英語は、日本では多くの学校で必修科目になっていることもあり、英語運用能力を測る英語の資格、試験が数多くあります。けれども、それぞれの資格にはどのような特徴があるのか、そして取得した英語の資格はどのように役に立つのか、ということはあまり知られていません。
この記事では、「大学受験や就職活動に有利な資格は?」「海外に留学するために受けておくべき試験は?」といった英語の資格にまつわる疑問を解消し、現在の自分に合った資格、試験を見つけるために、英語の資格、試験各種の特徴や難易度について説明します。
代表的な英語の資格「英検」
日本英語検定協会が主催する英語技能の検定試験「英検」は、実用英語技能検定の略称です。初回の試験は1963年に実施され、すでに60年以上の歴史もあることから、日本ではもっともよく知られている英語の資格、検定試験といってよいでしょう。
試験は年3回実施され、年間の受験者数は420万人超(2022年度)と国内最大規模です(出所:日本英語検定協会)。学校で勧められて、あるいは大学受験や就職試験のため、学生時代に英検を受けたことがあるという人も少なくないでしょう。
英検は日本国内の企業での認知度が高いということもあり、就職活動をする学生に人気のある試験です。近年は学校での早期英語学習の流れもあり、英語学習への関心はいっそう高まり、さまざまな年齢層の方からも注目されています。小学生以下の英検受験者が年間52万人以上もいることからも、子どもからおとなまで、幅広い年齢層の方が受験していることがよくわかります。
英検のレベル設定
英検には、7つの級があります。受験資格は特になく、誰でも自分の学習レベルや、ライフステージによってチャレンジする級を選ぶことができます。
レベルは、中学初級レベルの理解度を測る5級から、大学上級程度の英語力を問う1級までわかれています。運営する日本英語検定協会による受験の目安は以下の通りです。
- 5級 中学初級程度
- 4級 中学中級程度
- 3級 中学卒業程度
- 準2級 高校中級程度
- 2級 高校卒業程度
- 準1級 大学中級程度
- 1級 大学上級程度
英検の出題形式
英検の試験はマークシート形式の筆記とリスニングが主で、級によって録音形式のスピーキングテストや面接試験が加わります。
以下、5級から1級のレベルや試験の特徴について詳しく説明します。英検を受験する際に参考にしてください。
初学者の最初の目標「英検5級」
英検でもっともやさしい5級は、英語の学習を始めたばかりの方にぴったりの資格試験です。
このテストでは、家族や趣味・スポーツなどについて出題される傾向にあり、300~500語程度の語彙と中学初級レベルの知識や理解度があればスムーズに回答できるでしょう。英検5級は、正答率が60%超で合格と考えられています。
次の記事では、この英検5級に合格するために必要な英語力について詳しく説明しています。
中学中級程度の基礎力を問う「英検4級」
英検4級では、簡単な文章を読み解く読解力と、さまざまな事柄を英語で表現する技術力を問う問題が多く出題されます。
受験の目安は中学中級程度の学習度で、英語の基礎力を固めたい方が、現在の自分の英語力を確かめるためなどに勧めたいたい難度です。英語の基礎ができていれば、小学生でも十分に合格をめざすことができます。
英検4級の合格に必要な語彙は600から1300語といわれており、合格には65%程度の正答率が必要とされています。
次の記事では、英検4級の出題範囲や設問の方式をより詳しく説明しているので、参考になります。
中学卒業段階の達成目標「英検3級」
英検3級では、中学卒業レベルの英語力が問う問題が多く出題されます。
中学校での学習内容を点検できるため、これから高校入試を控える学生にぴったりの難度です。
3級からは、出題内容も4級・5級で出題される身近な話題から、海外の文化などに広がり、難度もやや上がります。二次試験として面接形式のスピーキングテストが導入されるので、テストの形式に慣れておき、英語を話す力をつける対策も必要です。
合格のためには、筆記とスピーキングの両方の能力が必要なので、バランスのよい学習がとても大切です。
3級合格には、一次試験の筆記で67%程度、二次試験の面接で74%程度を目安とした正答率が求められます。過去に出題された問題を解いて、現在の自分の学習レベルをあらかじめ把握した上で試験対策をしましょう。筆記とスピーキングの両方を鍛える必要があります。
次の記事では、英検3級の試験対策を紹介しています。また、2024年度第1回からのリニューアルで変わった点を具体的に説明しています。
