東京オリンピックでは馬術の障害物のモチーフが注目されました。ダルマや相撲とり、竹など、日本らしい風情があふれていて、馬も少し驚いてしまったりしたようです。男性と女性が同じステージで戦える唯一の種目とされる馬術ですが、実はパラリンピックにも馬術の競技があることはご存知ですか?今回は、パラリンピックの馬術について解説して行きます!

馬術とは?

英語ではequestrianismです。equestrianだと形容詞で「乗馬の」の意味になります。equesterとはラテン語で馬に乗ることを示すので、equineはラテン語で馬を意味し、学名でも馬のことはequusと書きます。また、古代ローマでは騎士のことをequites と呼びました。ところで、馬にはhorseという言葉もあります。乗馬のことは英語でhorse rideとも言いますが、equestrianの方がよりフォーマルです。言葉が2種類ある理由は語源が違うことと、少しだけ活用の範囲が異なるからです。equineはラテン語が語源となりますが、horseは「跳ねる動物」を意味する古期英語のhorsyからきています。

そのため、horseを使った英語表現には「馬鹿騒ぎをする」「悪ふざけをする」という意味でhorse around という熟語もあります。また、horseは一般的に牡馬のことを示し、牝馬はmare、去勢馬はgeldingと書きます。また、ロバやシマウマなどのウマ科の動物(horse family)もhorseで示すことがあります。

馬術の歴史

馬が人間と共存を始めた歴史はとても古く、紀元前4000年から中国、ペルシャ、エジプトなどで、運搬や乗用として馬を使っており、人間の文明の発展には欠かせない動物でした。やがて軍用としても馬が用いられるようになり、紀元前400年頃にギリシャでまとめられたクセノポンのThe Art of Horsemanshipという著書は、現在にも通ずる馬の調教の参考書とされてきました。やがて、中世の時代から貴族のたしなみとして馬術が取り入れられるようになり、馬術がスポーツとして定着してきたのは16世紀頃となります。

1921年には国際馬術連盟(Federation equestre internationale)がスイスのローザンヌに創立され、設立した当初はベルギー、デンマーク、フランス、イタリア、日本、ノルウェー、スウェーデン、アメリカ合衆国の8カ国が参加し、現在は134箇所の国と地域が所属する大きな組織となりました。オリンピックとしての馬術オリンピックでは、元は戦車競技(シャリオ・レース)として馬が用いられていましたが、馬術が正式にオリンピック競技になったのは第2回パリ大会です。その時の競技は障害馬術1競技のみでした。1921年に国際会議が開かれたおりに、オリンピック競技として馬場馬術、障害馬術、総合馬術の3種目が指定されました。

日本における馬術の経歴

日本では1922年に日本馬術協会が立ち上げられ、1946年に公益社団法人日本馬術連盟が発足しました。現在の日本馬術連盟は国際的には国際馬術連盟とアジア馬術連盟、国内では公益社団法人日本オリンピック委員会と公益社団法人日本スポーツ協会に加盟しています。日本がオリンピックに参加したのは1928年の第9回アムステルダム大会からです。その後第二次世界大戦によって日本は国際馬術連盟を離脱しますが、1951年に復帰し、1952年の第15回ヘルシンキ大会よりオリンピックに再び参加するようになりました。日本が唯一メダルを獲得したのが1932年の第10回ロサンゼルス大会で、障害馬術競技に西竹一(バロン西)選手がウラヌス号で出場し、金メダルを取りました。

馬術にはどのような競技がある?

馬術にはどのような競技がある?

