の意味を込めて、しめ縄が神社仏閣や神棚などに飾られています。お正月飾りとしても、歳神様がいらっしゃる家として清められた場所であることを表すために、家の上部にしめ飾りを飾ります。

現在は、マンションなどの集合住宅やオフィスビルなどの事業所にも飾れるように、デザインや大きさも様々のしめ飾りがあります。

鏡餅

鏡餅は主に床の間に飾られる、歳神様へのお供え物のひとつです。神事に使う鏡や人の魂の形と同じく丸い形にした餅を、「円満に年を重ねられるように」との願いを込めて、重ねて置きます。餅のほかに、しめ飾りにも使われるだいだいやゆずりは、昆布などのおめでたい物や、「幸せをかき集める」にかけて、そして樹木自体も長寿である柿の実を重ねて串に刺した串柿を備えます。

串柿は串にささっている柿の実の数によって込められた願いが異なり、外側に2個、内側に6個なら「にこにこ(2個2個)、仲睦まじく(中に6個)」、5個そのまま刺さっているなら「ひとり(1個)ひとり(1個)皆が幸せになるように」との意味があります。

海外のお正月飾りとは?

日本と同じくお正月は盛大に祝う中国や中国系の人が多いシンガポールなどでは、お正月や旧正月にはカラフルなぼんぼりやすだれなどを飾ってお祝いします。

欧米諸国では、お正月の直前にあるクリスマスを重要視する傾向にあるので、お正月は特に何もせず過ごしますので、当然お正月飾りの風習はありません。ですが、お年玉と同じく日本文化の人気上昇に伴い、ミニサイズのお正月飾りを購入したり、飾ったりする外国の方も多くなりました。

まとめ

お年玉やお正月飾りは、元々日本の歳神様のお供え物のお下がり、そしてお迎えするための準備であることが分かりました。今でも日本のお正月として残っているこれらの風習には、古来日本人が込めた様々な願いが残っています。

機会があれば、外国人の先生や友人と新年にまつわる風習や文化について話し合ってみると、面白いかもしれませんね。