「クライム」と聞いて、みなさんは何をイメージしますか?
山や岩壁を登ることを「クライミング」と言いますし、犯罪者は「クリミナル」と呼ばれるので、どちらが正しいのか判断に迷う方もいるでしょう。

カタカナで表記される「クライム」は、英語にすると2つの単語が当てはまります。
どちらもよく使われる単語ですが、意味は大きく異なるため、それぞれの使い方をしっかり理解しておくことが大切です。

今回は、意味が2つあるカタカナ言葉「クライム」について、”crime””climb”の違いとともに解説していきます。

「クライム」とは?

「クライム」とは?

カタカナの「クライム」は英語に由来した言葉ですので、もとになっている英単語によって2つの意味を表します。

「クライム」の意味 英単語 使用例
犯罪、犯行、罪 crime ヘイトクライムを題材にした映画
ハラハラするクライムサスペンス
クライムストーリーが好きだ
登る、上昇する、上り坂 climb ロッククライミングの予定
クライムダウンは難しい
フリークライムに挑戦したい

カタカナでは同じ「クライム」でも、”crime”と”climb”では意味が全く異なります。
「犯罪」なのか「登る」なのかは、文脈によって判断できる場合が多いですが、誤った使い方をすると誤解が生じたり、相手を混乱させてしまったりすることがありますので注意しましょう。

”crime”の意味

”crime”は、「法律上の犯罪」や「道徳的によくないとされる行為」を意味する名詞です。

辞書では以下のように定義されています。

  • an action or activity that is against the law, or illegal activity generally
    法律に反する行為や活動、または一般的に違法な活動
  • an unacceptable or very unreasonable act or situation
    受け入れられない、または非常に不合理な行為や状況

参考:Cambridge Dictionary

”crime”は、罪の大きさや重さにかかわらず、法律で裁かれるすべての罪を意味します。
ほかにも、口語的な言い方で「残念なこと」「遺憾なこと」「受け入れられないこと」などを表現するときに用いられます。

”climb”の意味

”climb”は、「登る」または「上昇する」という意味を持つ英語です。
辞書では以下のように定義されています。

  • to go up, or to go towards the top of something
    上に行く、または何かの頂上に向かう
  • to use your legs, or your legs and hands, to go up or onto the top of something
    足、または足と手を使って、何かの頂上に上ったり、その上に登ったりする
  • to move into or out of a small space awkwardly or with difficulty or effort
    ぎこちなく、困難に、または努力して狭い場所に出入りする

参考:Cambridge Dictionary

”climb”を簡単な英語に言い換えるなら、”go up” (上がる)と同じ意味と捉えておいて問題ないでしょう。
”with difficulty or effort”とあることから、「努力して登る」または「困難を乗り越えて上に上がる」というニュアンスを含むところがポイントです。

”crime”と”climb”の違い

カタカナの「クライム」は、英語にすると全然違う解釈になります。
”crime”と”climb”の違いを、意味と用法、発音の観点から説明しましょう。

【crime】
”crime”は、犯罪や違法行為を意味する名詞です。
動詞としての用法はなく、法律で裁かれる罪はすべて”crime”で表現されます。

【climb】
”climb”は、動詞と名詞2つの用法を持つ英語で、ものや人が高い場所(頂上など)に向かって「上昇する」または「登る」というのがコアの意味です。
物理的に山や階段、はしごを登るだけでなく、社会的地位や経済的地位、物価、成績が上がるときにも使われます。

”crime”と”climb”は、発音の違いを聞き分けるのが一番難しいかもしれません。

”crime”の発音記号は、/kraɪm/であるのに対し、”climb”の発音記号は、/klaɪm/ です。
どちらも[c]の部分は「ク」、[ime]と[imb]の部分は「アイム」と読みます。

違うのは[r]と[l]の部分だけですが、[r]と[l]は日本語にはない音なので、聞き分けるのも実際に使い分けるのもとても難しい音です。

巻き舌にすると思っている方もいるかもしれませんが、[r]は舌が口内のどこにも付かずに喉から出てきた音です。
全く同じ発音をする”write”と”right”からヒントを得て、[w]の音を出しながら発音するというのも練習の方法としておすすめですよ。

”crime”を使った例文

”crime”を使った例文

”crime”を使った例文を紹介します。
「犯罪」や「違法行為」を表す名詞としての使い方を確認しておきましょう。

Aさん
We moved here because there was very little crime.
訳)わたしたちがここに引っ越してきたのは、犯罪がほとんどなかったからです。

”commit crime”で「犯罪を犯す」という意味になります。
”crime”の使い方のなかでとてもよく出てくる表現ですので覚えておきましょう。

Aさん
He insisted that he had not committed any crime.
訳)彼は、自分は犯罪など犯していないと主張しました。

「残念なこと」や「遺憾なこと」は、以下のように表現できます。

Aさん
To have hundreds of homeless people sleeping in the streets of a rich city like London is a crime.
訳)ロンドンのような豊かな都市の路上で何百人ものホームレスが寝ているのは許しがたい行為です。

”climb”を使った例文

”climb”を使った例文を紹介します。
動詞と名詞2つの用法があるので、両方の使い方を覚えておくと役立ちますよ。

「高く上がる」「上昇する」といった意味の表現は以下のような文になります。

Aさん
The plane climbed quickly to a height of 30,000 feet.
訳)飛行機は、急速に高度 30,000 フィートまで上昇しました。

「登る」や「乗り越える」の表現は、”climb”の基本表現としてしっかり覚えておいてくださいね。

Aさん
I had to climb a steep flight of stairs to get into the garden.
訳)庭に入るには急な階段を登らなければなりませんでした。

価格や数値の上昇には、以下のような表現を使います。

Aさん
The temperature has climbed steadily since this morning.
訳)今朝から気温がどんどん上がっています。

「昇進」や「出世」を表したいときにも、”climb”を使います。

Aさん
He quickly climbed to the top of his profession in the sales division.
訳) 彼は、営業部門ですぐにトップに上りつめました。

まとめ

2つの意味を持つカタカナ言葉「クライム」を、”crime”と”climb”の意味の違いとともに解説しました。

英語に由来した「クライム」は、英単語の”crime”と”climb”、どちらが使われているかによって意味が全く異なります。
”crime”は、「犯罪」や「違法行為」を意味する名詞であるのに対し、”climb”は、動詞と名詞2つの用法を持ち、「上昇する」や「登る」という意味を表します。

名詞か動詞か、発音は[r]なのか[l]なのか、判断が難しい単語ですが、2つの違いを改めて復習し、正しく使い分けられるようになりましょう。

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