この「ことわざ」、「英語」で何と言う?シリーズ、今回は、「正直・嘘」のつく「ことわざ」を英語に翻訳してみました。

正直とは、「心が素直で清らかなことで、嘘いつわりがないこと」で、日本人の伝統的な徳目のひとつです。正直者が得をした話として日本昔話の「正直者天登り」やイソップ童話の「金の斧」が有名です。

嘘とは、「人を欺くためにつかう、事実ではない事柄のこと」です。古典の「うそぶく」という言葉が由来となっており、元は「口笛を吹く、風や動物の声といった自然音の声帯模写、照れ隠しにとぼける、大言壮語を吐く」といった多義的な使われ方をしていました。欧米圏で嘘の歴史について語られる場合、旧約聖書の「カインとアベル」がしばしば語られています。

そんな「正直・嘘」のつく「ことわざ」を今回は8つ選んで英語に訳しました。

1. 正直者が馬鹿を見る

1. 正直者が馬鹿を見る

「正直者が馬鹿を見る」は、ルールや規則をきちんと守る正直者が損をし、ズルをしてうまく立間回るものが得をするという意味の「ことわざ」です。世の中の矛盾が込められた「ことわざ」ですね。

英語では
“Honesty is ill for thriving.”
と翻訳することができます。

直訳すると「正直は繁栄にとっては不都合である」という意味で、この「ことわざ」と同じ意味でつかわれます。”thrive”は「栄える、繁栄する、成功する」などの意味を持つ自動詞です。

2. 正直の頭に神宿る

「正直の頭に神宿る」は、正直に生きる者には必ず神の加護があるという意味の「ことわざ」です。

英語では
“Fortune waits on honest toil and earnest endeavour.”

と翻訳することができます。

直訳すると「幸運は正直な勤労と真面目な努力にかしずく」という意味です。”wait”は「待つ」という意味で広くつかわれていますが、”wait on”で形式ばった言い方である「かしづく」という意味でつかわれます。”toil”が苦しい仕事、”endeavour”が努力という英単語です。

3. 正直は最良の方策

3. 正直は最良の方策

このことわざは、文字通り「正直であることが最良の方策」という意味です。

英語にすると、

“Honesty is the best policy.”

となります。「正直者が馬鹿を見る」とは真逆の意味で、「正直であることが一番良い方策」ということですね。

景気が悪くなって、詐欺犯罪が増えていますが、悪事はいつかばれるものですから、何事においても、正直に生きていくことが一番良い方策だと考えられます。

4. 嘘から出た実(まこと)

1つの嘘も100、200と広まることで、本当になることもあるんです。「嘘から出た実」は、はじめは嘘として語られていたことが、人から人に伝えられる過程で本当の話になってしまううことを意味する「ことわざ」です。このことわざで、実は「まこと」と読みますが、ここでは「真実」truthという意味です。

英語では
“Many a true word is spoken in jest.”
と翻訳することができます。

直訳すると「多くの真実が冗談で語られる」という意味で、この「ことわざ」と同じような意味でつかわれます。”many a 単数形名詞”は「多くの~で、そのひとつひとつが」という言い回しになり、”many 複数形名詞”とは少し意味合いが異なります。”jest”は冗談という意味の英単語です。

または、”Truth comes out of falsehood.”も同じ意味でつかうことができます。

「偽りからの真実」という意味です。”falsehood”は「嘘、虚偽、偽り」という意味です。”come out”は「出てくる、現れる」の意味のほか「明らかになる」の意味もあります。

5. 嘘も方便

「嘘も方便」は、嘘は悪いことではあるが、物事をうまく進めるために、時には必要であるという意味の「ことわざ」です。「方便」とは、仏教において「人を真の教えに導くための仮の手段」を意味する言葉です。

英語では
“The end justifies the means.”
と翻訳することができます。

直訳すると「結果は手段を正当化する」という意味です。”mean”は動詞で「~を意味する」などの意味でつかわれますが、”means”で複数形になると、「手段、方法」や「財産、収入」などの名詞として使われ、ここでは前者の意味です。日本語の「方便」が英語では “means”に相当する部分です。

「嘘も方便」の英訳は、先ほど紹介した表現になりますが、”white lie”「善意の嘘」を使って表現することもできます。

”Sometimes, a white lie can be helpful.”

