「英語、今やらないと手遅れになるんじゃないか」
「自分が英語で苦労してきたからこそ、子どもには同じ思いをさせたくない」
「でも、どう関わればいいのかわからなくて、結局何もできていない」

これは、小学5年生と1年生の姉妹を育てる中で、私が周りの保護者の方から実際に聞いてきた言葉です。

小学校で外国語活動が始まり、英語は「やらなくてもいい教科」ではなくなりました。
一方で、親は仕事や家事に追われ、自分自身は英語が苦手―そんな状況の中で、家庭学習への一歩を重く感じてしまうことがあります。

けれど、実際に試行錯誤する中で気づいたのは、親が英語を教えなくても、家庭での英語学習は可能だということでした。

この記事では、英語に苦手意識がある保護者の方に向けて、家庭で英語学習が自然に回り出す仕組みと、その整え方をお伝えします。

「教えなきゃ」は最初に捨てよう

「教えなきゃ」は最初に捨てよう

我が家が英語学習を始めたのは、「英語を好きになってもらいたい」「英語が話せる楽しさを知ってもらいたい」という気持ちがきっかけでした。

最初に取り入れたのは、通信教育の英語教材です。
薄いノートと、音声が出るペンを使い、タッチしながら英語に触れていくスタイルでした。

遊び感覚で興味を持ってくれればいい。
そんな軽い気持ちで始めたはずが、続けるうちに、

少し間違えると、正しい答えを教えたくなる
子どものペースより、親のペースで進めたくなる
飽きているのに、無理にやらせてしまう

そんな場面が増えていきました。

同時に、発音やスペルへの不安も募っていきます。
「あれ? これ、発音合ってるのかな」
「スペル、どうだったっけ……」

焦るほど、最初に思い描いていた「英語を楽しんでほしい」という目的から遠ざかっていきました。

今振り返ると、親が正しい”先生役”になろうとしていたこと自体が、家庭学習のハードルを高くしていたのだと感じます。

親の役割は学習環境を整えること

まずは「教えなきゃ」を捨てよう、とお伝えしてきましたが、家庭での英語学習において、どう振る舞うのが正解なのでしょうか。

覚えておいてほしいのは、親が担うべき役割は、正解を教えることでも、発音を直すことでも、文法を説明することでもない、ということ

本当に必要なのは、

  • 学習する時間がきちんと確保されているか
  • 何を、どの順番でやればいいかが明確か
  • 迷わず学習を始められる状態になっているか

といった、子どもが自ら進んで学びたくなる環境を整えることです。

この視点に立てば、親の英語の得意・不得意が、子どもの学習成果に大きく影響しないことにも気づきます。

親は、”教える人”ではなく、学習の”伴走者”と考えてもいいのかもしれません。
たとえば、「今日はここまでやったんだね」「どこが難しかった?」と声をかけるくらいの距離感で、学習の横を一緒に歩くイメージです。

英語が苦手だからこそ、完璧に教えられないからこそ、子どもと同じ目線で悩み、つまずきを共有し、一緒に解決していくことができます。
それは、英語ができなかった親だからこそ持てる、ひとつの強みでもあるのです。

親が頑張りすぎなくても続く、家庭学習の3つの仕組み

英単語の3つの要素

大切なのは、親が頑張ったり、気合を入れたりしなくても、子どもが迷わず学習に向かえる状態をつくること。
ここからは、英語が苦手でも無理なく取り入れられ、実際に学習が続くようになる3つの仕組みをご紹介します。

時間を固定し内容を指定する

学習時間も内容も、その都度一緒に考えるのは、親にとっても子どもにとっても意外と負担になります。
そこで我が家では、「いつからいつまでに、これをやる」とあらかじめ決めてしまいました。

一見すると、「親がやらせている」「子どもが受け身になってしまう」と感じるかもしれません。

ですが、少し仕事に置き換えて考えてみてください。

「今日から持ち帰りの業務があります。スキルアップのために、自分で内容と時間配分を考えて、適当に終わらせておいてください。」と言われたら、正直かなりしんどいのではないでしょうか。

時間も内容もあらかじめ決まっていた方が、人は動きやすいものです。
それは子どもも同じで、学習前に”考える時間”を減らすだけで、心理的なハードルは大きく下がります。