馬術には総合馬術、馬場馬術、障害馬術、ジムカーナ、エンデュランス、馬車競技、レイニングなど多種多様の競技があります。オリンピックで採用されているのは総合馬術、馬場馬術、障害馬術の3競技であり、過去にはハイジャンプ、ロングジャンプ、軽乗馬というものもありました。パラリンピックでは馬場馬術のみがあります。現在行われているそれぞれの競技についての用語は、以下で説明していきます。

総合馬術

英語ではEventingと呼ばれます。馬場馬術(調教審査)、クロスカントリー(耐久審査)、障害馬術(余力審査)の3種目を、同一人馬のコンビネーションで3日間をかけて行う競技です。3種目を減点方式で採点し、合計の少ない人馬が上位となります。3日間かけて行われるので、総合馬術のことをThree Day Eventsと呼ぶこともあります。

馬場馬術

英語ではDressageと呼びます。長方形の競技アリーナ内で演技の正確さや美しさを競い、walk(常歩:なみあし)、trot(速歩:はやあし)、canter(駈歩:かけあし)の3種類の歩法(horse gait)を組み合わせてステップを踏んだり、図形を描いたりします。演技内容がすべて決められている規定演技(Equestrian Championship)と、音楽に合わせて決められた運動演技を構成する自由演技(Equestrian Freestyle)があります。

障害馬術

英語ではjumpingと呼ばれ、近代5種でも採用されている馬術です。アリーナに設置された、高いものでは160センチもある障害物を順番通りに飛越・走行し、障害物の落下や馬が従わない等がないようにゴールできるかを競います。減点の少ない人が上位になります。競技の採点ルールは細分すると様々ですが、障害物の落下が減点となる標準競技と、落下をタイムにも換算するスピード&ハンディネスというものが一般的です。

ジムカーナ

英語ではgymkhanaと書き、モータースポーツでも同じ名前の競技があります。障害物などを乗り越えながら指定された経路を歩くもので、障害物が障害馬術ほど高くなく、多くは100センチを超えません。初心者向けの競技とされています。

エンデュランス

エンデュランスは英語でEnduranceと書きます。馬のマラソンとも言われる競技で、長いものでは160キロの長距離を数時間かけて馬と走ります。1982年に国際馬術連盟が馬術競技として認定し、次第に競技人口や大会開催数が増えていきました。日本でも2000年以降から全日本エンデュランス馬術大会が実施されており、120キロ、80キロ、60キロの部門に分かれていますが、完走できるのは参加者の半分くらいだと言われます。過酷な競技なので、馬も登山の装備のように特殊な服やブーツ、サドルを着用する必要があるようです。

パラリンピックでの馬術

パラリンピックでは1996年アトランタ大会から正式競技とされました。視覚障害者と肢体障害者が参加し、障害の重度によって五段階のグレードに分けて競技を行います。数字が小さいほど重度の障害とされます。手綱を手で握ることのできない選手もいますので、口でくわえたり、足の指で握ったりと工夫しながら軽やかに馬を操る技は目を見張るものがあります。

東京パラリンピックに出場する選手は?

日本代表監督は明石乗馬協会の三木則夫さんです。日本代表選手は4名で、リザーブ枠で1名が出場します。グレード2の宮路満英さんと吉越奏詞さん、グレード3の稲葉将さん、グレード4の高嶋活士さんが出場します。宮路さんはリオパラリンピックにも出場した経験があります。また、リザーブ枠はグレード1の鎮守美奈さんです。(実際のグレードはローマ数字で書かれますが、入力できないためここでは数字で示しています)

パラリンピック馬術の例文

Aさん
I’m sorry that we can’t watch equestrians at the Olympics and Paralympics.
訳)私たちは馬術をオリンピックとパラリンピックで観ることができなくて残念です。

東京オリンピック・パラリンピックは無観客開催が決定したので直接応援することが叶わないという残念な例文ですが、テレビ越しに応援することはできますので、盛り上げていきたいですね。ちなみに、Olympics and Paralympicsは少し砕けた言い方となります。公式が使っているよりフォーマルな言い方はOlympic games and Paralympic gamesです。

まとめ

馬術は日本よりも海外でメダル争いが注目されているため、海外メディアのニュースでよく取り上げられています。例えばイギリスのBBCワールドニュースでも放送されているので、日本語版の放送と比較することもできるでしょう。英語の勉強にはとても有用だと思います。パラリンピックで行われる馬術の演目、そして日本代表選手の活躍にも期待したいですね。