ダンディーなおじいさんが、杖をかっこよく使いこなしている姿に憧れます。

自分も真似してみたいと思いつつも、まだまだ若輩者ゆえ、杖をつくのではなく、杖につかれているように見えてしまいそうで、なかなか手が出せません。ゆくゆくは、杖が似合うような貫禄のある人になりたいものです。

さて、今回のテーマは「杖」です。日本語では、老人用の杖から魔法の杖まで、棒状のものはすべてひとまとめに「杖」とよんでいますが、英語ではどうなのでしょう。関連する表現を詳しく解説します。

これを読めば、英語で杖について話したいときに役立つこと間違いなしです。

それでは、早速始めていきましょう!

「杖」は英語でなんと言う? 現代でよく使われる2種類の言い方を確認

現代よく使われる「杖」は、英語では “stick” か “cane” を使って表されます。

それぞれの語が指す杖の種類が少し異なるので、以下、順に確認していきましょう。

一般的な棒状の杖を表す “stick”

多くの人が想像する基本的な「杖」は、英語では ”stick” に相当します。発音記号は「stɪk」で、カタカナだと「スティック」と聞こえます。

日本でも棒状のものを「○○スティック」と言いますよね。ここからわかるように、stick はもともと「棒」を表す言葉です。そこから、歩行の支え用に使う杖も表すようになりました。装飾的な要素のある杖にも使えます。

とはいえ、そこまでの会話の流れと関係なく、単に “stick” とだけ言うと、「杖」の意味で通じないこともあります。そんなときは、「歩行用の杖」という意味で “walking stick”(ウォーキングスティック)と言うと伝わりやすくなります。

Aさん
An old man who looks good with a stick is really cool, isn’t it?
訳)杖が似合うおじいさんって、かっこいいよね。
Bさん
I wish to age gracefully like that.
訳)そんな風に年を取りたいものだね。

 

なお、日本語には杖を表すカタカナ語として「ステッキ」がありますが、これは stick が訛(なま)ったものです。カタカナ式の発音をしても、英語では伝わらないので注意しましょう。

老人用や白杖などの補助用の杖を表す “cane”

自力で歩くのが困難なお年寄りや、目が不自由な方が使う、歩行の補助具としての杖は “cane” と言います。発音記号は「keɪn」、カタカナだと「ケイン」が適切です。

イギリスのロックシンガー、スティングの代表曲 “Englishman in New York” (ニューヨークのイギリス人)のなかにも、”A walking cane here at my side”(傍らにはいつも杖がある)という一節があり、イギリス人らしさを象徴するひとつの要素になっています。

先ほどの stick も歩行時に使われることが多いですが、cane はより補助用に専門化した杖です。杖がなくても歩ける人が使うものは stick、杖なしには歩けない人が使うものは cane と覚えておくとよいでしょう。

cane のうち、老人が使う歩行補助用だと明確に示したい場合は “walking cane” (ウォーキングケイン)と言うと伝わりやすくなります。また、目の不自由な人が使う白い杖(白杖)は “white cane” (ホワイトケイン)と表現されます。

Aさん
Hey, look. There’s a white cane lying over there.
訳)ねえ見て、あんなところに白杖が落ちてるよ。
Bさん
Is it the cane of that man standing over there? He might be in trouble.
訳)あそこに立ってる男の人の杖かな? 彼は困ってるかもしれないね。

 

Aさん
You’re right. Let’s go and talk to him.
訳)そうだね。話しかけに行ってみようか。
杖を必要としているかどうかに関連して、「歩く」表現を広げてみませんか。同じ「歩く」という動作にも、足取りの様子はいろいろです。次の記事では、「歩く」にまつわる英語の表現を紹介しています。参考にしてください。

罰に使われる”cane”

古い時代のイギリスの小説などを読んでいると、こらしめのために学校などで「むち打ち」が行われる場面が出てきます。親の言いつけを守らなかったり、宿題を忘れたりしたときの罰が “cane”で、”get the cane”で「むちで打たれる」です。このときに使われたのは細い棒でした。
21世紀に入って、2020年にまずスコットランドが、そして2022年にウェールズが体罰を法律で禁止しましたが、昔は、この「むち打ち」が子どもたちにとって、恐ろしい罰だったろうと想像できます。
かつてイギリスの統治下にあったシンガポールは、イギリス法の影響で現在も「むち打ち刑」が残っています。
新聞を読んでいると、”getting caned 21 times in a row”(連続してむち打ち21回を受けた)、”an offender is fit enough to be caned”(違反者はむち打ちを受けるに十分な体力がある)などの表現を目にします。

特殊な用途の杖に使われる”cane”と”stick”

日常生活で出会うことはなさそうですが、犯罪小説や『座頭市』などの時代劇、事件の報道などで目にする可能性がある表現として「仕込み杖」があります。
武器として使う目的で、杖の中に刀を忍ばせたもので、英語では “sword cane”、”sword stick”などという表現が使えます。

「魔法の杖」や「松葉杖」など、その他の杖を表す英語表現

「魔法の杖」や「松葉杖」など、その他の杖を表す英語表現

現代生活で使う杖は、先述の “stick” と “cane” の2語で9割方表現できますが、世の中にはそれ以外にもいろいろな杖が存在します。

ここでは、代表的な3種類の杖を表す表現について、それぞれの特徴や違いを確認してみましょう。

魔法の杖を表す “wand”

ファンタジー映画などで出てくる魔法を唱えるための杖は、英語では “wand” と言います。発音記号は「wɑːnd」、カタカナだと「ワンド」です。

wand だけでも十分通じますが、「魔法の杖」とより強調したい場合は “magic wand”(マジックワンド) と言う場合もあります。

今回紹介する、いろいろな「杖」のなかで、wand は圧倒的に小さい点が特徴的です。魔法使いが片手にもって軽々と振り回している、30cmくらいの棒を想像してもらえればよいでしょう。

