英会話を学ぶ日本人のなかには、日本語と英語の両方が自由に使える「バイリンガル」を目指しているひとが多くいます。
しかし
「そもそもバイリンガルってどんなひとのこと?」
「英語を勉強するだけでバイリンガルになれるものなの?」
「やっぱり小さいころから英語を勉強していないと、バイリンガルにはなれないのかな?」
といった疑問をもっているひともいるのではないでしょうか。
そこで今回は、「バイリンガルとは何か」という前提から、バイリンガルになることで得られるメリット、バイリンガルになるための学習方法などを詳しく説明していきます。
バイリンガルに興味があるひとは、ぜひ最後まで読んでみてください。
英語で話すときに話題にしやすいように、鍵になる単語には英語を併記してあります。
バイリンガルとは?
そもそも、バイリンガルとはどういう状態を指すのでしょうか。
二つの言語を使用する能力をもっている人のこと。この能力に関しては明確な基準はないが、一般にはどのような場面、用途においてもかなり自由にコミュニケーションができるレベル以上のものをいう。
バイリンガルは、「2つの言語を自由に使いこなせるひと」のことです。英語では “bilingual” とつづり、bi が「2」、lingual が「言語」という意味を表しています。
bilingual (形容詞)二か国語を話す;(名詞)二か国語を話すひと
このとき、使用する2つの言語が何語なのかは問いません。たとえば、「日本語と英語」でもバイリンガルですし、「日本語と中国語」、あるいは「アラビア語と韓国語」などの組み合わせであっても、それぞれバイリンガルとよびます。
ときには1言語の共通語と方言、二つ以上の方言の使用能力などを含めることがある。
ここでは、わたしたち日本人にとって母語の日本語と、もっとも身近な学習言語でもある英語の2言語の「日本語と英語のバイリンガル」に焦点を合わせて話を進めます。
言語にまつわる英語表現
ちなみに、「日本語・英語・中国語」などのように3カ国語が使えるひとを「トリリンガル(trilingual)」とよびます。triが「3」、lingual が「言語」という意味です。
trilingual(形容詞) 3か国語の
さらに多くの言語を使えるひと―たとえば仕事では英語と北京語、日常会話ではマレー語、家庭では福建語または広東語を使うひとは、シンガポールでそれほど珍しくありません。こういう多言語を話るひと「多言語話者」をマルチリンガル (multilingual)とよびます。multiが「多数の」、lingual が「言語」という意味で、polyglotといういい方をすることもあります。
multilingual(形容詞) 多数の言語を話す;(名詞)多数の言語を話すひと
polyglot(名詞) 数か国語に通じたひと
一方、日本語しか話せないというような場合は、どのように表現するのでしょうか。monoは「ひとつの」、lingual が「言語」という意味です。
monolingual(形容詞) 一言語だけ話す;(名詞)一言語を話すひと
言語学などで、二言語を使う「バイリンガル」、多言語を用いる「マルチリンガル」と対比させる場合に、モノリンガル(monolingual)といういい方をします。
しかし、多言語話者との比較で優劣の意味合いはなく、単に「一言語を話す」という状態を示している表現です。
バイリンガルの言語レベルは?
「バイリンガル」とは2言語を自由に使いこなせるひとのことですが、何をもって「自由に使いこなせる」と判断されるかは、状況によって異なります。
たとえば、読み書きができなくても、日常会話程度ができれば「バイリンガル」だと判断される場合もありますし、学問やビジネスのうえで、ネイティブスピーカーと渡り合うレベルが求められる場合もあります。
バイリンガルという場合、日常会話からビジネスまで、不自由なく表現ができるレベルとされることが一般的です。実際には、前述の通り、日常会話だけであったり、複雑なやりとりが難しい「バイリンガル」もありますが、この記事ではひとまず「バイリンガル=ビジネスレベルの英語(と日本語)が使えること」ととらえて話を進めることにしましょう。
ここまで、バイリンガルはどのような状態なのかを確認してきましたが、実はひとくちにバイリンガルと言っても、さまざまなタイプ・レベルのバイリンガルがあることがわかりますね。
