オリンピックのよいところは、さまざまな競技の魅力を教えてくれる点です。初めて見る競技が思ったよりも面白く、感動した、という人も多いのではないでしょうか。ボートも想像以上に奥が深く、とても魅力のある競技の1つです。オリンピックでボート競技に興味を覚えたのなら、英語の勉強に役立ててみませんか?というのは、興味のある題材の方が、より楽しく英語を学べるものだからです。

ボート競技の基礎知識

ボート競技は水上でボートに乗り、スタートからゴールまでの到達時間を競うスポーツです。とてもシンプルな競技ですが、天候や戦術に大きく左右される奥の深いスポーツでもあります。ボートは欧米での人気が高く、アメリカの大学スポーツ界では、バスケットボールやアメリカンフットボールにも負けないほどの人気を誇っています。オリンピックにおいて、最も多くのメダルを獲得しているのはドイツです。ボート自体の歴史はたいへん古く、紀元前までさかのぼることが可能です。ボート競技はオリンピックでは男子が第1回アテネ大会から、女子は第21回モントリオール大会から採用されています。

ボート競技は基本的に、2,000mの水上直線コースで行われます。レースは4~6艇で競われることが多く、世界選手権やオリンピックの場合は6艇です。全艇一斉にスタートし、最初にゴールにたどり着いたチームが勝者となります。風を切って水上を疾走するスピード感や、チーム間の駆け引きがボート競技の醍醐味です。ボート競技にはスウィープ種目(Sweep rowing)とスカル種目(Sculling)の2種類があります。オールを1人が1本持って漕ぐのがスウィープで、2本持って漕ぐのがスカルです。オールのサイズはスウィープの方がスカルよりも大きくなります。

オリンピックでの日本代表の成績ですが、男子は2004年アテネ大会と2000年シドニー大会の6位が最高順位です。種目は両方とも軽量級ダブルスカルです。また女子の場合は、1992年バルセロナ大会(舵なしペア)と2008年北京大会(軽量級ダブルスカル)の9位が最高順位となります。

ボート競技は英語でなんという?

ボート競技を英語では「Rowing」といいます。rowing はrow の変化形で、次のように使います。

Aさん
They rowed down the river.
訳)彼らはボートを漕いで川を下った。

また、ボート競技を楽しむうえで、覚えておきたい基本的なボート用語は次の通りです。

・漕ぎ手(rower)ボートを漕ぐ人
・舵手(cox)舵を取る人
・舵(rudder)
・クルー(crew)ボートの乗員
・ブレード(blade)オールの水を押す部分
・レーン(lane)割り当てられた水路
・レガッタ(regatta)水上スポーツ競技や大会

スポーツの場合、コーチは「coach」で監督は「manager」です。種目によっては監督を「head coach」と呼ぶこともあります。ボートの動画やニュースを見る際、腹切り(catch a crab)やロー・アウト(row out)などといった専門用語を知っておくとより楽しめます。腹切りはアクシデントの1つで、ブレードを水にとられ、オールが水中から抜けない状態のことです。ハンドルが腹部に刺さるように見えることから、腹切りと呼ばれるようになりました。ロー・アウトは漕ぎ果てることで、全力を出し切ったときなどになります。また1分間にオールを漕ぐ回数をレート(rate)といいます。

オリンピックにおけるボート競技の種目とは

ボート競技の種目は、オリンピックによって若干異なります。そのためここでは1つの参考として、2020年東京オリンピックに採用された種目をピックアップして説明します。なお2020年東京オリンピックでの種目は、男女とも同じ7種目です。

シングルスカル(Single sculls)

シングルスカルは個人種目です。ボート競技において個人種目なのは、このシングルスカルのみです。スカル競技なので、2本のオールを1人で漕いで戦います。シングルスカルはボート競技では2番目にタイムの遅いカテゴリーです。「キングクラス」とも呼ばれるシングルスカルを戦うためには、精神的にも肉体的にもタフであることが求められます。またシングルスカルは、漕ぎ手のトレーニングにもよく利用されています。ただしスカルに関する能力とスウィープに関する能力とは別なので、スカルが強いからといってスウィープも強いとは一概には言えません。

