パラリンピックのような大きなイベントが開催されると、開催国には世界中の様々な国から選手とその関係者が集まります。磨きあげられた技術や、勝利のための執念が多くの人の心に感動を呼び起こしてくれるでしょう。もし観戦を通してパラスポーツに興味を持ったなら、英語学習に活用してみるのはどうでしょうか。興味がある分野なら学習意欲も高まりますし、国際的なスポーツなら英語に触れる機会も多いのでうってつけと言えます。

パラリンピックの歴史とシッティングバレーボール

パラリンピック(paralympics)は、オリンピック(olympic)と同じ年に同じ開催地で行われる障がい者スポーツ(disabledsports)の国際大会の名称です。パラリンピックは、もうひとつの(parallel)とオリンピック(olympic)という言葉を足して生み出された造語だと言われています。

パラリンピックの歴史は、第2次世界大戦後の英国で始まりました。1948年イギリスで開かれたロンドンオリンピックに合わせて、ストークマン・デビル病院で車椅子患者によるアーチェリー大会が開かれたのです。主催者はドイツ出身の神経医学者のルートヴィッヒ・グットマン博士という人でした。博士は「手術よりスポーツを」という方針のもと、障がいの当事者が誇りをもって生きられるような治療を目指したのです。当時の常識では脊髄を損傷することは、死の病だと考えられていました。障がいを負った人が生きる気力を失くし、鬱症状を発祥してしまうケースも見られたのです。パラスポーツは障がいを抱えた人間が、尊厳を取り戻すために始まったものだと言えます。

第一回目の夏季パラリンピックは、イタリア・ローマで行われました。ローマ大会では23ヵ国から400人の選手が参加したと記録されています。行われた競技数は8種目だけで、その中には今では行われていないものも含まれていました。継続している競技はアーチェリー・陸上競技・水泳・卓球・車椅子バスケットボール・車椅子フェンシングの6競技だけです。パラリンピックが始まった当初は「リハビリテーションのためのスポーツ大会」という位置付けでしたが、時代が進むと「世界最高峰の障がい者スポーツの祭典」と受け入れられ方にも変化が生まれています。しかし生みの親であるルートヴィッヒ・グットマン博士の「失われたものを数えるな、残された機能を最大限に活かせ」という言葉は、大会運営のモットーとして生き続けています。

シッティングバレーボールは、オランダの傷痍軍人により考案されました。競技の仕組みはシットボールという競技と、バレーボールを参考にして生み出されたものです。パラリンピックの正式競技にシッティングバレーボールが加わったのは、オランダで開かれた第6回・アーネム大会からでした。日本で初めてシッティングバレーボールのチームが誕生したのは、1992年になってからです。その後1997年に埼玉県で第1回シッティングバレーボール選手権大会が開催され、少しずつ社会に広まっていきました。男子の日本代表チームが初めてパラリンピックに出場したのは、第11回・シドニー大会(2000年)からで、女子は第29回・北京大会(2008)が初めての出場です。

障がい者スポーツとクラス分けの目的

障がい者スポーツとは生まれつき、または病気や事故など様々な理由で障がいをもつ選手が、公平に挑戦できるように工夫されたスポーツのことです。ここでは障がい者スポーツが公平さを保つために導入している、クラス分け(classification)について学んでいきます。どの障がい者スポーツにもクラス分けが行われる訳ではありませんが(ウェイトリフティングでは行われない)、知っておいた方が競技の理解の助けになります。

クラス分けの目的

クラス分けを行う目的は、二つあると考えられています。一つは障がいの有無や重さを確認すること。健常者が障がい者を装って出場資格を得た事件もあったので、障がいの有無の確認は試合の前に必要なことです。もう一つの目的は競技の公平性を確保するためです。同じ障がい者であっても、重度と軽度の人間が競うなら軽度の人間の方が有利になるでしょう。これでは公平な試合はできません。障がいの重さによって細かく分類することは、競技を守るためにも不可欠なことなのです。クラス分けはクラスフィヤー(classifier)と呼ばれる判定員が、2~3名で一組(1パネル)になって判定していきます。

自転車競技の場合

自転車競技は、競技の特性上障がいの種類によって使用する器具も変わってきます。切断や麻痺など四肢に障がいがあるCクラスの選手は、二輪自転車を使用します。麻痺などで体幹に重度の障がいのあるTクラスの選手は、三輪自転車が使用できます。視覚に障がいのあるBクラスの選手は、二人乗りの自転車で出場できます。下肢に障がいのある選手が対象のHクラスでは、手でこぐハンドバイクが必須になるでしょう。このような努力を重ねて、公平性は守られているのです。