次の記事ではもう少し深く、「バイリンガル」ということばの意味や歴史などを考察しています。「バイリンガルってなに?」と思ったときに、きっと参考になる内容ですので、ぜひどうぞ。
帰国子女=バイリンガルとは限らない
「バイリンガル」と聞くと、比較的小さなころに海外で暮らした経験がある、または海外で教育を受けたことのある「帰国子女」を思い浮かべるひとも多いでしょう。
親の仕事の都合などで長年海外で過ごして帰国した子供。―「帰国子女」デジタル大辞泉
近年は、「子女」ではなく、子どもの性別を区別せずに使える「帰国生」という言い方もあります。
日本人帰国生をめぐる学習環境
海外で過ごした経験があることは、言語習得のうえで有利な条件のひとつです。しかし、だからといって帰国生が必ずしもバイリンガルになるとは限りません。
滞在時の子どもの年齢にもかかわることですが、ある程度日本語ができるようになった年齢で渡航した場合は、どうしても日本語が優勢になりやすい点があります。
また、海外に住んでいたとしても、数年で帰国することがわかっている企業駐在員などの家庭では、日本人学校で子どもを学ばせるケースがあります。日本に戻ってからの教育を考えると、外国語で学ぶ現地校でのカリキュラムでは連続性を欠くこともあり得るからで、どちらがいいかは一概に言えません。
日本人学校の授業は、日本語で行われます。教師は、日本の公立校から派遣される場合が多く、学習内容も日本の標準的なカリキュラムですから、外国にあるということを除けば、日本の学校とさほど変わらない環境といえます。
さらに、高校や大学に入る際に自分で希望して留学するのとは違い、学齢期の子どもにとって、いきなり外国に転校するのは大きな負担です。子どもによっては、新しい環境にすんなりなじめることもあれば、そうでないこともあり、外国語への取り組み方もひとりひとり違います。
言語は自動的に身につくものではなく、外国語の環境に置かれたとしても、学ぶ意思と努力が必要です。そういうわけで、仮に英語圏に滞在した経験があったとしても、帰国生が必ずしも「日本語と英語のバイリンガル」になるわけではありません。
どちらの言語も使いこなせない「ダブルリミテッド」
もうひとつ、子どもの言語習得については、母語も、後から学習した外国語のどちらも流暢には使いこなせない、「ダブルリミテッド(double limited)」という問題も考えなくてはなりません。以前は「セミリンガル」とも言われましたが、近年は表現を改める方向に進んでいます。
幼少期から2言語を使っていれば、両方の言語を操るバイリンガルになるには有利です。しかしその一方で、日常会話程度なら日英どちらでもできる一方、少し複雑で抽象的な事柄になると、うまく言語が使えず、思考を深められない、表現できないという<両方に制約がある>ダブルリミテッド状態に陥る恐れもまたあるのです。
ダブルリミテッドといった深刻な状態ではないにしても、
「英語では日常会話ができるが、日本語では赤ちゃんことばしか話せない」
「英語の会話はできるが、抽象的な事柄について議論できない」
「日本語の会話はできるが、漢字が読めない」
「日本語の、目上のひとに対する敬語表現がわからない」
といった問題はよくあります。
また、特定の知識や記憶について話す際に、制約を感じることも起きがちです。
「この知識は、日本語でしか説明できない」
「この思い出について話すと、なぜかいつも英語になってしまう」
「日本語で手紙を書くことはできるが、エッセイや小論文はうまく書けない」
といった現象も多くの帰国生たちを悩ませていて、複数言語を身につける上での課題になっています。
このように、早期に英語の勉強を始めることには有利な点も数々ありますが、母語が確立しないうちに外国語を学ぶことで、母語である日本語が揺らぐ側面がある点もわかっています。
子どもをバイリンガルに育てるためには、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。
次の記事では、低年齢の子どものためにふさわしいバイリンガル環境や、その際に注意すべき点を確認しているので、バイリンガル・キッズを育てたい場合にきっと役立ちます。
大人でもバイリンガルになれるのか?
