ここ近年よく耳にする「イースター」。いわゆる「復活祭」と言われていますが、実際にこのイベントを知っている人は日本ではあまりいないようです。今回は、この「イースター(復活祭)」についてご紹介。
欧米ではメジャーかつ子どもたちに人気のイベントです。今回は、この「イースター」(復活祭)の意味や英語でのあいさつ、イベントの楽しみ方、各国の過ごし方を細かく学んでいきましょう。

イースターとは?

イースターとは?

イースターは英語で「Easter」。イエス・キリストの復活を祝う「復活祭」です。日本では近年「イースター」について聞くようになりましたが、アメリカではクリスマスやサンクスギビングに優るとも劣らないメジャーなイベントです。

アメリカの学校や教会では、イースターの時期が来ると「エッグハント」という卵を探すイベントを開催します。イベントでは、カラフルにペイントされた卵(中身は空)や色がついた卵型のプラスチックカプセルが芝生に巻かれ、キッズたちがそれを籠に集めます。最近では、玉子型のカプセルの中にプチギフトが入っているパターンも増えています。
また、卵と一緒にウサギのキャラクターもデコレーションされていて、かわいらしいイースターグッズが街にあふれるようになります。

イースターの本当の意味

イースターはキリスト教のお祭りです。

クリスマスがイエス・キリストの誕生祭であるのに対し、イースターはイエス・キリストが復活したことをお祝いする祭りで、宗教的にも非常に意味のある日です。

キリストが死に至ったのは、弟子の一人であるユダに裏切られたためで、キリストはゴルゴダの丘で十字架にかけられて、処刑されます。

キリストは処刑前、弟子たちに「処刑後3日目に復活する」という予言を残していました。その予言どおり、3日目に復活するという奇跡を起こします。弟子たちは喜びに沸き立ちました。そんな復活を祝って、イースターは街中でも人気のイベントの一つになりました。

イースターっていつ?

イースターは、ハロウィンやクリスマスのように毎年日にちが決まっているのではなく、毎年日にちが変わる移動祝日です。

イエス・キリストが死から復活したのが日曜日だったことから、イースターは「春分の日以降、最初の満月の次の日曜日」と決められています。

2025年は4月20日(日)がイースター!

宗派によっても異なりますが、カトリック教会の場合、2025年は4月20日です。

2026年以降は、2026年4月5日、2027年3月28日、2028年4月16日と決まっています。2024年は3月31日でした。

イースター休暇とは?

イースターは当日お祝いするだけでなく、お祝いする期間は、休暇の前40日間とその後の50日後までの90日間とされています。

ヨーロッパやアメリカなどのキリスト教国では、イースター前の金曜日(イエス・キリストが処刑された日で、グッド・フライデーといわれている)からイースター翌日の月曜日までをイースター休暇としているケースが多いです。

キリスト教出現以前から存在していたイースター

実はイースターはキリスト教出現以前からあったといわれています。

北半球の方では、春の訪れを告げるお祭りとしてイースターが存在していました。現在のように暖房がない世界では、春の訪れを待ち遠しくしていた人がいたことから、暖かくなるこの季節の訪れをお祝いするお祭りがありました。

イースターという名前は、アングロサクソン人が信じていたゲルマン神話の春の女神「Estore(エオストレ)」に由来しているという説があります。

やがて、キリスト教はイエス・キリストの復活と、春の訪れを関連付けてお祝いするようになりました。

イースターの英語でのあいさつ

イースターによく使われるあいさつのフレーズをみてみましょう。キリスト教圏ではクリスマスカードのようにイースターカードを送り合う習慣もあります。イースターに親しい人にイースターカードを送ってみてもすてきですね。

Happy Easter!(楽しいイースターを)

Have a happy Easter!(楽しいイースターを過ごして!)

Happy Easter to you!(あなたにとって楽しいイースターを)

Wishing you a very special Easter this year.(あなたにとって今年が特別なイースターになりますように)

シンボルは「卵」と「ウサギ」

先ほど話したように、イースターには「卵」と「ウサギ」のグッズであふれかえるようになります。春を感じさせる明るい色合いやパステルカラーの卵型のカプセルや、ウサギのお菓子やぬいぐるみ、そして卵を入れるバスケットなどがスーパーやドラッグストアに立ち並びます。

イースターエッグ

卵がイースターのシンボルになったのは、卵は「命の誕生」の象徴であり、殻のなかにいる時間を経て、殻を割って生まれてくる様子が、一度処刑された後に復活したイエス・キリストを連想させることが由来だとされています。

イースターエッグは、穴をあけて中身を抜いた卵やゆで卵、チョコレートでコーティングされたもの、プラスチック製のエッグケースの中におもちゃやお菓子を詰めたものなど、いろいろなスタイルがあります。

イースター・エッグはクリスマスツリーのように木の枝に飾ったり、ゲームやプレゼントに使ったりします。

イースターバニー

イースターバニーは、うさぎが一度にたくさんの子どもを産み、1年に何度も妊娠と出産を繰り返すことから、繁栄や豊穣のシンボルとされていることが由来だと言われています。