日常生活に必要な英語力をみる「英検準2級」
英検3級と2級のあいだの難度の英検準2級では、高校中級程度の英語力が求められます。
合格の審査基準は「日常生活に必要な英語を理解し、また使用することができる」ことで、筆記・リスニング・面接の試験があります。
筆記試験には長文の穴埋め問題があり、題材になっている教育や科学に対する一般的な理解、文法や語彙についての知識などが問われます。また、3級と同様、二次試験では面接があります。
スピーキング能力が必要な面接は、読解や文法問題に比べて自習が難しく、対策がしにくい試験です。しかし、発音の間違いや話し方のくせに注意を向けることで力をつけやすい側面もあります。
学生であれば英語の先生、社会人であれば英語学校や英会話教室などでネイティブ・スピーカーに面接の相手役になってもらい、どのような話し方や態度が好ましいか助言を求めてもよいでしょう。
英語力をアピールできる「英検2級」
英検2級は高校卒業程度の英語力が問われるため、大学受験や就職活動を控える学生にふさわしい難度です。英検2級は大学受験や入学後の単位認定にも役立ちます。
また、就職や転職活動の際に、英語に関して一定の勉強をしていて、ある程度運用能力があることをアピールすることができる資格です。「英検3級」の取得も、もちろん学習の成果ですが、証明できるのは「中学卒業レベル」の英語が身についていることですので、特別に英語が得意だとか、きわだって秀でた力があるとみられるわけではありません。
将来的に英語を自分のアピールする材料にしていきたいと考えている人にとって、英検2級はもっていて損はない資格といえるでしょう。
英検2級の合格には、5000単語程度の語彙が必要といわれています。医療やテクノロジーなど、より社会的な内容の英文読解も必要で、読み取るためには少し抽象的な語彙や、長文を理解して問題に答えるスキルなども要求されます。英検3級に比べると、ぐっと難しい試験内容ですが、過去問を解いて出題形式に慣れ、出題傾向に合わせて勉強をすすめて合格をめざすことができます。
合格には、一次試験、二次試験ともに60〜70%の正答率が必要といわれています。
次の記事では、2024年度から追加された点を含め、英検2級に合格するための効果的な学習法を紹介しています。
実際に使える英語力が求められる「英検準1級」
英検準1級では、大学中級程度の英語力が要求されます。このため、英検2級・準2級が「履歴書で評価される」英語力なのに対して、より難度が高い準1級は「『実際に使える英語力』の証明として高く評価」されています(日本英語検定協会)。
英検準1級の試験では、筆記・リスニング・面接があり、筆記ではエッセイの形式の英作文が出題されます。合格の審査基準は「社会生活で求められる英語を十分理解し、また使用することができる」ことですから、学校英語を超えて、インターネットを使って英語のニュースや新聞に触れ、時事問題などに出てくる単語・熟語や、ある程度抽象的な事柄を扱う文章に慣れておくことも有効でしょう。
二次試験の面接は、ひとりではなかなか自分の弱点に気づけず、対策がしにくいものです。
一例として、教材出版社の学研が提供するオンライン英会話kiminiの「英検®準1級<二次試験対策>」では、英検準1級の二次試験の形式に沿った模擬試験のコースがあります。出題形式に慣れておくことはもちろんですが、面接官役を務める講師からのフィードバックを受けて、合格に向けた練習をすることができます。
合格率10%の最難関「英検1級」
英検1級は、大学上級程度の英語力が問われる試験で、英検のなかでももっとも難度が高いレベルです。日常的に英語を用いているネイティブ・スピーカーでも、文法や語彙の十分な知識がなければ合格が難しいといわれるほどであり、合格率も例年10%ほどに留まっています。
一次試験、二次試験ともに実践的な英語力が問われるということもあり、「英語を使って仕事がしたい」「将来は海外で暮らしたい」など学校を卒業したあとも英語を使って夢をかなえたい人に勧められる試験です。
受験の目安として必要となる語彙は10,000〜15,000語程度、長文読解力に加えてリスニングの力も必要です。二次試験では、2分間のスピーチが課され、面接官からの質問にその場で的確に答えられるスピーキング力も求められます。
一次試験、二次試験ともに、合格するには70%程度での正答率が必要といわれています。
コミュニケーション能力を測る英語の資格「TOEIC」