バイリンガルになるには「幼少期から英語に触れていないと無理」と思われがちです。しかし、大人でも英語を勉強することでバイリンガルになることは十分可能です。
むしろ、母語が確立したうえで外国語を学ぶので、幼少期に2言語に触れるのとは違い、先述のダブルリミテッドの状態になるリスクはより少ないでしょう。
また、おとなの場合は、すでに日本語環境で抽象的な語彙を扱い、思考することに慣れているので、その言語運用能力を生かしてバイリンガルを目指すことも不可能ではない、といえるでしょう。
バイリンガルになるメリット
日本語と英語の2つを使いこなすバイリンガルになると、どのようなメリットがあるでしょうか。
多くの利点がありそうですが、ここでは、バイリンガルになる、代表的な5つのメリットを確めましょう。
メリット①:交流の幅が広がる
日英バイリンガルになると、日本語だけを話す場合に比べて交流の幅が広がります。
日本語は、主に日本列島でのみ使われるローカルな言語です。そのため、どうしてもコミュニケーションの対象が日本語話者=日本人に限定されてしまいがちです。
その一方、英語は世界中で使われている国際的な言語です。そのため、日本語と英語のバイリンガルになると、英語圏のアメリカ人やイギリス人はもちろんのこと、英語を仲立ちにして、中国人やインド人、ブラジル人などと、非英語圏の人びととも交流できるようになります。
メリット②:行動の幅が広がる
日英バイリンガルになると、世界中どこへでも好きな場所に行くことができて、行動の幅が広がります。
英語は、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど多くの国で使われています。
そして、公用語として、さらに広範な地域で用いられています。イギリスは17世紀以降の大英帝国時代に、世界中に植民地を建設しました。その多くは第二次世界大戦後に独立を果たしましたが、現在も英語を公用語としています。
一例として、イギリスと旧イギリス植民地からなるイギリス連邦(British Commonwealth of Nations)にはアジア、オセアニア、アフリカなどの56か国が加盟しています。
また、英語は多くの国で第二言語として学習されているので、非英語圏であっても英語を通じて大半の国で意思疎通ができます。日英バイリンガルになったら、少なくとも英語の通訳や旅行ガイドは雇う必要もなく、旅先・滞在先でも気の赴くままに行動できるでしょう。
また、海外移住なども、日英バイリンガルになれば障壁がぐんと低くなります。言葉の壁であきらめていた海外で暮らす夢も、現実にすることは不可能ではありません。
メリット③:第3言語も習得しやすくなる
日英バイリンガルになると、新しく3つめの言語を習得しやすくなるというメリットもあります。
英語は、言語学的にはインド・ヨーロッパ語族、ゲルマン語派の西ゲルマン語系の言語です。
同じグループに、ドイツ語、オランダ語、フリジア語(オランダ・ドイツのフリースラント地方で使われる)、ルクセンブルク語、アフリカーンス語(南アフリカで広く使われる)、イディッシュ語(中欧・東欧のユダヤ人が用いる)などがあります。
ゲルマン語系には他に「北ゲルマン語」「東ゲルマン語」(消滅)があり、他のヨーロッパ言語と類縁関係にある言語です。たとえばフランス語、イタリア語、スペイン語などは、ラテン語の系譜をもつイタリック語派ですが、英語の基礎的な文法や語彙を知っていると途端に学びやすくなり、比較的短期間で習得できるようになります。
また、ヨーロッパ以外の言語の場合でも、英語を習得した際の学習ノウハウがそのまま活かせることでしょう。
ところで、非英語圏において英語運用能力が高いレベルの国として、オランダがよく挙げられます。
国民の多くが、オランダ語と英語の2か国語、それ以上の3か国語が話せるのが珍しくないというお国柄は、どのような英語教育によって生まれたのでしょうか。次の記事は、オランダの英語教育に焦点を合わせて、英語国以外での英語の学び方を考察しています。
メリット④:正しい情報を取捨選択できる
日本語環境で暮らすわたしたちは、ふだんは日本語の媒体から情報を得ています。つまり、日本的な価値観によるフィルターにかけられたれた情報しか手にしていません。しかし、日英バイリンガルになれば、日本語以外の情報にもアクセスできるようになります。
日本語を話すほとんどは日本人ですから、日本語による情報は、日本側から見た世界しか伝えられていません。メディアによるニュースの選択も、日本人の関心対象でないと考えられるもの、あるいは日本政府・官公庁の意向に沿わないものははずされる可能性があるので、どうしても情報が偏ってしまいがちです。
その点、日英バイリンガルになって英語のニュースも理解できるようになれば、日本とは別の視点でニュースを得ることもできます。事柄によっては、日本ではあまり関心がもたれていないことや、日本ないし日本人に対して批判的な意見を目にすることもあるかもしれません。
日常的に英語を使う国はもちろんのこと、非英語圏でもより広く世界的に届けたい情報は英語で発信されるでしょうから、今まで以上に世界情勢がわかるようになるでしょう。
メリット⑤:脳の活性化につながる
日英バイリンガルになることは、脳の活性化、いわゆる「脳トレ」にも効果的です。