シッティングバレーボールのクラス分け

シッティングバレーボールにおけるクラス分けは、他の競技よりも単純なので分かりやすいでしょう。障がいの程度の軽いSV1の選手と、障がいの程度の重いSV2の選手の二つに分けられています。チームは1チーム12人編成で構成されているのですが、SV1の選手はその中に2人だけ入れることができます。試合は6人で行われ、一度にコートの中に入れるSV1の選手の数は1人だけです。

シッティングバレーボールのルール


シッティングバレーボールのルールについて、説明していきましょう。コートは一般のバレーボールよりも狭く、ネットも低く設定されています。サイドラインは10メートル、エンドラインは6メートルと決められています。エンドラインの後ろがサービスゾーンで、サーブを打つとき体の一部がサービスゾーンに残るように打ちます。ネットの高さは男子が1.15メートル、女子は1.05メートルでその前後の部分がアタックラインです。

シッティングバレーボールの試合の進め方

シッティングバレーボールは、ラリーポイント制を導入しています。ラリーポイント制とはサーブから始まったラリーで攻撃を決めるか、ミスや反則をせずにしのいだ側が1ポイントを獲得できる仕組みです。どちらがサーブ権を持っているかにかかわりなく点が入るので、とてもスピーディーに試合が展開していきます。サーブ権はサーブ側が連続して得点した場合ならそのままですが、相手にポイントを取られたら奪われてしまいます。

メンバーとローテーション

コート上の6人のメンバーは、でんぶ(肩からお尻までの上半身)の位置によってどこのポジションなのかが判断されます。フロントゾーンで戦う選手は前衛と呼ばれ、バックゾーンで戦う選手は後衛と呼ばれています。前衛をフロント、後衛をバックと省略して呼ぶこともあるでしょう。コート上の選手はサービス権を獲得したときに、時計回りにポジションを入れ換えます。こうした動きのことを、ローテーションと言います。このローテンションは分かりやすい仕組みなのですが、試合の流れを決める鍵となるほど重要になってきます。ですからどのチームの監督も相手チームのポジションを見ながら、自分達のフォーメンションが機能できるように戦略を立てているのです。

シッティングバレーボールの用語

シッティングバレーボールで使われる用語あげるので、ここで学んでおきましょう。

サーブ(saab)
サービスゾーンから相手コートにボールを打ち込むことです。おしり部分がエンドラインの外にあれば反則になりません。

スパイク(spike)
ボールを相手コートに、叩きつけるように打ち込む攻撃のことです。シッティングバレーボールではジャンプができないので、身長の高い選手がとても有利になります。

レシーブ(receive)
相手からのスパイクやサーブを受けるプレーのことを指します。ボールに向かって手を差し出すので、ほんの短い間ならお尻が床から離れても反則になりません。

ブロック(block)

前衛の選手がネット際で壁を作り、相手の攻撃を阻止するプレーのことです。シッティングバレーボールではサーブブロックも認められているので、一般のバレーボールよりもブロックが重要になってきます。

シッティングバレーボールを英語学習に利用するには

シッティングバレーボールはパラリンピックの正式競技ですから、世界中に競技者がいます。お気に入りの選手を見つけてその活躍を追っていけば、自然と英語に触れる機会も増えていくことでしょう。SNS等を通して、海外のファンと交流をもつのもいい考えです。競技に対する共通理解が根底にあるので、他の分野よりも意思疏通がしやすいでしょう。パラリンピックの情報は瞬く間に世界中に広がるので、これも英語学習に利用できます。あらかじめ日本語でかかれた記事を読んで置いてから、英語で書かれた記事を読めばいいのです。内容は頭に入っているので、何が書かれているか推測できます。気に入った文章を見つけて、例文として暗唱するのもいいでしょう。興味のある分野の言葉なら、覚えるのも簡単になります。

シッティングバレーボールで英語学習のまとめ

パラリンピックは世界中からパラアスリートが集まる、障がい者スポーツの祭典です。アスリートの素晴らしいパフォーマンスを目にすれば、多くの人が魅了されることでしょう。パラリンピックの正式競技であるシッティングバレーボールも、例外ではありません。興味のあることをテコにすれば英語学習も捗るので、シッティングバレーボールに関する海外の情報もどんどん求めていきましょう。