TOEIC(トーイック)は日本では英検に次いで知られている資格で、Test of English for International Communication(国際コミュニケーション英語能力テスト)の略称です。日本では「一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会」(IIBC)が運営しています。
英検と比較すると、日常会話のほかにビジネスの場面を想定した問題が多く出題されるため、より実践的なコミュニケーション能力を測る指標として利用している企業も多く、就職活動を始める大学生や、スキルアップをめざす社会人が多く受験しています。
TOEICの種類
TOEICには5種類のテストがあり、運営者のIIBCはどのような英語力を測ることができるかを下記のように説明しています。
- TOEIC® Listening & Reading Test
聞く・読む 英語力を測る - TOEIC® Speaking & Writing Tests
話す・書く 英語力を測る - TOEIC® Speaking Test
話す 英語力を測る - TOEIC Bridge® Listening & Reading Tests
初・中級者の聞く・読む 英語力を測る - TOEIC Bridge® Speaking & Writing Tests
初・中級者の話す・書く 英語力を測る
それぞれのテストは形式や内容が異なり、TOEIC Bridgeは、従来のTOEICでは難度が高すぎる初級・中級の英語学習者を対象にしています。
ここでは、英語の資格として一般によく知られているListening & Reading Test (L&R Test)と、会話力を測れるとして注目が高まっているSpeaking & Writing Tests (S&W Test)について概要を紹介します。
英語コミュニケーション能力を測定する「TOEIC L&R Test」
前項で「TOEIC L&R Test」はListening & Reading Testsの略称であることを説明しました。その名の通りTOEIC L&R Testは、英語を「聞く力」と「読む力」を測るマークシート形式の試験です。
TOEICの5つあるテストのなかで、TOEIC L&R Testは192万2千人(2023年度)が受験する、もっとも受験者が多いテストです。企業が採用時、または人事評価の際に英語能力の指標とすることも多いため、自分の英語力をアピールしたい就職活動中の学生には特に勧めたい試験です。
「TOEIC L&R Test」の出題形式
TOEIC L&R Testの出題形式とテスト時間は、以下の通りです。
- 出題形式 リスニング(100問)とリーディング(100問)の合計200問のマークシート方式
- テスト時間 リスニング(約45分間)とリーディング(75分間)の合計約2時間
問題文はすべて英語で、日本語を使う英文和訳・和文英訳の設問はありません。
「TOEIC L&R Test」のレベル設定
TOEIC L&R Testには合格・不合格がなく、受験者の解答に対して990点を満点としたスコアがつけられます。
テストの結果は5点刻みで、リスニング・セクションは5~495点、リーディング・セクションは5~495点、合計10~990点のスコアで通知されます。
受験者の平均スコアは608点(2022年度)と発表されていますので、これ以上であれば一定以上の英語力があると履歴書などでもアピールすることができます。
TOEIC L&R Testの評価は、各セクションのスコア別に
- リスニング・セクションー495~375、370~275、270~5の3レベル
- リーディング・セクションー495~425、420~325、320~225、220~5の4レベル
にわけて公開されています。それぞれのレベルの「長所」「短所」がわかるので、参考にしてください。
一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会「レベル別評価の一覧表」
TOEICを英検やその他資格試験と比較した情報もありますが、試験の目的や出題形式が違うため、英検などで取得した級を単純にTOEICのスコアに置き換えることはできません。あくまで目標とするスコアの目安と考えたほうがよいでしょう。
また、TOEIC L&R Testで895点以上のスコアであれば、受験者の上位4.2%になりますが、TOEICは非英語圏の受験者の英語能力を測る試験ですから、これをもってネイティブ・スピーカー並みの英語力があるとか、仕事上の英語で不自由しないということを意味するわけではありません。