我が家では、帰宅後30分を学習時間と決めていました。

  • タブレット学習の日
  • オンラインレッスンの日
  • 宿題が多い日は宿題のみの日
  • 習い事以外は何もしない日

時間は固定しつつ、学習する場所は自由。
おやつを食べながらでもOKにしていました。

自分の部屋、ダイニングテーブル、リビングのソファなど、その日「ここでやりたい」と本人が選んだ場所で取り組ませていました。

時間と内容だけを先に決めておくことで、学習そのものに使えるエネルギーが増えました。
親が管理し、子どもが選ぶ—この役割分担が、無理なく続く土台になったとも感じています。

つかず離れずの距離感で見守る

意外かもしれませんが、効果があったのは、そばに張り付いて学習の様子をのぞき込まないことでした。

最初は「ちゃんとやっているかな?」「本人に任せて大丈夫かな?」と気になって仕方がありませんでしたが、ぐっと我慢。
こちらから声をかけるのはやめ、質問されたときだけ対応するようにしました。

私は英語が好きで、これまでそれなりに勉強してきた分、この”見守るだけ”が、実はかなりつらかったです。
スポーツ経験のある方なら共感していただけるかもしれません。
わかっているからこそ、つい口を出したくなってしまう―あの感覚です。

見える距離にいながら、英語学習を黙って見ているだけというのは、私にとって一種の修行のようでした。

それでも続けていくうちに、タブレット学習ではミスの原因を自分で考えて訂正したり、オンラインレッスンではわからないところを講師に聞いたり、単語を自分で調べたりと、少しずつ自分から動く姿が見られるようになりました。

親にすぐ答えをもらえない環境だったからこそ、「どうして間違えたんだろう」「次は何に気をつければいいんだろう」と立ち止まって考える癖が育ったのでしょう。
教えてもらえないからこそ、子どもは自分の力で学習を完結させようとするのだと気づきました。

結果を主観で評価しない

これは、3つの中でも特に難しいと感じたポイントです。

学生である限り、テストは避けて通れません。
どんな教材でも、単元テストやまとめ問題があり、正誤や点数といった評価が否応なく目に入ってきます。
もちろん、良い結果に越したことはありませんが、常に好成績を出せるとは限りませんよね。

それは私たち親も同じです。
どんなに得意な分野でも、思うような結果が出ない経験は、誰しも数えきれないほどしてきたはずです。

我が家では、学習の成果を評価することはしませんでした。
もちろん、素晴らしい成績を取ったときにはしっかり褒めますし、頑張ったご褒美として子どものリクエストに応えることもあります(娘はちょっとしたカフェ時間やショッピングがご褒美になるタイプです)。

ただ、良くも悪くも「結果は結果」にすぎません。

思うような結果が出なかったとき、わかりやすく言えば、テストの点が低かったときに、私が意識して伝えていたのは、「これまでの頑張りや積み重ねは、ちゃんと力になっている」「今すぐ形に見えなくても、確実に自分の身になっている」ということでした。

英語学習で避けて通れないテスト結果や成績を、家庭ではあえて評価しないことで、子どもにとって「失敗しても大丈夫」と思える安心できる場所を保てていたのだと思います。

英語ができないからこそ、できること

英語ができないからこそ、できること

英語ができないことは、決してマイナスではありません。
むしろ、教えすぎない、期待をかけすぎない、子どものペースを尊重できるなど、プラスに働くことも多いと感じています。

私が英語を好きになったのは、”できること”が少しずつ増え、その一つひとつに喜びや自信を感じられるようになってからでした。
振り返ってみると、両親は英語が得意なわけではなく、「勉強しなさい」と言われた記憶もほとんどありません。
ただ、「教えられないけど、わからないけど、応援はしているよ」というスタンスだけは一貫していたように思います。

これはあくまで一例ですが、親が「勉強させなきゃ」「ちゃんと教えなきゃ」と気負う必要はありません。
英語学習を家庭の負担にしないこと。
それが、長く続けるためには何より大切だと感じています。

子どもが興味を持ちそうな選択肢の種をまき、環境を整え、あとは花が咲くのを待つ。
親にできるのは、芽が枯れないように水をあげ、成長を見守ることだけで十分なのだと思います。

まとめ:家庭学習は「仕組み」で決まる

英語学習が続くかどうかは、親の英語力で決まるものではありません。

  • 時間を固定し、内容を指定する
  • つかず離れずの距離感で見守る
  • 結果を主観で評価しない

この3つがそろったとき、家庭での英語学習は自然に回り出します。

「英語ができないから無理」と感じている方にこそ、伝えたいことがあります。

親は、先生にならなくていい。
学習の土台を整えるだけで、子どもは自分の力で前に進んでいきます。

まずは、できるところから、無理のない一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。