今回は肥満体系の人が多いアメリカの食生活や、その食生活の根幹となる食育の様子、はたまたスーパーマーケットの現状など、アメリカの食に関することを紹介したいと思います。
私はアメリカに語学留学中で、こちらに移り住んで1年が経過しました。学校生活を中心にして、食生活も含めて日本にいた頃とすべてが大きく変わり、環境に順応するのには半年程度の時間を要したほどです。
とくにアメリカと日本の食文化は大きく異なるため、毎日の食事は留学生や駐在をする日本人にとっては大きな課題とも言えるでしょう。
ここでは、私が感じたアメリカでの食生活や、食文化、食を取り囲む環境がいったいどのようなものなのかに触れますので、ひとつの参考程度にしていただければと思います。
肥満大国アメリカ
アメリカ人のおおよそ40パーセントが肥満と言われているのをご存知でしょうか。18歳以上を対象にした肥満度を表すBMI調査(Body Mass Index)で、BMIが30以上の割合は、33パーセント。日本の約10倍という数値です。
さらに肥満率を細かく見てみると、白人男性は30%、白人女性は32%が肥満体型。黒人男性は36%、黒人女性はなんと48%という結果。私が生活しているアリゾナ州においても肥満率は高く、アリゾナ州に住んでいるメキシコ系の人たちも35%が肥満体型とされています。
数値だけでは判断してはいけませんが、事実、アリゾナ州で生活していると、本当に肥満の人たちが多いと感じます。日本で言うところの、お相撲さんクラスの人が巨大なクルマに乗って移動し、広いスーパーマーケットを電動カートに乗って買い物している姿は、アメリカの典型的な光景と言えるほど日常的。
いったいどうすればここまで太れるのかと疑問に感じてしまいますが、そのような人たちが食べている(買っている)物を見れば、やはり共通点が見えてきます。
スーパーマーケットで何を買っているのか?
その共通点こそ、もはや当たり前すぎますが、とにかく「量が多い」ということと「糖分が多い」ということでしょう。とにかく唖然とするほど大量に食材を買い込み、一回の買い物で200ドル近く買っているのをよく見かけます。当然、レジもほとんど進みません。
なぜアメリカにはここまで肥満体型の人が多いのか関心がある私は、スーパーマーケットに行く度に、肥満体型の人たちがどのような商品を買っているのかついつい見てしまいます。
主に冷凍食品のピザや、チョコレートなどの甘いお菓子、毒々しい色をしたカップケーキやホールケーキ、バケツほどある大きなアイスクリームなど、絵に描いたような典型的な物を本当に買い込んでいるのです。さらに、買い物中は巨大なスターバックスのクリームが大量に乗ったコーヒーを片手にしているほど。
日本で報道されるアメリカの現実は、多少ながら湾曲した部分があるものですが、スーパーマーケットでの買い物に関しては報道の通りだと実感しました。一言で言えば「そりゃ太るよ」といった感じでしょうか。
しかし、面白い事実もあります。私が愛用しているスーパーマーケットでの話です。私が毎週通っているスーパーマーケットでは太っている人を見かけません。1年以上、毎週通っているにもかかわらず、太っている人を見かけたのはわずか数回。どうやら、アメリカ人にもふたつのタイプがあるようなのです。
ひとつは肥満体型の人、そしてもうひとつは肥満ではない人。当たり前のことですが、明確に違いが見られるのです。そして明確に違いが出る場所こそが「スーパーマーケット」なのでした。
アメリカのスーパーマーケット
私が毎週通っているスーパーマーケットは「Sprouts(スプラウツ)」というオーガニック食材を中心にしたスーパーマーケット。不思議なことに、このスーパーマーケットでは肥満の人を見かけることはほぼありません。
さらには「Trader Joe’s(トレーダージョーズ)」や「Whole Foods Market(ホールフーズマーケット)」もスプラウツ同様のオーガニック系スーパーマーケットですが、こちらも肥満体型の人は少ない印象です。
一方で、私がコーヒーの粉などを買う際に利用するスーパーマーケットでは、肥満の人をよく見かけます。そのスーパーマーケットこそ、アメリカの大手スーパーマーケット「Safeway(セーフウェイ)」や「Fry’s(フライズ)」です。
これらの個人的な見解を元に、簡単にまとめてしまえば、オーガニック系のスーパーマーケットでは肥満体型の人が少なく、アメリカの一般的な大手スーパーマーケットでは肥満体型の人が多いといった感じです。
これを裏付けるように、それぞれのスーパーマーケットで売られている物は明らかに違います。オーガニック系のスーパーでは、冷凍食品のピザや、砂糖が大量に含まれるお菓子やケーキなどはほとんどなく、メイン商品の横にちょこんと置かれている程度。
対して、一般的なスーパーではそれらが陳列棚を埋め尽くしています。しかも、それらはオーガニック系のスーパーと比較して値段も安く、大量買いすればさらに安くなる制度があるため、ついつい買ってしまうという仕組み。
1年以上毎週のようにアメリカのスーパーに通っている私の個人的な見解として、肥満か肥満でないかは、食材を提供するスーパーマーケットも大きく影響していると考えています。しかし、アメリカでこのようなことを聞く機会はほとんどありません。
恐らく、研究や論文で肥満の原因をスーパーマーケットと結びつけると、それぞれの会社から訴えられる可能性があるため、特定のスーパーを引き合いに出すことは避けられているでしょう。