またTOEICは、テスト開発の経緯から日本を含む東アジア圏でこそ知られていますが、それ以外の地域での知名度はそれほど高くありません。
海外留学を目指すのであれば、学術レベルの英語能力の証明として求められるのは、後述のTOFEL(Test of English as a Foreign Language)またはIELTS(International English Language Testing System)のスコアですので、TOEICは通過点の一つと考えておく必要があります。
話す・書く能力の指標「S&W TESTS」
「TOEIC S&W TESTS」はSpeaking & Writing Testsの略称で、英語を「話す力」と「書く力」を問う試験です。192万2千人(2023年度)が受験する「TOEIC L&R TEST」に対して、「TOEIC S&W TESTS」の受験者は3万6600人(2023年度)とぐっと少なくなります。
しかし逆に、英語が「話す力」と「書く力」をアピールすることができるわけですから、海外拠点に駐在・転勤したい、国外とのやりとりが多い部署に転属したいなど、英語を使って仕事をしたい社会人にはぜひ勧めたい資格です。
また、特に海外との接点がなくても、国内の外国人顧客との接遇でも英語を話したり、書いたりする力は次第に重要度が増しています。これから就職活動をする学生も、挑戦しておいてよい資格のひとつでしょう。
「TOEIC S&W TESTS」の出題形式
「TOEIC S&W TESTS」は、約20分間のスピーキングと、約60分間のライティングテストで構成されます。
TOEICスピーキング・テストは、英文を音読したり、聞かれた質問に英語で返答する形式の11問が出題されます。
- 音読問題
- 写真描写問題
- 応答問題
- 提示された情報に基づく応答問題
- 意見を述べる問題
TOEICライティング・テストは、さまざまなシーンを想定したEメールを書いたり、問題に対する自分の意見を記述する形式の8問が出題されます。
- 写真描写問題
- Eメール作成問題
- 意見を記述する問題
TOEIC L&R Testと同様、TOEICスピーキング・テスト、TOEICライティング・テストにも合格・不合格はありません。TOEICスピーキング・テスト、TOEICライティング・テストはそれぞれ200点満点ですから、合計0~400点のスコアによって評価されます。
アカデミックな分野の英語力の指標「TOEFL」
TOEFL(トーフル)は、Test of English as a Foreign Language(英語が母語でない人のための英語能力測定テスト)の略称です。その名の通り、外国語として英語を学んだひとを対象に、英語のコミュニケーション能力を測る試験です。
英語の資格・試験としては、日本でのTOEFLの認知度は英検やTOEICに比べて認知度が低い印象があります。しかし、それは日本国内の話で、1964年に始まったTOEFLは、歴史がある国際的な英語試験です。日本ではETS Japanが実施しています。
TOEFLの種類
- TOEFL iBT
- TOEFL ITPテスト
団体向けTOEFLテスト - TOEFL Essentials
自宅で受験できる新しいテスト
ここでは、留学の際の英語の資格としてもっともよく用いられる、TOEFL iBTについて説明します。
TOEFL iBT
TOEFL iBTは世界160か国以上で1万3千以上の大学・大学院などの教育機関でスコアが利用されている試験です。
TOEFLのスコアは「英語で学ぶ能力」を測るもので、非英語圏の学生が英語圏に留学する際の入学基準として多く用いられます。日本の学校のカリキュラムにおける学習内容の習熟度を測る英検や、日常の英語コミュニケーション能力を測るTOEICとはその点が異なり、日常会話よりも難度が高い内容が出題されます。
また、2016年から外務省が入省する職員に獲得目標として課したことが話題になりましたが、海外の企業、または海外と取引のある企業では英語能力の指標としてTOEFLのスコアが採用されており、国際的に、もっとも普及した英語試験といって差支えないでしょう。
筆記形式の試験と、TOEFL iBTとよばれるパソコンを使った試験があり、日本ではiBTが用いられています。
TOEFL iBTの出題形式
TOEFL iBTは”アカデミック領域における「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を総合的に測定する英語能力測定試験”です。
- Reading(読解)20問
- Listening(聞き取り)28問
