「実は、英語という言語は一つではない」と言われてピンとくるでしょうか?

考えてみれば、日本語も関西弁と東北弁は同じ日本語でも明らかな違いがありますよね。単語が違ったり、アクセントが違ったり、語尾が違ったり、特別な言葉や漢字があったりします。

英語も同じで、アメリカの英語、イギリスの英語、カナダの英語、オーストラリアの英語、シンガポールの英語、その他にもいろいろな「方言」があるのです。

今回はアメリカ英語をイギリス英語と比較しながら、特徴をつかんでいきましょう。

アメリカ英語とイギリス英語の違い

アメリカ英語とイギリス英語を比較するために、4つの分野を具体的に見てみましょう。

単語の違い

まず、それぞれの国で使う単語が違うものがあります。

  • アパート:apartment(米)/ flat(英)
  • 電話する:call(米)/ ring(英)
  • 休暇:vacation(米)/ holiday(英)
  • 薬局:drugstore(米)/ chemist(英)
  • 携帯電話:mobile phone(米)/ cell phone(英)
  • 映画:movie(米)/ film(英)
  • 駐車場:parking lot(米)/ car park(英)
  • 秋: fall (米)/ autumn(英)
  • お菓子:candy(米)/ sweets(英)
  • 運転免許証:driver’s license(米)/ driving licence(英)
  • エレベーター:elevator(米)/ lift(英)
  • ガソリンスタンド:gas station(米)/ petrol station(英)
  • 乳母車:stroller(米)/ pushchair(英)

これらの有名な違いはどちらの国でも把握しているので、相手の国に行っても大体通じますが、細かいものになってくるとお互いに何のことかわからなかったりします。

こう見ると、日本語のカタカナもアメリカ英語から取り入れていたり、イギリス英語から取り入れていたりする、とわかりますね。

スペルの違い

単語が同じでもスペルが違うこともあります。

  • 色:color(米)/ colour(英)
  • 中心:center(米)/ centre(英)
  • 灰色:gray(米)/ grey(英)
  • 劇場:theater(米)/ theatre(英)
  • お気に入り:favorite(米)/ favourite(英)
  • カタログ:catalog(米)/ catalogue(英)

アメリカ英語の方がイギリス英語に比べ、つづりが簡潔ですね。

これは、Merriam-Webster Dictionaryという英語辞典の生みの親、ノア・ウェブスターという辞書の編集者がアメリカ独自の英語の確立を目指したのが理由です。

彼は、読まない文字をつづりから排除しようとしました。そう聞くと、もっと消してもいい文字があるような気もしますね。でも、時代とともに発音も変わっていきますから、仕方がないかもしれません。

発音の違い

アメリカ英語ではRの発音をするときに舌を巻きがちです。一方で、イギリス英語ではそれほどRの発音は重視されません。

また、アメリカ英語ではTの発音をするときに音が相殺されて「ラ」に聞こえることがあります。

例えば、日本人が苦労する単語waterをアメリカ英語で発音すると「ワラ」ですが、イギリス英語で発音すると「ウォーター」となります。

他にも、アメリカ英語でもイギリス英語でもどちらでも使われる「どっちもそれほど変わらないじゃん」という意味のPotato Potato(発音:ポティトォポタート)もしくはTomato Tomato(発音:トメィトゥトマート)という慣用句があります。

これは、アメリカ発音だとAの音が「エ」に近くなるのに対して、イギリス発音ではそのまま「ア」と発音することから来ています。

どちらかと言うと、イギリス英語の方がつづり通りに発音するので日本人には発音がしやすいかもしれません。

最近は各SNSのショート動画などで、アメリカ英語とイギリス英語の違いを比べた動画が出回っています。気になったらハッシュタグ検索してみてください。

文法の違い

いくつかありますが、ここでは二つ挙げます。

一つ目は、ある時から今に至るまで続いていることを表したいときに使う現在完了の文法です。このような場合、イギリス英語では現在完了形を必ず使う必要がありますが、アメリカ英語では過去形のままでも大丈夫です。

つまり、もうご飯を食べたかどうかを相手に尋ねるとき、イギリス英語ではHave you eaten yet?となりますが、アメリカ英語ではDid you eat yet?と過去形で表現できます。

二つ目は、単語の単数扱いの違いです。familyやteamなど、グループを表す集合名詞では、アメリカはそのグループを一つと考えて単数扱いにします。一方で、イギリスは個々のメンバーを加味して複数扱いにします。

したがって、familyという単語を使うとき、アメリカ英語では動詞に三人称単数形をつけてMy family love”s” cats.ですが、イギリス英語ではMy family love cats.となります。

アメリカ英語は省略好き

スラングの枠なのですが、アメリカ英語はかなり省略を好みます。

例えば、want toをwannaといったり、get toをgottaとしたりするのはアメリカ特有です。

他にも、Thank youをThank Uと一文字で表してみたり、What’s up?がSup?になったりするのもアメリカ英語の方が積極的に取り入れていきます。

日本語も、パーソナルコンピューターはパソコン、リモートコントローラーはリモコンになり、芸能人の名前もどんどん省略していきますから、馬が合いそうですね。

ちなみに、イギリス英語は慣用句が好き

もちろん、イギリス英語でも省略はありますが、イギリス英語の特徴はそのウィットや慣用句にあります。いわゆる皮肉なブラックジョークであったり、ちょっとひねった表現があったりするわけです。

例えば、Not give a monkey’sは直訳すると「サル用のものをあげる」という意味ですが、イギリスでは「全くの無関心」という意味がある慣用句です。

他にも「問題ない」という意味のBob’s your uncleは直訳すると「ボブは君のおじさんだよ」と言う意味で、知らないと何が何だかわかりませんね。

アメリカ英語とイギリス英語はなぜ違う?

アメリカ英語とイギリス英語はなぜ違う?

英語の歴史を少し考えてみると、英語はもともとイギリスのみで話されていました。しかし、大航海時代を皮切りに、イギリスはいろいろな国を植民地とするようになりました。

それと同時に、英語も世界中に広まっていったのです。そして、広まった先の国で独自の文化が生まれ、元の言語と混ざり合ったり、独特の言い回しが生まれたりして、”新しい”英語ができました。

アメリカ英語はそのうちの一つです。ネイティブアメリカンの語彙や、同じようにアメリカ大陸に来ていたスペインやオランダの語彙を取り入れ、かつイギリスの古き良き英語を残しつつ、今ある英語に発展しました。

まとめ

英語を勉強するときに、どの英語をメインに勉強するかを考えておくのは良いことです。

YouTubeや映画などをいろいろ見て、どの英語が自分にしっくりくるか、話せるようになってみたいかを観察してみてください。学校で習ったアメリカ英語に少し慣れているようだ、とか、かっこいいからイギリス英語を勉強したい、などと自分の傾向がわかってきます。

英会話を習うときには、最初に先生がどの英語を話すかもチェックするといいですよ。また、スマホの言語設定を英語にして慣れたいときには、設定にアメリカ英語用のEnglish (US) と イギリス英語用のEnglish (UK)があります。自分に合う方で設定しましょう。

まずは、自分が得意になれる英語を一つ見つけられるといいですね。