「パラドックス」という言葉を聞いたことはありますか?
「逆説」や「矛盾」を説明するときによく使われるので、なんとなく難しいイメージを持っているかもしれません。

「パラドックス」は英語の”paradox”をカタカナで読んだ言葉ですが、英語本来の意味を知っているという人はどのくらいいるでしょうか。
今回は、一度は耳にしたことのあるカタカナ言葉「パラドックス」について、英語”paradox”の正しい意味と使い方、類似表現を解説していきます。

「パラドックス」の意味

「パラドックス」の意味

「パラドックス」は、英語の”paradox”をそのままカタカナで読んだ言葉です。
正しく見える前提や論理から、納得しがたい結論に行きついてしまう状況のことを指しており、日本語では「逆説」や「逆理」、「背理」などとも呼ばれています。

一般的に「逆説」や「ジレンマ」の意味を持ち、真実や正解とされている物事に対して「定説に逆らう」という意味で使われることが多いです。
哲学や数学の分野において、「間違いに見えても実は正しいこと」や「正しく見えても正しいと認識されていないこと」を説明するときにもよく用いられます。

「逆説」とは、一見間違っているように見えて実は正しい真理のことで、辞書では以下のように定義されています。

  • 一見、真理にそむいているようにみえて、実は一面の真理を言い表している表現
  • ある命題から正しい推論によって導き出されているようにみえながら、結論で矛盾をはらむ命題
  • 事実に反する結論であるにもかかわらず、それを導く論理的過程のうちに、その結論に反対する論拠を容易に示しがたい論法

参考:goo辞書

「パラドックス」は、しばしば、つじつまの合わないことを表す「矛盾」と混同されがちです。
話の前後に一貫性がない「矛盾」に対して、受け入れがたい事実や納得しづらい結論のように、物事として正しく成立しているのが「パラドックス」です。

「パラドックス」は、間違っているように見えても実は正しい、逆説的な意味を示すさまざまなことわざや格言で広く使われています。

「パラドックス」の使用例

・パラドックスのことわざには、「急がば回れ」や「負けるが勝ち」があります。
・パラドックスの概念は「逆説」や「ジレンマ」といった言葉で説明できます。
・パラドックスとは「矛盾」をはらむ言葉でもあります。

「パラドックス」とは、受け入れがたい結論が導かれたり、その逆で正しいと思っていた理論が誤っていたりする状態を表した言葉です。
数学や哲学における学術的な表現と捉えられていますが、じつはわたしたちの生活の身近なところにも存在していますよ。

”paradox”の意味

英語の”paradox”は、「逆説」や「矛盾」を意味する名詞です。
一見すると間違っているように見えるが、より深く掘り下げると真実を含んでいるような主張や状況を示すときに使われます。

哲学から数学、物理、経済学、医療などさまざまな分野において頻出の単語なので、正しい意味と使い方をおさえておきましょう。

”paradox”は、辞書では以下のように定義されています。

  • 逆説、パラドックス、矛盾のようで実は正しい説
  • 一見正しく見える矛盾した言葉
  • 矛盾したところのある人、事情

参考:Weblio英和辞書

  • a statement or situation that may be true but seems impossible or difficult to understand because it contains two opposite facts or characteristics
    真実かもしれないが、2つの正反対の事実や特徴を含んでいるため、不可能または理解しにくいと思われる声明や状況

参考:Cambridge Dictionary

”paradox”の発音記号は、イギリス英語が /ˈpær.ə.dɒks/ アメリカ英語が /ˈper.ə.dɑːks/ です。
カタカナにすると「パラダクス」のように読めます。
わたしたちが日本語で使っている「パラドックス」とは少し発音が異なりますので注意しましょう。

”paradox”は、ギリシャ語の”para”(反対)と”doxa”(意見・見方)が語源といわれています。

古代ギリシャ語

”para-”(~に反して)+ ”doxa”(予想、意見、考え)

”paradoxos”(予想に反した)

paradoxon(信じられない意見)

ラテン語
”paradoxum”(逆説)

中期フランス語
”paradoxe”(逆説)

現代英語”paradox”

古代ギリシャ語が持っていた「一般的な予想に反した意見」がコアの意味になります。
「逆説的な意見」や「定説に逆らうもの」の意味で用いられていましたが、現在では「相反する2つの事柄が同時に成立する状況」「矛盾した内容」などを表す名詞として使われるようになりました。

”paradox”を使った例文

”paradox”を使った例文を紹介します。
日本語訳は、文脈に応じて「逆説」や「パラドックス」など適切な単語に置き換えると自然な言い回しになりますよ。

Aさん
“I always lie” is a paradox because if it is true, it must be false.
訳)「私はいつも嘘をつく」というのは、パラドックスです。もしそれが本当なら、それは嘘に違いないので。
Aさん
It’s a paradox that the more you learn, the more you realize you don’t know.
訳)学べば学ぶほど、自分が知らないことが多いと気づくというのは、パラドックスです。
Aさん
The paradox of success is that it’s often built on failure.
訳)成功のパラドックスとは、多くの場合、失敗の上に成り立っているということです。
Aさん
The story contains many levels of paradox.
訳)この物語には、さまざまなレベルの逆説が含まれています。
Aさん
There is a way out of this apparent paradox.
訳)この明白なパラドックスから抜け出す方法は存在します。
Aさん
The curious paradox is thus solved at a stroke.
訳)こうして、その不思議なパラドックスは一気に解決されました。

 

”paradox”の類似表現

”paradox”の類似表現

”paradox”は、他にもいろいろな英語で言い換えが可能です。
一見矛盾しているように見えるが、真実を示していることを意味する”paradox”の類似表現を3つ紹介します。

contradiction

”contradiction”は、「矛盾」や「対立する事柄」を意味する英語です。
前提や意見が互いに矛盾していたり、相反しているもの同士が存在したりする状態を表します。理論や結論が整合性を欠いているときによく使われる表現なので覚えておきましょう。

Aさん
Her actions are in contradiction with her words.
訳)彼女の行動は彼女の言葉と矛盾しています。
Aさん
There seems to be a contradiction in their argument.
訳)彼らの主張には矛盾があるようです。

enigma

”enigma”は、「謎」や「不可解なもの」を意味する英語です。
複雑で理解しがたい状況、あるいは解決できない問題などがあるときに使われます。

Aさん
The mystery surrounding her disappearance remains an enigma to this day.
訳)彼女の失踪をめぐる謎は、今日にいたるまで解明されていません。
Aさん
This enigmatic picture has captured the imagination of many people for centuries.
訳)この謎めいた絵画は、何世紀にもわたり多くの人々の想像力をかきたててきました。enigmatic:謎めいた

conundrum

”conundrum”は、「難問」や「難題」を意味する英語です。
明確でない答えや解決が難しい問題などを表しており、複雑で混乱した状況や疑問を表現するときに使われます。

Aさん
His decision put him in a conundrum.
訳)彼の下した決断は、さらに彼を難問に追い込みました。
Aさん
The conundrum of their relationship was hard to understand.
訳)2人の関係の難解さは、理解しがたいものでした。

まとめ

一度は耳にしたことのあるカタカナ言葉「パラドックス」について、英語”paradox”の正しい意味と使い方、類似表現を解説しました。

「パラドックス」は、英語”paradox”をカタカナで読んだ言葉です。
「逆説」や「矛盾」意味し、哲学や数学を初め、物理や経済、医療などさまざまな分野で広く使用されています。

一見間違っているように見える真理や、理解しがたい結論などを説明するときには、”paradox”を用いて、ディスカッションができるようになると良いですね。

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