春になると、まだ着慣れないスーツに身を包んでぎこちなく歩く新入学生や新入社員の若者をよく目にします。

着ているスーツも本人も、まだまだまっさらな新品。ここからいろいろな経験をして味わいが増していくんだろうなぁ、と思って「頑張って!」と心の中でエールを送ってしまいます。

ところで、英語でスーツを何と呼ぶかご存じですか?また、今でこそ当たり前のように身の回りにあるスーツですが、一体いつから日本に入ってきたものなのでしょう。

今回は語源や由来をはじめ、スーツにまつわるあれこれについてご紹介したいと思います。
例文や具体例もたくさんあるので、これを読めば英語の「スーツ」に関する理解はバッチリです!

スーツって英語でなんて言うの?

スーツって英語でなんて言うの?

スーツは英語でも”suit”です。英語には日本と海外で表現が違うものも多いですが、スーツの場合はそのままなので安心ですね。

発音はアメリカ英語とイギリス英語のそれぞれで以下のようになっています。

  • アメリカ英語:[súːt](スートゥ)
  • イギリス英語:[s(j)úːt](スィートゥ)

そのため、日本式に「スーツ」と発音すると複数形である”suits”だと思われてしまうので注意しましょう。

しかし、”suit”という単語はスーツを表す以外にもさまざまに使われます。まずはそのコアイメージを確認しておきましょう。

suitの使われ方とコアイメージ

“suit”という単語はスーツを表す以外にも幅広い場面、さまざまな意味で使われます。その根底にあるのは「揃っている」というコアイメージ

スーツの場合は、ジャケットとパンツという上下が一揃いになっていますよね。それ以外にも、条件や状況と揃っていれば「適している」、服やアクセサリーとその人のイメージが揃っていれば「似合っている」など、さまざまな意味に派生して使われます。ちょっと物騒なものでは、自らの権利に揃っているということで「訴訟」なんて意味になることもあるんです。

Aさん
This is my first suit.
訳)これが私のはじめてのスーツです。
Aさん
You have to choose words that suit the situation.
訳)状況に適した言葉を選ばなければいけませんよ。
Aさん
This ring suits you.
訳)その指輪、よく似合ってますね。
Aさん
I brought a suit against the company.
訳)私はその会社を相手に訴訟を起こしました。

スーツとスイートルームは同じ語源?

ちなみに、高級ホテルなどにある「スイートルーム」も、英語表記すると”suit room”です。イギリス式の発音に近い「スイート」と表記するのが通例ですが、アメリカ式を尊重すれば「スートゥルーム」となります。

スイートルームとは1部屋の中に寝室からリビングルーム、ダイニングやキッチンまでが「一揃い」になった部屋のこと。ここでもスーツと同じく「揃っている」というコアイメージが効いていますね。スイートルームは甘い時間を過ごすから”sweet room”だと思っている人も多いですが、会社の重役などが仕事で泊まることもあり、必ずしも甘い時間が流れるとは限りませんので、注意しましょう。

Aさん
A president of a large company staying in the suite room was arrested for tax evasion.
訳)スイートルームに泊まっていたある大企業の社長が、脱税で逮捕されたんだ。
Bさん
Oh, that’s not a sweet, but bitter time for him.
訳)わあ、それは甘いどころか苦い時間だっただろうね
Aさん
Hold on, a suit room doesn’t mean a “sweet” room.
訳)ちょっと待って、スイートルームは甘い部屋って意味じゃないよ。
Bさん
Are you serious?
訳)まじ?

スーツの起源・由来は?その発祥と日本に入ってくるまでの経緯

スーツの起源・由来は?その発祥と日本に入ってくるまでの経緯

スーツが生まれたのは紳士の国イギリス。もともとは農民が作業時に着ていた「フロック」という丈の長い衣服が起源だと言われていて、19世紀頃に今私たちの知るスーツの原型が作られました。スーツというとフォーマルなイメージが強い衣服なので、もともとが作業着というのは意外なルーツですよね。

日本にスーツが入ってきたのは、鎖国が終わった幕末期。長く閉ざされていた外交が復活し、欧米文化を象徴する存在としてスーツが日本に伝来しました。とはいえ、舶来品であるスーツは当初まだまだ高級な品で、一部の富裕層か、制服として支給される軍人のみに使用されていました。一般市民の間で着用されるようになったのは明治維新以降(1887年〜)と言われています。

富裕層や軍人が式典などの特別な場で着用していたことから、日本では「スーツ=礼服」というイメージも根強く残っています。

「背広」は英語からの当て字だった!?

