英語の勉強や英会話の練習をしていると、「パラフレーズ」という言葉を耳にすることはありませんか?

パラフレーズとは、同じ意味の英文を色んな言い方で表してみることを言います。

パラフレーズを身に着けると、英会話や英作文の表現力がグンと広がります。

この記事では、パラフレーズについてお伝えしていきます。

パラフレーズとは

パラフレーズは「言い換え表現」のことを指します。

例えば、英作文。

英語では「同じ英単語をなるべく繰り返さない」傾向があります。

日本語では以下のように、全く同じ名詞を使っても特に違和感はありません。

Aさん
「経理部の”斎藤さん”が体調不良にてお休みです。”斎藤さん”がご不在の間、緊急のメッセージがあれば田中までご連絡ください。」

しかし、英語では”斎藤さん”が2回目以降出てきたときに、特別な理由がない限り代名詞の”He”や”She”を使うのが一般的です。

Aさん
”Mr. Saito” of the accounting department is absent due to illness. Please leave a message for Mr. Tanaka if you have any urgent message while ”he” is away.

また↑の例文では、代名詞の他にも “absent” を “(he) is away.”と言い換えていることがわかりますね。

このように、英語ではなるべく同じ表現を避ける傾向があり、同じ表現を避けるために言い換え表現(パラフレーズ)を使うというわけです。

パラフレーズを身につけるメリット

パラフレーズを身に着けるメリット

パラフレーズを身につけると、主に以下のメリットを得られます。

  1. TOEICや英検で得点源になる
  2. 英会話の表現力が広く豊かになる
  3. 英語を英語のまま話す・理解する助けになる

順番に見ていきましょう。

1.TOEICや英検で得点源になる

日本で最も有名な英語資格であるTOEICや英検でもパラフレーズがよく登場します。

リスニングの長めのナレーションや、リーディングの長文問題で、本文で使われた表現をそのまま選択肢に設けるわけではなく、言い換え表現(パラフレーズ)で問題文や選択肢に設けられることで、受験者の英単語力や表現力を測るからですね。

例:
(問題文)This license will be expired at the end of August.
(選択肢)You can use the license by the end of next month.
(問題文)ライセンスは八月末に失効となります。
(選択肢)翌月末までライセンスを使うことができる。

↑の例文のように、TOEICや英検での言い換え表現は難しくないので、言い換え表現に慣れておくだけでもスムーズに得点を伸ばせますよ。

2.英会話の表現力が広く豊かになる

パラフレーズを身につけると英会話の表現力が広く豊かになります。

パラフレーズは一見同じ意味の文章を言い換えているだけに見えますが、言い方が違うだけで細かいニュアンスが少しずつ違って聞こえます。

例えば、「あなたの名前は?」と聞く際には……

  • What’s your name?
  • Can you tell me your name, please?
  • May I ask your name, please?

上記のように複数表現できますね。

確かにすべて「あなたのお名前は?」という意味なのですが、それぞれ

  • あなたの名前は?
  • お名前教えてくれる?
  • お名前をお伺いしてもよろしいですか?

といった具合にニュアンスが違います。

最初の二つはカジュアルな感じ、三番目の言い方は丁寧でビジネスシーンでも使える言い方なのがわかりますね。

このように、パラフレーズが身に着くことで、たくさんのニュアンスを表現でき、英会話での表現力が広く豊かになります。

3.英語を英語のまま話す・理解する助けになる

パラフレーズが身に着くことで、英語を英語のまま話す・理解する助けになります。

日本人の英語学習者の多くが「日本語→英語」の回路で英語を認識しています。

対してパラフレーズが身につくと、「英語から英語へ変換する」ことで「英語を英語のまま変換する」経験が養われます。

英語学習でよく言われる、「英単語を英英辞書で学ぶ」のと同じ効果が得られるわけですね。

パラフレーズの身につけ方

パラフレーズの身に着け方 簡単なフレーズに作り替える

パラフレージングを身につけるには、「簡単に言い換えてみる」ことが入り口として最適だと言えます。

簡単に言い換えてみることで、英会話や英作文がグッと楽になります。

例えば、「この製品はABSとPBTの部品で構成されています。」と言う時に、英語にすると以下のようになります。

Aさん
This product consists of ABS and PBT components.