脳は新しい刺激を得ることで働きが活発になるといわれています。そして脳への刺激によって物忘れや認知症になりにくい傾向があると言われています。言語についても、一言語だけを使っているひとよりも、複数の言語に触れているひとの方が、刺激を受ける率は高いといえます。
子どものころから外国語に接していないと、バイリンガルになれないというリミットはありません。実際に、おとなになってから外国語を学び始めて、日常的に話せるまでに上達したひとも大勢います。
年齢であきらめることなく、社会人でも、60代で退職したシニアの方も、バイリンガルになって若々しい脳を維持していきましょう。
バイリンガルになる方法
日英バイリンガルになるには、英語を英語のまま理解する、いわゆる「英語脳」が必要不可欠です。
たとえば、目の前に赤くて丸い果物があるとします。それを見て、「これは日本語でリンゴだから、英語だと apple だな」と、日本語から英語に変換させているうちは、バイリンガルとはいえません。
日本語を介在させることなく、見てすぐ「This is an apple.」と、英語のままで考えたり、表現したりする力が「英語脳」で、それを養う必要があります。
ここでは、バイリンガルに必須な「英語脳」を身につけるためにおすすめしたい、具体的な学習方法を4つご紹介します。
学習方法①:英語圏の国に留学する
日英バイリンガルになるのにもっとも早い方法は、英語圏の国に語学留学することです。周囲の会話がみな英語で、英語で満たされた生活をしていれば、否が応でも英語で考える力が身につくでしょう。
しかし、外国に留学するには相応の費用がかかります。また、一定期間外国に滞在することで、進学や就職など、日本での生活は継続できなくなってしまいます。そのため、日本から離れられないひとの場合は、他の手段で英語の勉強法を検討する必要があります。
学習方法②:外国人の友達を作る
日本国内で日英バイリンガルを目指すなら、英語を話す外国人の友達をつくるのが効果的です。
特に、相手が日本に来て間もなく、日本語がほとんど話せないひとの場合は、英語力を伸ばすチャンスです。そのひととの会話は、基本的に英語オンリーになるはずなので、仲良くなるに従って会話の深さや広さが増し、効果的に英語脳を養うことにつながります。
また、ソーシャルネットワーキングサービス(social networking service:SNS)を活用すれば、インターネットを通じて日本以外に住むひとともつながることができます。SNSではチャットやメッセージを使って文字でコミュニケートできますし、スカイプなどのテレビ電話を使ってコミュニケーションを取るのもよいでしょう。
学習方法③:オンライン英会話を利用する
日本国内で日英バイリンガルを目指すなら、オンライン英会話の利用もおすすめです。
オンライン英会話は、自宅やカフェなどで英会話レッスンを受けることができるサービスです。学習者のレベルに応じて多彩なコースがあるので、目的によって文法の見直しやフリートークなど、好みのもの、必要なものを選びやすい利点があります。
講師もさまざまで、日本語で説明できる日本人講師のほか、英語圏のネイティブスピーカーの講師や、第二言語として英語を身につけた外国人講師などのレッスンを受講できます。安定したインターネット環境があれば、スマートフォンやパソコンを使じて、日本にいながらにして、英語で会話する時間を確保できる点も魅力です。
実際に、仕事や勉強で海外に行くまでの準備期間にオンライン英会話で力をつけているひとも少なくありません。
英語学校や英会話教室に通うのに比べると、オンライン英会話は費用も安く、自分の好きなときにレッスンを受けられるので、無理のないペースで英語の勉強を続けることができるでしょう。
学習方法④:英語のニュースや映画を観て学ぶ
日本で日英バイリンガルを目指す場合、英語のニュースや映画などの映像で学ぶのも効果的です。
英語ニュースでは、主にビジネスで使える表現を学ぶことができます。より抽象度の高い語彙や、難しい表現を学ぶのに適しています。
これに対して映画では、日常の会話ですぐに役立つ、カジュアルな表現を知ることができるでしょう。英語の会話がどのように進むのか、身ぶりや表情にはどのような意味があるのか、映像から学ぶことはいろいろあります。
しかし、ニュースや映像を観るだけでは自分からアウトプットすることができません。そのためには、英語で会話ができる外国人の友達を作ったり、オンライン英会話を利用したりして、英語で話すスピーキングの機会も積極的につくりだすことが重要です。
まとめ
この記事では、外国育ちではない日本人が、英語を学んで日英バイリンガルになれるのかについて、詳しく考察してきました。
日本語と英語を使いこなすバイリンガルになるには、海外に留学して英語を学ぶのが最短ルートです。しかし学習方法を工夫すれば、日本国内にいてもバイリンガルを目指すことは十分可能です。
英語を自由に使いこなせるようになるには、日本語を通さずに、見たものを英語で表現し、英語で考える「英語脳」を育てる必要があります。
そのために役立つ勉強法のひとつとして、オンライン英会話を、勧めたい学習方法のひとつとして紹介しました。オンライン英会話は、都合のよい時間や場所でレッスンが受けられるので継続しやすく、費用面でもリーズナブルなので、英語の力をつけやすいからです。
この記事で紹介した学習法を参考に、皆さんもぜひバイリンガルを目指して、人生の選択肢を広げてきましょう。
それでは、ぜひこれからも楽しみながら英語学習を続けてください。
Let’s enjoy!!