スーツのことを「背広」と呼ぶ場合がありますが、これは「背中が広い」という意味ではなく、「サヴィル・ロウ」という英語の当て字から来ています

サヴィル・ロウ(Savile Row)は、イギリス・ロンドンの中心部に位置するストリートの名前で、スーツの仕立屋(Tailor)が多く集まる場所です。おそらく、デニムといったら岡山、カツオといったら高知といったように、「スーツといったらサヴィル・ロウだよ」と当時イギリス人に教えられ、それがもとで「背広」という言葉が生まれたのでしょう。

ちなみに、同じくスーツ関連の和製英語としては、「Yシャツ」も要注意。これは「ホワイトシャツ(white shirt)」が縮まって生まれた言葉で、英語に”Y-shirt”という表現は存在しません。私は学生時代、「首元がY字になっているからかな」などと無理やり理屈をこじつけて覚えていました…。

「クールビズ」は日本独自の文化

2005年に環境省によって導入された「クールビズ(COOL BIZ)」。夏場に冷房の使用を控えるために「ノーネクタイ・ノージャケット」の軽装にすることを推奨した取り組みです。
このクールビズ、実は日本独自の文化であり、他の国ではまったく認知されていません

それもそのはず、「仕事=スーツ」と杓子定規に捉えているのは日本くらいのもので、他の国では暑かったら各自で涼しい恰好を選ぶため、わざわざそのような呼びかけをする必要がないんです。

そんなクールビズも2020年で終了。政府による夏場の呼びかけは無くなり、今後は各企業の裁量に任せるそうです。

いろいろな「スーツ(suit)」の種類と英語での名称

 

いろいろな「スーツ(suit)」の種類と英語での名称

ひとくちにスーツといっても、さまざまな種類が存在しますね。

ここでは代表的なものを表にまとめてご紹介します。中には日本語と英語で呼び方が違うものや、そもそも英語に存在しない表現(和製英語)も存在するので注意してください。

スーツの種類 英語での表記・名称 意味・用途
ビジネススーツ business suit その名の通りビジネスシーンで使うスーツ。日本では黒や紺などの暗い色合いが良いとされています。
ディレクターズスーツ director’s suit 黒のジャケットとコールパンツ(黒とグレーのストライプのスラックス)を組み合わせたスーツ。昼間の結婚式に出席する際の準礼装。
ダブルスーツ double breasted suit フロントボタンが二列付いているスーツ。通常のスーツはボタンが一列なのでシングルスーツと呼ばれています。
パンツスーツ pantsuit 上着とスラックスを同じ布で仕立てた、女性用スーツのこと。
リクルートスーツ job interview suit 就職活動用のスーツのこと。リクルートスーツ(recruit suit)という表現は和製英語で海外では通じないので注意。

「スーツ(suit)」を含む例文一覧

「スーツ(suit)」を含む例文一覧

最後に、スーツという意味の”suit”を含む例文を見て、使い方を確認していきましょう。

Aさん
He always wears a well-tailored suit.
訳)彼はいつも仕立ての良いスーツを着ているね。
Aさん
This suit smells bad of tobacco.
訳)このスーツ、すごくタバコ臭い…。
Aさん
Your suit is considerably worn out.
訳)あなたのスーツ、相当くたびれちゃってるよ。
Aさん
That black suit is good not only for business but also ceremonial occasions.
訳)その黒いスーツは仕事だけじゃなく、冠婚葬祭にも使えます。

まとめ

「スーツ」は英語でも同じく”suit”と表現します。
今回ご紹介したように、スーツに関連する言葉の中には海外で通じない和製英語も含まれているので、外国人相手に使う際には注意が必要です。

とはいえ、絶対に使ってはいけないというわけでもありません。相手に通じなければ、あの手この手で説明してみる、そんな苦労も含めてコミュニケーションです。肩肘張らずに、自由に英語を使うことが何より大切ですよ。

それでは、これからも楽しい英語学習を。

Let’s enjoy!!