いかがでしょう?しっかり正しい文章ですが、少しお堅い感じのする言い回しです。

これをもう少しシンプルで簡単なフレーズに言い換えてみましょう。

Aさん
This product has ABS and PBT parts.

いかがでしょうか?とてもシンプルになってグッと使いやすくなりましたね。

このように、「簡単なフレーズに作り替える」ことで、英会話や英作文をするハードルがグッと下がる効果もあるので、パラフレーズを身につける練習方法としてピッタリだと言えます。

英会話のフレーズで言い換える

英会話のフレーズで言い換える

最後に英会話で簡単に使えるパラフレーズのパターンをいくつか紹介します。

I want to ~ → I would like to ~

「私は~したいです」と言いたいときに、どうしても「I want to ~」ばかりを使いがちです。

そんな時は「I would like to ~」を取り入れてみましょう。

I would like to ~ には「~をしてみたいと思う」の意味で用いられます。特にプレゼンテーションで「Today, I would like to talking about ~(今日は〇〇についてお話したいと思います)」といった形で使われるのを耳にする機会が多いです。

少しお堅い表現にも聞こえるかもしれませんが、実際はカジュアルな英会話でも使われる表現です。

むしろ、”I want to ~” がとてもストレートな表現なので、強い表現を避けてwould like to ~が好んで使われるほどです。

覚えておくと、英会話での表現が “I want to ~” ばかりにならずに済みますよ。

I think ~ → In my opinion, ~

「自分は~だと思います」も英会話でよく使うので頻繁に “I think ~” と口にしますよね。

この “I think ~” も “In my opinion, ~” で置き換えると英会話が “I think ~” ばかりになるのを防げますよ。

“In my opinion, ~” は「私の意見では~です」の意味です。

一見少し意味が違うように聞こえますが、以下のように自然に置き換えることができます。

Aさん
I think cats are more popular than dogs all over the world.(世界中で犬より猫のほうが人気があると思うんです。)※個人の感想です。
Aさん
In my opinion, cats are more popular than dogs all over the world.(訳はI thinkの文と一緒です。)

このように、In my opinion, ~ を英会話に導入することで「私はこう思います。」を言う時に “I think ~” ばかりにならずに済みます。I think …を使うにしても、それが個人的な見解だと思っている場合は、Personally, I think … 「個人的には、私は…だと思います」と表現することができます。

I did ~(I -ed) → I used to ~

一般動詞の過去形を使った英語にも幅を持たせることができます。

過去形の文章を作ると、例えば以下のようになります。

Aさん
I lived in Tokyo when I was young.
訳)若い頃は東京に住んでいました。

とてもシンプルで自然な表現なのですが、「Used to ~」を使うことでよりこなれた表現にすることができます。

Aさん
I used to live in Tokyo when I was young.
訳)若い頃は東京に住んでいました。

過去形は英会話で日常的に使うものですから、”used to ~”が使えるようになるだけでグッと表現の幅が増えます

動詞を同意語で言い換える

パラフレーズが本当に必須になってくるのは、おそらく英検1級の二次試験やアメリカ・イギリスの大学・大学院に留学した際の英語でのレポート作成だと言えるでしょう。

パラフレーズが全くできないと、英検1級二次試験のスピーチで合格点に達しなかったり、英語のレポート作成で高評価が得られなかったりという状況が考えられます。

explain / teach → tell

”explain”や”teach”はそれぞれ「explain=説明する」「teach=教える」という意味になります。

どちらもシンプルで使いやすい表現ではあるのですが、どちらの単語も少し「上から目線」に聞こえてしまう特徴もあります。

日本語でも「今からあなたに”説明します”」や「今からあなたに”教えます”」と言うと、少し「上から目線」に聞こえてしまうのではないでしょうか?

