ビールから口紅まで、様々な商品のネーミングに使われている「マイスター」という言葉。

皆さんはこの言葉が英語からきたものではないことを知っていますか?では、英語にした場合の表現はどういったものになるのでしょう?

記事ではマイスターの意味を解説し、英語表現を例文とともに紹介します。ぜひ、日常会話に使える表現をひとつ増やしましょう。

meisterの意味

meisterの意味

マイスターとは、日本語で「巨匠」や「名人」の意味になります。
巨匠とは、芸術といったある専門分野における大家(分野に優れ、ある程度年齢に達する人)です。師弟関係で言えば、親方のほうになります。
このようにマイスターは人を指す言葉であり、かなりのスペシャリストなんですね。他の言葉に置き換えると、職人、匠、名工などになり、日本でもプロフェッショナルを指す言葉としてマイスターまたはマイスタが浸透してきました。いわゆるその道を極めた人物です。

meisterはドイツ語

本題のマイスターですが、”meister”という表現になります。
しかし、このmeister(カタカナ発音はメイスターというよりマイスタァ)は英語ではありません。meisterはドイツ語であり、語源は古高ドイツ語meistarやラテン語magisterと言われています。

ここで、例文を紹介します。

Aさん
A meister is someone who has knowledge about something specific.
訳)マイスターとは、特定の事柄についての知識を持っている人のことです。

knowledge=知識・知見
マイスターが持つべき知識を表すknowledge(ノリジ)は合わせて覚え、使えるようにしましょう。

Aさん
There are people called “rice meister” in Japan. They have a wide range of knowledge about rice and are able to create products that take full advantage of characteristics of the rice.
訳)日本にはお米マイスターと呼ばれる人たちがいます。お米に関する幅広い知識を持ち、お米の特徴を最大限に活かした商品づくりが可能です。

meisterという表現は、この例文に出てくるrice meisterのように”◯◯ meister”のパターンで使うことが多くなります。

お米マイスターとは日本ならではの資格ですが、実はドイツではマイスターを育成する制度が整っています。この点は大変興味深いので、後ほど紹介しましょう。

meisterに当たる英語とは?

さて、ドイツ語meisterに当たる英語表現があります。その表現とは・・・”master”です。

masterという単語はお店の主人マスターや大学の修士号master degreeなど様々な意味を持ち、皆さんにとってもそのなかで親しみがあるものがあるでしょう。そこで、あ~マスターかぁ!と思われた人がいるのではないでしょうか?

ドイツ語meisterには、巨匠の他に職人の最上位や親方という意味があります。meisterとしてのmasterを辞書で調べると、製造業という分野の熟練工、マイスター、芸術などの分野では名人・達人・大御所に巨匠という意味が見つかります。

Aさん
He is a master of arts.
訳)彼は芸術の大御所ですよ。

また、grand masterというフレーズもあり、日本語の師範、または団体の長といった意味があります。チェスのグランドマスターのように使います。

meisterのスラングや類似表現

ここではmeisterがスラングで使われるときの意味や、似た表現を紹介しましょう。

スラングのmeister

meisterは英語の会話でスラングとして使われます。この場合はインフォーマルで、何かについてよく知っている専門家として使ったり、オピニオンマイスター(opinionmeister)やディールマイスター(deal meister)などとして、場合によっては人のことをバカにする感じで使われます。

meisterの類義語

meisterに似た単語に”expert”があります。expertには「専門家・エキスパート・熟達者」などの意味がありmeisterと似ていることが分かります。

Aさん
My father is an expert on wildlife.
訳)私の父は野生動物の専門家です。

また、芸術界の巨匠、偉大な音楽家・作曲家の意味を持つmaestro(マイストゥロウ)も巨匠という意味で類似しています。

Aさん
Who do you think is a maestro of art?
訳)芸術界の巨匠って誰だと思う?
Bさん
I think Leonardo da Vinci is. He was a painter, engineer, scientist, sculptor and architect.
訳)レオナルド・ダ・ヴィンチだと思うな。彼は画家、エンジニア、科学者、彫刻家、そして建築家だった。

 

マイスター制度 – ドイツと日本

マイスター制度 - ドイツと日本

ドイツではマイスターを育成する制度が整っていることを述べました。ここでは、その「マイスター制度」についてドイツと日本にある制度を紹介しましょう。

ドイツのマイスター制度

ヨーロッパ中央部に位置するドイツ連邦共和国。首都はベルリンであり、ベルリンの壁、そしてソーセージやビールなど有名ですね。読者の皆さんのなかにも、ドイツを訪れた方も多いのではないでしょうか?