最終的には、個人の判断や食費にかける予算の兼ね合いもありますが、日本人にはオーガニック系のスーパーが適しているように思います。留学や駐在でアメリカに滞在する際は、体のことを考えてオーガニック系スーパーマーケットを検討してみてください。
食育
アメリカでは食に関する教育「食育」が、日本よりも充実していないことも肥満体型や、健康問題のひとつの原因と言えるでしょう。
日本では子どもたちが、どの都市においても畑や海、市場など食の原点となる場所が身近で、さらには義務教育のなかで食に関することを学ぶ機会があります。実際に私が幼い頃にも、課外授業で畑に行って野菜を収穫しました。現在、小学生の親戚の子どもたちも、課外授業で畑や魚市場で学んでいると言います。
もちろん、日本のすべての学校でこのような教育が徹底されているわけではありませんが、アメリカと比較して「食材」について学ぶ機会は多いでしょう。私がボランティアをしているアメリカの小中高一貫の学校では、野菜を理解できない子どもが多くいます。
ジャガイモを見てもそれが何なのか分からない。ただし、ポテトチップスを見せるとポテトと言う。他にも、レタスとブロッコリーの違いが分からなかったりと、びっくりすることが実際に起きました。名前も分からないのだから、栄養やそれらの育ち方も分からないのです。
そんな子どもたちは、両親からピザや砂糖いっぱいのケーキなどを与えられるため、結果的に肥満になったり、栄養が足りずに病気にかかりやすくなったりするのでしょう。
アメリカでは決して冗談ではなく「ピザは野菜」と法律で決めたり、砂糖を大量に投入している飲み物こそ美味しいとCMを流したり、学校で提供する牛乳にまでも砂糖を入れているほど。
このような環境で育った子どもたちがそのまま大人になり、子どもの頃から食べていたものをスーパーマーケットで買うという「負の連鎖」がアメリカでは起きています。
つまり、食に対する教育がなされない限り、アメリカが直面している肥満問題や、健康問題は一向に解決に向かわないでしょう。
日本人がアメリカで生活する際には、このような文化の違いや、教育の違いが背景にある「食の違い」をよく理解しておくことは、自身の健康を守るためにも必要だと思います。
アメリカが隠す砂糖の真実
アメリカでは特定の業界と政府が強く結びつき、国民に提供する情報をコントロールすることが行われています。
もっとも分かりやすいのは銃規制の問題。NRA(The National Rifle Association)が銃規制を検討するアメリカ政府を、様々な手を使って食い止めるということが永遠と繰り返されていることはご存知のかたも多いはず。
これと同じようなことが食文化においても起きており、特定の食品業界が販売に影響が出ることを防ぐために、政治家をうまく活用し、自分たちの業界を守るということをしています。
一例として、前大統領夫人のミシェルオバマさんは、冷凍食品のピザや揚げ物ばかりが提供されている学校給食の改善を求め「ヘルシー・ハンガーフリー・キッズ・アクト」を計画。
この運動で、子供たちに栄養バランスが整った給食を提供しようとしましたが、給食を提供しているジャンクフード業界が利益が減ると反発し、あっけなく頓挫。さらには、トマトソースが大さじ2杯分乗っているピザは野菜であると定義付けられてしまいます。
結局、アメリカではほとんどの学校において相変わらず栄養が偏った、とても給食とは呼べないようなものが提供され続けているのでした。
別の事例では、2017年11月にアメリカのThe Sugar Associationが砂糖の多量摂取は人体に有害になるという研究発表をもみ消していたことが判明します。
もみ消された研究は1960年から1970年頃のもの。その内容は、砂糖を大量に摂取した場合、ラットを使った実験において心臓に悪影響があり、コレステロールや中性脂肪などもできることを指摘したものでした。
あらゆるものに砂糖を入れる文化のアメリカで、このような研究結果が出てしまうと、砂糖の売れ行きに影響が出ると懸念したThe Sugar Associationは研究支援を打ち切り、研究結果の発表を意図的に見送り。
このことが現代になって明るみに出たことで、The Sugar Associationは50年以上に渡り、消費者を騙していたと指摘される始末。この組織は、砂糖の多量摂取の危険性を広めるどころか、砂糖の消費を拡大させることに注力してきました。
その結果、あらゆる食べ物に砂糖が入り、本来は栄養が豊富な牛乳にすら砂糖を入れるほどに。さらに、それらを学校給食にも展開したのでした。
先進国アメリカと言われていますが、食に関しては教育や情報操作など危ういことばかりです。日本では広く食育が行き届いているため、あまり心配はないかもしれませんが、日本と交流が深いアメリカの側面として知っておくことは重要ではないでしょうか。
まとめ
食文化が世界遺産になる国の日本からすれば、アメリカの食文化は疑問に思うことばかりです。しかし、留学や駐在となると食生活は日々の生活に直結するのもの。だからこそ、アメリカの食文化や食品の特性などをしっかり考える必要があります。
ニューヨークやロサンゼルスなど大都市圏では、日本食用の食材が日本同様に手に入りますが、私が住んでいるアリゾナ州の田舎町みたいなところになると、簡単には日本と同じ食生活を送れません。
もし、アメリカに長期滞在する場合は、アメリカの食文化や背景、さらにはスーパーマーケットなどの食材を調達する場所の特性をあらかじめ調べておき、自身の体を守ることを考えてみてください。
アメリカでは日本にいるとき以上に、食に関して深く考えることが求めらると実感した生活でした。