英語には倒置法という文法があります。これは英語に限らず日本語にも見られる文法なのですが、英語の倒置法は日本語の倒置と比べると仕組みが複雑です。

本記事では、日本人が苦手とする英語の倒置法を、例文を交えて解説していきます。最後まで読んで、倒置法をマスターしましょう!

倒置法とは

倒置法は、簡単に言うと通常の語順とは異なる語順で文章を作ることです。英語の場合は、主に書き言葉で使われることが多いので、倒置法を理解することでリーディング力の成長に期待ができます。倒置法は「文法上の倒置」と「強調の倒置」に分類されるので、それぞれの違いをみてみましょう。

文法上の倒置

文法上の倒置は、文法の関係で倒置しなければならない倒置です。”So”,”Neither”,”Nor”を使う時、「There 構文」を作る時など、限られた場面でしか文法上の倒置は行われません。倒置法を苦手とする人の多くは、文法上の倒置で苦戦しているように感じますが、ルールさえ分かってしまえば、なにも難しいことはありません。のちほど詳しく解説します。

強調の倒置

日本語では、ほぼすべての倒置が強調のために行われます。英語も同様に、強調のために倒置をすることがあるのですが、なんでもかんでも倒置できるわけではないので、注意が必要です。また強調の倒置は義務ではないので、倒置を行わなくても文法的に間違いではありません。

なぜ倒置法が使われるのか?

倒置法は主に書き言葉で使われます。話し言葉であれば、発言の内容を強調したい場合、話し方やリアクションで表現ができますよね。しかし、文章では書き手の顔が見えないため、書き方で強調を表現する必要があります。その方法の1つが倒置法です。また、常に同じ文体で書き進めると文章が単調になり、読み手が退屈に感じるかもしれません。倒置法を用いることで、文章のリズムを生み出したり、躍動感を与えることもできるのです。

文法上の倒置

英語の倒置法をマスターしよう!倒置法の使い方や作り方を徹底解説

ここからは、文法上の倒置と強調の倒置に分けて実際の作り方や使い方を解説していきます。まずは苦手意識を持つ人が多いであろう文法上の倒置を確認してみましょう。

”So”、”Neither”、”Nor”を使った文

これらの単語を使う場合、文法上の倒置が起こることがあります。次の文は1番簡単な例文です。

Aさん
So did I.
訳)私もでした。(肯定文に対しての同意)

 

Aさん
Neither did I./Nor did I.
訳)私もでした。(否定文に対しての同意)

“Niether”と”So”は副詞、”Nor”は接続詞です。例文のように同意の意味で使う場合は、同じように使うことができますが、文章中ではしっかり使い分ける必要があります。

Aさん
He is not a clerk, nor am I.
訳)彼は店員ではありませんし、私も違います。

Aさん
He does not work here, and neither do I.
訳)彼はここで働いていませんし、私も働いていません。

“nor”は接続詞なので、文章にそのまま続けることができますが、”neither”は副詞なので必ず接続詞を伴います。

There 構文

There構文は中学英語でも学ぶ基本の文法ですが、この構文も倒置が起こっています。意味は「〜がある、いる」です。なにかが存在することを表す場合には、There構文が使われます。

Aさん
There is a cat on the street.
訳)道に猫がいます。

Thereのあとのbe動詞は続く名詞によって使い分けましょう。(複数形であればare,were)

“A cat is on the street.”でも同じ意味になりそうですが、そこに存在することを表現したいのであれば文法的に誤りとなります。この場合はThere構文を使いましょう。

Ifの省略

”if”を使った文章(仮定法)では”if”を省略することができ、この場合は必ず倒置が起こります。”if”の省略が可能となるのは、条件節内(if以降の文章)にshould,had,wereが含まれる場合です。

Aさん
If you should have any questions, please do not hesitate to ask us.
訳)もし質問があれば、遠慮なくお尋ねください。

Aさん
Should you have any questions, please do not hesitate to ask us.
訳)もし質問があれば、遠慮なくお尋ねください。

“if”を省略したことで倒置が起こり、主語と助動詞shouldの位置が入れ替わっています。”if”の条件節内でshouldが使われる場合、「万が一、〜したら」という特殊な意味を持つので、覚えておきましょう。TOEICなどの試験でも狙われやすい知識です。

強調の倒置

強調の倒置

強調の倒置は、文章内の特定のワードを強調するために起こります。そのため、文法上の倒置とは異なり、この倒置は義務ではありません。あくまで書き手側が強調したい、と判断した場合にのみ倒置が起こります。

否定の強調

“never”や”seldom”、”little”など、否定の意味を表す語が文章に含まれる場合、強調の倒置をすることができます。

Aさん
Never had I thought I would work in the industry.
訳)この業界で働くとは思いもしませんでした。

本来であれば、”I had never thought…”の文章ですが、Neverを文頭に置くことで否定の意味を強調します。強調の倒置は任意なので、必ず倒置をさせる必要はありません。否定語を文頭に置いた場合、否定語以下は疑問文と同じ語順をとります。

  • 元の文章が現在形:否定語+do/does+主語+述語(原形)
  • 元の文章が過去形:否定語+did+主語+述語(原形)
  • 元の文章が現在完了、過去完了:否定語+have/had+主語+述語(過去分詞)

場所・方向の強調

場所や方向を強調したい場合にも倒置が起こります。”here”や”there”を含む文章を強調の倒置で表してみましょう。

Aさん
Here comes the train.
訳)電車が来ました。

“The train comes here.”が原文ですが、やっとここに来た、と強調したい場合は例文のように倒置が起こります。原文の主語が代名詞の場合は、”here”を文頭に置いてもそれ以降の文章では倒置は起こらないので注意しましょう。

Aさん
Here they come.
訳)彼らが来ました。

比較級/形容詞の強調

形容詞には比較級というものがあります。基本は「主語+be動詞+比較級」の語順ですが、「比較級+be動詞+主語」の順番に入れ替えることで比較級の強調を表します。

Aさん
More important is my family.
訳)より重要なのは私の家族です。

同様に形容詞だけでも、同じ倒置が可能です。

Aさん
Amazing was the movie.
訳)この映画は素晴らしかったです。

形容詞で倒置を行う場合、「主語=形容詞」の関係である必要があります。

まとめ

倒置法はTOEICや英検などリーディング力が問われる試験で頻出の重要文法です。今回は、特に重要な倒置法を解説しました。実際には、他にも倒置が起こる場面はいくらでも存在します。

試験問題や小説などで文法的に誤っていると思われる文章に遭遇したら倒置が起こっていないか立ち止まって考えてみましょう。今回の記事を参考に自分で考えて理解する、これが英語上達への近道です!少しずつ着実に倒置法をマスターしていきましょう。