直訳すると、「善意の嘘が時には役立つ」という意味になります。

「善意の嘘」ってどんな嘘と思われるかもしれませんが、「あまり重要でない話題についての嘘、あるいは礼儀や親切のためにつく嘘」のことです。言語や文化が違っても、「善意の嘘」をつくような状況はあり得ると考えられます。

しかし、ビジネスにおいて、保身のために自分にとって都合のいい嘘をつく方もおられますが、それは「善意の嘘」とは言い難いですね。

6. 嘘の上塗り

6. 嘘の上塗り

このことわざの意味は知っている人が多いと思います。嘘の上塗りとは、「ひとつ嘘をつくと、その嘘がばれそうになった時、さらなる嘘で隠そうとすること」を意味しています。

英語では、

One lie makes many.

と翻訳することができます。

罪を犯してそれを隠すために嘘をついた犯人が、その嘘がばれないように、さらなる嘘をついてしまうという状況は、想像がつきますね。

犯罪というほどの嘘ではないにしても、自分の願望を叶えたいために嘘をついてしまう人がいます。たとえば、ある人が就職したいと願っている会社があって、その会社の応募要件が、「TOEIC900点以上のスコア保持者、または英検準1級以上を取得している者」だったとします。その人は、どちらの条件もあと一歩で満たしていないのですが、TOEICの点数が875点だった場合、ほぼ900点で大差がないから大丈夫だろうと思って、応募したとします。その後、応募した会社から、「書類選考通過」という連絡を受けますが、「面接試験でTOEICのスコアか準1級の合格証を提示してほしい」と言われます。その場合、その応募者は「嘘の上塗り」をしてしまう可能性が高いです。

おそらく、「TOEICのスコアは証明書を失くしてしまったので提出できない」と嘘をつくことになるでしょう。このように、「嘘の上塗り」は身近なところで起きていたりします。嘘ばかりついていると、良心の呵責を感じなくなって、ずっと嘘ばかりついてしまう人生になってしまうので、よくないですね。

7. 噓つきは泥棒の始まり

嘘つきが必ずしも泥棒につながるとは言い切れませんが、「嘘つきは泥棒の始まり」は日本社会の中でよく使われてきた言い回しです。

英語では、

“Lying is the first step to stealing.” または

”Lies lead to theft” となります。

前者の英語表現は、直訳すると「嘘をつくことが盗みの第一ステップです」となり、後者の英語表現は「嘘は盗みにつながる」となります。

嘘をつくことに対する戒めとも解釈できる表現ですね。

8. 目的のある嘘は最悪の種類のものであり、最も有益なものである

8. 目的のある嘘は最悪の種類のものであり、最も有益なものである

これは、英語圏でよく使われる言い回しを日本語にしたものです。「確かにそうだね」と納得される方も多いのではないでしょうか。

元の英語はこうなっています。

“A lie with a purpose is one of the worst kind, and the most profitable.”

先ほど少し触れたビジネスにおける嘘とつながる部分があります。目的をもって嘘をつくことは、保身の場合もあるでしょうが、儲けようとして、嘘をついていることもあります。

美容や食品の表示について、利益を上げようとして、誇大表示をしているケースがあるという話を時々耳にしますが、そういった表示が、人の健康をおびやかす場合もあります。

会社や組織が、利益を上げようとして嘘をつくことは、時にはあるのかもしれませんが、嘘はいつかばれるものです。利益を上げようとしてついた嘘が、とんでもない大惨事につながることがあるので、気を付けたいですね。

まとめ

今回は、「正直・嘘」のつく言葉にまつわる「ことわざ」をまとめてみました。

皆さんの心に響いたことわざは、この中にありましたでしょうか。「正直者が馬鹿を見る」世の中ではなく、「正直が最良の方策」である世の中であってほしいと願う人は多いのではないでしょうか。「正直」と「嘘」は対義語ですが、その対義語に関することわざは、結構たくさんありますね。

「正直の頭に神宿る」が英語で、”Fortune waits on honest toil and earnest endeavour.” (幸運は正直な勤労と真面目な努力にかしずく)を意味するように、英語の勉強も努力し続ければあなたに良いことをもたらしてくれるはずです!

今後も様々な「ことわざ」や「名言」を翻訳していきますので、お楽しみに!