- Speaking(会話)4問
- Writing(記述)2問
(参考 「特徴・構成・料金」ETS Japan)
受験の解答には、正答率に応じて120点を満点とするスコアがつけられます。
海外では、その他の英語の資格より重視されるTOEFLは、留学や海外の企業への就職を目指している人に勧めたい試験です。
世界標準の英語運用能力試験「IELTS」
IELTS(アイエルツ)はInternational English Language Testing Systemの略称です。
留学や移住のためなどに英語運用能力を証明する試験で、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドのほぼすべての高等教育機関で認められています。
前の項で説明したTOEFLと同様、日本国内での知名度はさほど高くありませんが、海外の大学・大学院や企業ではよく知られた、国際的な英語の資格のひとつです。
日本では、英検を実施する「公益財団法人日本英語検定協会」がIELTSの実施・運営・広報活動を担っています。
IELTSの種類
IELTSには大学・大学院への就学を目的とした「アカデミック・モジュール」と、それ以外の研修や移住を考えているひと向きの「ジェネラル・トレーニング・モジュール」の2つのタイプの試験があります。
IELTSの出題形式
先述の通り、IELTSには「アカデミック・モジュール」「ジェネラル・トレーニング・モジュール」の2つのタイプの試験があります。この2つのモジュールでは出題内容が異なりますが、いずれもライティング、リーディング、リスニング、スピーキングの4つの技能が問われる内容が出題されます。
「アカデミック・モジュール」の試験内容は以下の通りで、4つのテストを合わせた所要時間はおよそ2時間45分です。
- アカデミック・ライティング(60分)
- アカデミック・リーディング (60分)
- リスニング(30分)
- スピーキング(11~14分)
テストの結果は合否ではなく、1.0から9.0までのスコアで示されます。ライティング、リーディング、リスニング、スピーキングの分野ごとにスコアがつけられ、総合評価として「オーバーオール・バンド・スコア」が示されます。
試験時間も長く、かつ受験料も1回25380円(税込み)と高額のため、IELTSは手軽に受けられる英語の資格試験とは言いかねるところがあります。しかし、海外の大学・大学院への進学や、企業の選考を受ける際、IELTSのスコアが一定以上の水準にあるならば、学業や仕事に十分な英語力があると証明することができます。
IELTSは世界140ヵ国、合計11,000以上の機関が英語力の認定として用いられている試験です。将来は海外の大学・大学院に進学したい、海外の企業・国際機関などに就職したいと考えているひとは、TOEFLと同様、受験しておくとよい試験といえるでしょう。
観光分野の英語力を示す資格「観光英語検定」
観光英語検定は、観光分野に特化した英語力を測る検定です。実施・運営管理を「全国語学ビジネス観光教育協会」が行なっています。
「国際人としての英語力を身につけることを目的とし、外国人とのコミュニケーションを観光の分野を通してその運用能力を計る試験」
(全国語学ビジネス観光教育協会)
として位置づけられており、「インバウンド」(日本を訪れる外国人のこと)が増えるにつれて、外国人との対応に英語力が必要な場面が多くなった、旅行・観光業に従事する人びとや関連する企業を中心に注目を集めてきた英語の資格です。
観光英語検定のレベル設定
観光英語検定には1級から3級まであります。出題されるのは、空港やホテル、ショッピングなど具体的な場面を想定した内容です。
- 1級 筆記(記述式)(10分間)・ネイティブスピーカーとの面接(10分間)
- 2級 筆記(1時間)・リスニング(35分間)
- 3級 筆記(1時間)・リスニング(35分間)
受験の目安として、1級は英検準1級・1級レベル、2級は英検2級程度、3級は英検3級程度と案内されています。
旅行・観光に特化した内容の英語の資格のため、旅行・環境業界への就職を考えているならば、一定の英語ができるアピールになります。そのため旅行・観光分野で働きたいひとや、現場で働きながらさらに実力をつけたいと考えているひとに適した英語の資格です。
翻訳に関する英語の資格
英語の資格には、読み書きやスピーキング能力を測る試験のほか、英語を日本語に、または日本語を英語に訳す翻訳能力を問うものもあります。
ここからは、英語を用いて翻訳の仕事がしたいと考えているひとに勧めたい英語の資格試験を2つ紹介します。