このドイツにて、国が定める「マイスター制度」という制度が存在します。その背景は手仕事が栄えてきた13世紀頃、職人やマイスターという身分が生まれたときに遡り、工業や手工業の分野では1935年ごろからマイスター資格が自営の条件とされてきたと言われています。

マイスター制度で取得する資格

マイスターの資格は、各業種のプロのなかでもそのトップである師匠のような立場を目指すためのものです。
この資格は、国が定める専門技術を有する職業に対する最高レベルの国家認定資格になります。
このため、ドイツでマイスターとは豊富な経験を持つ職人に対して尊敬の念が持たれています。

日本の「ものづくりマイスター制度」

さて、ものづくりと言えば日本も負けてはいないですね。ものづくり日本大賞という賞があったり、日本ものづくりワールドという製造業の展示会も開催されます。
ものづくりの英語は製造を意味する”craftspersonship”や”manufacturing”などで表現します。

ものづくりマイスター制度

日本にも、厚生労働省が制定した「ものづくりマイスター制度」という制度があります。若年技能者人材育成支援等事業のことであり、若者のものづくりや技能離れなどの実態を踏まえて技能者の育成を図ることを目的としています。

ドイツと異なり、日本のマイスター制度は申請書を提出、結果はものづくりマイスター認定委員会によって認定されるという内容になります。

ものづくりマイスターに認定・登録されると中小企業や学校などで実践的な実技指導を行ない、後継者の育成に携わることになります。

マイスターの種類

それでは、マイスターにはどのような種類があるのか、ドイツのマイスター制度、そして日本のものづくりマイスター制度に分けて紹介しましょう。

ドイツのマイスター制度の種類

大きく分けて「手工業マイスター」と「工業マイスター」の2種類があります。
さらに詳細は以下になります。

手工業マイスター
食肉の加工、ビール醸造、木工家具から靴整形まで94種類。

工業マイスター
自動車整備士、産業機械工、電気整備士から金属加工まで300種類以上。

日本のものづくりマイスター制度の種類

ものづくりマイスター(建設・製造系で112職種)、ものづくりマイスター+DX(デジタルトランスフォーメーション技術)、ものづくりマイスターIT部門(情報技術関連で11職種)の3種類があります。

マイスターになる資格

日本の「ものづくりマイスター制度」では申請~認定という形になりますが、ドイツでマイスターになるにはそれほど簡単なことではありません。

ドイツでマイスターになるには?

専門技術を有する職業に対する最高レベルの国家認定資格であるため、まず国家資格ゲゼレ(Geselle)を取得した後、マイスターの元で実務経験を重ね、就労しながら仕事の能力を養います。さらに、技術のみならず、経営学、開発力そして教育学まで学びます。資格を得るための修了年数はフルタイムで2年間かかります。
高い専門技術を持つ人材に資格を与え、支援と育成をするための制度がマイスター制度です。

マイスターに関する例文紹介

最後に、ドイツのマイスターについて例文を紹介します。

Aさん
If you’ve trained as a craftsperson, you have the option of training to become a master craftsperson.
訳)もしあなたが職人として訓練を受けた場合、熟練職人になるための訓練を受けるという選択肢があります。
Aさん
You get the German title of Meister, which is an officially recognised qualification.
訳)ドイツの公的資格であるマイスターの称号を取得します。

例えば、ドイツではオルガン製作者でもmaster craftperson(名工)のレベルに達する必要があるそうです。

まとめ

その道の「巨匠」や「名人」であるmeisterはドイツ語であり、英語ではmasterになることが分かりました。今回の記事はドイツのマイスター制度についても簡単に紹介しましたがいかがでしたか?

日本の宮大工などもマイスターではないかと考えたところ、日本工科大学校には建設職人マイスター専攻科という学科がありました。ここでは宮大工や大工職人を目指したり伝統的な木造建築について学べるそうです。やはり日本にも日本ならではのマイスターが多くいるのでしょう。