ダブルスカル(Double sculls)

ダブルスカルは2人が1組となって戦う競技です。スカル競技なので1人が2本、合計4本のオールでボートを漕ぎます。なお舵手はいません。オリンピックのダブルスカルには体重制限なし(オープン)と軽量級がありますが、こちらは体重制限のないオープン競技です。

舵手なしペア(Coxless pair)

舵手なしペアはスウィープ種目です。ボートには左右それぞれに1本のオールが設置されています。舵手がいないため、操舵漕手(steers man)が操舵を担当します。舵手なしペアは漕ぐのが難しいボートの1つです。というのは、お互いの協力が必要不可欠であり、技術力とともに高いコミュニケーションスキルも要求される競技だからです。息が合わず、バランスの悪いペアはタイムを伸ばすことができません。

舵手なしフォア(Coxless four)

この種目もスウィープで、4人の漕ぎ手がチームを組んで戦います。オールは左右に2本で合計4本。舵手なしペアと同様に舵手がおらず、舵はクルーの1人が担当します。ボート競技には舵手つきペア(Coxed pair)と舵手つきフォア(Coxed four)もありますが、どちらも2020年東京オリンピックでは採用されていません。

舵手なしクォドルプル(Quadruple sculls)

Quadrupleとは「四重の」や「4者間の」など表す言葉です。Quadruple scullsはこの名の通り、4人がチームを組むスカル競技です。単にquadと呼ぶこともあります。舵手つきクォドルプルという種目もありますが、2020年東京オリンピックで採用されているのは舵手なしの方だけです。基本的にクオドルプルスカルは、同じ4人乗りの舵手なしフォアよりも高速です。

エイト(Eight)

エイトの最大の特徴は、8人の漕ぎ手と1人の舵手、合計9人が参加する種目だという点です。スウィープ種目であり、左右4本、合計8本のオールで漕ぎます。ボート競技で一番高速なのがこの種目です。船首に最も近い漕ぎ手がバウ(Bow)で、全体を見ながらチームを盛りあげたり、アドバイスを送ったりします。船尾に最も近い漕ぎ手がストローク(Stroke)で、経験の豊富なクルーが主に担当します。バウとストロークに挟まれた、残りの6人の漕ぎ手がミドルクルー(Middle Crew)です。ミドルクルーには筋力と持久力が要求されます。舵手を含めた9人の息が合わないと、よいタイムは望めません。

軽量級ダブルスカル(Lwt double sculls)

Lwtは軽量級を表す略語です。体重制限のあるダブルスカルがこの種目です。男子の場合、漕ぎ手の平均体重が70kg以下で、かつ個人の体重が72.5kg以下でなければなりません。女子の場合は平均体重が57kg以下、かつ個人の体重が59kg以下です。規定の体重に満たないときには、最大10kgのデッドウェイト(dead weight)が課せられます。

ボート競技で英語を学ぶには

ボート競技で英語を学ぶ方法には幾つかあります。英語の語彙力を身につけたい場合に役立つのが、ボート競技に関する英字新聞の記事です。正しい文法で書かれていることが多く、英語の基礎力を高められます。ネットで配信されているものなら、スマホさえあればいつでも読むことが可能です。生き生きとした英語を学びたいのであれば、SNSを活用してみましょう。日常生活で使われている英語を知ることができますし、相互交流できるのもよい点です。ただしSNSにはスラングが含まれている可能性があるので注意が必要です。

実際のボート競技を楽しみながら学ぶのなら、レース動画がおすすめとなります。レース展開に合わせた臨場感のある英語を学べますし、戦術に関する専門用語なども知ることができます。

ボート競技に関する記事や動画を視聴しボートと英語をより深く楽しもう!

ボート競技は欧米での人気が高いスポーツです。大会に関する英文のニュース記事は多く、ボートを扱った動画も豊富です。また、アメリカの大学関係のレースは、SNSのトレンドにもなるほどの注目を集めます。英語の教材としては、ボート競技は打ってつけのスポーツだと言えるでしょう。今回取り上げた英単語や用語を覚え、ボートと英語をより深く楽しみましょう。