JTA公認翻訳専門職資格試験
JTA公認翻訳専門職資格試験は、翻訳業界でもっとも知名度の高い英語の民間試験で、インターネットで受験できます。
国籍、性別、年齢を問わず受験できますが、「翻訳のプロフェッショナルの能力を総合的に審査し、認定する翻訳専門職資格試験」(一般社団法人日本翻訳協会)だけに、相応のスキルが要求される内容です。一般社団法人日本翻訳協会が実施しています。
英語部門と中国語部門がありますが、ここでは英語部門に絞って説明します。
JTA公認翻訳専門職資格試験では、下記の5つの能力を図る内容が出題されます。
- 言語運用能力と翻訳表現技術
- 文化背景知識と異文化理解力
- 専門知識と実務能力
- IT運用力とサーチ力
- マネジメント能力と職業倫理
翻訳者は、単に英語・日本語のコミュニケーション能力があるだけではなく、言語を通じて異文化の橋渡しをするための幅広い知識や経験が必要です。「IT運用力」や「サーチ力」、「マネジメント力」など職業人としての力量を問われることから、翻訳を仕事とする場合には欠かせない資格といってよいでしょう。
JTA公認翻訳専門職資格試験の試験科目
英語部門については下記の科目があり、科目ごとに合否判定とグレードが示されます。
- 翻訳文法技能試験
- 翻訳IT技能試験
- 翻訳マネジメント技能試験
- 出版翻訳能力検定試験、またはビジネス翻訳能力検定試験
「JTA 公認翻訳専門職(Certified ProfessionalTranslator)」の認定を受けるためには、
- 上記の4科目で80%以上の正答率
- 翻訳経験2年以上の実績審査
をクリアする必要があります。
JTA公認翻訳専門職の資格は信頼度が高いため、翻訳を仕事にしていて、客観的に力量を証明したいと考えているひとに適した試験です。
JTFほんやく検定
JTFほんやく検定は、一般社団法人日本翻訳連盟が実施している、翻訳能力を測る試験です。
試験はパソコンを使った記述式で、より実践的な翻訳力を求められる「実用レベル」の1級、2級、3級と、高校卒業程度の基礎が問われる「基礎レベル」の4級、5級があります。
基礎レベルの試験は2024年の第81回から休止されていて、現在受験できるのは「実用レベル」のみですので、ここでは「実用レベル」について説明します。
JTFほんやく検定の試験科目
JTFほんやく検定の「実用レベル」では、「英日翻訳」「日英翻訳」の2科目から選択し(併願も可能)、下記の5つの出題分野からひとつを選んで受験します。
出題分野(選択制)
- 政経・社会
- 科学技術
- 金融・証券
- 医学・薬学
- 情報処理
試験時間は180分で、受験した級ごとに合否が判定されます。
審査基準
【1級】専門家の翻訳であると認定する。原文の情報が正確で分かりやすく、かつ適切な文体で表現されている。【2級】完成度の点では1級には一歩譲るが、実務では十分に通用する翻訳であると認定する。実務上では若干の修正が必要であるが、重大な誤訳はない。
【3級】内容理解力、表現力などの面で欠点もあるが、限られた時間内での作業、試験という特殊な環境などを考慮すると、実務で一応通用する翻訳力があると認められる。今後の自己研鑽が鍵である。
公表されている2023年度の第78回・第79回受験者データによると、「英日翻訳」受験者は329名、「日英翻訳」受験者は194名でした。受験者の職業は「会社員・公務員」が40%、次いで「翻訳専業」が22%で、実務経験がないひとの力試しというよりは、客観的な翻訳能力の証明として利用しているのかもしれません。
将来翻訳の仕事をしてみたい、現在の自分の翻訳能力がどのくらいか知りたいと思っている人は、過去に出題された問題集などに当たって感触を確かめてみるのもよいでしょう。
まとめ
今回は、英語に関するさまざまな資格や試験を紹介しました。それぞれの開発目的によって異なった特徴があり、資格を生かせる場面も実に多様です。
資格取得を目指す際には、やみくもに受験するのではなく、今後自分がどんな場面で英語を活かしたいかを考えることがとても大切といえるでしょう。
外国語の学習は継続的な取り組みが必要なので、資格を取ったり、試験に挑戦することで目標を設定し、合格すれば達成感を得ることができ、さらに勉強する動機づけになります。もちろん、取得資格を英語運用能力の証明として生かすことで、憧れの仕事に就いたり、より自分の希望に合った職種を選んだりといったスキルアアップも望めるかもしれません。
過去の試験問題や参考書などを使って、効果的な勉強を続けて合格をめざしましょう。