南米ボリビア東部の広大な森林地帯に、17〜18世紀にイエズス会が築いた美しい伝道所群があります。それは理想の共同体を目指してつくられた「レドゥクシオン」と呼ばれる村落です。
ヨーロッパから来た宣教師と先住民が協力して築いたその空間には、木造の壮麗な教会や独特の建築様式が残されています。チキトス地方に残る6つの伝道所が1990年に「チキトスのイエズス会伝道施設群」としてユネスコ世界遺産に登録されました。
この記事では、その歴史、文化的背景、見どころ、英語で説明できるフレーズも交えながら、魅力を紹介します。
チキトスのイエズス会伝道施設群とは?

16世紀からスペインによる植民地化が進む中で、キリスト教の布教を目的としたカトリックの修道会・イエズス会は、新大陸に伝道所を建設していきました。とくにボリビア東部・チキトス地方では、宣教師たちが先住民と共に生活しながら、理想の共同体づくりに取り組みました。
1990年に世界遺産として登録されたのは、以下の6つの伝道所です。
- サン・フランシスコ・ハビエル(San Francisco Javier)
- サン・ラファエル(San Rafael)
- サン・ホセ(San José)
- コンセプシオン(Concepción)
- サンタ・アナ(Santa Ana)
- サン・ミゲル(San Miguel)
これらはいずれも、宗教施設としてだけではなく、教育・医療・音楽といった文化的活動が盛んに行われた拠点でした。
チキトスってどこ?
チキトスとは、ボリビア・サンタクルス県にある地方行政区のひとつ。熱帯の森林地帯で、現在でも先住民の言語や文化が色濃く残る地域です。人口密度は低く、訪れるには時間がかかりますが、その分、手つかずの自然や歴史的な建築に触れることができます。
イエズス会とは?
イエズス会(Jesuits)は、1534年にイグナチオ・デ・ロヨラによって設立され、1540年にローマ教皇パウルス3世によって承認されたカトリックの修道会です。教育・知識・宣教を重視し、世界中で活動してきました。
ボリビアでの活動は、エル・ドラード(黄金郷)伝説やパイ・ティティ探索とも関連し、奥地にまで及びました。しかしその成功が逆に警戒を呼び、1767年にはスペイン国王カルロス3世によって、イエズス会はアメリカ大陸から追放されることとなります。
アクセス方法
首都ラパスからチキトスへ向かうには、まずサンタクルス・デ・ラ・シエラへ空路で移動するのが一般的。そこから各伝道所へは、車やバスで数時間の移動が必要です。アクセスはやや困難ですが、それだけに秘境感もあり、旅好きにはたまらないスポットです。
伝道施設の歴史
ボリビアでの伝道活動は17世紀末から本格的に始まりました。最初に建てられたのは、1691年のサン・フランシスコ・ハビエル伝道所。続いて1696年にサン・ラファエル、そして1760年には最後のサント・コラソン伝道所が完成しました。
伝道所では、宗教教育だけでなく、農業・音楽・木工などの技能も教えられ、先住民たちはその中で自立的な生活を営んでいました。イエズス会が去った後も、その文化と精神は地元に受け継がれています。
世界遺産としての価値
1990年に「チキトスのイエズス会伝道施設群(Jesuit Missions of the Chiquitos)」はユネスコ世界遺産に登録されました。
登録理由とは?
次のような点が評価されて、登録されました。
- 宣教師と先住民が協力して築いた希少な共同体の記録
- ヨーロッパと先住民の様式が融合した独自の建築様式
- 宗教だけでなく教育・芸術・音楽を重視した社会モデル
- 現地で今も使われている教会としての継続性
- 農地改革後による地域社会やインフラの変化により、存続が危ぶまれている
伝道所では現在も「バロック音楽祭」が開催されています。
UNESCO World Heritage Convention:Jesuit Missions of the Chiquitos
覚えておきたい英会話フレーズ

旅先で伝道所の魅力を英語で伝えるなら、こんな会話をしてみてはいかがでしょうか。
訳)すごい場所ね。こんな木造の教会が300年以上前のものなんて信じられない!
訳)うん、イエズス会の宣教師と先住民が一緒に建てたんだって。
訳)バロック様式の装飾、すごく細かいね。
訳)うん、しかも現地の文化が混ざってるのが興味深いよね。
訳)この教会、今も生きてるって感じがするね。博物館じゃないんだもん。
訳)そうそう。だから“生きた遺産”って言われるんだよね。
訳)ここの音楽すごく素敵。バロック音楽祭もあるんだって!
訳)本当?それは行ってみたいな!
チキトスの伝道施設群の見どころ
バロック様式と先住民文化が融合した教会建築は、木造の精巧な装飾や彫刻が見どころ。今も使われる「生きた遺産」です。
建築様式の美と驚き
建築を手がけたのは、スイス出身のイエズス会士で建築家・音楽家でもあったマルティン・シュミット。彼の指導のもと、地元の職人たちが木造の聖堂を築きました。その結果、バロック様式を基盤にしつつ、先住民の伝統が融合した独特の建物が誕生したのです。
たとえばサン・ラファエル教会には、ソロモンの柱を模した螺旋模様の円柱が並び、祭壇は木彫と金箔で彩られています。サン・ホセの聖堂は珍しく石造りですが、多くは木造のため、修復を経て現代に残されています。
宗教と先住民信仰の融合
イエズス会の活動は、キリスト教を土台にしつつも、先住民文化への深い理解と融合を試みていました。そのため、伝道所の装飾には動植物や自然の精霊を思わせるモチーフが使われています。
現地の伝統的な信仰は完全に消えたわけではなく、今でも形を変えて残っており、それが文化の多層性として評価されています。
おわりに:英語で世界遺産を旅しよう
チキトスのイエズス会伝道施設群は、異文化が出会い、協力し、形となったかけがえのない場所です。英語を学ぶことは、こうした世界遺産の背景や感動を、自分の言葉で伝える力にもつながります。
次の旅では、世界のどこかにある物語を、英語で語りながら歩いてみませんか?