日常生活で使われるシーンは稀ですが、棒状の便利グッズなどで “○○ wand” と名付けられる場合もあります。

Aさん
This is a magic wand that turns tap water into delicious water.
訳)これは水道水を美味しい水に変える魔法の杖です。
Bさん
That sounds fishy to me.
訳)うさんくさいなー。

なお、”wand”は、音楽の「指揮棒」の意味で使われることもあります。

大振りで古風な杖を表す “staff”

人の背丈くらいもある大振りな杖は “staff” と言います。発音記号は「stæf」で、カタカナだと「スタッフ」です。

“staff “のもともとの意味は、歩いたり立ち上がったりする際に支えとして使う棒です。現代の街なかで見かけることはほぼありませんが、登山用として山の麓(ふもと)に置いてあったり、田舎の方では引き戸を固定するために使ったりします。

野生動物などを追い払う際に振り回す棒も “staff”です。

おそらく、もともと杖といったら “staff” だったのでしょうが、用途に応じてどんどん細分化され、その結果 “stick “や “cane” に落ちtついたのでしょう。その意味では、staff はすべての杖の元祖的な存在といえるかもしれませんね。

Aさん
All sticks and canes lead to staffs
訳)すべての杖はスタッフに通ず。
Bさん
You really like that expression.
訳)その言い回し好きだよね。

けがしたときに使う松葉杖を表す “crutch”

足などをけがしたとき、両脇に挟んで使う「松葉杖」は、英語では “crutch” と言います。発音記号は「krʌtʃ」、カタカナだと「クラッチ」です。

ここまでに見てきた杖の英語はどれも、状況によって別のものを表すことが多かったですが、crutch は基本的に松葉杖の意味でしか使われません。

ちなみに、日本語の松葉杖という言葉の由来は、形が松の葉に似ているからだといわれています。最近の松葉杖は色々な形状ができてきているので、松葉杖以外の名前が今後生まれるかもしれませんね。

ちなみに、松葉杖は通常2本セットで使われるため“a pair of crutches”で「松葉杖一組」になり、日常会話では”crutches” と複数形にされるのが一般的です。

Aさん
Using a crutch makes me forget how I used to walk normally.
訳)松葉杖を使っていると、普段どうやって歩いていたかわからなくなる。
Bさん
It makes us appreciate the blessing of good health.
訳)健康のありがたみを実感するよね。

けがや病気には、英語でもいろいろな単語・表現があります。日本語と英語でのニュアンスの違いのほかに、用途や場面による使い分けなどもあるので、いざというときのために慣れておくと便利です。

次の記事は、介護についての表現を紹介しているので、参考にしてください。

「杖をつく」「転ばぬ先の杖」など、杖に関する表現を英語でも言ってみよう!

「杖をつく」「転ばぬ先の杖」など、杖に関する表現を英語でも言ってみよう!

日本では杖を使うことを「杖をつく」、失敗しないように備えておくことを「転ばぬ先の杖」と言いますが、英語ではどうなのでしょうか。

最後に、これらの表現を英語でなんと言えばいいか、詳しくみていきましょう。

「杖をつく」in English

日本では杖を「つく(突く)」と言いますが、英語では杖を「使う」と考えて “use a stick(use a cane)” と言うのが一般的です。

また、杖を歩行時に使うのであれば、”walk with a stick(walk with a cane)” などと、「杖と一緒に歩く」と表現することもあります。

Aさん
My grandfather uses a cane when he goes out.
訳)私の祖父は、外出時に杖をついています。

直訳して “prick(突き刺す)” などを使ってしまうと、非常に物騒な意味になってしまうので注意しましょう。

Aさん
My grandfather pricks a cane when he goes out.
訳)私の祖父は、外出時に杖を突き立てます。
Bさん
How morbid…!
訳)何て猟奇的なおじいちゃん…!

ところで、高年齢のひとをなんと呼んだらいいのか、迷ったことはありませんか? 英語にも、場にふさわしい、また相手に敬意をはらった言い方があります。次の記事を参考に、ぜひ表現の幅を広げてください。

「転ばぬ先の杖」in English

日本では、先々に起こることを予測し、念のために準備しておくことを「転ばぬ先の杖」と言いますが、英語に同様の言い回しはありません。そのため、”a cane to prevent falling” などと直訳で説明しても、理解してもらえないでしょう。

英語圏の人に同じニュアンスを伝えたい場合は、以下のように意訳して説明する必要があります。

Aさん
In Japanese, we say “a cane to prevent falling” to mean prepare in advance to avoid failure.
訳)日本語では、失敗しないように事前に準備することを「転ばぬ先の杖」って言うんだ。
Bさん
I see. In English, we say “look before you leap” in the same meaning.
訳)なるほどね。英語だと同じ意味で「跳ぶ前に見よ」って言うよ。

 

Aさん
It’s interesting how expressions vary in different languages.
訳)言語によって言い回しが変わるのは面白いね。

まとめ

今回は「杖」を英語でなんと言うかについて、種類ごとに確認してきました。

私たちがふだん目にする杖は、“stick” か “cane” で表せます。一般的な棒状の杖なら “stick”、それなしでは歩けない補助用の杖は ”cane” が適切でしょう。

それ以外にも、魔法の杖を表す “wand”、古風な大振りの杖 “staff”、松葉杖の意味の “crutch” など、いろいろな杖を表す英単語が存在します。

今回紹介した単語や言い回しを参考に、英語でもそれぞれを的確に表していきましょう。

それでは、これからも楽しい英語学習を。

Let’s enjoy English!!