その「上から目線」を解決するのが “tell” という基礎レベルの英単語です。

tellは「伝える」の意味で使われます。

日本語でも「今からあなたに”教えます”」と言われるよりも、「今からあなたに”お伝えします”」と言われた方が、柔らかい印象を抱くのではないでしょうか? 「とっておきの情報をあなただけに教えます」という宣伝広告は上から目線で

tellはそんな「説明する」や「教える」ことを、柔らかく言い換えられる表現だと言えます。

abolish → terminate, eradicate, do away with 等

例えば、英検1級の二次試験の2分間スピーチ用の問題で、下記のような”abolish”という単語が使われていたと仮定します。

“Is it time to abolish animal testing?”「動物実験を廃絶する時かどうか?」

“abolish”「廃絶する」という動詞がキーになっているので、ずっとその動詞を使って、賛成か反対の意見を展開してしまいそうですが、2分間スピーチの中で、”abolish”という動詞を、 意識的に ”terminate”「終了させる」、”eradicate”「根絶させる」、”do away with”「廃止する」のようにパラフレージング (paraphrasing) しましょう。

試験官は、「正しい文法が使ってスピーチができているかどうか」「適切なパラフレーズが使えているか」をチェックしています。

なぜパラフレーズを使わなくてはならないのか?というと、最初にお伝えしたように、「英語は同じ単語をなるべく繰り返さない」ことが良しとされる言語だからです。

パラフレーズを使わなくてはならないことは知っていても、「パラフレージング (paraphrasing)」するために、日頃から同意語を意識していなければ、本番で実行できないので、同意語を使った言い換え表現を練習しておくといいですね。

文構造を変えてパラフレージング

文構造を変えてパラフレージング

次に、文構造を変えてパラフレージングする方法について紹介します。

(例1)
Symptoms of the COVID19 are loss of change of smell and taste, fever, new persistent coughs, chills, appetite loss, and muscle aches.
訳)COVID19の症状は、嗅覚や味覚の変化消失、発熱、新たなしつこい咳、悪寒、食欲不振、筋肉痛です。

上記の文を文構造を変えて、パラフレージングすると、こうなります。

Loss of change of smell and taste, fever, new persistent coughs, chills, appetite loss, and muscle aches are signs that you may have the COVID 19.
訳)嗅覚や味覚の変化、発熱、新たなしつこい咳、悪寒、食欲不振、筋肉痛は、COVID 19に感染している可能性がある兆候です。

上の文において「補語」である述語部分が、下の文では、主語になっています。

(例2)
He angered me with his inappropriate comments, rumor-spreading, and disrespectfulness at the formal dinner table.
訳)彼は、正式な夕食の席での不適切な発言、噂の流布、無礼な態度で私を怒らせた。

上記の文を文構造を変えて、パラフレージングする場合、次のように3通りぐらいやり方があります。

① 動詞部分の表現を言い換える
He made me angry with his inappropriate comments, rumor-spreading, and disrespectfulness at the formal dinner table.
訳)彼は、正式な夕食の席での不適切な発言、噂の流布、無礼な態度で私を怒らせた。

①は、”angered me”の部分を”made me angry”に書き換えたシンプルなパラフレージングです。

② with 以下の部分を主語にして言い換え
His inappropriate comments, rumor-spreading, and disrespectfulness at the formal dinner table infuriated me.
訳)彼の不適切な発言、噂の流布、無礼な態度は、私を激怒させた。

②は、原文のwith以下の部分を主語にして、「主語が私を激怒させた」という文を作っています。

③ 目的語のmeを主語にし、受動態にして言い換え
I was mad when he started spreading rumors, making inappropriate comments, and disrespecting other guests at our dinner.
訳)彼が噂を流したり、不適切な発言をしたり、夕食の席で他のゲストを見下したりし始めたとき、私は頭にきた。

③は、目的語のmeを主語にして、原文のwith 以下の部分を使って、when 節を作ってつなげています。with以下の部分については、原文の順序通りにするのではなく、論理的に流れるように順序を変えています。

まとめ

この記事では、英語の語彙力と表現力をグッと豊かにするパラフレーズについてお伝えしました。

ここまでお読みのあなたなら、パラフレーズを駆使して英会話の表現力がグッと豊かになったり、英作文で同じ表現を何度も使わずにスマートな英文を書けるだけの知識を持っているでしょう。

この記事でお伝えしたことが、あなたの英語の表現力をより豊かにできれば幸いです。