イースターの楽しみ方

イースターの楽しみ方

実際にイースターでは何をするの?と知らない方は思うはず。ここではキリスト教国ではイースターに何をして過ごしているかをご紹介します。

敬虔なクリスチャンにとっての「イースター」

敬虔なクリスチャンの方にとっての「イースター」はとても大切なもの。40日前の水曜日からお肉を食べないようにする「レント(Lent)」を行います。これはキリストの受難にならう意味があります。

この肉断食が始まる前日は「ファットチューズデー(Fat Tuesday)」と言います。この日の次の日からお肉が食べられなくなるので、思い切り食べて飲んで騒ぐことからこのように呼ばれるようになりました。

そして、肉断食が始まる水曜日は「アッシュウェンズデー(Ash Wednesday)」と言い、教会にて灰を額に付けてもらいます。

金曜日は「グッドフライデー(Good Friday)」というイエスキリストが十字架にかけられた日(聖金曜日)と呼びます。

イースター前の40日間を「四旬節」といいます。

そしてついに日曜日(イースター)当日。肉断食を解禁して、家族で肉料理を始めさまざまなごちそうをいただきます。ハムやラム肉、ポテトや卵、さらにパイやケーキなどまるでクリスマスかのような豪華なごちそうを食べる家庭もあります。

イースターメニュー

四旬節明けのイースター当日は、どのような料理を作るのか、ご紹介します。

ホットクロスバンズ

十字に線が入った甘いパンを食べることもあります。十字の線はキリストの受難を表わす十字架を表しています。生地に、ドライフルーツやスパイスが練り込まれたふんわりした甘いパンです。ちぎりながら食べるのが定番スタイルです。

デビルドエッグ

デビルドエッグも定番料理です。ゆで卵を半分に切り、黄身を取り出しマヨネーズやピクルスなどと和えて白身に詰めます。卵がフライになっていたりすることもあります。デビル(悪魔)という名前が付いているのは、かつてとてもからい味付けだったため、名付けられたそうです。

ラムのロースト

イースターで、伝統的に食べられているのがラム肉(仔羊)です。なかでも、ローズマリーを効かせた骨付きのラム肉を、オーブンでカリッと香ばしく焼き上げるのが一般的。春に生まれる仔羊は、新たな命の象徴でもあります。

エッグペイント

卵に色を塗ったり絵を描いたりして、オリジナルのカラフルなイースターエッグをつくります。海外では、ホームパーティーでイースターエッグを家族や友だちと見せ合ったりして楽しんでいます。

イースターデコレーション

アメリカやヨーロッパでは、2月のバレンタインデーが終わるとイースターのデコレーションが始まるそうです。家の中や庭を、カラフルなイースターエッグやイースタバニーで飾り付けて、春の訪れを祝います。

エッグハント

エッグハントは、イースターの前夜に自宅や教会、公園などにイースターバニー(大人)が隠したイースターエッグを子どもたちが探す遊びです。

子どもたちが見つけた卵をバスケットに入れます。お菓子やおもちゃなどが入った卵なので、子どもたちは一生懸命探します。

時間帯を分けて年齢別で行うこともあり、小さな子どもが楽しむこともできます。

エッグロール

エッグロールは、芝生の上で卵をスプーンで転がすレースのことです。ホワイトハウスで毎年招待されたキッズたちが参加しているのをテレビなどで見たことがある方もいるかもしれません。

第四代大統領のジェームス・マディソンの妻ドリー・マディソンが1814年にこのイベントを始めて以来、ホワイトハウスでの伝統的なイベントの一つとなりました。

エッグ&スプーンレース

エッグ&スプーンレースは、スプーンにのせた生卵を落とさないようにしながらハラハラしながら速さを競うゲームです。

小さい子どもは、生卵のかわりにスポンジやプラスチックのボールなどでも楽しむこともできます。

イースターパレード

ニューヨークでは、毎年恒例のイースターパレード。宗教的な意味合いはあまりなく、オシャレなコスチュームを着た人が練り歩く楽し気なイベントです。

ボンネットパーティー

ボンネットは帽子のことで、イースターの日に、イースターの卵やウサギなどの飾りをつけた帽子を被ったり、仮装をして街をパレードします。

ニューヨークのマンハッタンで開催される「イースターボンネットフェスティバル」は1870年にごろ始まった歴史あるお祭りです。

各国のイースターの過ごし方

各国のイースターの過ごし方

キリスト教国の人々は、イースターは教会に行ってミサに参加したり家族で食事をして過ごすのが一般的です。また、各国で過ごし方に少しずつ特徴もあります。

ヨーロッパ圏

ヨーロッパでは、イースター前後の日には休暇となり、3~4日の休暇を取るかたも少なくありません。周囲の休暇は

  • 木曜:Holy Thursday
  • 金曜:Good Friday
  • 土曜:Black Saturday
  • 月曜:Easter Monday

イタリア

イタリアでは、イースターは「パスクア」と言います。祝日は土日月と3連休となることが多いです。イースターには、ミサに出かけた後家族で食事をします。食後には、ハトの形をしたケーキ「コロンバ・パスクァーレ」を食べる伝統があります。

