日本語で複数のものを表す場合、通常は「たち」を名詞の後ろにつける、もしくは「人々」のように同じ言葉を繰り返します。それでは、英語で複数形を表す場合は、どのようにすればよいでしょうか?基本は単語の後ろに”-s”をつけますよね。これは英語を学び始めて1番最初に習う、いわば英語の基礎の基礎です。

本記事ではこの英語の基本文法である「複数形」について解説していきます。文法そのものよりもなぜその文法が必要なのか、に焦点を当てて解説するので、最後まで読んでなぜ基本文法が重要なのかを考えてみましょう。同様に重要な基本文法「三単現のs」についても少し考えてみます。

複数形とはなにか

複数形とは、名詞が複数あることを示す際に行われる単語の変形で、主に名詞の後ろに”-s”をつけて表記します。単数形と複数形でどのような違いが生じるのでしょうか?

動詞の形が変わる

のちほど解説しますが、主語の名詞が単数形か複数形かによって、動詞の形が変わることがあります。また形が複数形でなくても、weやpeopleのように単語1つで複数のものを表している場合も複数形としての性質をもちます。

文章のイメージが変わる

りんごを想像してください、と言われると1つのりんごを想像しませんか?人が名詞を認識する際、通常は1つのものをイメージします。複数形はその名詞に対して、通常とは異なるイメージを持ってくださいね、という合図のようなものです。日本語では単数か複数かはあまり気にしませんが、英語では単数か複数かで文章のイメージが大きく変わってしまうので、しっかり使い分けるようにしましょう。

複数形は可算名詞にのみつける

英語を勉強していれば、名詞が2種類に分かれるという、これまた日本語にはない考え方に出会います。その2種類というのが「可算名詞」と「不可算名詞」です。すべての単語が複数形の形を持っているのではなく、可算名詞だけが複数形を作ることができるという点に注意しましょう。

可算名詞

文字通り、数えられる名詞のことです。物理的に存在するもののほとんどは可算名詞に分類されます。可算名詞を文章中に使う場合は、必ず「冠詞(a/an/the)+単数形」もしくは「複数形」で表記しなければなりません。冠詞のない単数形や不定冠詞(a/an)をもつ複数形は文法的に誤りとなりますが、「定冠詞(the)+複数形」の形は認められています。

不可算名詞

日本人が特に苦手とするのがこちらの不可算名詞です。形がイメージできないもの、抽象的なものが不可算名詞となり、不可算名詞には単数形、複数形の区別はありません。不可算名詞はさらに次の2種類に分類することができます。

物質名詞

物質名詞は、名詞そのものがある性質を持ち、形がどう変わっても性質に変化がないモノを指します。代表的なものだと水や紙は物質名詞の1つで、意外なものだと、チョークやパンがあげられます。チョークもパンも、形がどう変形してもその性質には変化がないものとされているため、物質名詞とされています。英語話者と日本人とでは、ものの見方に違いがあるため、日本人の認識では可算名詞となりそうなものでも不可算名詞に数えられることが多々あるので、分からなければその都度確認するようにしましょう。

抽象名詞

抽象名詞とは、happinessやsadnessのような感情、informationのような概念を示す単語のことを言います。物質名詞は形があって常に同じ性質をもつものでしたが、抽象名詞は形そのものがありません。数えようがないものは抽象名詞となるので、抽象名詞は判別しやすい不可算名詞です。

不可算名詞でも単数・複数を表現することはできる

不可算名詞は複数形を持ちませんが、他の単語と組み合わせることで単数・複数を表現することができます。ケーキ一切れは”a piece of cake”、2切れであれば”2 pieces of cake”です。不可算名詞は複数形にせず、個数を表す”piece”や”slice”の形で表現します。ちなみにcakeは可算名詞ではホールケーキのことを指し、切り分けたケーキは不可算名詞となる特殊な単語です。他にもpizzaやappleなどが同様の変化をします。

なぜ英語には複数形が存在するのか

複数形は可算名詞にのみつける

日本語にも複数形はありますが、そこまで厳格に使い分ける必要はありません。しかし、英語では単数形と複数形の使い分けがしっかり行われています。それではなぜ英語には、複数形という文法が存在するのでしょうか?

英語はその場面を忠実に再現する

英語では、必ず文章に主語が含まれています。日本語では主語を省いての会話も出来ますが、英語では原則主語を省略することができません。これは英語という言語の性質の1つで、英語は「誰が、何を、どのように」と文章1つでその場面を忠実に再現します。日本語は文脈から推測する言語なので、個数までは言及しないことが多いですよね。しかし、英語では聞き手がストレートに場面を想像しやすくするために、しっかり単数と複数を使い分ける必要があります。

量を表す言葉がない

日本語であれば、「椅子が一脚あります。」のように単語それぞれに量を表す言葉をつけることができます。そのため複数形の形を取らずともいくつあるのかを表現することが可能です。しかし、英語にはこのような言葉は存在しません。そこで”a chair”、”2 chairs”と名詞の前に直接個数を置いて表現をすることになります。前述のように人がモノを認識する時、通常1つのものをイメージしてしまうため、複数形にすることで1つではないことを念押しすることができます。

主語が三人称・単数の時は動詞に”s”をつける

複数形は可算名詞にのみつける

複数形は名詞に”s”をつけて表現しますが、動詞にも同様に”s”をつける場合があります。これも英語の基本で複数形と同じく重要なので確認しておきましょう。

「三単現のs」とは

「三単現のs」とは、三人称または単数を主語とする文章で動詞が現在形であれば動詞に”s”をつけるというルールのことです。三人称とは、話し手、聞き手以外の第三者のこと、単数は可算名詞の単数または不可算名詞を意味します。第三者であっても複数形であれば、このルールの対象外です。

なぜ「三単現のs」というルールが存在するのか

このルールがなぜ生まれたかという正確な答えは分かっていません。また「三単現のs」というルールは標準英語に適用されているルールですが、実はこのルールを持たない英語を話す地域もあります。英語は1500年の歴史を持つと言われる言語です。世界中で使われていたため、各地で文法も単語も異なる多くの方言が生まれました。その中の1つが「三単現のs」ルールをもつ今の標準英語で、この英語をロンドンの上流階級が使っていたことから、世界的に標準英語として定められた、というのが有力な説です。

英語は1つではない

ここでは複数形や三単現のsを英語の基礎として解説しましたが、これはあくまでも標準英語の場合の話です。前述の通り、三単現のsをつけない英語もあれば、反対に主語が複数形の場合に動詞にsをつける英語もあります。標準英語だけが正しい英語ではないという認識を持っておきましょう。

まとめ

今回は英語の基本文法について解説しました。なぜこれらの基本文法が重要なのかご理解いただけたでしょうか?日本語と英語は性質も文法も全く異なります。言葉と文化は非常に深い関係にあるというのはなんとなく理解できますよね。解説の中でも述べたように英語は1つではありません。文法も単語も異なる様々な英語が存在しています。今回解説した基本文法はもちろん大切ですが、それ以上に他言語へのリスペクトが何よりも大切です。標準英語の基礎を理解した上で、あらゆる形の英語にリスペクトを払える、そんな素敵な英語話者を目指しましょう!