卵の形をしたチョコレートはイースターギフトの一つで、中におもちゃなどが入っているので子供たちに人気のアイテムです。

ドイツ

ドイツでは、イースター前後の4日間が祝日となります。教会でミサに参加し、エッグハントをしたり家族で食事をしたりして過ごします。

また、イースター前夜には高く積み上げた薪を燃やして豊作を願う「イースター・ファイヤー」を行います。

スペイン

カトリック国のスペインでも、イースターは「セマナサンタ」と呼ばれる大切な行事です。セマナ・サンタは日本語で「聖週間」と呼ばれ、十字架で処刑されたイエス・キリストの受難をしのぶものです。

スペイン共通の祝日「グッドフライデー」で「セマナサンタ」の期間は宗教行事が行われます。

また「セマナサンタ」ではフレンチトーストのような「トリハス」やドーナツのような「ロスコ」という伝統的なお菓子を食べる習慣があります。

イギリス

イースターは金曜日から日曜日まで4日間が連休となります。イギリスは、キリスト教以外の人も多いので復活祭というよりは春の訪れを願うお祭としての要素が濃いです。

イギリスでは、卵の形をしたチョコレートのイースターエッグのギフトが人気です。

フランス

フランスのミディ・ピレネー地方では、タマゴを使った行事「巨大オムレツ作り」が開かれます。かつてナポレオンがベシエールの町を訪れたときに、町民からタマゴを集めて、巨大なオムレツを作り兵士たちに食べさせたことが由来だそうです。

ギリシャ

ギリシャのコルフ島では、聖土曜日の朝、伝統の「壺投げ」が行われます。鍋やフライパン、陶器などを窓から放り投げて、道路に落として割るというものです。

元旦に使い古したものをすべて捨てたベネチア人から伝わったものだという一説があります。古い鍋を捨てて新しい鍋に変えて、春の作物を入れることで、春の到来を歓迎するという意味も込められているようです。

ポーランド

ポーランドでは、イースターに水をかけ合う「シュミングス・ディングス」という伝統があります。イースターマンデーに男性がバケツ入りの水や水鉄砲などを使って、他人をびしょ濡れにさせるもので、水をかけられた女性は1年以内に結婚できるという言い伝えもあるそうです。

966年のイースターマンデーにポーランドのミェシュコ皇子が洗礼を受けたことが由来だとのことで、長い歴史がある行事です。

ノルウェー

ノルウェーで特徴的なイースターの祭りは、トナカイレース世界選手権です。ノルウェーの中でも、北極圏の内陸部にあるカウトケイノという街で行われるイベントです。

ここには、北欧の少数民族サーミの人々が多く暮らし、サーミ人の生活に欠かせないトナカイがイベントの主役となります。

フィンランド

フィンランドの子どもたちは、イースターに魔女の仮装をする習わしがあります。顔にメイクをして、頭にスカーフを巻き、手に羽根を飾った柳の枝を持ち、路上でチョコレートエッグをおねだりします。

ヴァチカン

聖金曜日(Good Friday)に、ローマ法王がコロッセオで十字架の道を記念します。巨大な十字架が夜空を照らすなか、イエス・キリストが墓に葬られるまでの14の場面が複数の言語で朗読されます。

聖土曜日(Black Saturday)の夜にミサがあげられ、イースターサンデーには多数の訪問者がサン・ピエトロ広場に集まり、ローマ法王が教会のバルコニーで祝福を行います。

エルサレム

イエス・キリストが十字架にかけられた場所だといわれているエルサレムでは、キリスト教徒たちは、イエスが十字架にかけられたときと同じ道を歩く(十字架の道行き)ことによって聖金曜日を祝います。

イースターサンデーには、多くの巡礼者たちがイエスが埋葬されたエリアにある教会で行われるミサに参列します。

アメリカ

アメリカではイースターの祝日はありませんが、一部の州でイースターを祝日としています。

イースターには礼拝を行い、家族や友人とパーティをします。また、ホワイトハウスでは、子どもたちが参加するイースターエッグロールのゲームが恒例行事となっています。

オーストラリア

オーストラリアでは、外来種であるウサギが農作物を破壊することで有害生物とみなされ、嫌われているそうです。

そこで、1991年、ウサギの問題に取り組む財団「RFA」がイースターバニーの代わりにウサギのような長い耳を持つバンディクートを新たなキャラクターとした「イースター・ビルビー」を紹介しました。

多くの企業はイースター向けにチョコレートのビルビーズを販売し、その売り上げは絶滅危惧種の保護にあてられています。

日本

日本ではイースターのイベントは多くはありませんが、全国各地でさまざまなイベントが開催されるようになりました。

たとえば、東京ディズニーランドと東京ディズニーシー、長崎県のハウステンボスなどで、イースターのイベントが開かれています。

まとめ

日本ではあまりなじみがないイベントですが、近年はキリスト教系の幼稚園や各教会などでイベントが開催されることも多くなりました。100円ショップやスーパーなどには、パステルカラーの可愛らしいウサギや卵のグッズもお店に並んでいるので、購入して各家庭でエッグハントをしたり春の訪れをお祝いする食事会を開くのもよいですね。